『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

読書感想169  極北クレイマー

2015-03-22 16:33:58 | 小説(日本)

読書感想169  極北クレイマー

著者      海堂尊

生年      1961年

出身地     千葉県

出版年月    2011年3月

出版社     朝日新聞出版

 

★感想★★★

 教授に反論したことから極北大学の医局から出張を命じられた今中良夫は、時間給アルバイト待遇の外科部長として極北市民病院で働くことになる。北海道の極北市は人口10万で、広大な牧場だけで地場産業に乏しい。かつて無理して遊園地を造り、極北山にスキー場を建設し、豪華なホテルを誘致したが、観光客の足は遠のき失敗した。そうした出資が市の財政を圧迫し、財政破綻するかもと噂されている。極北市民病院も市の財政を圧迫し赤字の原因の一つになっている。患者は医療費を滞納し、入院患者も少ない。病院には医師が4人、室町院長、三枝産婦人科部長、後藤医長、そして今中外科部長。いつもテレビを見ている薬剤師、煎餅をいつもかじっている看護師、入院患者が褥瘡(重症の床ずれ)を起こしているのに薬がないといって放置する看護師。トイレは昔ながらの和式おとし便所。無気力な医療現場の雰囲気を変えるスノウ・エンジェル、桃色の眼鏡をかけた雪だるま、派遣の皮膚科の医師だと名乗る姫宮香織が現れる。

 コミカルに財政破綻していく市や病院の様子が描かれている。それでも一見無気力に見えながら、きっかけがあれば医療の原点にもどってしっかりやろうとする姿に、医療に携わる人間の良心を見る思いがする。究極のところでなぜ医者なのか、なぜ看護師なのかということが問われる環境なのだ。そのことを著者は描きたかったのかもしれない。

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