読書感想171 傷
著者 幸田真音
生年 1951年
出身地 滋賀県
出版年 1998年
出版社 (株)文藝春秋
感想
ニューヨークで日本の銀行の駐在員がビルから転落死する事件が起きる。転落死は自殺として処理された。しかし、その明石哲彦の死の前に会っていた旧友の芹沢裕弥は、自殺という結論に納得ができない。明石哲彦の事件から3カ月後、芹沢裕弥はニューヨークでみかけた有吉州波(すなみ)と東京で偶然会う。有吉州波はアメリカの有力な証券会社のトップ・セールスウーマンだが、東京支店に転勤してきたのだ。芹沢裕弥は明石哲彦から彼女の名前を特別な人として聞いていた。二人は紆余曲折の末に明石哲彦の死の謎を協力して解いていくことになる。それと同時に国際金融市場の闇が暴かれていく。有吉州波が格好いい国際金融市場のスター・セールスウーマンなのに、女を武器にしたり、ウェットな浪花節的な心情の持主なのが、ちょっと意外で肩すかしをくらったような気分になる。もっとクールでいてもらいたかった。