読書感想140 新・古着屋総兵衛7 二都騒乱
著者 佐伯康英
著者略歴 1942年生まれ。北九州市出身。
多数の国際謀略小説、ミステリ小説を手がけ、1999年に時代小説「密命」を発表。以降時代小説の人気シリーズを立ち上げる。
出版年月日 2013年12月1日
出版社 (株)新潮社
感想
本書は新・古着屋総兵衛シリーズの第7冊。
このシリーズでは大黒屋はその経済力を南蛮交易にまで伸ばし、
100年前から薩摩藩と南蛮交易をめぐって争っている。そしてグエ
ン・ヴァン・キが10代目大黒屋総兵衛を継いだときから一層薩摩藩
との争いは熾烈になってきた。グエン・ヴァン・キはその薩摩藩の
妨害を出し抜いて、イマサカ号と大黒丸という大型帆船を南蛮交易
に送り出した。一方自分は10代目大黒屋総兵衛として京都に向かっ
た。主人公はベトナムの交趾出身のグエン・ヴァン・キこと、鳶沢
総兵衛勝臣、つまり10代目大黒屋総兵衛。
鳶沢一族は江戸に入府した徳川家康によって影の旗本として、表向
きは江戸の富沢町の古着屋大黒屋を営みつつ、幕府の中の影様の指示に
従って秘密の任務を果たしてきた。
江戸から京都に来た勝臣は、許婚の坊城桜子を京都の錦市場で誘
拐されてしまう。誘拐犯は不思議な修行僧の一団だ。彼らが通ると、
周囲の人々は一瞬虚脱してしまう。彼らは何者なのか。江戸から京
都まで続いた薩摩藩との暗闘はどう決着がつくのか。そんな中、川
越東照宮で御簾ごしに話した影様、その女人の正体と目的が徐々に
明らかになって行く。
このシリーズに登場する人々は戦国時代の有名人の子孫でそのビ
ックネームをついでいたり、公家や有力大名家の人々なので、やは
りビッグネームをついでいる。それがある種の信用というか、もっ
ともらしさをかもし出しているのかもしれない。
異国人のグエン・ヴァン・キとともに年末の京都の行事をめぐる
のも楽しい。