『そぞろ歩き韓国』から『四季折々』に 

東京近郊を散歩した折々の写真とたまに俳句。

翻訳  朴ワンソの「裸木」75

2014-08-04 23:48:54 | 翻訳

 

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翻訳  朴ワンソの「裸木」75

 

               268頁~270

 

「よく沸いたね。手際がどんどん上達するし」

 

 彼は話題をさっと変えて、彼の目に傷心よりもっと深い痛みがよぎる。

 

 彼は自ら解決しなければならない、この小さい現実も未決のまま、避けようとばかりした。私はしいて深く追及しようとしなかった。

 

 未決の状態、その朦朧として無責任な状態が与える休息が今の私には必要だった。

 

 私はまだ少し疲れていた。まだ私は月も替らない喪中だったから。

 

 しかし、お姉さまは私にそんな休息さえも与えようとしなかった。まるで自分の家に出入りするように、私の古家を随時出入りしながら、あらゆる生活の心配を一手に引き受けて騒がしくふるまっては、必ず結婚話を持ち出すのだった。

 

「まあ、キャンアちゃんも考えて見てよ。私が、とにかく子供が5人もいる私が、2軒の家事をするのがどんなに大変か。まあ私の気持ちをちょっと考えて。2軒の家事にテスちゃんの世話までしなければならないから、3軒の家事なのよ。だから日を見て早く結婚を急いでいるの。私も自分の家事をして静かに暮らせたらなあって」

 

 私は静かに暮らしている彼女を想像できない。3軒の家事が必要なのは彼女であって、結局こちらではないことに、注意を喚起する惨いことばを思い出さないこともなかったけれど、母の葬式で世話になったから彼女に面と向かってけんくつを食わすのはためらわれた。

 

 最近彼女はよく〈キャンアちゃん〉の代わりに私を〈若奥さん〉と呼びさえした。私はもう彼女から離れたかった。彼女を必要とする時間はもう終わったのだ。

 

「ミスター黄、時間がありますか?」

 

「もちろん」

 

 葬式の後でテスと私は互いに十分な時間を取れなかったので、彼は非常に喜んだ。

 

「ユートピア、どうですか」

 

「オーケー」

 

 彼が口笛を吹きながら、初めて明るく笑った。最近彼は私と会うと、喪中であることを念頭において、いつも非常に悲しく謹厳な表情をしようと努めて気の毒なほどだった。

 

「今日お茶をおごってくれますか?」

 

 私はいつもと同じようにオクヒドさんと退社しながら聞いた。

 

「僕は今日キョンアが入れたコーヒーを飲みたいんだが」

 

「私は先生のお茶が飲みたいです」

 

 私はさっと甘えながら彼をユートピアへ導いた。テスは先に来ていた。

 

 彼は私を見て手をさっと上げるのをやめて、後ろからついてくるオクヒドさんを見て、少しいぶかしげな様子をした。

 

 彼らはぽつぽつとおもしろくない話をかろうじて続けていた。彼らの共通の話題というのは、テスのお兄さんの身辺の話をするしかなく、そのお兄さんが元々退屈な人柄なので、彼らの話題もまた活発になるはずがなかった。

 

 彼らは、特にテスは相手が立てば自分も立つという様子がありありと見えた。かろうじて続いていた、はかばかしくない話題がとうとう途絶えた。

 

「ミスター黄、今回ミスター黄のお義姉様にとてもお世話になりました」

 

「なに、そのくらい当然だよ」

 

「私達の間柄が何でもなくても当然でしょうか?」

 

「どういう意味?」

 

「お義姉様はありがたい方ですけれど、センスがオーバーすぎるようです」

 

「ごめん。わかってるよ。今キョンアがそんな問題を考える時期じゃないということぐらい、僕もわかっている。だから僕も義姉に頼むから急がないでくれと言っても、なにしろ義姉は軽率で…」といいながら言葉尻を濁しながら、オクヒドさんの気配をちらっとうかがっては、

 

「義姉のことは謝る」

 

「この機会に私達の間をはっきりしておきたいんです」

 

「謝罪するということではなく。つまり、後生だから私達の問題は私達で解決する機会を別に持ちましょう」

 

 勿論、オクヒドさんを置いて話すことだった。オクヒドさんが吸ったタバコをもんで消しながら、中腰になった。

 

「座ってください」

 

 私ははっきり言いながら彼の袖を掴んだ。

 

「僕がいる場所ではないようで…」

 

「二人が一緒に必要なので私が用意した場所です」

 

 テスの顔が蒼白になった。

 

「ミスター黄、私達はただの知り合いとしてつきあう間柄に過ぎないことを、はっきり言っておくつもりです」

 

「わかっている。まだそうだということを」

 

「まだ?」

 

「そう〈まだ〉ね、僕達の間柄にそれだけの余裕はあると思っているけど」

 

「私達は表面的な知り合いで付き合う間柄に過ぎないでしょう」

 

「そんな宣言をするのに立会い人が必要なのかい?」

 

 彼はまだオクヒドさんの存在をなんとなく忌まわしく感じていた。

 

「必要だから来ていただいたのよ。オクヒド先生と私は愛し合っているからです」

 

 私は彼らが二人とも驚いたのを見て心苦しくて、しばらくとぼけていた。しかし、他人が言うようにだしぬけに言ったせいか、二人とも反応がなかった。

 

「冗談だろう? キョンア」

 

 テスが比較的泰然として言った。

 

「本当です。先生、そうでしょう? 本当だと言って下さい」

 

 私はオクヒドさんがしどろもどろに退けないように見つめながらたたみかけた。

 

 私がこんな場所を用意した意図は、ただ〈お姉様〉から解放されるという理由だけではなく、もう一つの理由、オクヒドさんに真正面でどんな問題ともぶつかるようにさせたかったからだ。

「先生、本当ですか?」

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