読書感想122 悪党たちは千里を走る
著者 貫井徳郎
生年 1968年
出身地 東京都
出版年月 2005年9月
出版社 (株)光文社
再出版社 (株)幻冬舎
幻冬舎文庫
感想
本書は、抱腹絶倒のユーモア・ミステリー。「真面目に生きても無駄だ」と悟った高杉は、高校の後輩の園部とカード詐欺で糊口を凌いでいた。消費者金融の自動契約機のそばで金に困っている人間を見つけては、その人のカードを買い、カード紛失の届けを三日後にと約束させて、その間に高い貴金属を限度いっぱいまで買い込むという手口だった。しかし園部が非番の警官に声をかけ、危うく捕まるところを逃げ出すという失態を犯してしまった。カード詐欺からの撤退を余儀なくされた二人は、徳川埋蔵金の詐欺を思いつく。金本という成金の豪邸に乗り込んだ二人は、古物商から買った小判を見せながら、徳川埋蔵金を発見したという話を持ちかける。しかし、そこには先着の美人同業者がいた。彼女、三上菜摘子は、成金の金本の前で二人の話の出鱈目ぶりをことごとく暴き、徳川埋蔵金詐欺は未遂に終わる。食べる物にも事欠く事態の中、ドジな園部は新しい詐欺計画を提案する。富豪の愛犬誘拐だ。高杉、園部、そして三上も加わって、誘拐計画を相談している最中に、犬の持ち主の息子、小学生の巧が訪ねてくる。
しがない詐欺師が悪党ではなく、人生の苦労人ぞろい。詐欺師の二人が友情で固く結ばれていて、利害で動かない。詐欺師たちが、少年少女探偵団のような趣で頑張っている。犯罪小説の持つ暗さがない。