ヤマトタケルの夢 

―三代目市川猿之助丈の創る世界との邂逅―
★歌舞伎・スーパー歌舞伎・その他の舞台★

新春浅草歌舞伎観劇報告2

2006-01-03 11:33:32 | 歌舞伎
踊りだけもう一度観たい!と思っていましたが、
(私が行かれる)今日明日とも三階は完売で、当日券も出さないそう。
昨日も、一階通路や後方など、置けるところには、
すべてパイプ椅子が出る大盛況でしたが
一日、40~50席を予定している当日券はすべて、
この一等補助席となるそうです。(3日現在、劇場に確認した段階では)

う~ん、こうなってみると、
やっぱり歌舞伎座の幕見というシステムは素晴らしい!

ロビーで、歌舞伎座をはじめ、パルコ歌舞伎、三越歌舞伎、
コクーンのチラシ等々を入手しましたが、
食指が動くのは歌舞伎座以外・・・
歌舞伎座には人間国宝、幹部役者の名前が連なっていますが
演目や出演の役者さんの名前を眺めているうちに
なにか、予定調和的な舞台が想像されて
(実際は、舞台はやっぱり生ものなので、ライブの空間は
想像上のものとは異なる、高揚感があるでしょうけれど)
記念の襲名興行だけれど、この先も観ないかも?
私には、その他のチラシの方が興味をそそられます。

今月は、松竹座&梅芸、マクベス遠征以外、
ほぼ観劇の時間は捻出出来ないと思うので、
国立も歌舞伎座も行かない(行けない)。
もし、時間が出来たとしたら、浅草再見に費やすでしょう(笑)

昨日の亀ちゃんの、お年玉ご挨拶でウケてしまったのが、
浅草のこのおめでたい初日のご挨拶で、
「この劇場は機構が不十分」というような事を、
キッパリ言い切ってしまったことですね。
浅草公会堂関係者の皆さんは、ギョッとされなかったか、
一瞬心配に(笑)なりました。
(ん?みんな大丈夫で、ギョッとしたのは私だけ?・笑)
亀ちゃんも、さすがに言い方が直截すぎた、と
瞬時に思われたのか(?)、その後、こういう仕掛けの多い舞台を
演るには、すっぽんもセリもないし、
具体的に、こうこうだからと説明していましたが。
筋書にも、そのような旨掲載されてはいますが、
これから、演じる役者さんが、肉声で観客を目の前に
コメントすると、ちょっとドス効き過ぎ!?なのでは~と
(私的には)どよめいてしまいました(~_~;A
でも後から反芻すると「らしいな~」と…

それは、別に公会堂に対して悪意のある発言とか批判では、
もちろん全然なくて、「事実」をそのまま述べただけなのですが、
日本人的(笑)心情を基準とすると、これから1ヶ月お世話になる
劇場について、イキナリ、不足発言!?って突っ込んでしまいました。
(この、あたりも猿之助さんとソックリ!!
悪意もないかわりに、おべっかも言わない。事実を正確&明確に述べる!)
プラス、そういう条件下で、これだけのモノを創りましたよ―!!
という自負も垣間見えて。

石川耕士補綴、藤間勘吉郎振付、金井俊一郎美術と
スーパー歌舞伎、猿之助奮闘公演並みの顔ぶれでの新演出です。
『浅草版:蜘蛛絲』初演!との口上。

鳴神でも、五段目・六段目でも、後見の仕事
或いは、同じ演者が、それとなくサポートする場面が
(たとえば勘平の髪を捌くとか)あるのですが、
この舞踊での、澤五郎さん、段之さんの仕事が一番
安心して見ることが出来ました(見慣れている、という事もありますが)
こうして、裏の手順を知っていて、
実際にすることが出来る人がいるうちに、
五十三驛や伊達十など、仕掛けの多いお芝居をどんどん継承して、
演じてもらいたいな~と思ったりもしました。

【追記】
「市川猿之助ファンの広場・翔」の過去のお便りのページ
以前の浅草での、亀ちゃんの「鳴神」と、
21世紀歌舞伎組巡業公演での「鳴神」の感想が寄せられています。
この時、亀ちゃんと笑也さんはご一緒に、芝翫さんに教わったそうです。

新春浅草歌舞伎観劇報告1

2006-01-03 00:16:52 | 歌舞伎
本日、新春浅草歌舞伎、一部二部観て参りました。
まずは、一番印象に残ったことなど。

【蜘蛛絲梓弦―くものいとあずさのゆみはり―】にかける
亀ちゃんの意気込み、創作過程が
kamejiro.netの亀たよりの中で語られているのを読み
非常に楽しみにしておりました。
ご挨拶でも「神出鬼没」をご堪能下さいとの事だったので。
が、幕が開いて大道具・舞台面を一瞥し、澤瀉ファン的には
思わず笑ってしまいました。(出没ポイントや仕掛けが常套で(~o~))
そして終演後、友人らにも観劇報告と共にその旨メールしたり…

今、帰宅して筋書の亀ちゃんのインタビューを見てみると、
「工夫自体は既存の作品のいいとこ取り」との発言あり。
あ、常套は織り込み済みだったのですね(^^ゞ
勝った気になって(?)すみませんでした、と自主ツッコミ^^;

では、演目順に感想など。

【鳴神】

亀ちゃんは動いている時も所作が美しいけれど
静止している姿も、本当に良いですね。
花道でアイビキに座っている間の居住いが端正で
目には見えぬガラスケースに収まっている日本人形のよう。
特に一部は三階から観ていたので。

花横とかだったら、また、僅かな息遣いや
もっとリアルな肉体の存在感を感じたのかもしれませんが…

しかし、たまにチラリと見える表情は怖かったです
策略と観察の眼差し…
いや、花道からの出端では、その使命感を帯びた
毅然とした出で立ちも良いのですが、
黒雲坊や白雲坊が「竜女か天人(天女?)か」と
その美貌を形容しているあたりでは、
意志とか意図を持たない(ように見える・見せる)
透明感を漂わせた方が、
知性と共にその美貌が十分駆使されることが
示唆されるように思います。

鳴神上人に迫られてくだける処は
もう、一息タメがあっても良かったような気もします。
仕方話のあたりなど、全体的にテンポ上げてる?

獅童さんの鳴神は、ちょっと最初から破戒入っている?
と思ってしまいました(~_~;)野性味(!)のある容姿が、
俗世と無縁に修行して来た人には見えなくて損かな?
絶間姫もだけど、鳴神上人も結構、やる事が沢山あるんですよねー。
正直、獅童さんは、段取りでいっぱいいっぱいという感じでした。
(ただ、その余裕のなさが、劇中の
絶間主導の展開に リンクしているかな?)

亀ちゃんの絶間姫は、以前の浅草、松竹座、今回と
すべて観ていますが、テクニックとしては最初から上手かったので
(という言い方もおこがましいのですが)
あとは、やっぱり色香かな~。破戒の重要ポイントですから(笑)
演者によっては、メチャクチャ、色っぽい場面になりますよね~
乳探り!のあたりとか…。
コミカルな面白さと、客席が、しーん(笑)としてしまうような
男女の駆け引き(いや、絶間の方が、男女の機微についてはうわて過ぎ
“駆け引き”にはなってないか^^;)
結構(お互い)あっさりしていましたね~。

【五段目・六段目】

一部・二部の間が30分で、連続で同じ演目を観るのは
結構、しんどかったです。
が、やっぱり同日に観た方が、勘太郎くんと七之助くんの
それぞれの、勘平・お軽が比較できて面白いかも。

ご一緒にお父様に習われたそうですが
(本日、勘三郎さん浅草公会堂にご来場でした。)
表出するものは、各々の個性で異なっておりました。

★勘平

七之助くんは、ずっと高テンションで、
観ている方も肩に力が入ってしまい、どっと疲れました~^^;
当然「気の抜けた」芝居を観るよりは全然良いのですが、
ずーっと張ったままなので、力んでいるようにも見えてしまう。
本来なら、芯になる役者さんが、正しくリズムを刻み全体を調和させる
コンダクターでもあると思うのですが
かなり独走してしまっている感もあり@六段目

その点、勘太郎くんには、ちゃんと「芝居の間」があって、
七之助くんより、7~8分上演時間も延びたのですが、
逆に疲れず見物できました。
それにしても、勘太郎くんの演技、表情の出し方、台詞廻しは
「勘三郎さん」なのでした。

個人的には、勘太郎くん勘平、七之助くんお軽の
組み合わせの方が良かったです。

★弥五郎

これは、亀鶴さんの方が視覚的にはまる。
亀ちゃんは、この五段目の拵え、線がより細く映ってしまって
役柄のイメージと、ちょっとアンバランスに見えてしまう。
台詞や体現するモノは悪くはないのですが、
後の与市兵衛内での男女蔵さんとの並びや芝居の運びなど、
亀鶴さんの方が映りが良い。

★定九郎

こちらは、見た目的には、獅童さんの方がニンでしょうか。
道具の使い方などに、不安定な部分がありましたが
獅童さんが、今回されているお役の中では、一番良かった。
亀鶴さんも、緊張されていたようですが。
出番的には短いけれど、場の空気を変える印象的な役ですものね~。

源佐衛門さんや芝喜松さん、門之助さんが
青年たち!だけでは成立しない芝居を助けていました。

【蜘蛛絲梓弦】

今日二部(2日)は、芯の亀ちゃん一点集中で観てしまったので
再度、三階の席から全体を見たいな~とも検討中。

幕が上がった時から、せわしなく?舞台面を目検(爆)
ほぼ「四の切」的な構造なので、容易く
いろいろな事が発見できます。(澤瀉ファン的には)
一応「新演出」なので、今回は、
仕掛けというか、出没ポイントのこれ以上の詳細は控えます~。

最初の童での出は、からくりの茶運人形のよう。
でも、その生命感の薄い感じの動きが、異形っぽさを醸し出していて妙。
次は薬売りになりますが、この出は、もっと
「替わりました―!!」をアピールして欲しい。猿之助さんみたいに。
「どうよ~!!」って感じで出てきて欲しいのですね。
「ここ(早替わり)眼目です」って客席にきっちり周知するために(笑)
薬箱を外すところが、ちょっともたもたしてしまったので残念。

この薬売りが引っ込んで、番頭新造八重里に替わって出てくるところは
シンプルな方法だけれど、スピードがあったのと、
男から女へ、かなり造形も異なる(この八重里は、それまでの
登場人物?より、かなり生身っぽく出てくる)ので目を引く。
そして、観客も、だんだん「早替り」そのものが分かってきて
盛り上がってきていた。このあたりから、次はどうなるの~?
と積極的に客席も期待する感じ?

次が座頭亀市(笑)
あっ、ちなみに冒頭の童は熨斗丸、でした。
(それぞれの衣装の文様も注目!)
(でも、新着と使い廻し@松竹衣装?の差が・・・^^;)
この座頭の出は・・・(爆)

ここまでは、坂田金時の七之助くん、碓井貞光の獅童さんとの
絡みなのですが、早替りの本人は涼しい顔しているにも関わらず
お二人とも額には光る汗…
亀治郎オン・ステージにお付き合いするのは、なかなか大変?

その後、傾城薄雲となって頼光(勘太郎くん)と絡みますが、
この傾城はなかなか色っぽかったです。おおっと思いましたね。
ホンモノ(?)の女性を演じるより、
こういう化生な女の方が色気が出るかも~。
半身になって下手を指すかたち、
―ふだんも、亀ちゃんの手の使い方ってホント綺麗ですが―
つくづく、指す手が美しいなぁ~と見惚れてしまいました。

(この傾城と蜘蛛の精の鬘、亀ちゃんの身体全体のバランスを
綺麗に見せていて、とても良く出来ている。)

亀ちゃんと勘太郎くんのツーショットは安心しますね。
芸質の根本のところが合うのかな?テクニック的にも。

そして、最後は女郎蜘蛛の精となりますが、
これが、結構大きく見えた。隈取もチマチマしちゃうかな?
と思っていたけれど(船弁慶の時、幼い感じだったので)
なかなかカッコよく出来ていて迫力でした。
ぶっ返りが、もうちょっとたったか出来れば、なお可♪

しかし、勘平をやる勘太郎くんが「勘三郎さん」なら
亀ちゃんはやっぱり「猿之助さん」
もう、100万回くらい言っているけれど(笑)
目の効かせ方、配り方、演技術etc.
(上記に紹介した亀たよりの舞台裏話の表現の仕方も)

そうそう、二部のお年玉ご挨拶は、亀ちゃんでしたが、
一部で結構携帯が鳴ってしまった為か、演目解説のあと
「では、みなさん、ちょっと携帯を取り出して頂けますか?」と依頼。
客席の人々がバックから携帯を取り出し、手に持ったのを見計らって
「電源が切れているかどうか、確認して下さい」と
単に注意を促すのではなく、物理的にきっちり確認作業をさせる、
といったあたりが、ツボでした。行き届いております(^_^)v

追記:「企画・制作日記」に、勘三郎さんや三津五郎さんの
ご指導があったこと、舞台稽古の画像などアップされています。

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