燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

ドラッグ1 連載 その85

2014-10-13 | 症例集

 今回から「精神疾患と誤診してはならない器質的疾患」の中から「薬物中毒」について考えていきましょう。 今回は症例を1つ。

 case:薬物中毒により妄想・幻覚・異常行動を起こした例

 患者:75歳、女性。 既往歴:高血圧、気管支喘息にて近医フォロー中。

 現病歴:3週間前より気管支喘息発作あり、かかりつけ医へ通院し、内服薬や吸入ステロイド薬を使用するも軽快せず。 飲食店を経営する知人へ相談し、喘息によく効く「薬草」を分けてもらい、これを煎じて服用を始めた。

 その数日後、妄想・幻覚・異常行動をきたしたため、かかりつけ医へ受診、「非定型精神病」の疑いにて当院へ紹介受診となる。

 身体所見:血圧190/90mmHg,心拍数140/分、呼吸数30/分、体温36,8度。 興奮・錯乱状態あり。 頸静脈圧は12cmH2O(右心房からの距離)、心音リズム整、S3+S4+あり。 両側肺野にてexpiratory wheeze,両側下肺野にてholo-inspiratory cracklesを聴取。 両下腿にslow pitting edemaを認めた。

 経過:救急室では高血圧性心不全の診断で、利尿薬と血管拡張薬を投与され総合内科入院となる。 入院後、詳細な病歴聴取に基づいて、内服していた「薬草」の成分を調べたところ、「麻黄」であることが判明。 これによる精神興奮作用による妄想・幻覚・異常行動と急激な血圧上昇による高血圧性心不全の最終診断となった。

 今回は以上です、次回から薬物について詳しく考えていきましょう。

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