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総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

循環器フィジカル 第5のバイタルサインとは何か?

2016-07-06 | 症例集

循環器フィジカル・第5のバイタルサインとは何か?

 

第5のバイタルサイン=静脈圧

 

低静脈圧型ショックは頻度が多く、私は「通常型ショックCommon Type Shock」とも呼んでいる。

通常型ショックの初期治療は迅速大量輸液。

 

逆に、高静脈圧型ショックは頻度が少ないので、私は「非通常型ショックUncommon Type Shock」とも呼んでいる。

初期治療はポンプ機能の改善(心原性ショック)または循環閉塞の解除(閉塞性ショック)。

このように、静脈圧はたいへん有用であり、私は「第5のバイタルサイン」とよんでいる。

 

静脈圧(内頸静脈圧)の推定

 

静脈圧の推定は中心静脈ラインを用いて行うこともできるが、身体所見で行うこともできる。

身体所見での静脈圧は一般的に、頸静脈圧jugular venous pressure (JVP)を測定することを意味する。

頸静脈には内頸静脈と外頸静脈があるが、静脈圧を正確に測定する場合には、上大静脈と直接直線的に接続している「内頸静脈」を用いる。

 

内頸静脈圧は右心房から内頸静脈の「拍動の頂点」までの垂直距離で表す。

内頸静脈は皮下を走行しているため肉眼で直視できない。

皮膚の拍動を確認することによって内頸静脈の拍動を診る。

内頸静脈の拍動は正常では2峰性の波形となる。

肉眼では、心臓の収縮期に合わせて、下降する急峻なX谷(正確にはX´谷)を認める。

心臓の拡張期に合わせて、穏やかに下降するY谷を認める。

三尖弁閉鎖不全症では、CV波結合により上昇するV波を収縮期に認める。

 

右心房から内頸静脈の「拍動の頂点」までの垂直距離は直接体表から測定することは困難であるため通常は、胸骨角から内頸静脈の「拍動の頂点」までの垂直距離をまず測定する。

 

体位(座位の角度)にかかわらず、胸骨角から右心房までの垂直距離は約5 cmであるので(身長の高低による差はあるが)、胸骨角から内頸静脈の「拍動の頂点」までの垂直距離を測定したあと5 cm加算し、中心静脈圧(CVP)とする。

例えば、胸骨角から内頸静脈の「拍動の頂点」までの垂直距離が2 cmであれば、中心静脈圧は2+5=7 cmH2Oとなる。

中心静脈圧の正常値は3.5~9.5 cmH2O(右心房より)である。

 

立位(坐位)で静脈圧が上昇しているかどうかを診る場合には、右の鎖骨上を観察して、静脈拍動を確認することから始めてもよい。

この体位では静脈圧が低下している場合には、立位(坐位)では静脈拍動を確認できない。

ただし、ショックバイタルのときには、脳血流が低下するので、坐位は禁忌である。

 

外頸静脈を用いた静脈圧の測定

 

外頸静脈の観察が容易な患者の場合、外頸静脈を用いた静脈圧の推定を行ってもよい。

ただその場合は正確度が落ちる。

外頸静脈は上大静脈に直通しておらず(2回の分岐でつながる)、静脈弁もあり、かつ内頸静脈より細いから。

 

手背静脈を用いた静脈圧の測定

 

内頸静脈と外頸静脈のいずれも観察が困難な場合には、手背静脈を利用してもよい。

まず、手背面を上部に向けたまま手を心臓の高さより低い位置に置く。

しばらくすると、手背静脈が怒張してくる。

手背面を上部に向けたまま、徐々に手の高さを上げていき、心臓の高さを超えて高くしていくと、急に手背静脈が虚脱するポイントに到達する。

そのポイントの高さから右心房までの垂直距離が中心静脈圧となる。

 

 

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