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循環器フィジカル ケース3

2016-06-30 | 症例集

循環器フィジカル・ケース3

 

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症例3

75 歳の男性

主訴:けいれん

来院前日からの突然発症の腹痛と気分不良にて,かかりつけのクリニックを受診

受診直後に突然,全身性けいれんをおこした

かかりつけ医では「頭部CT検査と腰椎穿刺が必要」と考え、救急車にて患者を病院へ搬送

病院へ来院時,上肢の脈拍は触知可能であるも、微弱にて血圧測定できず

身体所見

腹部の触診にて拍動性腫瘤が触れ、

両下肢の脈拍は触知不可

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ピットフォール

 

 かかりつけ医では「頭部CT検査と腰椎穿刺が必要」と考えたが、病院へ来院時,上肢の脈拍は触知可能であるも、微弱にて血圧測定できず。

いわゆる「ショックバイタル」であった。

 

その後の経過と解説

 

 この症例における初期対応での問題は,バイタルサインを測定していなかったことである。

 急性病態ではまず,バイタルサインの測定が必須である。

 「ショック」が原因で脳血流の低下により「2 次的に」意識障害・けいれんを生じている患者に対し,頭部CTの撮影などを優先させてはならない。

 「血圧低下+脳血流低下徴候」の患者においては,「ショック」に対する診断的評価を優先的に行うべきである。

 頭部CT撮影などを優先させてもたついていると,最悪の場合には,CT室で心肺停止をきたすおそれもあります。

 比喩として、「CT=Tunnel of Death」ともいわれている。狭いCT室の空間では緊急対応が十分できないため,患者の生命予後は不良となる恐れがある。

 

 この症例のような心臓血管系の急性病態では,急性大動脈解離と大動脈瘤破裂を見逃さないことが重要。

 そのためには血圧と脈拍の対称性symmetryを確認する。

 すなわち、「対称性の破れ」がないかどうか、四肢の脈拍を触知する。

 心臓血管系の急性病態で両下肢の脈拍が減弱したり、上肢の片方の脈拍が減弱したりしている場合には、急性大動脈解離と大動脈瘤破裂を疑う。

 「対称性の破れ」とは、量子力学の用語であり、素粒子レベルでは「対称性の破れ」があるため、宇宙が創生されたとのことですから、重要な概念である。

 

 この症例ではまず、ショックバイタルに対する初期対応として18ゲージで2本の末梢静脈ラインを確保急速輸液が開始されたベッドサイドエコーにてすみやかに「腹部大動脈瘤破裂」が診断され、手術室へ直行となった。

 もちろん、頭部CT検査と腰椎穿刺は行われなかった。

 

最終診断:腹部大動脈瘤破裂

 

 

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