燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

循環器フィジカル ケース4

2016-07-02 | 症例集

循環器フィジカル・ケース4

 

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症例4:

65歳女性〔主訴〕左半身の脱力と構音障害

数年前より高血圧を指摘されるも治療せず放置。今回、買い物中に突然、左半身脱力を自覚し、救急車にて来院。救命士によると、左半身運動麻痺と構音障害あり、とのこと。

バイタルサイン:血圧 90/60 mmHg、脈90 /分、呼吸 18/分、体温 36.3度。

身体所見上、顔面を含む左半身筋力低下があり、緊急で撮影されたCT所見と合わせて、右大脳半球領域における急性期脳梗塞との診断。

担当医は、脳外科オンコールに相談して緊急血栓溶解療法の準備を開始。しかしながら、指導医により、四肢の脈拍の触診と上肢の血圧の左右差がチェックされた。以下がその結果。

右橈骨動脈脈拍弱い:右上腕血圧 90/60 mmHg

左橈骨動脈脈拍強い:左上腕血圧 170/100 mmHg

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ピットフォール

 

「脳梗塞のみにショックなし!」というクリニカル・パールがある。

このような患者では、脳梗塞以外の他の要因も考慮。

脳梗塞急性期患者では、血圧が140/90以上となる場合がほとんど。

それ未満であれば、むしろ他の疾患の合併も考えるべき。

 

心臓血管系の急性病態では、「対称性の破れ」がないかどうか、四肢の脈拍を触知する。

脳梗塞患者は全例で血圧の左右差をチェックすべき。

急性大動脈解離が原因となって脳梗塞をきたすことがある。

 

その後の経過と解説

 

再度、詳しい問診によって、脱力感を自覚する前に激しい背部痛もあったことが判明。

さっそく、胸部造影CTで、急性大動脈解離(スタンフォードA型)と診断され、緊急で手術が施行された。

 

 

最終診断:急性大動脈解離:スタンフォードA型(上行大動脈より解離)

 

 

日本の高価値医療 High Value Care in Japan (ジェネラリスト教育コンソーシアム)
徳田安春
株式会社尾島医学教育研究所

 

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