ふぇみにすとの雑感

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全米女性学会パネル報告

2007-07-04 01:19:09 | フェミニズム
すでに斉藤正美さん、macskaさんが報告しているが、全米女性学会の土曜日の朝8時から、日本のフェミニズムに対するバックラッシュについてのパネルを行った。ディスカッサントはノーマ・フィールドさん。

時間が悪すぎることから、客は少ないことを予測していったのだが、そのわりには案外集まってくれて、15人ほどの聴衆だった。そのうち、おそらく日本についてよく知っていると思われるのは3人ほどだったと思う。それでも、アメリカにおけるフェミニズムの状況と重なる点も多いのか、興味をもって聞いてくれた感じが伝わってきたのは嬉しかった。

私の発表は、『バックラッシュ!』本に寄稿した「ジェンダーフリー」に関する論文に、その後の展開を少しだけプラスした内容だった。とはいっても、この学会のパネル時間は一時間15分しかなく、一人あたりの発表時間は15分。この中ではほとんど「ジェンダーフリー」問題の起源と歴史を語るのに時間をとられ、あまり多くを語ることができなかったのが残念だったが、とりあえず『バックラッシュ!』掲載の、バーバラ・ヒューストンさんとジェーン・マーティンさんのインタビューは、ブログや学者以外によるマスメディアでのレビューなどでは注目されているのに、学者たちが沈黙を守っていることは指摘した。「ジェンダーフリー」関連本もいくつか出版された、この一年間の動きも含め、後で文章にまとめ直したいと思っている。

macskaさんも言っているように、白人学者のほうが日本のフェミニストたちの言うことよりオーソリティをもつというのはおかしなことで、私の場合もヒューストンさんらとのインタビューを行うことにより、そういう傾向を増大する危険性はあるかもしれない。また、私自身、在米のフェミニストでもある。だが、ヒューストンや、マネー、ダイアモンドらの権威を使ってしまった(しかもとくにヒューストンの場合、解釈を間違えながら)のは日本のフェミニストでもあり、とくに「ジェンダーフリー」概念の場合は、東京女性財団と、フェミニストですらない学者たちでもあった。それへの批判的視点がないままに、フェミニストたちがその流れに乗り、突っ走ってしまったことは、やはり反省的かつ批判的に検証していくべきことだと思う。

私の後に、斉藤正美さんが、富山市の給食で男子生徒と女子生徒でパンのサイズが違っていたという事例について、「ジェンダーフリー」という概念や、東京の女性学主導型の運動への疑問を提示する発表をされた。そして、最後に小山エミさんの『ブレンダと呼ばれた少年』をめぐる保守派との攻防に関する発表。斉藤さんと小山さんのご発表については、ご本人たちのブログに掲載されている。とくに斉藤さんのご発表は新しい内容なので、そのうち詳細なご報告をアップしてくださる予定とのこと。その後に、ノーマ・フィールドさんによるコメントがあった。(ご本人の承諾がとれたら、これも後日アップしたいと思っている。)

パネル全体として、日本におけるバックラッシュというテーマの他に、「海外(とくに欧米)」のコンセプトや権威というものがどのように導入され、誤解され、利用され、広がって行ったか、ということも、すべての発表に共通するテーマになっていた。私の発表は「ジェンダーフリー」や「男女共同参画」、それへの「バックラッシュ」の大枠を説明する機能を果たし、それらが地方においてどのように機能を果たしたかという斉藤さんの発表や、『ブレンダと呼ばれた少年』という一冊の本をめぐった、バックラッシュとフェミニズムの攻防と、白人男性オーソリティの利用に関する小山さんの発表にうまくつながったと思う。結果として、まとまりのあるパネルができた。

欲をいえば、もうちょっと時間があれば、質疑応答を含めた議論ももっと盛り上がったのではないかと思う。一時間15分から、せめて一時間半に持ち時間延ばしてくれたらいいのに。

他のパネルもいくつか覗いてみたが、場所が悪いからか何なのか、予定された発表者がきていないパネルがかなり目立っていた。全員が来ないケースはさすがになくても、1~2人がいないケースはボロボロあった。思いのほか会場が遠すぎて間に合わなかったのか、それとも単に来れなくなったひとが多いのかはわからないが、、。

ひとつ、平等教育に関するハンドブックを作成したのでそれについて報告する、というパネルがあったので、斉藤さんと行ってみた。まずパネルが始まる前に、ハンドブックをぱらぱら見せてもらい、目次を確認。ハンドブックは電話帳のように分厚く、だいぶ高いもののようだったが、マイノリティやグローバルフェミニズムの視点を重要視なんて書いてあるわりには、「マイノリティ章」みたいなのが別個におかれていて、なんだかなーという気もしたし、発表しようとしている方々が、いかにも「アメリカ版ジェンダーフリー派フェミニスト!」という雰囲気の白人女性たちだった。本の宣伝はたくさんしてくれそうだが、刺激的なパネルという予感はしなくて、結局セッションが始まる前に出てきてしまった。(今から考えれば出ればよかったかな。。)いづれにせよ、今後、日本のジェンダーがらみの教育学の中で、ヒューストン論文が掲載された、Education Feminism Readerと同様に、紹介されたり、珍重されたりする可能性もある本かもしれず、動向は見守っていこうと思う。このパネルのかわりに行ったのが、大学の女性学の教室にどのように「運動」を導入するかの実践報告のパネル。これは実際に参考になる事例もあり、まあまあ面白かった。先ほどのハンドブックのパネルと同様、教育関係の内容なのだが、なぜかこちらは若い世代の発表者だった。

マスコミ学会ー女性学会と続いた夏の学会シーズン(?)もこれで終了。両方とも、充実したパネルができてよかった。

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