ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

マルチイシューを掲げたウィメンズマーチ

2017-02-03 13:09:00 | アメリカ政治・社会
すでにウィメンズマーチから約二週間が経った。その間に、先週金曜日、ムスリムの多い7カ国からの難民や移民、旅行者らの排除という大統領令がなされるなどの展開。日に日にものすごい勢いで状況が悪化していく気がするアメリカの現状である。
現段階では対象7カ国だが、その7カ国出身者だと永住権保持者でも入国できないケースがあるというニュースがあり、私自身も永住権でこの国にいるので他人事ではない。いつ、何時対象国が拡大するかもしれないし、いきなり何をし出すのか読めないのもトランプ政権の特徴である。かつ、9.11直後は、留学生ビザ保持者、特にアジア系に対して、非常に移民局や警察が厳しくなったのを覚えているため、いつ何時、自分に影響してくるかもしれなかった。しかしそれでも私はまだ、今すぐ危機というわけではない。その該当する7カ国出身者はどれだけ大変なことだろう....胸が痛むし、この現状をなんとかするために、できることはやっていかねばと思う。

前回のエントリで写真だけ掲載したウィメンズマーチだが、そのあとに発行された『週刊金曜日』に、このブログに掲載していなかった写真を提供したので、そちらも掲載しておく。



私が行ったモンタナ州ヘレナのマーチも一万人参加と、予想を大きく上回る参加者となったし、全米でも、史上最大の抗議行動となったと報道された。多くの開催地で、予想以上の人々が参加したようだった。

私は、ャXター(プラカード)作りのセッションも少しだけ参加して、その際に自分のャXターを作った。そこで言われたのは、モンタナ州イベントのオーガナイザーは、できるだけャWティブなメッセージのャXターがいいと言っているとのこと。そのカード作りのセッションで、ピンクの猫耳プッシーハットを、マーチ主催者に寄付したら作ってくれるという人がいたので、お願いして、当日、フリースのプッシーハットをかぶった。

ャXター書きの注意


出来上がった私のャXターは右側のもの。


たぶんモンタナじゃなかったら、この文面にはしなかったかもしれない。でも、モンタナでのウィメンズマーチ、おそらくアジア系参加者は非常に少ないだろうと思ったのだ。多分大部分が白人、あと、ネイティブアメリカンやラティーナはそれなりにいるのかもしれない。でもアジア系はたぶんすくない。だからこそアジア系をうち出そうかと思った。マーチの間や、集会の間、これを首にかけて歩いていたら、結構な数の人たちにいいねと声をかけられて、写真を撮りたいと言われたりもした。

ャXター作りの間に、市民団体代表のアフリカンアメリカンの人が、「ぜひBlack Lives MatterのャXターも作ってね」と呼びかけていた。アフリカ系アメリカ人もおそらく少ないことが予測される。その中で、別にその人がアフリカンアメリカンではなくとも、Black Lives MatterのャXターを掲げることは重要な意味を持つから、と。

実際のマーチでも、白人でBlack Lives MatterのャXターを掲げている人を何人か見かけたし、スタンディングロックについてのャXターを掲げている人たちもいた。

他も、ムスリム排除するなとか、壁を作るなとか、あるいはLGBTQのイシューとか、様々なメッセージのプラカードが掲げられていたマーチだった。9割が白人で、しかも保守的な土地のモンタナにもかかわらず、しかも「ウィメンズマーチ」という名称にもかかわらず、掲げられていたメッセージは「女性」に限定されたものではなかった。もちろん、危機的な状況にある、女性の性と生殖に関する権利だとか、あるいはプランドペアレントフッドを守れとか、性暴力反対だとかのメッセージもあり、それも重要だった。だが、このマーチの強みは、「インターセクショナリティ」、(多層的にさまざまな差別が絡み合っているという考え方、と言えばいいか)これを非常に意識的に強く前提としたものだったことにあると思う。「ウィメンズマーチ」という名称だったが、実際に起きたことは、徹底してマルチイシューを掲げ、インターセクショナリティを強く意識した行動だった。これだけ白人の多いモンタナでもそうだったのだから、ほかのもっと多様な街であればなおさらだったのではないか。だからこそ、これだけたくさんの人たちが集まったのだと思う。

もともと、大統領選挙の時から、白人フェミニストとマイノリティフェミニストの間でテンションはあったし、そんな中での選挙結果が、94%の黒人女性がクリントンに投票したのに対し、白人女性の過半数以上がトランプに投票していたことで、マイノリティ女性からの白人女性への視線はどうしても厳しいものになっていたと思う。Pantsuit NationというFBのグループでも、マイノリティ女性の声が聞こえなくなることへの懸念が示され議論になったりもしていたし、最初は私もこのマーチは白人女性たちが始めたんだなあと思って正直ちょっと冷めていたところもあった。でも、だんだんイベント準備が進んでいく中で、マイノリティ女性らも参加していることもわかったし、実際、モンタナでのプログラムも、ネイティブアメリカンやアフリカンアメリカンなど、マイノリティ女性らが多数、壇上に上がってスピーカーになっていた。とくにモンタナという土地柄、ネイティブアメリカンをすごく意識した集会になっていたと思う。

このマーチから私は、マルチイシューを掲げた運動の可能性を感じた。ついつい、マルチイシューを掲げた運動は一昔前の、、みたいに思いがちだったが、そんなことはなかった。インターセクショナリティを意識しまくって、マルチイシューを掲げたからこその、この結果だったのではと少なくともモンタナのイベントからは感じた。そして、現状は厳しいが、この動きはどんどん広げて、続けていかないといけないのだと思っている。