ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

白人至上主義団体の出没が引き起す「恐れ」

2009-12-19 22:35:00 | 坊主マン
10月のはじめ頃の日曜日、坊主マンの裁判所の前をクルマで通りかかったところ、ネオナチかKKKか、という怪しい雰囲気の人たちのグループが、デモンストレーションをしていた。クルマだったのであまり注意を払えなかったのだが、顔には覆面をしている人たちが多く、もっていた旗がいかにもネオナチとかKKKを彷彿とさせる雰囲気で怪しかった。保守的な坊主マンで、ウヨク団体が頑張っちゃってるのかなあと思ったりしたのだが、、

翌日の地元紙Bozeman Daily Chronicleの記事に、このデモのことが載っていた。そして、雰囲気そのままで、これが白人至上主義団体だったということがわかった。また、このサイトに、デモの様子の写真が掲載されている。なんとなく雰囲気はわかると思う。

このグループは、Montana Creativity Movementという白人至上主義団体だった。デモの翌日、学校にいってみると、学生たちも話題にしていた。「昨日のデモみた?」「みたみた、何あれ?」「え、知らない。何のこと?」「なんか白人至上主義団体らしいよ」「先日から、ビラとか配ったりしているらしい」「街のあちこちに落書きもされているようだ」「政治的にリベラルな内容のバンパーステッカーを貼ってあるクルマのタイヤがパンクされたりという事件が起きている」などなどの会話が。

普段、地元紙はたいしたニュースがないためとっていないのだが、ネットで地元紙サイトを検索してみたら、8月くらいから、この白人至上主義団体のビラが配られていたという記事があった。私がたまたまそのビラをみていなかっただけで、けっこう広範囲に配布されていらしい。大学の寮でも配布されていたということだ。

記事によれば、そのビラには、以下のような文句が書かれているという。

The fliers, including one that calls for a “white revolution” because “the white race has been targeted for death,” are from the Creativity Movement, an Illinois-based group that believes “the white race is the finest and noblest creation of nature.”

要するに、「白人は殺戮のターゲットになっており、そのため白人革命が必要である。白人という人種は自然がつくりだした、最も素晴らしく、高貴なものなのだ」みたいなことだ。

この団体、ウェブサイトもあると学生から聞いたので、早速みてみたのだが、昨今の白人至上主義団体にしても珍しいというような、あまりにトンでもないことがたくさん書いてある。世間への広いアピールなんてまったく考えてないとしか思えない内容だ。

サイトのURLはwww.montanacreators.webs.comだったのだが、笑っちゃうことに、無料スペースを使っていて、規約違反とされたようで、ページが数週間前からなくなってしまっている。つい最近までキャッシュは見れたのだが、もうダメになったかも。
サイトには、盛大にメンバーの覆面状態写真が載っていたりして、その内容のあまりのとんでもなさとともに、かなりすごいことになっていた。
だが、この団体の本部サイトはまだ健在なので、主張をみてみたい方は、ぜひ本部サイトへ(笑)

もとはといえば、イリノイの団体のようだが、ビリングス、カリスペルなどモンタナでもいくつかの都市で、今年のはじめあたりから活動を活発化させていたようだ。そして、ついに坊主マンにきた、ということのようだった。

ちょうどよいタイミングで、人類学の授業のほうで「人種」がテーマになる週がきたので、授業のほとんどをこの白人至上主義団体のディスカッションにあててみた。(いくつか、私のクラスのほかにも、このテーマで議論をした授業があったらしい。)人類学の授業を選んでとっている学生ということで、こういう多様性に関わる問題で典型的な学生とは言いがたいかもしれず、もちろん明らかにマイノリティである私が教えている授業で、この団体主張を支持するようなコメントが言えないという事情もあった可能性もあるが、それでもさすがに、いくら保守的なモンタナとはいえ、この団体に関しては誰もが批判的だし、主張も最悪にとんでもない、というコメントだらけ。さすがにこの団体の主張はあまりに強烈すぎて受け入れられないらしい。「白人至上主義」ではあるが、ネオナチ的な価値観もあるので、ユダヤ系も滅亡すべし、みたいな主張だし、白人女性は白人男性を喜ばせ、子どもをつくるために存在しているというような記述もあることから、女子学生も怒っていた。もちろん、少ないとはいえ、マイノリティの学生もいるわけだ。

そして、モンタナなので、自分を「保守」であると自認する学生もけっこういたりする。でも、その場合でも、「こういう人たちがでてくると、ただでさえ今、苦しい状況にある保守のイメージがますます落ちてしまいかねず、迷惑だ」というような反応があった。

でも、「この主張は地元でアピールをもちうるのか」と聞いてみたら、、「高校生とかの若い子たちにはアピールもってしまいそう」「だから浮「」というような反応がけっこうあって、それに同意していた学生が多かったように思う。とくにモンタナ出身の学生たち。「生まれてこのかた、マイノリティなんて見たこともないという環境に育つ人はモンタナの田舎にはけっこういる」「あまり知識がない若者なら、こういう主張にだまされ、惹かれてしまうかも、、」という。とくにモンタナ北部のカリスペルのほうは、白人至上主義活動が盛んだった、という発言もあった。高校で、白人至上主義の歌を歌うバンドを組んでいたクラスメイトもいたとかいう学生も。

確かに、2006年の記事に、白人至上主義がまたモンタナで盛んになっている、と報道されていた。そして、2005年には、白人至上主義者が、坊主マンの教育委員会の選挙に立候補したということもあった。この候補者は、National Allianceという、今回話題になっているMontana Creativity Movementとは別団体から出てきたらしいが、主張は「白人だけの社会をつくり、ほかの人種やユダヤ人を排除すること」と、ほぼ同じようなものだ。結果、もちろん落選したものの、157票(全体の3.6%)とったという。157人も彼の主張に同意した人たちがいたと考えるとちょっと浮「。

Montana Creativity Movementがデモをしてから、政治的にそうアクティブだったとは言いがたい、私の大学の学生たちが動き始めた。今まで、ネイティブアメリカン以外のマイノリティ学生の動きというのがあまりに見えず、埋もれてしまっていたのだが、ここであっという間にグループを立ち上げ、ほかの団体と組んで11月1日には100人規模のデモを行うなど、アクティブに活動してきている。この素早さと行動力はすごかった。

その学生団体 We Are The Dreamの紹介記事。写真にうつっている中には、数名私の学部の学生さんが。

デモの記事。私は残念ながらこの日行かれなかったんだよなあ。
Hundreds gather in Bozeman to advocate tolerance

こういう、市民の動きがあり、白人至上主義団体の動きに関する報道が最近なくなっていたし、白人至上主義側のデモがあったということも10月以降聞かないし、動きが収束しつつあるのかなと思ったが、、甘かった。まだ、嫌がらせのビラをまいたり、落書きをするなどの活動は続けていた。そして、水曜の地元紙の記事に、韓国レストランのオーナーである韓国系女性のクルマに、白人至上主義の内容の落書きがされてあったというのだ。しかも、これが2回目だという。

同じく水曜の記事で、地元コミュニティはターゲットにされた韓国系女性および彼女のレストランへのサメ[トが広がっている、と書かれている。しかしこの記事のコメント欄をみると、最初はサメ[トのコメントばかりだが、途中から「ヘイトクライムというけれど、ウソをいっているに違いない」というようなャXトがいくつかでてきている。これが白人至上主義者によるものかどうかわからないが、「人種」問題に関して、このコミュニティが実はやっぱり割れている、ということのひとつの表れなのかもしれない。

いづれにせよ、私自身も含め、この白人至上主義運動のターゲットでもある「人種」的マイノリティ、およびユダヤ系の人たちにとっては、普段の生活レベルでは明らかな影響はでていないとはいえ、恐れの感情を引き起こしたり、安全ではないという雰囲気を醸し出すという影響力があり、看過はできない。そして、恐れの感情を引き起こすことこそを狙っているようにも思われる。(ミステリアスにみえる白人至上主義者たちの覆面姿などが、より恐れを引き起す要素でもある。)とくに、この団体の場合、アフリカ系アメリカ人とユダヤ系にこだわっている様が、ウェブサイトなどからは見受けられる。しかし韓国系の女性も明らかにターゲットになっているところからして、アジア系だろうが、ラティーノだろうが、そしてモンタナで最大のマイノリティであるネイティブアメリカンだろうが、同じことなのだろう。
アフリカ系アメリカ人の大学生が、この白人至上主義運動が顕在化したことで、大学をやめてしまおうとしたという話しもきいた。
もちろん、こんなどうしようもない動きは恐れずに、反対運動をバリバリすべきでもあるのだが、それでも、とくにターゲットになっているマイノリティ当事者として「恐れ」の感情を抱いてしまうというのは、どうしようもないことでもある。とくに弱い立場にあるマイノリティであればあるほど(例えば不法滞在状態にある移民などは警察の助けもあおげないし、合法でも外国人であれば、アメリカ人よりは立場が弱いだろう)影響を受けてしまうことでもある。


しかし、この白人至上主義団体の動き、日本で今起きている在特会がらみの動きと共通するものを感じる。
東京新聞記事 「朝鮮学校で「スパイの子」 “抗議行動”を告訴へ」
しかもこの場合、ターゲットは子どもだ(もちろん、子どもじゃなくてもとんでもないわけだが)。さぞかし浮ゥったことだろう。そして、直接ターゲットにされた子どもたちは当然ながら、在日の人たちは皆、底知れない恐れのようなものを感じているのではないか、と、私の住むコミュニティで現在起きていることからも、なおさら感じる。こういう動きが人々に引きおこす、日々の生活を送る上での恐賦エというのは、本当に看過できない大きな影響を及ぼすと思う。

今後坊主マンでの白人至上主義運動と、それへの抗議運動の展開がどうなっていくのか、このブログでもレメ[トしていきたいと思う。(本当はもっと早くレメ[トしたかったのだが、最近忙しかったのですっかり遅くなってしまった。)

追記:この団体の新たなサイトが作られていたのを発見。このサイトで目立っているRAHOWAというのは、この団体用語でRacial Holy Warの略だそうで、"We gird for total war against the jews and the rest of the goddamned mud races of the world -- politically, militantly, financially, morally and religiously." 「ユダヤ人およびそのほかのすべての"goddammed mud races"(忌まわしい呪われた人種、忌まわしい無価値な人種、みたいな感じか。要するに白人以外のすべてといいたようだ)に対して、政治的、軍事的、経済的、道徳的、宗教的な全面戦争を起こす覚悟を決めている」と宣言している。モンタナ支部サイトにもこのことは盛大に書いてあった。(同じ文章だろう。)
現在のところ、モンタナ支部へのリンクはアメリカ本部サイトになっているが、そのうち再開するのかもしれない?