ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

グレンダイブの創造論恐竜博物館に行ってきた

2017-05-16 00:46:00 | アメリカ政治・社会
大学が休みに入り、モンタナ州とノースダコタ州の州境に近い街、グレンダイブに週末に行ってきた。
坊主マンから車で制限速度80マイルのフリーウェイを飛ばすこと5時間。ロッキー山脈地帯ど真ん中で風光明媚なモンタナ州西部に比べ、荒涼とした景色が広がる地域だ。Middle of Nowhere、要するに何もない中にある街でもある。

なぜこの街に出かけたかというと、ここに、坊主マンのMuseum of the Rockiesに次ぎ、州内で二番目の規模の恐竜博物館Glendive Dinosaur & Fossil Museumがあるからだ。しかも、この博物館は普通の博物館と違い、創造論(Creationism)に基づいて展示されている博物館なのだ。恐竜と創造論がどう展示されているのか、一度行ってみたいと思いつつ、遠くてなかなか行く機会がなかった。しかも夏しか開いていないので、学期中は行くのが難しいのだ。

博物館はこんな外観。外から見る限りは、創造論の博物館とはわからない。


しかし一歩中に入って受付エリア。すぐに「はじめに神は天と地とを創生された」という聖書、創世記の一節が目に入る。


博物館訪問者のための説明文が壁に。


この辺りで、見るだけで創造論の博物館だということはわかるようになっている。受付の親切なおじさんからもその趣獅フ説明があった。写真撮影は自由だから、と言われた。

展示はいわゆる「カンブリア期」で、海のなかの生物の化石から始まる。なぜ海から?と思ったが、のちに非常にこれがこの博物館にとって重要だったことがわかった。



親切な博物館のスタッフ(おそらくボランティアだと思われる)の高齢の人たちが話しかけてきてくれて、いろいろ説明をしてくれる。これだけスタッフが親切にあちらから歩み寄ってきていろいろ説明してくれる博物館は珍しい。壁の絵や、恐竜などの模型を作った人たちの名前を言って、とても才能がある人たちですごいんだと話していた。どうやら皆知り合いなのかなという印象でもある。

結構大きな展示がある。子どもも喜びそうだ。



スタッフが一生懸命説明してくれたのが、この魚を食べて飲み込んだ状態で死んで化石になったと思われる魚の展示。こんなに同時に化石になるというのは、洪水で化石になったという証拠だとか言われたが、なんだかよく意味がわからず。。しかし、このあとの説明でも全て「洪水」(すなわちノアの洪水)は大変に重要な役割を果たし続けていた。海、超重要らしい。


海コーナーが続き、創造論の色が前面に出てきた。アンモナイトがこんなに素晴らしいデザインなのは、デザイナーもしくは創造主の存在があるからだ、という説明。


恐竜登場。結構大きくて立派な展示なのだが、恐竜がいるのと同じ場に何気なくいる現代のチーターだか豹風動物(写真だとわかりづらいかもしれないが写っている)。このように、恐竜と現代型哺乳類が同じ場所に登場する展示が多い。


チーター風動物拡大。


シカもいますよ。


恐竜とともに落ちてるバイソンの頭の骨。


これが聖書に書かれている恐竜Behemothだ!という説明とともに置かれる化石。


「人間と恐竜」展示コーナーもある。この博物館によれば、人間と恐竜は共存していたらしい。だからBehemothも聖書に書いてあるのだという。

証拠として展示される足跡。恐竜の足跡のあとに人間の足跡もついているのだから、恐竜を人間が追いかけてハンティングしていたのかもしれない、という説明が。そ、そうだったのか!?


もう一つの証拠として展示される、恐竜風デザインのアートや器ものなど。


そしてやってきた洪水&ノアの箱舟コーナー。
巨大なノアの箱舟と、共存する恐竜や人類の模型。




展示見たときはてっきり恐竜は箱舟に載せてもらえずこのとき絶滅したというストーリーかと思ったが、あとで写真をよくよく見てみると、この展示説明だと、洪水の後、洞窟で人類は生活するようになり、そこで恐竜と共存していたために恐竜風壁画を書いた、ということらしい。恐竜も箱舟に乗せてもらえたということか。


洪水の模型。地球全体を覆い尽くす大変な洪水だったと説明されている。洪水再現模型の上には、地球を覆い尽くしている様を再現する地球儀風の模型も。地球は平らではなく丸いという前提のようだ。


そして登場する人類と進化関係コーナー。進化など人類はしない、サルはサル、人間は人間として神様が作ったのであって、進化論がいかに間違っているのかの説明がある。最近発掘されて見つかったものとかはスルーされ、だいぶ古いものに基づいているようだ。なぜかアフリカで見つかったホモエレクタスはスルーされ、ジャワ原人と北京原人だけが扱われており、現代の人間とは無関係と説明されていたりもする。


アウストラロピテクス・アファレンシスの「ルーシー」は人間とは関係ない!サルはサルだという展示。


他にも、細胞とかDNAは何らかの創造主のデザインと考えないと説明できない、とし、いかに進化論を唱える科学者らが間違っているかとか、言ってることがコロコロ変わっているとかいうメッセージがこれでもか、これでもかと出てくる。

そして、地球は実はそんなに古くないのだ!という展示。この博物館によれば太陽も地球もできてから6000年しか経っていないらしい。


なので、年表で扱われる期間も短く、恐竜博物館であるにもかかわらず、紀元前2000年から始まっている。


というわけで、かなり強烈な内容の展示がある博物館なのだが、この博物館では一人100ドル払うと参加できる近隣での発掘作業ツアーも行っている。グレンダイブという地域が恐竜の化石がかなり発見されるということもあり、そうして素人に一般人が発掘に参加し、掘ったものがまた展示されているわけで、参加した人たちにとっては博物館への愛着も沸くんだろうなとは思う。
なので、博物館内には、発掘はどんな感じで行われるかの展示とか、発掘されたものを持ってくるラボの様子もガラス越しに見られるようになっている。「発掘ツアーをやっている」というのは、滞在時間の間、博物館スタッフ数人から言われた。



博物館内で上映していた映画は子どもも飽きないよう、一本あたりがかなり短く作られておりうまくできていたのだが、その中でも発掘ツアーの様子が紹介されていた。一般の市民も発掘とか博物館に親しめる状況を作り出しており、ボランティアスタッフの人たちの熱心な説明ぶりと、にじみ出る博物館への愛着からそれはかなり感じた。展示内容には同意しなくても、そのこと自体は悪いことではなく、むしろ博物館のあり方としてはいいものなのかもしれない。

だが、一緒に行った友人が自然人類学を専門としており発掘現場にも詳しいのだが、その友人と話していて、洪水で全てが化石化とかいう解釈で、しかも地球ができて6000年と信じる中で化石を発掘されると、おそらく時代情報とかがどうでもいいものになったり、それを知るのに重要なコンテクスト情報も発掘作業の中で丁寧に扱われない可能性も高く、せっかく見つけた化石の意味もなくなってしまったりはしないかと危惧を感じた。恐竜化石が多い地域だから大丈夫なのかもしれないが、もしも見つけた恐竜の化石が重要なものだったとしたら、それは100ドル払ってツアーに参加した素人が扱っていいようなものなのだろうか?

この博物館は、3月から5月半ばまでは金、土曜のみの開館で、その後夏の間は火ー土の開館、そして冬の間は閉館している。年間何人くらいビジターがいるのかと博物館の人に聞いてみたら、9000人とのことだった。実質夏の間だけで9000人というのは、近隣の人口も少なく、最寄りの商業空港も3時間離れており異様に行きづらい場所にある博物館にしては、結構多いのではないかと思った。

今回行ったのはグレンダイブの博物館で、ここは現在、実は政治的に重要な意味も持っている。モンタナ州では今月、下院の補選があるのだが、その共和党の候補である、Greg Gianforteがこの創造論の博物館に多額の寄付をしているからだ。T-Rexの大きな化石はジアンフォルテの寄付によるものらしい。要するにジアンフォルテはこの博物館の考え方、すなわち創造論に賛同する立場だろうと想定できる。

そして、このような創造論博物館は、全米にいくつもあり、特にケンタッキー州にあるCreation Museumはかなり有名らしい。ケンタッキーの博物館がオープンしたのは2007年、そしてモンタナ州グレンダイブの博物館のオープンは2009年。いづれもこの10年ほどの動きだ。今後もこうした博物館建設が広がっていくのかどうか、気になるところだ。


マルチイシューを掲げたウィメンズマーチ

2017-02-03 13:09:00 | アメリカ政治・社会
すでにウィメンズマーチから約二週間が経った。その間に、先週金曜日、ムスリムの多い7カ国からの難民や移民、旅行者らの排除という大統領令がなされるなどの展開。日に日にものすごい勢いで状況が悪化していく気がするアメリカの現状である。
現段階では対象7カ国だが、その7カ国出身者だと永住権保持者でも入国できないケースがあるというニュースがあり、私自身も永住権でこの国にいるので他人事ではない。いつ、何時対象国が拡大するかもしれないし、いきなり何をし出すのか読めないのもトランプ政権の特徴である。かつ、9.11直後は、留学生ビザ保持者、特にアジア系に対して、非常に移民局や警察が厳しくなったのを覚えているため、いつ何時、自分に影響してくるかもしれなかった。しかしそれでも私はまだ、今すぐ危機というわけではない。その該当する7カ国出身者はどれだけ大変なことだろう....胸が痛むし、この現状をなんとかするために、できることはやっていかねばと思う。

前回のエントリで写真だけ掲載したウィメンズマーチだが、そのあとに発行された『週刊金曜日』に、このブログに掲載していなかった写真を提供したので、そちらも掲載しておく。



私が行ったモンタナ州ヘレナのマーチも一万人参加と、予想を大きく上回る参加者となったし、全米でも、史上最大の抗議行動となったと報道された。多くの開催地で、予想以上の人々が参加したようだった。

私は、ャXター(プラカード)作りのセッションも少しだけ参加して、その際に自分のャXターを作った。そこで言われたのは、モンタナ州イベントのオーガナイザーは、できるだけャWティブなメッセージのャXターがいいと言っているとのこと。そのカード作りのセッションで、ピンクの猫耳プッシーハットを、マーチ主催者に寄付したら作ってくれるという人がいたので、お願いして、当日、フリースのプッシーハットをかぶった。

ャXター書きの注意


出来上がった私のャXターは右側のもの。


たぶんモンタナじゃなかったら、この文面にはしなかったかもしれない。でも、モンタナでのウィメンズマーチ、おそらくアジア系参加者は非常に少ないだろうと思ったのだ。多分大部分が白人、あと、ネイティブアメリカンやラティーナはそれなりにいるのかもしれない。でもアジア系はたぶんすくない。だからこそアジア系をうち出そうかと思った。マーチの間や、集会の間、これを首にかけて歩いていたら、結構な数の人たちにいいねと声をかけられて、写真を撮りたいと言われたりもした。

ャXター作りの間に、市民団体代表のアフリカンアメリカンの人が、「ぜひBlack Lives MatterのャXターも作ってね」と呼びかけていた。アフリカ系アメリカ人もおそらく少ないことが予測される。その中で、別にその人がアフリカンアメリカンではなくとも、Black Lives MatterのャXターを掲げることは重要な意味を持つから、と。

実際のマーチでも、白人でBlack Lives MatterのャXターを掲げている人を何人か見かけたし、スタンディングロックについてのャXターを掲げている人たちもいた。

他も、ムスリム排除するなとか、壁を作るなとか、あるいはLGBTQのイシューとか、様々なメッセージのプラカードが掲げられていたマーチだった。9割が白人で、しかも保守的な土地のモンタナにもかかわらず、しかも「ウィメンズマーチ」という名称にもかかわらず、掲げられていたメッセージは「女性」に限定されたものではなかった。もちろん、危機的な状況にある、女性の性と生殖に関する権利だとか、あるいはプランドペアレントフッドを守れとか、性暴力反対だとかのメッセージもあり、それも重要だった。だが、このマーチの強みは、「インターセクショナリティ」、(多層的にさまざまな差別が絡み合っているという考え方、と言えばいいか)これを非常に意識的に強く前提としたものだったことにあると思う。「ウィメンズマーチ」という名称だったが、実際に起きたことは、徹底してマルチイシューを掲げ、インターセクショナリティを強く意識した行動だった。これだけ白人の多いモンタナでもそうだったのだから、ほかのもっと多様な街であればなおさらだったのではないか。だからこそ、これだけたくさんの人たちが集まったのだと思う。

もともと、大統領選挙の時から、白人フェミニストとマイノリティフェミニストの間でテンションはあったし、そんな中での選挙結果が、94%の黒人女性がクリントンに投票したのに対し、白人女性の過半数以上がトランプに投票していたことで、マイノリティ女性からの白人女性への視線はどうしても厳しいものになっていたと思う。Pantsuit NationというFBのグループでも、マイノリティ女性の声が聞こえなくなることへの懸念が示され議論になったりもしていたし、最初は私もこのマーチは白人女性たちが始めたんだなあと思って正直ちょっと冷めていたところもあった。でも、だんだんイベント準備が進んでいく中で、マイノリティ女性らも参加していることもわかったし、実際、モンタナでのプログラムも、ネイティブアメリカンやアフリカンアメリカンなど、マイノリティ女性らが多数、壇上に上がってスピーカーになっていた。とくにモンタナという土地柄、ネイティブアメリカンをすごく意識した集会になっていたと思う。

このマーチから私は、マルチイシューを掲げた運動の可能性を感じた。ついつい、マルチイシューを掲げた運動は一昔前の、、みたいに思いがちだったが、そんなことはなかった。インターセクショナリティを意識しまくって、マルチイシューを掲げたからこその、この結果だったのではと少なくともモンタナのイベントからは感じた。そして、現状は厳しいが、この動きはどんどん広げて、続けていかないといけないのだと思っている。






モンタナでのウィメンズマーチに行ってきた(写真レメ[ト)

2017-01-22 10:13:00 | アメリカ政治・社会
またもや激しく久々のブログ更新になってしまいましたが、1月21日(土)に開催されたウィメンズマーチのモンタナ版に行ってきたので、写真にてその報告を。感想は次のエントリに書こうかと思います。

マーチのステッカー



モンタナでのウィメンズマーチは、州都のヘレナで開催。各地からヘレナに参加者が集まってきた。私も朝の8:30にバスの待ち合わせ場所にいき、生まれて初めてのスクールバスに乗った。(なぜスクールバスなのかといえば、そちらの方が料金が圧涛Iに安いからとのこと。)



モンタナは何せ広い州で、しかも冬で道路状況も天候も不安があった。マーチのサイトやFBでの参加表明などから、主催者は5000人ほどの参加を予想していたようだが、蓋を開けてみたらなんと倍の一万人の参加!ちなみにこの日のヘレナの気温は≠T℃。



マーチで掲げられていたプラカードをいくつか紹介。

超若手フェミニストたち!


Believe in Science! 温暖化や進化論についての科学的知識を探求したり、教えたりできなくなるのではという危機感が表れている。


犬と参加した男性。


ノースダコタのスタンディングロックでのパイプライン建設反対!トランプ政権のもとで復活するのではと危惧されている。


Black Lives Matter.


もちろんレインボーフラッグも。


Pussyhatをかぶって、This future is female  後ろ側にあるのは、レイア姫とWomen's Place is in the Resistance.


思い思いのプラカードを掲げてマーチ!


No hate in our state!



トランプもの2つ。We shall overcomb! と、ツイートする人ではなくリーダーが必要!



Planned Parenthoodを支持する署名にサインする人たち。


寒かったので、warming tentというスペースが作られていました。皆入り込んで暖まろうとしています。


州議会議事堂の前で集会。


反オバマムードにあふれるモンタナのGun Showに行ってみた

2009-07-14 12:47:00 | アメリカ政治・社会
先週の金曜日、生まれて初めて、アメリカのGun Showというものに行ってみた。銃の展示即売会で、アメリカの様々な都市で開かれているイベントだ。たまたま先週の金曜から日曜まで、坊主マンでのGun Showが開かれていたのだった。

金曜、土曜と、日本からの新聞記者の方が、坊主マンでの原爆展をめぐる顛末を取材するためにいらしていた。そしてアメリカの保守の人たちの原爆に関する意見が聞いてみたいということだったが、なかなかアモェとれない状況があったので(テーマがテーマなのであまり話したがらない人がいるのにプラスして、夏のために、単純に街にいない人も多いのだ)、保守系の人が集まる場、ということでたまたま開かれていた、一年に一度のGun Showという場に行ってみたのだった。

モンタナという州は、「銃をもつ権利」を主張する人たちがたいそう多い州である。民主党の候補すら、それに対して反対の意見を表明してしまっては、絶対に当選しないといわれるところで、実際のところ銃をもつ権利を支持していますと明言する民主党の候補だらけだ。民主党ですらそうなのだから、共和党とあってはもっとそうである。そして、共和党の大きな支持母体である、NRA(ナショナルライフルアソシエーション)会員が当然ながら多く集う場が、このgun showだろう。軍出身者も多く集まるはずである。そんなこともあり、gun show(しかもただでさえ保守的なモンタナ開催)にはバリバリ保守の人たちが多く集まるだろうことは自明の状況なのだった。

Gun Showなんていうものには長年のアメリカ生活でも行った事がなく、今回初めて行ったのだった。そして、かなりのカルチャーショックを受けた。展示のブースには、ライフル銃や、ハンドガン、銃弾などが盛大に売られており、ライフルも安いので150ドルくらいからあった。これでは気軽に買えてしまいそうな値段である。銃じたいに柄がついていたりとかして、デザインも多種多様である。また、アンティークの高いのになるとかなり高かったりしている。ミズーラという街にある、モンタナ大学のキャンパスで8月に開かれるgun showはもっと規模が大きいとかで、アンティークがもっと充実しており、「第二次世界大戦にナチスが使った銃とかも手にはいるよ」とアンティーク銃を売っていた人に言われた。また、銃のほかにもアーミーナイフなども売っており、ナイフをふりまわしている、うすらでかい白人男性なんかもいたりして、けっこうコワいものがあった。そして、どの展示即売系のショーにもありがちだが、まぎれてアクセサリーだの髪飾りだの、直接的には無関係なものを売っているブースもあったりした。

会場の様子の写真。










このように銃が売っているだけでもかなり強烈であり、しかも会場は白人オンリーって感じで、アジア人である記者さんと私はかなり浮いてしまっていたのだった。

それに加えて、もっと強烈だったのが、会場で盛大に売っていた以下のバンパーステッカーである。
メッセージがある程度、写真でも読めると思うので、アップしてみる。










内容がとにかくすごい。オバマがとにかく憎い、大嫌いだというメッセージにあふれており、オバマのミドルネーム、「フセイン」を強調し、オバマが自由を奪う独裁者だとかテロリストだという印象をもたせるとか、経済が悪くなっているのも(前のブッシュ政権の遺産)すべてオバマのせいになっていたりとか、銃をもつ権利や、軍や戦争についてのメッセージとか、「アメリカ人は生まれたときからチョイスでヘテロセクシュアル」なんていうのがあったりとか。
リベラル系のバンパーステッカーの類いは、店(私が行く類いの)で売っているのを見たりすることはよくあるけれど、こういう保守系のバンパーステッカーをこれだけまとめて売っているのを見たのは初めてだ。
そして、会場外に駐車してある車にも、同様なバンパーステッカーの貼ってある車がとまっていたりもした。そのうちの一台。見えづらいと思うが、窓がホコリで汚れているところに、指で、"OBAMA SUCKS"(オバマ最低)と書かれている。



一般的に報道される、人気の高いオバマ大統領というイメージとは全く違う世界である。これだけ、何でもかんでもオバマが悪いとなっているというのには、予想できた面もあるとはいえ、目の前にこれだけ一気にバンパーステッカーをみてしまうと、驚きもした。

そんな中、記者氏が原爆および、オバマが4月にプラハで行った、核廃絶にむけての決意をあらわすスピーチについての、人々の意見を聞いてみたいのだという。そして、記者さんは英語があまりできないので、結局実際にインタビューをしなくてはいけないのは私。いわば「街角インタビュー」的なことをしなくてはいけないのだが、この場所に、来ている人たちに、そしてこの、彼らがもっとも嫌いそうな、原爆とオバマという2大トピック。自分の仕事柄、インタビューをすることには慣れているはずの私も、正直いえば、「浮「よう」という感じだった。でもやむをえない、話かけるくらいはしてみなくては、と勇気をふるって数人に話しかけてみた。

最初に話した人は、gun showにきていた客で、若そうな男性(大学生くらいの年齢層か?)。その人はむこうから話しかけてきて、どこから来たのかとか聞いてきたので、ちょっとだけ会話をしてみた。しかし、「ところで、いろいろなアメリカ人の原爆に関する意見を聞いてみたいのだけれど、、」と話しかけたとたん、表情がかき曇り、寡黙になって、「じゃあ」といって逃げられてしまった。

建物の入り口近くで、柄付きのライフル銃と本を売っていた中年女性がいたので、話しかけてみた。まず、銃の柄に興味がひかれたということで話をはじめてみて、その女性が長年狩猟をやっている人であり、狩猟でとれた動物(シカなど)をつかったレシピを紹介する料理本を書いている人なのだいう。どこからきたのだ、という話もしたりして、なんとなくの会話の発展という形で、「ところであそこにあるバンパーステッカー、、」と、反オバマのメッセージのバンパーステッカーについて話をふってみた。するとその女性、「ああ、あれ私大嫌いなの」という。「え、大嫌いなんですか」というと、「このショー会場にいる中で、オバマに投票した人は、きっと私と、そこにいる私の夫二人だけだと思う。とにかく、ここの人たちとはオバマの話なんて浮ュてできないのよ。」と言うのだ。そうか、この人たちはgun showでは超珍しいオバマ支持者だったのか。「オバマについてとか、原爆についてとか意見聞いてみたいと思って、日本からの記者をつれてきたのだけれど、、」というと、それは大変だみたいに言うので「怒っちゃったりしますか?」と聞くと、「ありえるけれど、まあ頑張ってやってみたら」と言う。うわあ、やっぱりこれは緊張するぞ。「最初にあなたから話が聞けてラッキーでした、よかったです、ありがとう」といってその場を去った。

次に話しかけた年輩のブースで銃を売っていた男性。明らかにこちらは共和党支持者っぽかったが、やはり「広島」とか「核兵器」という話題になると、とたんにドン引き。反応がなくなってダメである。見るからにアジア系の見かけの我々が「核兵器」とかいう話題をいきなり持ち出すのは悪いストラテジーであるということがよーくわかった。いきなり核心をつくような質問をしては、ドン引きされて終るだけなのだ。

銃売りブースで暇そうにしていた男性がいた。比較的若そうに見える男性で、彼のブースでは数枚、アンチオバマのバンパーステッカーが売っていた。ステッカーに興味があるかのように、それを手に取ってみていたところ、その男性「そのステッカーに興味あるの?」と話しかけてきた。「はい」みたくいったら、「じゃあ、それあげるよ」と言うので、記者さんがそのステッカーをもらうことになった。それをきっかけとして、ハンティング歴だとか、どのくらいこの銃売り商売しているのかとかの背景に関して質問しだしてみたら、彼の従軍経験の話が始まった。イラン革命の頃、イランで従軍し、そこでかなりの負傷をおって、今は身体はボロボロだという。顔は若くみえるのだが、実はその人は50代だということがわかった。沖縄にも返還の一年ほど前に行っていたことがあるらしい。海兵隊からはじめ、その後陸軍にうつって、かれこれ10年くらい軍にいた。今は身体ボロボロで大変だ、と何度も繰り返していた。当時のリーダーに対し、相当な怒りを感じているようだった。

その怒りと、このアンチオバマステッカーはどう関わるんだろうと思い、「あなたはオバマについてどう思いますか?このステッカー売ってるけれど」と聞いてみたら、「オバマになってから最低だ。暗黒の時代になった。憲法で保障された個人の自由とか権利なんてないも同然だ」ととうとうと語り始めたのだった。従軍経験の話をかなり聞いた後だったからか、ちょっと心を許してくれたのか、オバマ政権へのやり場のない怒り、しかし今の共和党も情けないから非常に怒っているのだといった話をしてくれた。「オバマが4月に核兵器廃絶するとかいうスピーチしたけれど、、」といったら、そのことは知らなかったけれど、「下らない。最悪だ。そんなの不可能に決まっている。イランとか北朝鮮とかどうするんだ」という、アメリカ人からよく聞かれるパターンの答えがかえってきた。だいぶ時間をかけて、何気ない会話からはじめて、ようやくここまで話をしてもらうことができたが、さすがに「原爆」についてストレートには聞けない雰囲気もあったりして、そのあたりで「いろいろお話ありがとう」とブースを離れたのだった。

これでもって、すっかり疲れてしまい、これ以上話をきくパワーは残っていなかったのだが、少なくとも一人だけはそれなりに話を聞くことができたし、記者さんが雰囲気だけでも感じ取ってくれたらよかったと思う。

しかし、やはりいかに「原爆」「核兵器」というテーマがいまだにタブー状態であり、そして、アメリカのガチ保守の人たちが、いかにオバマ政権が誕生したことに対して憤りやら、やり場のない怒りを感じているか、というのが肌で感じられたことで、私としてもいろいろ考えさせられる面はあった。

日本では、オバマの4月の核廃絶にむけてのスピーチが各紙一面トップの扱いだったということだが、アメリカではほとんど報道されておらず、そのことを知っている人はひじょうに少ない。知っている人は、ニューヨークタイムズなど、いわゆるインテリ層がよく読むメディアを読んでいる人たちくらいだろう。(それと、私のように日本語メディアも読む人と。)ここモンタナでは、ニューヨークタイムズを購読することはできないし、オンラインであえて読むという層も限定されるだろう。結局、地元紙やテレビが扱わない限り、誰も知らない状態になる。そして、いまだに「核」や「原爆」を批判的に語ることがタブーという状況のアメリカの保守地域の現状と、今、日本で(とくに広島などで)アメリカに対してもたれているという「オバマ政権だからこそ、今、一気に核廃絶の動きへ」という期待はかなりずれてしまっている面がある。

そんなこんなで初めてのGun Show経験、かなり濃いものだった。あまりの濃さに、長大エントリになってしまったぞ。