ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

グレンダイブの創造論恐竜博物館に行ってきた

2017-05-16 00:46:00 | アメリカ政治・社会
大学が休みに入り、モンタナ州とノースダコタ州の州境に近い街、グレンダイブに週末に行ってきた。
坊主マンから車で制限速度80マイルのフリーウェイを飛ばすこと5時間。ロッキー山脈地帯ど真ん中で風光明媚なモンタナ州西部に比べ、荒涼とした景色が広がる地域だ。Middle of Nowhere、要するに何もない中にある街でもある。

なぜこの街に出かけたかというと、ここに、坊主マンのMuseum of the Rockiesに次ぎ、州内で二番目の規模の恐竜博物館Glendive Dinosaur & Fossil Museumがあるからだ。しかも、この博物館は普通の博物館と違い、創造論(Creationism)に基づいて展示されている博物館なのだ。恐竜と創造論がどう展示されているのか、一度行ってみたいと思いつつ、遠くてなかなか行く機会がなかった。しかも夏しか開いていないので、学期中は行くのが難しいのだ。

博物館はこんな外観。外から見る限りは、創造論の博物館とはわからない。


しかし一歩中に入って受付エリア。すぐに「はじめに神は天と地とを創生された」という聖書、創世記の一節が目に入る。


博物館訪問者のための説明文が壁に。


この辺りで、見るだけで創造論の博物館だということはわかるようになっている。受付の親切なおじさんからもその趣獅フ説明があった。写真撮影は自由だから、と言われた。

展示はいわゆる「カンブリア期」で、海のなかの生物の化石から始まる。なぜ海から?と思ったが、のちに非常にこれがこの博物館にとって重要だったことがわかった。



親切な博物館のスタッフ(おそらくボランティアだと思われる)の高齢の人たちが話しかけてきてくれて、いろいろ説明をしてくれる。これだけスタッフが親切にあちらから歩み寄ってきていろいろ説明してくれる博物館は珍しい。壁の絵や、恐竜などの模型を作った人たちの名前を言って、とても才能がある人たちですごいんだと話していた。どうやら皆知り合いなのかなという印象でもある。

結構大きな展示がある。子どもも喜びそうだ。



スタッフが一生懸命説明してくれたのが、この魚を食べて飲み込んだ状態で死んで化石になったと思われる魚の展示。こんなに同時に化石になるというのは、洪水で化石になったという証拠だとか言われたが、なんだかよく意味がわからず。。しかし、このあとの説明でも全て「洪水」(すなわちノアの洪水)は大変に重要な役割を果たし続けていた。海、超重要らしい。


海コーナーが続き、創造論の色が前面に出てきた。アンモナイトがこんなに素晴らしいデザインなのは、デザイナーもしくは創造主の存在があるからだ、という説明。


恐竜登場。結構大きくて立派な展示なのだが、恐竜がいるのと同じ場に何気なくいる現代のチーターだか豹風動物(写真だとわかりづらいかもしれないが写っている)。このように、恐竜と現代型哺乳類が同じ場所に登場する展示が多い。


チーター風動物拡大。


シカもいますよ。


恐竜とともに落ちてるバイソンの頭の骨。


これが聖書に書かれている恐竜Behemothだ!という説明とともに置かれる化石。


「人間と恐竜」展示コーナーもある。この博物館によれば、人間と恐竜は共存していたらしい。だからBehemothも聖書に書いてあるのだという。

証拠として展示される足跡。恐竜の足跡のあとに人間の足跡もついているのだから、恐竜を人間が追いかけてハンティングしていたのかもしれない、という説明が。そ、そうだったのか!?


もう一つの証拠として展示される、恐竜風デザインのアートや器ものなど。


そしてやってきた洪水&ノアの箱舟コーナー。
巨大なノアの箱舟と、共存する恐竜や人類の模型。




展示見たときはてっきり恐竜は箱舟に載せてもらえずこのとき絶滅したというストーリーかと思ったが、あとで写真をよくよく見てみると、この展示説明だと、洪水の後、洞窟で人類は生活するようになり、そこで恐竜と共存していたために恐竜風壁画を書いた、ということらしい。恐竜も箱舟に乗せてもらえたということか。


洪水の模型。地球全体を覆い尽くす大変な洪水だったと説明されている。洪水再現模型の上には、地球を覆い尽くしている様を再現する地球儀風の模型も。地球は平らではなく丸いという前提のようだ。


そして登場する人類と進化関係コーナー。進化など人類はしない、サルはサル、人間は人間として神様が作ったのであって、進化論がいかに間違っているのかの説明がある。最近発掘されて見つかったものとかはスルーされ、だいぶ古いものに基づいているようだ。なぜかアフリカで見つかったホモエレクタスはスルーされ、ジャワ原人と北京原人だけが扱われており、現代の人間とは無関係と説明されていたりもする。


アウストラロピテクス・アファレンシスの「ルーシー」は人間とは関係ない!サルはサルだという展示。


他にも、細胞とかDNAは何らかの創造主のデザインと考えないと説明できない、とし、いかに進化論を唱える科学者らが間違っているかとか、言ってることがコロコロ変わっているとかいうメッセージがこれでもか、これでもかと出てくる。

そして、地球は実はそんなに古くないのだ!という展示。この博物館によれば太陽も地球もできてから6000年しか経っていないらしい。


なので、年表で扱われる期間も短く、恐竜博物館であるにもかかわらず、紀元前2000年から始まっている。


というわけで、かなり強烈な内容の展示がある博物館なのだが、この博物館では一人100ドル払うと参加できる近隣での発掘作業ツアーも行っている。グレンダイブという地域が恐竜の化石がかなり発見されるということもあり、そうして素人に一般人が発掘に参加し、掘ったものがまた展示されているわけで、参加した人たちにとっては博物館への愛着も沸くんだろうなとは思う。
なので、博物館内には、発掘はどんな感じで行われるかの展示とか、発掘されたものを持ってくるラボの様子もガラス越しに見られるようになっている。「発掘ツアーをやっている」というのは、滞在時間の間、博物館スタッフ数人から言われた。



博物館内で上映していた映画は子どもも飽きないよう、一本あたりがかなり短く作られておりうまくできていたのだが、その中でも発掘ツアーの様子が紹介されていた。一般の市民も発掘とか博物館に親しめる状況を作り出しており、ボランティアスタッフの人たちの熱心な説明ぶりと、にじみ出る博物館への愛着からそれはかなり感じた。展示内容には同意しなくても、そのこと自体は悪いことではなく、むしろ博物館のあり方としてはいいものなのかもしれない。

だが、一緒に行った友人が自然人類学を専門としており発掘現場にも詳しいのだが、その友人と話していて、洪水で全てが化石化とかいう解釈で、しかも地球ができて6000年と信じる中で化石を発掘されると、おそらく時代情報とかがどうでもいいものになったり、それを知るのに重要なコンテクスト情報も発掘作業の中で丁寧に扱われない可能性も高く、せっかく見つけた化石の意味もなくなってしまったりはしないかと危惧を感じた。恐竜化石が多い地域だから大丈夫なのかもしれないが、もしも見つけた恐竜の化石が重要なものだったとしたら、それは100ドル払ってツアーに参加した素人が扱っていいようなものなのだろうか?

この博物館は、3月から5月半ばまでは金、土曜のみの開館で、その後夏の間は火ー土の開館、そして冬の間は閉館している。年間何人くらいビジターがいるのかと博物館の人に聞いてみたら、9000人とのことだった。実質夏の間だけで9000人というのは、近隣の人口も少なく、最寄りの商業空港も3時間離れており異様に行きづらい場所にある博物館にしては、結構多いのではないかと思った。

今回行ったのはグレンダイブの博物館で、ここは現在、実は政治的に重要な意味も持っている。モンタナ州では今月、下院の補選があるのだが、その共和党の候補である、Greg Gianforteがこの創造論の博物館に多額の寄付をしているからだ。T-Rexの大きな化石はジアンフォルテの寄付によるものらしい。要するにジアンフォルテはこの博物館の考え方、すなわち創造論に賛同する立場だろうと想定できる。

そして、このような創造論博物館は、全米にいくつもあり、特にケンタッキー州にあるCreation Museumはかなり有名らしい。ケンタッキーの博物館がオープンしたのは2007年、そしてモンタナ州グレンダイブの博物館のオープンは2009年。いづれもこの10年ほどの動きだ。今後もこうした博物館建設が広がっていくのかどうか、気になるところだ。