フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



新しいテレビドラマへの感想コメントも今日が4回目。今回は深夜ドラマなど、遅い時間帯に放送されているドラマ編です。

おいハンサム!!(フジテレビ系、土月曜23時40分)

 伊藤理佐の『おいピータン!!』など複数の漫画を原作としたテレビドラマ化作品。何をしたいのかよくわからないながら、なぜか面白いのが不思議です。
 主な登場人物は、まったく男を見る目のない3姉妹(木南晴夏、佐久間結衣、武田玲奈)と、その頑固親父(吉田鋼太郎)。この父親、世間的には仕事のできるビジネスマンですが、家では横暴オヤジ。まるで寺内貫太郎か!みたいな男。ダメ男にばかりつかまってしまう3人の娘との掛け合いが笑えます。ちなみに、母親役のMEGUMIは実年齢40歳。長女役の木南晴夏は実年齢36歳。どう考えても変ですが、見ていると、もうそんなことはどうでもいいか、という気になります。食べる場面が頻繁に登場するのは原作のためだと思いますが、ドラマだけ見ているとなぜこんなに食べる場面が多いのかと思うかもしれません。
 ちなみに、私はテレビドラマ作品のタイトルで興味を持てませんでした。原作とタイトルを変えるならこのタイトルがいいのでしょうか。タイトルで損しているような気もします。

ユーチューバーに娘はやらん(テレビ東京系、月曜23時)

 結婚式の当日、相手に逃げられる…というドラマや映画は多々ありますが、この作品では、花嫁(佐々木希)が花婿を同性愛の相手に連れ去られる、という衝撃的な場面から始まります。困り果てた挙げ句に、花嫁とその家族だけで披露宴を続行するという決断に至り、1人で奮闘する花嫁を見て、2人の男性(戸塚純貴=ユーチューバー、金子ノブアキ=テレビ局員)が惚れてしまう、という、これまたびっくりの展開となります。初回はおおいに引きつけられましたが、2回目からは落ち着いてしまったので、初回のテンションは続きません。今後の見どころ作りに期待したいと思います。

鉄オタ道子、2万キロ(テレビ東京系、金曜深夜)

 テレビ東京系の深夜オタク向けドラマとくれば、かなりアクの強い作品かと思ったら、中身はぜんぜん違いました。穏やかで、上品で、落ち着いたドラマでした。そのクセのなさに最初は拍子抜けして、見るのをやめようかとも思いましたが、それからじわじわと浸みてきました。たいした出来事も、ストーリーの展開もありません。鉄道ファンが訪れたいような場所を、主人公・道子(玉城ティナ)が毎回訪れ、そこでほんのりとした出会いがありますが、そこから何かが発展することはなく、ほんのわずかな時間を共有してそれぞれに去っていきます。この何もないところに、次第に心惹かれていきます。文学でいえば、志賀直哉『焚火』でしょうか。あるいは、谷崎潤一郎と芥川龍之介の間で交わされた「話らしい話のない文学論争」が想起されます。

もしも、イケメンだけの高校があったら(テレビ朝日系、土曜深夜)

 イケメンだけの高校になぜか入学してしまった、それほどイケメンではない男子高校生(細田佳央太)の話。細田もけっこうイケメンだと思いますが、『ドラゴン桜』で発達障害の高校生、『恋です!』で視覚障害者などの難役をこれまでこなしてきました。
 イケメン高校の校長の訓示、「この学校にはいじめも校内暴力もありません。それはこの学校の生徒が全員イケメンだからです!」。この根拠のない断定の潔さが笑えます。さらに張り出されている標語が「面武両道」。これにも笑えました。

愛しい嘘 優しい闇(テレビ朝日系、金曜23時15分)

 原作は愛本みずほの同名漫画作品。中学の同級生6人が29歳になって同窓会で再会。ところが、そのうちの1人が謎の死をとげる……。と、単なる謎解きではなく、個々の人物像に関心が持てる描き方がされているので、作品としては面白いと思いますが、既視感満載です。『Nのために』(2014)とか、『最愛』(2021)とか、この手の作品は多々あります。しかし、考えてみれば、既視感どうのこうのは、たくさんドラマを見てああだこうだ言っている私たちのような人間が考えること。この作品が単独で面白ければ、そういうことはたいした問題ではないのかもしれません。

鹿楓堂よついろ日和(テレビ朝日系、土曜深夜)

 土曜夜のテレビ朝日はイケメンナイトのようです。4人のタイプの異なるイケメンが、料理、スイーツ、お茶、コーヒーをそれぞれ担当してくれます。私は興味が持てませんが、イケメン好きの女性の皆さんは存分に癒やされてください。ちなみに「ロクホウドウ」と読みます。

 真夜中にハロー(テレビ東京系、木曜深夜)

 普通の母と娘の家。真夜中に突然ハロプロのアイドルグループが家の中に出てきて、元気づけてくれます。わけがわからないけど、元気づけられればそれでいいんじゃないでしょうか。

シジュウカラ(テレビ東京系、金曜深夜)

 原作は坂井恵理の同名漫画作品。主人公(山口紗弥加)は、平凡な漫画家アシスタント兼主婦。以前に書いた作品が電子書籍で売れたため、新しい作品を書くことになり、年下美青年のアシスタントを雇うことになる、という話。はいはい、よくある不倫もの、平凡な中年女性と美青年の恋愛ものね、と見くびりました。ところが、よく見ると、なかなか深いことを言うドラマでした。そこまで見続けないと、この作品の良さがわからないように思います。


※このブログはできるだけ週1回(なるべく土日)の更新を心がけています。



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