雪深い
二月に
越後で
生まれ
十八年間を
過ごした
故郷
雪解けの
三月に
今はもう
見ることも
乗ることも
できなくなった
越後交通
栃尾鉄道
通称
トッテツの
小さな車両
その
一輌しかない
車両に
だれの
見送りもなく
ぼくは
ひとり
東京を目指した
振り返らなかった
決して
振り返りたくなかった
みっともなかった
自分の
十八年間
自分は
この土地では
うまく
生きていけないと
ようやく
わかった
それが
高校三年生
いつも
自分は
城壁のように
遠景となっていた
この越後連峰の
向こう側に
自分を
待っている
何か
そんな
夢を
見続けて
幼い頃から
屋根のてっぺんに
座り込んできた
トッテツが
「おい、
お前
気はたしかか」
そう肩を揺すって
いるかのように
車両を揺らし
車輪の音を
鳴らし続けた
なんにも
未練など
この土地に
残っていなかった
無様な
過去しか
自分には
ないように思えた
室生犀星の
「ふるさとは
遠くにありて
思うもの・・・」を
脳裏で
たどっていた
そうだ
もう二度と
この土地には
戻るまい
この土地を
自分が
遺棄するのだ
絶縁するのだ
二月に
越後で
生まれ
十八年間を
過ごした
故郷
雪解けの
三月に
今はもう
見ることも
乗ることも
できなくなった
越後交通
栃尾鉄道
通称
トッテツの
小さな車両
その
一輌しかない
車両に
だれの
見送りもなく
ぼくは
ひとり
東京を目指した
振り返らなかった
決して
振り返りたくなかった
みっともなかった
自分の
十八年間
自分は
この土地では
うまく
生きていけないと
ようやく
わかった
それが
高校三年生
いつも
自分は
城壁のように
遠景となっていた
この越後連峰の
向こう側に
自分を
待っている
何か
そんな
夢を
見続けて
幼い頃から
屋根のてっぺんに
座り込んできた
トッテツが
「おい、
お前
気はたしかか」
そう肩を揺すって
いるかのように
車両を揺らし
車輪の音を
鳴らし続けた
なんにも
未練など
この土地に
残っていなかった
無様な
過去しか
自分には
ないように思えた
室生犀星の
「ふるさとは
遠くにありて
思うもの・・・」を
脳裏で
たどっていた
そうだ
もう二度と
この土地には
戻るまい
この土地を
自分が
遺棄するのだ
絶縁するのだ