夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

その2 「努力と勇気こそチャンスの土壌である」

2009-03-09 08:18:15 | つれづれなるままに
 「土屋さんと私は、数寄屋橋公園で偶然に出会いました。あれは偶然ですよ」
宋は驚きもせず、細いあごを振った。
「そういうことも、人生ままある。偶然にはちがいないが、必然的な出会いなのでしょう。ひとつの目的のために努力をしている者は、必ずどこかで出会います。別に神が引き合わせたわけではない。ひとつの目的を思いつめているあなたがたが、存在を確認しあっただけです」
                        浅田次郎著「シェラザード」
                     
 「偶然なんて、人生にそうそうあるものではありませんよ。偶然という言葉はね、事実の免罪符。わかりますか。人はみな、都合の悪いことが起こると、偶然のせいにする。そうではない。偶然などというものは、人生にいくつもない」
 軽部は背を打たれたようにきつく目を瞑った。宋老人の言葉には千鈞の重みがあった。
 「人生に起こることの、ほとんどすべては必然。あの夜、重油にまみれて夜の海を漂いながら私はそればかりを考えていた。人間は偶然などという言葉を使ってはならない」
 説諭されているのかもしれない、と軽部は思った。自分もやはり人生の海原を流されながら、すべてを偶然のせいにしてきた。
                       浅田次郎著「シェラザード」

 私もこれまでの人生の中で、ことに後半の人生で、この人と人との奇妙な出会いについて不思議に思うことが多くなっていった。「リンク」するという言葉が相応しいのだろうか。共通の友人でありながら、それを知らないでいることがある。そしてある日、「え?何であなた方がつながっているの?」といったサプライズが起こるのである。「偶然ではなく必然」という客観的な事実は、私たちの生き様や存在のありかを教えているのかも知れない。