夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

創作小咄「一郎の成人式」FMラジオ用原稿

2008-01-04 22:22:07 | 創作(etude)
2008年1月14日放送予定 バリアフリー小咄(16時56分ころ)

 「一郎の成人式」

 母  一郎君 いよいよ明日は成人式ねえ。あなたも出るんでしょ?あなたの初めてのスーツ作ったの。あとで着てみてね。

一郎  お母さんは成人式に障がい者が何人くらい出ると思う?近くに住んでいる三郎君は出ないって・・・。

 母  どうして出たくないって?

一郎  馬鹿にされたり、変な目で見るやつがいるからだって・・・。

 母  でもねえ、お母さんはそんなこと気にしてたら、一人前の社会人として会社で 
働けないと思うわよ。だから一郎にはどうしても出てほしいなあ。

一郎  うん、ぼく就職したり、結婚もしてみたいから負けないで出てみる。

(翌日成人式から帰ってきた一郎)  

一郎  お母さん、ただいま帰りました。

 母  一郎君。成人おめでとう。で、成人式はどうだったの?お母さんにも教えてちょうだい。知っている友達ははいたの?

一郎  小学校時代の友達が何人かいたよ。会場に着くとね、八百屋の花ちゃんがね僕の車いすにこにこして押してくれたのでとってもうれしかったよ。僕が悪いねっていうと、いつも重たいジャガイモの台車を押してるから平気なんだって・・・。僕ジャガイモに見えたのかな? 

 母  あら、でも良かったわねえ。覚えている人に親切にしてもらったんだから。それで式の方はどうだった?

一郎  司会者がね、励ましの言葉って云うとね、はげたおじさんが出て来てみんな笑っちゃったよ。

 母  成人代表は誰がやったの?

一郎  ガソリンスタンドの謙二君とね、寿司屋の恵子ちゃんだったよ。謙二君はなんか言葉を言うときに、油と同じでね最後まで上がりっぱなしだった。その点寿司屋の恵子ちゃんはね、さすが回転寿司屋だね。舌の回転も良かったよ。

母   障害者の人はほかにもいたの?

一郎  車いすは僕だけだった。でも手話を壇上でやっていた人がいるから、きっと耳が聞こえない人がいたんじゃないかなあ。

母   そうねえ。せっかく人生でたった一回だけのお祝いなんだから、みんなが気持ちよく参加できるようにしたらいいのにねえ。でも、一郎君が出てくれてお母さんとってもうれしかったわよ。
成人おめでとう!一郎君。