音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ (プリンス/1985年)

2013-02-21 | ソウル・アフロアメリカン・ヒップホップ等


プリンスはやはり「戦慄の貴公子」がベストだという評価は未だに変わらない。だからこのブログでもレビューはまだ書いてないその前の作品「ダーティーマインド」と2つ書けばいいかなってずっと思っていたが、それは同時に筆者が個人的にこの時代のポップスを体系的に見ていないことと、同時にその中に於けるこのプリンスというアーティストの重要価値に全く気づいていなかったことに誤解の原因があるということを最近理解した。お恥ずかしい限りである。まず以て、前作「パープル・レイン」がサントラ盤だったことに言い方を変えれば「騙された」のが大きい。そう、これはサントラ盤であるが、れっきとしたプリンス・ディスコグラフィーの1作品なのである。そしてその作品で既にプリンスは来るべき1990年代の音楽動向をしっかりと予知していたことが大きい。

一方、この作品、実は前作「パープル・レイン」と並行して録音をされたらしい。そう聞くと筆者じゃなくても、前作の1曲目"Let's Go Crazy"を想像し、そうかあのハードロックギンギンで始まるのだなって予測したが、それは思いっきり裏切られた。冒頭から聴こえて来たのは、なにか民族音楽を彷彿させるような笛の音。そしてすぐに、プリンスらしき叫びを合図に、うん、ここからはお得意のプリンス・リズムなのだが、どこかオリエンタルな音。そう、あのスカッと「プリンス節」のレベルに上がってこないのだが、表現はよくないが、中々プリンスの音域に達しないまま、曲だけがどんどん進行する、おいおいこのままで・・・と言っている内に終わってしまう。可也拍子抜けをするものの、しかし実はしっかりこの「音程」が残ってしまっている。すると2曲目はちょっと大げさなイントロに、あ、これこれと思っているが、やっぱりリズムに対してメロディはずっと平板が続く。で、サビですぐ気づく。あ、これ先行シングル曲だったと。だがこの曲、ラストはあの民族音楽みたいな音に戻る。ふーん、しかしこの拍子抜けをいつまで続けられるのだろうと思っていると、3曲目はピアノ・インプレッションが始まってしまう。だがここは、またプリンスがお得意としているバラッド。でも、妙に前作みたいに必要以上に気持ちの高揚や、声を荒げてはいない、インテリなプリンスを通している。この3曲に代表される感じ、それが全編に流れているというのがこのプリンスの新作である。しかし、やはり驚いてしまうのは前述したがこの作品と「パープル・レイン」が同時期に作成されたということである。しかし、そう考えると、こういう推理も成り立つ。そう、やはり前作はサントラ盤で、実はプリンスがやりたかったことはこっちなんだって。しかも、その布石のために敢えてプリンスは、ハードロックとファンクを融合してみせた。万が一、それが音楽ファンに支持されなかったとしても、それは「サントラ」だからと・・・。ステージ映画まで収録しておいて万難を配してまで、彼は自分の音楽、そうこの作品にこだわったのである。しかも、プリンスは前作が売れることは知っていた。それは音楽ファンではなく、商業的事情がその作品を欲していたからである。つまり、この作品こそが、プリンスが本当の音楽ファンのために作った、自身のディスコグラフィーだからである。

プリンス、この音楽的天才は、この先まだまだ好きな事を続けていく。だから、やはりこの後の2作品に関してはしっかり総括しなくてはいけない。かくいう筆者も、デビュー当時からの彼にファンなのだから・・・


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