音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ザ・スコア (フージーズ/1996年)

2012-08-18 | ソウル・アフロアメリカン・ヒップホップ等


ローリン・ヒルを知ったのは、勿論映画「天使にラブソングを2」(原題"Sister Act 2: Back in the Habit")である。ウーピー・ゴールドバーグの人気作の続編だが、1作目のコメディに比べ、現代アートを全面に出したこの作品は個人的には前作を遥かに上回っていると思うが、その殆どはローリンのアーティストとしての魅力に尽きる。後日、彼女がフージーズというユニットを組んでいてアルバムを出していることも知ってなるほどそれはそうだろうと納得した。この映画作品でもその才能の豊かさは群を抜いている。但し、この映画の共演者は兎に角声量がすごい人ばっかりだから、その点はキャスト的に見劣りしたので然程話題にならなかったのかもしれない。

筆者がフージーズと出会ったのがこの作品だが、まず、このアルバムはその着想に驚かされる。フージーズは基本、ヒップ・ホップのユニットなのであろうがそれだけではない。彼らにはソウルは勿論、カリブ、中でもレゲエの要素が多く含まれている。メンバー構成はローリン(歌/ラップ)の他に、リーダーのハイチ人、ワイクリフ・ジョン(歌./ラップ)と、プラーズ(ラップ)の3人組。ワイクリフは2010年版のWe Are The World 25 Years for Haitiにも参加、また、ハイチ大統領選にも立候補を予定していたが居住期間が足りないかなにかで却下されてしまったらしい。ヒップ・ホップの王道を理解していなかった筆者であるが、映画繋がりでこのアーティストを知っていたことが、今になって助かっている。この作品はこの年、世界でも爆発的にヒットしたアルバムの1枚らしいが、なるほど、難易が混在していて実に興味深い作品だ。特にローリンから入っている筆者にとって、ロバータの名曲"Killing Me Softly"は必聴ものだ。このローリンの歌い方は「天使にラブソング」のリタ役で、コンテストの"Joyful Joyful"を独唱している部分とダブル。また、嬉しいのはボブ・マーリーの"No Woman, No Cry"で、しかもローリンはその後、ボブ・マーリーの息子で元フットボール選手のローアン・マーリーと交際し妊娠、それを機にソロに転向していることを考えると、なんだか因果でもある。ローリンのことばかり褒めているが、この時代に良い意味でこんな悠長な音楽をやっているところがなんともこの作品が好きな所以である。ただ、その裏で、前述のロバータ・フラックやエンヤとは楽曲著作の問題で裁判沙汰になっている。エンヤとは和解したが、ロバータの方は正式リリースできなかったらしい。ヒップ・ホップはある意味攻撃的な側面があるがフージーズにはそういう世相斬りやリリック的にアナーキーな部分は殆どない(いや、リリックは英語力不足でそういう部分があるのかもしれない。曲調という意味)。そんなところも作用したのかグラミーでアルバム賞を獲得。世界に知れ渡るところとなるのだ。

ローリンはこの後、ソロでも大成功する。ワイクリフ・ジョンは大物アーティストのプロデュースに忙しなくなる、プラーズもまたソロのオファーが多くなりお互いのスケジュール調整が難しくなり解散。2000年以降再結成し、ツアーも刊行し、専門家には高評価を得たが話題不足もあり興行的には成功しなかったようだ。このことは残念だが、個人的にはこんな変わった作品を残してくれたことで満足している。


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