音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

ストリップト (クリスティーナ・アギレラ/2004年)

2013-02-25 | 女性ヴォーカル


アギレラの作品の中でも個人的にはダントツに好きな1枚である。デビューアルバムで"Genie in a Bottle"、"What A Girl Wants"、"Come On Over Baby"と立て続けに3曲の全米ナンバー1シングルを出し、グラミーの最優秀新人賞では大本命と言われたブリトニー・スピアーズ他、この年は実力者揃いだった並み居る強敵を抑え受賞した。かくいう筆者も、このグラミーはブリトニーかアギレラの間で揺れていたが、彼女の「歌の上手さ」はちょっとそれまでのポピュラー音楽の女性ヴォーカルとしては桁違いだったから、正直、アギレラを推していたから受賞の感動はいまでも忘れない。ただ、実はこの頃はまだちょっと可憐な部分があって初々しかった。その後、映画「ムーランルージュ」の主題歌になった「レディー・マーマレード」でリル・キム、ピンク、マイアと競演。無論、クリスティーナがメインというポジションであったがこの曲も全米1位はもちろん、グラミー賞も獲得するという勢いだった。

デビューアルバムが大ヒットしてしまうという大変な2枚目のジンクスに、彼女はまさにこの表題の"Stripped"で望んだ。それは、彼女の赤裸々な思いが綴られたと共に、それだけでなくステージでもメイクや服装もデビュー当時の清純なイメージから露出度の高い派手なものにかわったり、ときには裸に近いパフォーマンスをするようになり、これは批判の対象になった。事実、このアルバムの売上は前作の半分程度(それでも全米で500万枚、全世界で800万枚)、また、シングルは "Beautiful"の2位が最高で、No.1ヒットならなかったが、この楽曲の歌詞には、幼い頃に父親による暴力におびえた告白をベースに、社会的弱者への共感を歌っており、リスナーの支持に繋がった他、ラッパー、リル・キムをフューチャーした新しいポップ音楽の追求等が、単に女性を売り物にしているシンガーとは一線を画しているということで高く評価され、商業的には前作に振るわなかったものの、彼女はその他の女性ヴォーカルとは一格上に置かれる存在となったのも事実である。また、アギレラはこの曲でゲイからも高く支持・評価され、アギレラ自身もそれを肯定し、且つゲイを支持するコメントを出したことからゲイ・フレンドリーとしてその層からの支持を取り付けたのも大きい。またこうした行為がセレブになることより人間愛を優先した「勇気ある発言」として、その他大勢の成功者と全く人間の質が違う人物として世界中から評価・注目されるようになったのも大きい。アギレラ自身は結構拘りがあって、この後も突然ブロンドを黒髪にするなど周囲を驚かすことも多く(これはステージでゴシックを強調するために違和感のあった自身のファッションを根底から変えたからだそうだ)、その度に話題も多いが、肯定的な声が多いのは彼女の人間性によるところなのだと思う。

このアルバムは80分に近い長さ、2枚分に相当する内容だが、そんなに長く感じないどころか、実に聴いていて楽しい作品だ。しかし、それよりもやはりファースト同様、彼女の歌には脱帽してしまう。ホイットニーなんかも最初に聴いたときは上手いなぁと思ったし、最近ではビヨンセだってそう思うが、でもアギレラの前では霞んでしまう。こういう人の音楽をリアルで聴けるだけで幸せだし、それは、モーツァルトをリアルで聴いていた時代の人たちに向けても自慢したいと思うし、それくらい凄いアーティストだと思う。


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