あび卯月☆ぶろぐ

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民主党政権で農政はどう変わるか

2009-12-03 22:58:17 | 政治・経済
民主党政権になって変わることと言えば、はっきりいってロクなことはない。
せいぜい、事務次官会議の廃止や事業仕分けの実施によって官僚退治に乗り出したことが唯一の功になろうか。
この事業仕分けに関してはメディアでも大々的に取り上げられ、鳩山の株を上げるいい材料になっているが、鳩山の頭にあるのは脱官僚ということよりも、仕分けで予算の削減を、ということらしい。
それは、事業仕分けのリストが財務省の作成したものであることからもわかる。
先日、事業仕分けを全事業にわたって実施するとの報道があったがさて、どうなるか。

変わるといえば、民主党政権は外国人地方参政権、人権擁護法と国家の屋台骨を危うくする転換政策が目白押しだが、実はそれ以上に大転換がなされようとしているのが農政だ。
こちらは、ネット上でもあまり取り上げられない。

民主党はマニュフェストで農家に対する戸別所得補償を高らかに謳い、早ければ来年度中に実施される勢いだ。
この戸別所得補償政策だが、これによって農政はどう変わるのか。

これまでの自民党農政の根幹は自民党支団体である農協とさらにその基盤母胎である兼業農家を保護する為に、米価を高値で維持することにあった。

日本は圧倒的に兼業農家が多い。
兼業農家は読んで字の如く兼業で農家をやっている人たち。
本職はサラリーマンだったり、役場の職員だったりで、週末だけ農業をやるという人たちが主。
あるいは、退職後の余生で農業をやっている人たちとか。
この兼業農家が割合でいうと八割くらいになる。

農協は組織力、政治力を維持するため、この圧倒的多数の兼業農家を保護して、少数の専業農家には冷たかった。
農業振興の理念は本来、専業農家を保護し、好きなだけ農作物を作らせ、ひいては食糧安全保障上重要な自給率の向上を図ることにある。
ところが、農協は規模は小さいが圧倒的多数の専業農家を保護するため、自民党農林族と一体になって、農業振興や自給率維持を無視してひたすら米価の高値維持を農政の理念とした。

米価を高値で維持することで農協は高い販売手数料を取ることができ、零細の兼業農家も潤う。
高米価維持のためには米を作りすぎてはいけない。
そのためにやるのが減反という名の生産調整だ。
この割合は毎年変わるが、平均でだいたい四割。
つまり、水田の四割で米を作らせないというわけだ。

さらに800%近い高い関税を設け安い外国米の流入を阻止してきた。
この高い関税の代償がミニマムアクセス米の受け入れで、昨年日本中を騒がせた汚染米騒動の原因も元をたどればここに行き着く。

割を食うのは専業農家と消費者だ。
専業農家はもっと米を作りたいのに減反を強制され、農業規模の拡大もできなければそれによる労働コストの削減も行えない。
そして、消費者は高い米価を支払わされることになる。

米偏重と減反によって農地は1961年の609万ヘクタールから現在463万ヘクタールへと減少し、食糧自給率はカロリーベースで40%を切っている。
国家の食糧安全保障も危うい。

民主党が掲げた戸別所得補償はこれら農政の歪みを是正する可能性があった。
農家に作りたいだけ農作物を作らせ、生産量に応じて所得を保障する。
それにより、自給率も向上する。
これが本来の農政の姿だ。
ところが、よくよく調べてみると戸別所得補償は減反を実施した農家に対して補償を行うというのが実態だ。
私ははじめ、戸別補償制度は悪くないと思っていたが、これでは意味が無い。
減反維持なら自給率も上がらない。

ただ、米価はおそらく下がる。

というのも、農水省は「調整水田などの不作付け地を助成の対象外とする」(平成二十一年十一月二十八日、日本農業新聞)との方針を示したからだ。
どういうことかというと、これまで減反によって稲作を行わない四割の農地について、そのまま休耕地にするのも良し、麦や大豆などその他の作物を植えるのも良し、と自由にすれば良かった。
ところが、これからは、その四割の農地について米以外の何かを耕作しないと補償はしませんよ、となる。

いま大体半分くらいの農家が減反によって生じた非水田を休耕地としているが、それら半分の農家がこれからその休耕地で別の作物を作るようなるか。
専業農家はいいかもしれないが、兼業農家はそうはいかない。
小規模の農地で米以外の作物を作っても効率が悪いしなにより儲からない。
「それじゃあ、戸別補償はいらないから、減反をやめて米を作る」というのが多くの兼業農家の本音だ。
これから無理して麦や大豆を植えて所得補償をしてもらうより、これまで減反していた分に水稲を作付けして米をより多く売った方がラクだからだ。
それに、兼業農家だって本音をいえば減反なんてやりたくないのだ。

私の予測が正しければ、今後、減反を離脱する農家が相次ぎ、米の生産量が向上し、結果、米価は下がる。
いま一俵(約60kg)が一万四千くらいだが、九千円くらいになろうか。
消費者にとっては萬々歳だ。

一方、困るのは農協だ。
減反に参加しない農家は農協にではなく、そのまま業者に買い取ってもらうようになる。
(反対に戸別所得補償を受ける農家は必ず農協に卸さなければならない)
農協は米に関するマージンが入らなくなるし、なにより米価が下がるので販売手数料も下がることになる。
兼業農家が農協に頼らなくなれば組織力も政治力も落ちる。
戸別補償制度によっていま一番危機感を持っているのは農協だと思う。
じじつ、農協関係者からは「民主党の農政はデタラメだ!戸別補償で農協は外される」という声を聴く。

たしかに、米価が下がることは消費者にとっては嬉しいが、民主党農政は減反を維持する気だし、米偏重も改めようとしていない。
これでは自給率は大して変化しない。
ロクな政策がない民主党政権、せめて農政だけはマトモにやってほしい。