雪の林を抜けて
ドアを開けると
誰もいない
小さな暖炉に残り火が赤い
かたわらに置かれた画架に
雪の林の中の小さな家の絵
いま通ってきた道の向こうから
子供が写生したものだろうか
家も林も夕日に赤く染まっている
ぼくはドアの横の薄暗がりに立って
暖炉と絵を見ていた
残り火が目の前で絵に燃え移り
家も林も燃やし
それから炎は静かに
重いカーテンに壁に天井に移ってゆく
ぼくは慌てるでもなく声を出すでもなく
ただそれを見ていた
芽吹いたばかりの落葉樹林の中の
小さな家は
夕日を浴びながら
静かに燃え崩れる
林の上はるか遠く
白い峰々が
残照に赤く輝く
ああ夜が来るな と思っているぼくは
何処でそれを見ているのだろうか?
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