病室から検査を受けに行かねばならない。検査は裸で受けるのだが、裸のまま検査室まで行くわけにもいかない。何を着て行ったらよいのだろうと迷う。下着に、裾が膝ぐらいまでの長いシャツを着て出かけるが、廊下の人たちが誰もそんな格好はしていない。「そうだ、病棟のパジャマのまゝで行けばよいのだった」と気づくが、手遅れだ。
初めの検査室では、左の手首に白い泡のようなものを塗られる。次の検査室に行って医師の机をふと見ると、カルテに母の名前が書いてある。「あのー、これ、ぼくの検査でいいのでしょうか?」と訊いてみる。「ああ、そうでしたね」と、カルテを替える。医師がぼくの左手の泡を見て、「あれっ、これ、間違いじゃないかな?」と首を傾げ、前の検査室に電話をする。別の、子供の検査と違えたらしい。「この病院大丈夫かな?」と不安に思う。
検査液が用意され、右の手首に注射針を刺される。すごく痛い。医師が、「だんだん腫れてきますから我慢してね」と言う。手首から先がパンパンに張れて赤黒くなるが、さらに注入が続く。破裂しそうだ。「これって、脳に悪影響無いんでしょうか?」と訊くと、何か詳しく説明してくれるのだが、ぼくにはちっとも理解できない。「大丈夫です、安心してください」とは言っているようだ。
検査が終わって病院を出る。まだ腫れの残った右腕をぶらぶらさせて玄関の階段を降りる。門までは明るく開けた庭で、芝生にタンポポが咲き、春の光があふれている。
門の前に、スーツ姿の若い女性が立ってこちらを向いて微笑んでいる。ひっつめ髪をしている。とても感じの良い人だ。「誰かを出迎えに来たのだな」と思い、玄関を振り返ってみるが、誰もいない。
ぼくがゆっくり門に近づくと、その人がすっとぼくに寄ってきて、にっこりと微笑んだまま黙って右手を差し出した。
「ああ、この人はぼくを迎えに来た死神なんだな」と直感する。「死神って、大鎌を持ったり灰色のマントを着て顔を隠したり、おどろおどろしく描かれるものだけど、本当はこんなに美しいんだ」とうれしくなって微笑み返したところで目がさめた。
(前半は、ぼくのコンプレックスやら不安やらがいっぱい出ているが、この夢の眼目は後半だろう。これは、解決編と言っても良いのではないだろうか。)
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