すべての頂の上に安らぎあり

今日はぼくに残された人生の最初の一日。ぼくは、そしてぼくたちは、この困難と混乱の社会の中で、残りの人生をどう生きるか?

「老いたる者をして」

2020-08-11 12:16:23 | 
 誕生日を祝う習慣がない…のだが、感慨がないわけではない。で、その感慨を言葉にしてみようと2、3日考えたのだが、ロクなものにはならない。
 そこで、替わりに、中原中也の詩を書いておく。このほうがはるかに、ぼく自身の言葉よりもぼくの気持ちにぴったりくる。そして、心安らぐ。
 ただし中也は30歳で他界しているので、これは20代の終わりごろに書かれているのだが。

    老いたる者をして

 老いたる者をして静謐(せいひつ)の裡(うち)にあらしめよ
 そは彼等こころゆくまで悔いんためなり

 吾は悔いんことを欲す
 こころゆくまで悔ゆるは洵(まこと)に魂(たま)を休むればなり

 あゝ はてしもなく涕(な)かんことこそ望ましけれ
 父も母も兄弟(はらから)も友も、はた見知らざる人々をも忘れ
  て

 東明(しののめ)の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
 はたなびく小旗の如く涕かんかな

 或(ある)はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひ
  びき
 海の上(へ)の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

    反 歌

 あゝ 吾等怯懦(きょうだ)のために長き間、いとも長き間
 徒(あだ)なることにかゝらひて、涕くことを忘れゐたりしよ、げに
  忘れゐたりしよ……

 (カッコ内は、本来は振り仮名。ただし、ここでは中也自身のつけたものと編集者のつけたものを区別していない。また、「はたなびく」には傍点がついているが、ぼくには付け方がわからない。)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 近況報告 | トップ | 優しい歌 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事