2013年8月12日の続き
そして8月13日、いよいよ親不知へ
黒岩山山頂までたどり着いたのでした。
標高もすでに1600m台、風景も次第に変わってきます。
残雪もわずかとなっており、何より気温の上昇と日射がきつい。
北アルプスというよりは上越付近の山の雰囲気に近い。
栂海新道の特長は、これを開いた小野氏の著作にもあるように
とにかくすべてのピークをなるべく巻かずに通っていくというところにあります。
最もこの辺りの山は左右が険しく、無理に巻道を作るのもままならないかもしれません。
また地元の山岳会が開いた道ということで
大変失礼ながらもっと細くて頼りない道を想像していたのですが
ご覧のとおり、ほとんどの部分はしっかり刈り払いされていて整備されています。
文子の池
朝日岳もずいぶん遠くなった。
下の写真の右手奥のピークが犬ヶ岳、本日の宿、栂海山荘の建つところです。
サワガニ山に到着
このときがこの日一番きつかったかな。
暑くて暑くて、周囲に大きな木もないので灌木の下にシートを敷いてもぐりこんだ。
飲み物とゼリータイプのサプリメントをとるとようやく落ち着いた。
犬ヶ岳への道はまだ続く
それでもガスがわいてきて、時々日が陰るようになると
多少暑さも和らぐ。
北又の水場に着いた。
沢沿いに数分で湧水の出るところに至る。
冷たい水に生き返る思い。
すっかりガスに覆われた尾根を登っていくと、犬ヶ岳の標識。
頂上を東側に超えたところでゴールが見えてきた。
小屋に到着です。
一番乗りで入ることができました。
まずは小屋に入って床の埃を掃除した後、
部屋の奥に寝る場所を確保。
ホッと一安心したところで、とっておきのものを取り出す。
保温袋の雪はまだ融けていませんでした
キーンと冷えたビールがうまい!
しばらく小屋の前でまったりしていると、後続のパーティーが到着してくる。
いつの間にか小屋はいっぱいになってしまった。
テント組も小屋の前の広場に何張りかの居を構えあとは食事をして夜を待つのみ。
小屋の中のテーブルで食事を作り出す。
とっておきのもう一本が登場。
この日の晩御飯はカップヌードルライスシリーズのどん兵衛。
ソーセージ、小魚他つまみもの、そして味噌汁。
同じテーブルで一緒に食事をした若者3人プラスおじさん一人(私です)
そのうちのお一人(KMさん)はなんとここまで上高地、穂高から始まりずっと縦走してきたとのこと。
流石の若さ!元気な行動に感心。
ビールのあと、ウィスキーの残りもわけあい山談義、
そんな山の話をしながら夜は深けていく。
翌朝
昨日よりはどんよりした空。
それでも天候に問題はありません。
今日も午後は暑くなるだろうということで、早めに行動するのが吉。
夜明けとともに行動開始。
犬ヶ岳からは一気に下っていく。
看板が読みにくいですが途中のピーク、黄蓮山です。
これを超えると、周囲の灌木がブナの森に変わります。
黄蓮の水場の分岐、今回はパス。
朝日が差し込む森の中の道を進む。
菊石山到着
この付近でアンモナイトが発掘されたことに由来
さらに下って鞍部を超えると下駒ケ岳の荒々しい斜面が見えてきます。
岩場の右手の道を、木の根に捕まるように登っていくと山頂。
さらに登り降りを繰り返し、本日の山場とみていた白鳥山の登りへ。
(山場といえば全部山場ですが )
思ったほどのこともなく山頂に到着。
昨日黒岩山で追いついたご夫婦が先着していました。
昨晩はテントで黄連の水場の近くに泊まっていたとのこと。
失礼ながら見かけはかなりお年を召しておられるようでしたが、
なかなかの健脚、バイタリティー。
お話を聞くと、お仕事を引退してから山梨に移り住み
山三昧の生活をされているとのこと。
何ともうらやましいお話ではないでしょうか。
白鳥小屋の屋上展望台に登るお二人。
小屋の上からは周囲が良く見えましたが、この時は快晴でも靄がかかったように遠目が聞かず。
それでも遠くに昨日登った朝日岳、その手前に昨晩泊まった犬ヶ岳が見えています。
ここからしばらくは緩やかな縦走路をしばらく歩く。
標高1150mを切ったあたりで次第に下りは急になり、
ぐいっと下がって尾根上にピークと谷間が混ざったような複雑な地形が現れる。
その谷間に沸いているのがシキ割の水場。
暑さの中を歩いてきた身には本当にホッとするオアシスです。
休んでいると間もなく先ほどのご夫婦も降りてきました。
こんなところで冷たい水を飲んだ時の表情は皆さんおんなじですね。
ここから坂田峠まで一気の下り。
途中梯子や、鉄の階段も現れる険しい道です。
歩いている途中で先方に現れた人に声をかけられた。
何かと思えばTV局のインタビューだという。
TB〇の報〇特〇だそうです。
栂海新道のことでいくつか聞かれ、
特に差しさわりのないことだったので答えてあげた。
舗装された林道が横切る坂田峠に到着。
10時をちょっと回ったくらい。
休憩時間込みでほぼコースタイム通り。
下りが多い割には時間がかかったかな。
ここでコーヒーとチョコバー他で休憩。
合わせてとっておきのアミノバイタルパーフェクトエネルギーを補給。
親不知までの最後の行程に備える。
ここから海までは小さなピークをいくつか超えねばならない。
だんだん気温も上がって負担が大きくなってきた気がする。
キノコなんぞ見ながら頑張りましょう。
尻高山は展望のないピーク。
ここから西に折れて二本松峠へと下る。
この辺りはすでに北アルプスではなく奥多摩を歩いているような雰囲気。
それでも森の中はそこそこ涼感があるが、
日が差すと途端に体感気温が10度はアップする。
再び林道を横切る。
アスファルトの道を横切る5mが地獄のように暑い。
さらに下って二本松峠。
ここはかつて日本海と、上路の集落を結ぶ道が通っていたという。
今は峠道は廃道となり、栂海新道が横切っていると近くの案内板に書いてあった。
・・・
「それなら、その峠道を復活させれば、ここから登りなしで日本海にまっすぐ降れたのでは?」
・・・
といっても始まらず、栂海新道はご丁寧に次のピーク目指して登っていくのでありました。
ここを開いた小野健さんの強い意志と執念を感じさせるルート取りです。
二本松峠を越えてもう一度登り返したところが入道山。
山の名前の付いたピークはようやくこれが最後です。
しかしこの後さらに小さなピークを二つばかり超えて、
こんどこそ親不知に向かって降りていきます。
北アルプスの北のはずれ、日本海に向かって急角度で降りていく。
すでに国道を走る車の音が聞こえています。
逸る気持ちを抑えて着実に歩くよう心掛ける。
林道を横切るとゴールは近いぞ。
そしてついに出た!
国道沿いの登山口です。
向こう側に親不知観光ホテルが見えました。
ここで先着していたKMさんと再会。
私の一時間前について、すでにお風呂に入ったとのこと。
流石さすが!
一緒に記念写真を撮って健闘を称えた後、KM君はホテルの送迎で親不知へ、
私もここで温泉につかりますが、その前に海に行かねば。
このホテルはまだ標高70~80mの断崖の上なんです。
急な階段を下っていくと、
青い海が見えた!
逸る気持ちを抑え浜へ
やった~ 標高ゼロメートル
白馬から歩いてきて、高山植物あふれる稜線から、海まで長かった。
穏やかに打ち寄せる波の音を聞きながらしばし、ボ~とする。
再び急な階段を登ってホテルへ。
ここの温泉は栂海新道の登山者には15時のタイムリミットで
(入れる時間ではなくお風呂を出る時間ですので注意)
お風呂を提供してくれます。
親不知まで車で送迎してくれて¥1500なので
タクシー代を考えればまずまずリーズナブルかと。
何より数日分の汗を流さねば都会には帰れない。
私が付いたのがKM君に続いて二番目だったようで
お風呂は独占状態。
海の眺めがすばらしかったので、お風呂の様子も撮ってみました。
湯上りには言うまでもなく・・・
さっぱりして外に出ると、白鳥山で一緒だったご夫婦が降りてきた。
お疲れ様~
親不知まで送ってもらい、あとは電車を乗り継いで東京へ。
白馬から先は初めてのコース、雪倉岳、朝日岳、黒岩山に至るまでの
お花畑の素晴らしさは北アルプスの中でも白眉と言えるでしょう。
そのあと念願の栂海新道を歩きとおして、じんわりと満足感がわいてくる。
犬ヶ岳から親不知に至る道は、夏場はやはり暑くてつらい行程です。
必ずしも誰にでもお勧めとは申しませんが、
自分としては十分に満足のいく山行でした。
それにしてもこの長い縦走路、今思い返すだけでも道を開くことの苦労がしのばれます。
ここを開いたさわがに山岳会の方々に感謝!
そしてそれに限らず北アルプスをはじめとする、いろいろなルートで山登りが楽しめるのも
先人のパイオニア精神と粘り強い努力なくしてはありえないのだと実感しました。
おしまい