富山マネジメント・アカデミー

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IT技術が拓いた生薬と、製薬化学の高度化

2019年05月20日 | Weblog

富山大学のPMEのリーダである篠原教授からお誘いを受けて、今年、2月だったか、研究シンポジュームを傍聴した。過去は、芍薬が薬品として効果があると分かっていても、その薬効成分を純粋な物質として抽出し、その分子構造を明らかにする方法がみつかっていなかった。ところが、薬学の知識が全くなく、ただ、化学と情報技術、とくにAIのデープラーニングをもとに、すでに分子構造式が確定している物質Aと、例えば、「芍薬」のエキスBと混合し、そのうえで成分分析をして、A+Bから改めてAを引き算すると、Bの分子構造が推論的に導かれるという。これまでは、Aから不純物を除き純化させるという単純な目的合理にとらわれ、逆に、他の素性が確定した物質との混合物を作り、そこから未確定なAの分子構造を突き止めるという「和漢薬屋」では出来なかったことができるようになった。こうして、富山では、バイオ製薬の科学実証に大きな可能性が開かれた。漢方という胡散臭い魔法の製薬から脱し、分子構造が次々に確定されたら、欧米に起源する医薬品と、東洋医学で経験主義で語られてきた生薬とが、この富山の地で融合することになる。だから、上市にある薬草園は、県としてはリニューアルし、水田の高度利用、観光利用、さらに製薬原料へと発展できるので、予算が投下された。正確な分子構造を導く技術が、薬業のなかからうまれたのではなく、冨山大の工学部・理学部の物質科学と情報科学との融合で生まれた意義は大きい。


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