座禅草ここは浄土か現世か
嬰児を抱く慈母めきて座禅草
座禅草地より湧き来る笑ひ声
怨念をここに鎮めて座禅草
のどけしや生きる営み睦まじく
春愁や我思ふ故に我在りと
眼差しの先に幸あれ巣立つ春
制服のボタンに思ひ交はす春
現世は仮の止まり木雁の風呂
ゆっくりと回る地球の雨水かな
雨水とや頑固な脳を解かむと
亀鳴くや民の声なき声数多
生く途に多き屈託亀鳴きぬ
廃寺の崩れし伽藍藪椿
少年の一つため息春の愁
二ン月やひねもすのらりくらりゐて
義理チョコと判りながらも春うらら
サックスの少女煌めく菜の花忌
坂の上に一つ雲あり菜の花忌
薄氷や青春の日々遠くなり
この星に広く生き鳥雲に入る
凧揚げの園児ら風を拾いけり
凧の糸切れて故郷を離りし奴
風吹かず揚がれぬ凧で七十坂
恋初めし十二のあの日雪割草
雪割草谷の瀬音の速み来て
越前の訛りの少女雪割草