まむし草

言問ふてみたや里路のまむし草

（こととうてみたやさとじのまむしぐさ）

 

故郷の消息如何にまむし草

（ふるさとのしょうそくいかにまむしぐさ）

 

 

蜃気楼

過ぎ来れば辛苦も甘くかいやぐら

（すぎくればしんくもあまくかいやぐら）

 

追へば逃げまた来るをみなかいやぐら

（おえばにげまたくるおみなかいやぐら）

 

翁草

老心のゆるむ欠伸や翁草

（ろうしんのゆるむあくびやおきなぐさ）

 

同級生に聞き合ふ齢翁草

（どうきゅうせいにききあうよわいおきなぐさ）

 

木の芽晴

今泣いた子がもう笑ひ木の芽晴

（いまないたこがもうわらいこのめばれ）

 

人柄ののぞく笑顔や木の芽晴

（ひとがらののぞくえがおやこのめばれ）

 

ハナミズキ

花水木幼き恋の芽生えめき

（はなみずきおさなきこいのめばえめき）

 

幸せの小箱開くか花水木

（しあわせのこばこひらくかはなみずき）

 

春灯・春眠

春眠の夢に彷徨う昭和かな

（しゅんみんのゆめにさまようしょうわかな）

 

早逝の友を偲びて春灯

（そうせいのともをしのびてはるともし）

 

春灯や記憶の中のもらひ風呂

（しゅんとうやきおくのなかのもらいぶろ）

 

残花

緞帳の降りし余韻や残り花

（どんちょうのおりしよいんやのこりばな）

 

遠き日の褪せし恋文残り花

（とおきひのあせしこいぶみのこりばな）

 

十三詣り

おかつぱをおさげに十三詣かな

（おかっぱをおさげにじゅうさんまいりかな）

 

少年の照れある笑みや知恵貰ひ

（しょうねんのてれあるえみやちえもらい）

 

懸想文

書きては捨つる懸想の文や落椿

（かきてはすつるけそうのふみやおちつばき）

懸想文、若いときは、よく書いたものです。

 

癒えてまた恋と言ふ名の麻疹かな

（いえてまたこいというなのましんかな）

 

落し角

落し角老いてまあろくなりにけり

（おとしづのおいてまあろくなりにけり）

 

昔日の企業戦士や落し角

（せきじつのきぎょうせんしやおとしづの）