『-less [レス]』、観ました。
イブの夜、毎年恒例のクリスマスパーティーに出席するため、車を走らせる
ハリントン一家。近道である人気のない森へ向かったが、いくら車を
走らせても目的地にたどり着かない。やがて、道端に赤ん坊を抱えた
白いドレスの女が現れ……。
さすが数々の映画祭で賞を受賞したというのも頷(うなず)ける。近年の
サスペンスホラーの中では出色の出来栄えだ。『ソウ〈SAW〉』よりも‥、
『CUBE』よりも‥、ボクは本作の方が断然上だと思った。“夜のドライヴ”
というシチュエーションだけで、このサスペンスを成立させ、完結させて
しまうのは脚本の凄さ。ひたすら続く一本道…、車が止まれば“誰かが死ぬ”。
辺りは“闇”が支配して、逃げ出したくても逃げ出せない‥‥、なるほど、
こういう“密室”の作り方もあるのかと、思わず感心させられることしきり。
まさにアイデアの勝利だね。
さて、映画は、あらかじめ観る側に「何かある」と暗示させてはいるが、
決して“どんでん返し”だけを売りにしたサスペンス映画ではないと思う。
カンの良い人なら、そのタネは10分も観てれば分かっちゃうだろうし、
そして、ボクもその一人‥。いや、むしろ、この作り手は、それがバレても
構わないとの覚悟の上で、物語を進行しているようにさえ思えてくる。
満天の星空…、顔に傷のある女…、黒い車…、ジングルベルの歌…、
地図にない街…、食べられることのないクリスマスケーキ…、そして
妻の浮気話さえも……、それらは一見、何の変哲もない事柄のようで、
実はある状況とある状況とが重なった時に、突如として“恐怖のディテール”に
変貌し、観ている我らに襲いかかってくる。時としてグロやショッカー
演出もあるけれど、最小限に抑えてあって、ボクはあまり気にならなかった。
ふー、久しぶりに“体の芯”からゾクゾクするような震えが湧き上がってきた。
やっぱりスリラーはこうでなくっちゃ。