肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『アドルフの画集』、観ました。

2005-09-25 15:38:18 | 映画(あ行)
アドルフの画集

アミューズソフトエンタテインメント

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 『アドルフの画集』、観ました。
1918年、第一次大戦で片腕を失い画商として人生を踏み出したユダヤ系
ドイツ人マックスは、画家志望の青年アドルフ・ヒトラーと出会う。彼は
ヒトラーの心の内に秘めた 孤独や怒りを絵画へ傾けるように示唆するのだが‥‥。
 アドルフ・ヒトラーが貧家の出身で、画家志望だったのは有名だ。
しかし、その画家を目指した彼が何故“ナチの総統”になってしまったのかは、
意外にもあまり知られていないじゃなかろうか? うん、ボクも知らなかった。
ここにはその一つの過程を描きつつ、如何にして彼が悪の領域に足を踏み入れて
いったのかが記されている。勿論、それはあくまで“想像の物語”であって、
全部鵜呑みにすべきではないと思うが、歴史に基づいたフィクションとして、
なかなか興味深く観る事ができました。まぁ、ぶっちゃけ、物語の信憑性は
1割、もしくは2割程度だろうがね(笑)。
 さて、このヒトラー映画の特徴は、そのままヒトラーを主人公にするのではなく、
主人公を別に置いて“ヒトラーでない彼の視点”からヒトラー像を描いていくところ。
また、時代的にもその類(たぐい)稀なるカリスマを武器に大量虐殺を行った
“彼の絶頂期”を描くのではなく、むしろ“冴えない30男”として‥‥
画家の才能を開花できずに“別のベクトル”に向かってしまった(向けられて
しまった?)“若き日の彼”を描いているのもユニークだ。ボクが今作を
観て思うのは、結局、歴史の“面白さ”とは‥‥、そして歴史の“怖さ”とは‥‥、
ひとつのボタンの掛け違いや歯車のズレから始まるんだってこと。
ある部分の小さく僅かな歪みが、徐々に大きくなっていき、終(つい)には
もはや修復できない亀裂となっていく。もしヒトラーに画家の才能があったなら‥‥
もしヒトラーに全ての人さえ惹きつける演説の才能が無かったら‥‥
彼のような、「戦争」という“悪魔が 生んだ怪物”は登場しなかったかも
しれない。この映画で重要なのは、ヒトラーが どんな大罪をしでかし、
何人虐殺したのかじゃないのです。何故ヒトラーという怪物が生まれてしまったのか?、
そして、何が彼をそうさせてしまったのか?、なのです。
「歴史に学ぶ」とは‥‥、つまりそういうことだ。


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