肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、観ました。

2012-02-27 16:20:22 | 映画(ま行)

監督:スティーブン・ダルドリー
出演:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー

 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、映画館で観ました。
9.11同時多発テロで父を亡くした少年オスカーは、父の死を受け入れられずに
日々を過ごしていた。そんなある日、彼は父の部屋のクローゼットで、封筒の中に
1本の“鍵”を見つける。この鍵は父が残したメッセージかも知れない。オスカーは
その鍵の謎を探しに、ニューヨークの街へと飛び出した……。
 アメリカにとっての9・11や、ここ日本における3・11のような悲劇に直面すると、
その度ごとに“人間同士の絆”を思い知らされる――。
親子の絆、家族の絆、地域の絆、それから社会全体の絆――。
これは、あの(『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』)スティーブン・ダルドリー
監督にして、あっけないくらいにシンプルな物語だ。父を失った少年の、絶望と
再生を描いただけのもの――、その一言で言い切れてしまう。ひとつ付け加える
ならば、《同じ傷を心に持った、多くの人との出会いを介して》だろう。しかし、
そのシンプルな物語に込められた人々の想いは、例え何千何万の美辞麗句を
もってしても伝えきれない。言葉ではなく、理屈でもなく、この映画は“観る者の
心”に訴えかけてくる。考えるのではなく、“感じて”欲しい。ゆえに、今作の
スティーブン・ダルドリーは、あえて“正攻法”で挑んだだと思う。
あの日、心についた傷の深さは、地球の裏側まで掘り続けたってたどり着けない。
力になりたい。。。
何か自分がしてやれることはないか。。。
困っているなら助けたい。。。
泣いているからハグしたい。。。
何でも良い。この映画で、主人公の少年が訪ねる多くのブラックさんは、
何処ぞの誰かも知らない少年に同情を寄せ、真心をもって接していく。
あの日、皆、同じように心に傷を受け、同じように涙に暮れた。
それは“相手の、心の痛み”が分かったから――。
“相手の、傷の深さ”を知ったから――。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い――。
それは、人と人との“心の距離”であったり、“絆”であったり――。
そして、それは多分、あっけないくらいにシンプルだ。


楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル

 

 


『ソーシャル・ネットワーク』、観ました。

2012-02-25 21:16:23 | 映画(さ行)

監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ジェシー・アイゼンバー、アンドリュー・ガーフィールド
※2011年キネマ旬報ベストテン2位

 『ソーシャル・ネットワーク』、観ました。
マーク・ザッカーバーグは、友人のエドゥアルドにサーバ費用などを提供してもらい、
ハーバードの学生だけが使える“ザ・フェイスブック”を作る。ザ・フェイスブックは
すぐに多くの会員を獲得し、ハーバード大生以外にも人気を広げていた。しかし、
マークは、「アイデアを盗用された」と訴えられる。そして、サイトが大きくなり、
マークが“ナップスター”の創始者に心酔するようになると、親友のエドゥアルドも
マークから離れて行く…。
 例えば、『セブン』における『野良犬』、『ゾデァック』における『大統領の陰謀』が
そうであったように、デヴィッド・フィンチャーの作品は、過去の名画を骨格にして
組み立てられていることがある。ならば、この『ソーシャル・ネットワーク』の場合、
それは『市民ケーン』となる。若くして成功し、巨富を手にし、世界を支配した
(かに見えた)主人公――。しかし、そのサクセスストーリーの裏側で、“孤独な
権力者”の人生が浮き彫りになっていく。『市民ケーン』でいうところの“薔薇の
蕾”を、本作における“エリカ(恋人)の愛”、“エドゥアルド(親友)の友情”に
置き換えれば、自ずと両作品の繋がりが見えてくる。が、そうはいっても、現実的な
見地から言わせてもらうと、確かに『市民ケーン』の偉大さは認めるものの、
現在の若い人からみれば“単なる古典”にしか過ぎないのも事実。この『ソーシャル・
ネットワーク』の秀逸さは、その古典を“現代のネット社会”に置き換えて、
人物設計も“現代の若者が持つ考え方”に全く違和感なく再構築されている点だ。
また、主人公の築いた帝国が、ネットという見えない社会だからこその“脆さ”を
際立たせ、“砂上の楼閣”であることを明確に伝えている。オイラは十代の時に
『市民ケーン』を観て衝撃を受けた側の人間だが、もし今、真っさらな状態で
両作品を比べたら、『ソーシャル~』に方に軍配をあげるかもしれない。
 さて、急成長するデジタル的なネット社会と、その対比としてのアナログ的な
対人関係が、この映画を観る上での重要ポイントだ。ウィンクルボス兄弟の件は
さておき、当初、主人公らが立ち上げたサイト“ザ・フェイスブック”は、主人公の
マーク・ザッカーバーグが技術部門を、その親友のエドゥアルドが経営部門を
受け持ち、デジタルとアナログの両輪でもって成功を収めていた。が、ある時から
デジタルの急成長にアナログが付いていけず、両者のバランスが崩れ、デジタルだけが
暴走を始める。観ていてオイラが怖くなったのは、そこには大の大人達がネットの
アクセス数をみてはしゃぎ回り、毎夜毎晩怪しげなパーティに明け暮れる堕落した
光景だ。しかも、そこに集まった彼らは、ドラッグや酒を介してのみ集まった
“希薄な繋がり”にしか過ぎないのだ。いや、そもそも主人公にとって“フェイス
ブック”とは何だったのか??、少なくとも、お金が目的ではない。恋人エリカに
もう一度振り向いてもらうため――、その、たった一つの繋がりを欲して、(自らの
ブランド力を高める為)自分を誇張し続けたのだ。しかし、人と人が“(真の)信頼”を
築く上で、名声やブランド力なんて必要ない。それは、エドゥアルドとの友情を
蔑(ないがし)ろにしてまで、伝説の人(?)ショーン・パーカーのブランド力に
飛びついた“主人公の盲目さ”をみれば明らかだ。そう思うと、人間って、皆愚かで
哀しい生き物だ(涙)。それから、インターネットにおける“見えないネットワーク”と、
生身の人間同士が織り成す“見えない絆”――、同じように見えて(いや、見えなくて?)
全くの別物だな。


楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル

 


『ドラゴン・タトゥーの女』、観ました。

2012-02-13 16:36:43 | 映画(た行)

監督:デビッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、ステラン・スカルスガルド

 『ドラゴン・タトゥーの女』、映画館で観ました。
月刊誌「ミレニアム」で大物実業家の不正行為を暴いたジャーナリストの
ミカエル。そんな彼のもとに、ある大財閥会長から40年前に起こった
兄の孫娘失踪件の調査依頼が舞い込む。連続猟奇殺人事件が失踪に
関わっていると察知したミカエルは、天才ハッカー、リスベットにリサーチ
協力を求める――。
 2時間38分の長丁場、それを映画館で観るのは相当覚悟(?)がいったが、
この内容ならば致し方ない。むしろ、この濃密な内容を、よくぞ2時間半に
まとめ上げたと言うべきだろう。ここ日本でいうところ、横溝正史ばりに
過去の事件にまつわる“呪われた一族”の内幕を描く上で、どうしても
その入り組んだ家系図がネックになってくるが、思いのほかスマートに
整理され、観ていて混乱することはない。想像するに、原作の方では、それら
一族の一人一人にきっちりスポットを当て、性格から生い立ちまで事細かに
描かれているだろうが、この映画ではその内の何人かを省略し、重要性の
高い人物のみに絞って描かれているんだろう。まぁ、その代償として
犯人が特定し易くなってしまった弊害もあるが、もしやデビッド・フィンチャー
監督からすれば、それも計算の内か――。と、いうのは、そもそもこの映画は
“犯人探し”に主観を置いていないのだ。事件の背景にある“闇の部分”を
如何にあぶり出すか――、それがこの作品のコンセプトだったはず。
事件の犯人探しのハードルを下げたせいで、観る側に“映画のテーマ”が
ぐっと見えやすくなった。それは、メインとなる“少女ハリエットの失踪事件”を
挟む形で、前後にたっぷり時間を割いて描かれる、主人公ミカエルと大物実業家
ヴェンネルストレムの対立を見ても明らかだ。 今も昔も、この世界を支配して
いるのは、“悪”であり、“闇の力”だ。そして、厄介なことにそれらの悪は、
決して表舞台に出ることなく、“闇の奥”に隠れて、人知れず鋭い爪を磨ぐ。
仮に、何者かその正体を暴かれそうになっても、その強大な力でもって
制圧してしまう。ならば、我々がそれに対抗する手段は――、法律?、警察?、
マスメディア?、いや、悪は、法の抜け穴を利用し、警察の追っ手から巧みに
逃れ、マスコミさえ支配する。残された道はただ一つ‥‥、鬼を狩るに鬼。
怪物(=不正者)を倒すには、自らも怪物になって立ち向かうしかないのだ。
ハッキング、盗聴、偽装等、数々の不正を擁して戦う者――、それがリスベット。
ドラゴンのタトゥーは、その“怪物の象徴”だろう。そして映画終盤、“現代の
悪”ともいえるヴェンネルストレムは、“更なる悪”であるマフィアによって
制裁を受ける。結局、法も、警察も、マスコミも、無力のまま。そこに残された
事実は、《悪は悪でしか裁けない》というパラドックス――。哀しいけれど、
そんな世界に我々は生きている。

 
楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル