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一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』、観ました。

2006-02-27 21:21:50 | 映画(あ行)

ウォーク・ザ・ライン 君につづく道

 『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』、映画館で観ました。
1950年代のアメリカ。貧しさから抜け出すためプロミュージシャンになった
ジョニーは、憧れのカントリー歌手ジューンと共演する。日ごと彼女への
思いを募らせるが、ジョニーは既婚者。ジューン自身も離婚の傷が癒えぬまま。
叶わぬ思いから、ジョニーはドラッグへと逃避するようになる……。
 時に、たったひとつの言葉が、人を殺すことがある。特に多感な少年期に
付いた“心の傷”は、トラウマとなってその後の人生を大きく狂わせるのだ。
映画は、伝説のカリスマスター、ジョニー・キャッシュの半生を描きつつ、
彼の成功の裏に隠された光と陰…、強いては、少年期に兄を失い、父の心ない
一言によって“心を失った男”の苦悩が浮かび上がってくる。そういえば、
ボクの場合も子供の頃、父から受けた“ある一言”が悔しくて、幼なながらに
人間不信になったことがあるからね。観ながらボクは、当時の事を久方振りに
思い出してしまったよ。更に注目したいのは、今回主人公を演じるホアキン・
フェニックスは、映画の話そのままに、偉大な兄(リヴァー・フェニックス)を
失った“経験者本人”でもあるということ。そう思えば、彼の兄に対する憧れと、
常に比較対象とされ、残された弟としての苦しさが痛いほどに伝わってくる。
彼の口から発せられる一言一言に説得力が生まれ、重みを感じるのは、きっと
そのせいなんだろう。この映画の、この役は、彼以外には考えらない‥‥、
彼のライフワークみたいな映画かもしれないね。
 でも一方で、これをラブストーリーとして観てみると、ひとつやふたつは
心に引っかかりを覚える人も多いはず…。まず、主人公はリース・ウィザー
スプーン演じるヒロインの、何処に惹かれて夢中になったのかがよく分からない。
恐らく、少年期に“兄と共に愛したアイドルスターへの憧れ”なんだろうが、
だとしたら、捨てられた奥さんと娘さん達があまりも可哀想に思えてくる。
それから、ヒロインの方もさんざんプロポーズを断わり続けて、どの瞬間に
主人公を愛したのか…、信じられたのか……、ラストシーンを観た限りじゃ、
公衆の面前で脅迫されて、嫌と言えずに泣く泣くOKしたみたいだものね(笑)。
確かにハッピーエンドにゃ違いないが、全てをメデタシメデタシで終わらせる
ほどスッキリはしない。観る人によって賛否の分かれる映画だと思うよ。

 



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