肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『アーティスト』、観ました。

2012-04-17 14:14:49 | 映画(あ行)

監督:ミシェル・アザナビシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル
※第84回アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞

 『アーティスト』、映画館で観ました。
1927年のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、
ふとしたハプニングで女優志願のペピー・ミラーと出会う。やがてジョージは、
オーディションを受けにやってきたペピーと再会。その日を境にペピーはエキストラから
少しずつ上位の役をものにする。1929年、トーキー映画が登場。しかしサイレントに
こだわったジョージは、自ら監督・主演した映画が失敗し、失意のどん底に。一方、
ペピーは大スターになっても、ジョージを思う気持ちは変わらなかった――。
 例えば、身近なところでいうと、“ラヴソング”においての見どころ聴きどころって
何だろう。ストレートな歌詞??、飾らない言葉??、はいはい、どこぞの時代には
「♪あ~いが すべ~てさ」の一言で全部言い切っちゃうのもありました(笑)。
まぁ、若さゆえの特権で、たまにはそれもアリだと思うが、オイラの場合は
「好きだ」とか「愛してる」とかいう言葉に使わずに、如何にその想いを伝えるか、
愛の深さをどう表現するか――、それが“アーティストの技量”だと思うんだ。
勿論、音楽だけに限らず、文学でも、詩学でも、演劇でも、絵画でも、そして
映画でも‥‥、愛を描くすべての芸術家(アーティスト)にとって、それは永遠の
テーマだろう。前置きが長くなったが、この映画が今更ながら“サイレント”に
拘ったのは、“一切の言葉”を使わずに、如何に“愛の深さ”を表現するか――、
まさにそこだと思う。映画序盤の撮影現場、大スターの主人公とエキストラの
ヒロインが、セットの下から覗くタップによって“二人だけの会話”が成立し、
恋に落ちる瞬間は観ていてうっとりしてまう。また、主人公のお陰で役を貰った
ヒロインが、その楽屋に忍び込み、彼のスーツに片手を通し、一人抱擁する
シーンは、恋する彼女の心情を雄弁に語っている。一方、それとは対照的に、
主人公が妻へと贈る(ご機嫌取りの)ネックレスも巧妙だ。シーン毎、
そのネックレスに変化を持たせることで、夫婦間が日に日に冷めていくのが
伺いしれる秀逸な演出だ。更に、一番印象深いシーンとして挙げたいのが、
映画会社から“サイレントの終焉”を告げられた主人公が、再びヒロインに出くわす
場面だ。しかも、その場所が“階段”というのがミソ。階段の上から下りてくる
(=スターの座から転げ落ちる)主人公に、取り巻きを連れて意気揚々と階段を
上ってくる(=いざスターダムに駆け上がらんとする)ヒロインがすれ違う。その後、
段の一つ上から見下ろす形で、ヒロインが主人公に話し掛けるシチュエーションは、
その地位が逆転した両者の、今の状況をワンショットで明確に伝えている。
 この映画を観終わって、改めて思うのは、サイレントからトーキーへ、モノクロから
カラーへ、更にはCGの進歩や3D映像など、それらの技術に伴って映画は発展の
一途を辿っている。しかし、一方で、映像の引き出しが多くなってしまったことで、
“奥行き”がなくなってしまってはいけないのだ。ここでいう“奥行き”とは、《人の心を
描く》ことだ。そういう意味で、ここには“(忘れかけていた)映画の美しさ”を感じるし、
何より“アーティスト(作り手)の技量”を実感した。


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