肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『インベージョン』、観ました。

2008-03-31 21:35:53 | 映画(あ行)





監督:オリバー・ヒルシュビーゲル
出演:ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、ジェレミー・ノーサム、ジェフリー・ライト

 『インベージョン』、観ました。
精神科医のキャロル・ベネルは、元夫タッカーから息子オリバーへの面会要求を
受けていた。離婚してから全くオリバーに興味を示さなかったタッカーの突然の
要求に戸惑うキャロル。その頃、彼女の周囲で不可思議なことが起こり始める。
夫が別人になってしまったと訴える患者、謎の言葉を発しながら車に轢かれる女性、
その事故の目撃証言を要らないという警官。そんな中彼女はオリバーをタッカーの
元へと送り出すのだが……。
 果たして“オリジナル”を知っている人からみれば、この映画はどんな風に
映るだろうか。いや、その前に、かれこれ、このネタが映画化されるのは今回で
何回目??、オイラが知ってるだけでも、①『ボディ・スナッチャー/恐怖の街(ドン・
シーゲル監督版)』、②『SF/ボディ・スナッチャー(フィリップ・カウフマン監督版)』、
③それから90年代にも同名タイトルで一本(←だたし、残念ながら、これに限っては
未見デス)‥‥、いわゆる、家族が、恋人が、友人が、会社の同僚が、ある朝
起きてみたら“別人”に入れ替わっていた。昨日までと同じ日常、姿形も同じなのに、
どこか何かが違う。振り払っても、すぐにまた体の底から湧き上がってくる“違和感”、
その“見えない恐怖”がひたひたと音も立てずに忍び寄る…。SFとしての面白さは
モチロンのこと、人間の内面心理に目を向けた“スリラー”としても観ることが
出来る…、と、実際、これまでの3本は、その両者(SFとスリラー)の比率に若干
違いがあったとしても、その範囲内だったと思うんだ。が、今回新たに映画化された
『インベージョン』は、更にそこから“人間の性(さが)ともいうべき、その攻撃性”
について、ひとつの問題を投げ掛けている。人類がこの地上に居る限り、絶える
ことない戦争の歴史、そして、民族間にはびこる憎しみと罵り合い…。ナゾの
宇宙生物が人間の身体を乗っ取り、その数を増やしていくと、イラクや北朝鮮、
中国など、民族間の抗争が終結し、次々と平和条約が結ばれていく。我ら人類から
みれば、宇宙生物の飛来は大層迷惑な話だが、《地球》という惑星単位でみたら、
どっちがありがたいのか…、何とも複雑な気持ちにさせられる。勿論、その完成度
において、今作が先の旧作群を凌駕しているとは思わないが、現在(いま)の
時代背景がよく反映されていて、ボクはこういうアプローチも“有り”かな、なんて…。
 また、もうひとつ、別の見方として、ここにはグロテスクにデフォルメされた
エイリアンも登場しなければ、必要以上な過激描写もほとんどない。加えて、深い
眠りと共に元の人格が破壊され、“別のもの”へと入れ替わる場面においては、
むしろ、ヴィジュアルはこれまでの旧作より後退しているかと思える程“シンプル”に。
先ほど原作に“新たなアレンジ”が施してあるとしたが、逆にここでは原作の特長を
壊さぬよう、その急所となる部分では“敬意と配慮”が感じられる。そう思うと、
ここには、時代の変化とともに“変わりゆくもの”と、逆に、どんなに時代が
移り変わっても“不変なもの”‥‥、その両者が互いが互いを打ち消しあう事無く、
物語の中枢をつかさどるバランスの中で協和している。ある意味、これはリメイク
映画として、正しいあり方だとオイラは思う。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


~哀悼アンソニー・ミンゲラ監督~『イングリッシュ・ペイシェント』、観ました。

2008-03-26 20:39:13 | 映画(あ行)





監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、クリスティン・スコット・トーマス
※1996年 第69回 アカデミー賞作品賞

~~哀悼アンソニー・ミンゲラ監督~~
 『イングリッシュ・ペイシェント』、観ました。
第2次世界大戦中のサハラ。砲撃された飛行機から全身に火傷を負った男が救出された。
記憶のすべてを失った男は身元不明だったため、「英国人の患者」として移送される。
戦争で恋人も親友も亡くして絶望にかられていた看護婦のハナは移動する部隊を離れて、
爆撃で廃墟と化した修道院に患者を運び込み、献身的な看護を続ける。男は断片的に
甦る思い出をハナに聞かせる。彼の名はアルマシー。冒険家の彼は、英国地理学協会に
加わり、アフリカはサハラ砂漠で地図作りに没頭していた‥‥。
 数えて、この映画を観るのは何度目だろう…、4度目?、7度目?、いや、もしかしたら、
それ以上…??、特に若い頃は、繰り返しよく観たのを思い出す。さて、人にはそれぞれ
映画本来の正当な評価とは違うところで、特別な感情を抱く“特別な一本”がある。
ボクにとって、その一本がこの映画、アンソニー・ミンゲラ監督の『イングリッシュ・
ペイシェント』だ。
 では、その事について、もう少し詳しく話そうか。あれは映画中盤あたり、互いに
惹かれ合いながらも後一歩が踏み出せない主人公男女が、突然の砂嵐から狭い
車内に2人だけ、一夜を明かすシーンがある。実は、ボクの人生にも、今も忘れられない
“過去の記憶”として、偶然と呼ぶにはあまりに酷似した“初恋のワンシーン”が
あったんだ。まぁ、ボクら場合は砂嵐とかじゃなく、スコールのような雨だったけど…。
2人だけで過ごした初めての夜、土砂降りの雨の音にさえぎられ、何を話したのか
思い出せない…、いつの間にか抱き合って寝てしまった。あの時、伝えたかった想いと、
結局伝えられないまま、やがて愛を失ったとき、初めて“自らの愚かさ”を知る。
愛の本当の意味さえ知らないで、それを語る資格すらない“独りよがりの愚か者”‥‥、
この映画のアルマシーを観ていると、あの頃の自分のようで息が苦しくなる。結果、
これまでに観たどの映画のどのキャラクターにも経験したことのない感情移入を、
彼にしてしまった…。
 さて、勿論、それとは別に、少し冷静になって考えたとしても、この映画が秀逸で
あるのは間違いない。まず、その特長のひとつとして挙げられるのが、映画は“上質の
ラブストーリー”でありながら“上質のミステリー映画”のような味わいを残す。恐らく、
観客がこの映画を観始めて、すぐに直面する壁――、それは記憶を失ったイギリス人の
患者にまつわる謎、その過去に何があったのか??、という疑問だろう。そして、
そうこうする内、その背後に“K”という女性がいて、両者の間に“秘められた愛”が
存在していたことを知る。しかし、観客は、そのロマンスに酔うのもつかの間、現在の
彼の前に、“ムース”という謎の男が現れる。彼は一体何者なのか‥‥、それが
第二のミステリー。更に、ムースの話のよると、そのイギリス人患者には、スパイの
容疑が掛かっているとも。果たして、患者は本当に“敵国のスパイ”だったのか‥‥??、
それが最後のミステリー。イギリス人の患者が、記憶の断片を呼び起こしていく過程で、
失われた2人の愛が再現され、まるでパズルのピースをはめ込むように、事件の
全体像が徐々にその姿を現していく。諸処のミステリーが観る者の探究心をくすぐり、
幹となるロマンスも、それに負けじと存在感を示している。少なくともボクが知る限り、
これ程までにラブストーリーとミステリーが完璧に融合した成功例は、他にはないと思う。
 一方、“反戦映画”としての観点から、ここに《戦争》を比喩した印象的な言葉が
記されている――戦争での裏切りは、普段の時のそれに比べたら子供騙し――。
その後、主人公は愛のために敵国に自らの魂を売る。愛する一人の女性を救うために、
自らが裏切り者となり、結果として、多くの人命を奪ってしまうという“戦争のパラドックス”。
また、そのイギリス人患者を救おうと懸命の看護を続けるハナにしても、彼を想うがゆえに
自らの手で彼の命を絶ってしまう‥‥、これも悲痛なる“戦争のパラドックス”。しかし、
一見、救いのない反戦映画のようでいて、監督のアンソニー・ミンゲラは、その結末に
“一筋の希望”を残していた。ラストシーン、ついにその役目を終え、修道院を後にする
看護婦のハナ。彼女が迎えのトラックに乗り込むと、目の前には“少女の姿”――。
恐らく、その少女は“世界の未来”を象徴するものだろう。森を走るトラックから高い木に
遮られて、その向こうにある“太陽の光”は届かない。しかし、トラックが深い森を抜けた
瞬間、太陽の眩しい光が“世界全体”を包み込む。それは、いつか来る“戦争の終わり”と、
人類の“明るい未来”を信じるミンゲラの、我々に対するメッセージのように思えてくる。
そのせいだろうか…、映画は絶望的でありながら、不思議な後味の良さが残る――
砂漠の乾いた風によって運ばれていった、2人の愛の記憶と共に。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


『バンテージ・ポイント』、観ました。

2008-03-20 21:08:15 | 映画(は行)
Vantage_1_1b
監督:ピート・トラヴィス
出演:デニス・クエイド、マシュー・フォックス、フォレスト・ウィッテカー、シガニー・ウィーバー、ウィリアム・ハート

 『バンテージ・ポイント』、映画館で観ました。
スペイン・サラマンカ。シークレットサービスのトーマス・バーンズは、同僚の
テイラーと共に、テロ撲滅サミットに出席するアシュトン米大統領の警護に
あたっていた。ところが、広場で大群衆を前にした大統領に、1発の銃弾が――。
狙撃の瞬間を目撃したのは8人。ところが、彼らが見たものはくい違っていた。
バーンズは、暗殺の裏に隠された真相をたった1人で追い始める‥‥。
 予告編を観た段階では、『羅生門』や『ユージュアル・サスペクツ』みたいな、
事実と狂言の複数証言から“隠された真相”を暴き出す、異色のクライム・
サスペンスかなと。どっこい、いざフタを開けてみると、DVD機のAB間リピート
機能(?)さながらに、時空の一定期間を行ったり来たり…。現場に居合わせた
複数の目撃者たちの視点から角度を変えて“多面的に事件”を描いてゆき、
やがて霧が晴れるが如く、事件の全貌がクリアに浮かび上がってくる仕組み。
まぁ、ぶっちゃけ、そこから見えてくる事件の陰謀うんぬんに関しては、予想の
範囲内で目新しいものはあまりなく、序盤の会話を注意深く聞いていれば、
内部に潜む“裏切り者X”の正体も凡そ検討がついてしまうのかも。実際、
普段はあまりカンの良い方でないオイラにして、始まって早々20分くらいで
犯人の目星がついてしまった。いや、むしろ、ここでの作り手は、事件の
真相解明やら犯人探しやら、それらがすべて見破られるのを承知の上で、
この特殊な構成にした“本当の理由”があったのではなかろうか。つまり、
幾度となく巻き戻され、違った角度から再生される時空の中、それぞれの
人生がそれぞれに引き合い、ときに反発し合いながら“一つの、小さな世界”を
作り上げている。そして、それは単に“人生のコントラスト”というだけではなく、
“民族間における考え方の違い”と、終わることのない“テロリズムの縮図”
として、観る者の心に揺さぶりを掛ける。一方、群像ドラマの観点から、
オイラがここで最も興味をひかれた人物は、数ヶ月前、大統領の盾となって
銃弾に倒れ、情緒不安定のまま、今回職場復帰をはたしたシークレット
サービスの男、トーマス・バーンズだ。次第に、事件の全貌が明らかになってくる
過程で、彼が“内なる自分”と闘いながら、“本来の自分”を取り戻していくまでが
事件のナゾを追うサスペンスと並行して、スリリングに描かれていく。それにしても、
トドメは怒涛となって押し寄せるクライマックスのカーチェイス――白昼の市街地で
展開される追跡劇は、フルスピードのまま、道なき道を突き進み、狭い路地から…
はたまた対向車線から予期せぬ障害物が飛び出して、とっさにオレは目をつぶる。
その際、巻き込まれた走行中自動車数知れず…、破壊王と化し、通り過ぎた
後には何も残さない。それは、もう、とにかくスゴいことになってマス(笑)。
欲を言えば、シガニー・ウィーバーにもうチョイ頑張って欲しかったけど、細かく
見ていくと、ウィリアム・ハートやら、フォレスト・ウィッテカーやら、シブ好みの
役者さんがズラリ。そんな彼らの熱演もあってか、単なるサスペンス、単なる
カーアクションに留まらず、見応えのある人間ドラマに仕上がっていると思うよ。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


『デス・プルーフ in グラインドハウス』、観ました。

2008-03-16 20:43:36 | 映画(た行)





監督:クエンティン・タランティーノ
出演:カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、ロザリオ・ドーソン、ヴァネッサ・フェルリト、シドニー・タミーア・ポワチエ

 『デス・プルーフ in グラインドハウス』、観ました。
テキサスの田舎町。人気DJのジャングル・ジュリアは女友達と共にお気に入りの
バーにくり出した。しかし、そこに不気味なシボレーを乗り回す男、スタントマン・
マイクがやってくる。ジュリアたちはバーで会話をするうちに、彼への警戒心を
緩めていくが…。その14ヶ月後、テネシーのとある町。映画撮影に携わっている
キム、ゾーイたちは撮影の合間をぬって車の試乗をすることに。しかしそんな
彼女たちにマイクが目をつけ…。
 この映画を観終わって、存分に理性を掻き乱された今、“B”という言葉の響きが
何と艶やかで魅惑的なものに感じられる。グロもエロも当たり前、暴力・セックス・
ドラック、何でもござれ。いわゆる、モラルとは正義とかクソ食らえの反社会的
ストーリ展開、これぞ有害B級映画の模範解答、慎み深さのカケラもない(笑)。
そこには、知性よりも野性味を、理性よりも本能を、それから、枠に収まり切れない
激しさも――。だけど、それだけじゃない。恐らく、“ハリウッドの反逆児”たる
クエンティン・タランティーノは、これをもって体制側に“NO”を突きつけたんじゃ
ないのかって思うんだ。例えば、イタリア版ヴォーグをウラ本としてコンビニで
買い受けるわ、あのジョン・フォードの名作『怒りの葡萄』を何のリスペクト無しに
笑いのネタにすることも。それから、プラダのベルトを命綱代わりにボンネットへ
乗っかり、暴走するイカれた3人組のオンナども。そう言やぁー、プラダのバッグの
生地はNASAのパラシュートと同じだっていうから(←by ウチの嫁のお友達談(笑))、
ナルホド、理屈が通ってるゼ(笑)。オッと、脇道に逸れかけたんで、さっきの
“反体制”について話を戻すとすると、じゃあ、タランティーノは、何をもって
何に向かって反旗を翻すのだろう…、権力?、富?、名声?、モチロン、それも一つに
あるんだろうが、彼の中で一番大きなものは、ハリウッドを中心にした“今日の
映画業界そのもの”じゃないのか。つまり、技術の進歩と共に、映画作りの流れは
“アナログからデジタルへ”。その辺のアクション映画のアクションシーンでさえ、
CGのオンパレードになっちまった。そのおかげでスタントマンは残らずみんな、
おまんまの食いっぱぐれサ。となれば、事件のターゲットが少しでも業界に精通した
オンナどもに共通していること…、すなわち、こいつ(この映画)はスタントマン・
マイクによる“放送業界・映画業界への復讐”にも見てとれる。オッと、またまた
脱線しかけたので、ちょいと前の“アナログとデジタル”について話を元に戻そうか。
つまり、タランティーノは、この映画をもって日々商業化と肥大化を続ける“今日の
ハリウッド”に対して反旗を翻し、警笛を鳴らす。今一度、生身の人間が命を張って、
本当の危険と向かい合う――チープでも、ドクドクと熱い血潮の激流が感じられる
カーアクションムービーを再現させたかったんだと。その証拠に、フルスピードで
白昼のハイウェイを疾走するクライマックスのカーチェイス…、観ながらオレの
“野生”は呼び覚まされ、いつボンネットから振り落とされ、クラッシュするやも
しれぬ緊張感に、オレの脈打つ鼓動がうなりをあげる。久しくハリウッドのメジャー
作品では味わえなかった“骨の髄まで突き抜けるような快感”…。だけど、同時に、
そこに至る過程で、タランティーノは改めて“アナログの面白さ”を証明してみせた。
立派なメッセージ映画だと、オレは思うゼ。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



『明日への遺言』、観ました。

2008-03-11 20:52:24 | 映画(あ行)
Asita_0
監督:小泉堯史
出演:藤田まこと、ロバート・レッサー、フレッド・マックイーン、リチャード・ニール、富司純子、蒼井優、田中好子


 『明日への遺言』、映画館で観ました。
1945年、横浜地方裁判所では戦争犯罪行為の命令者であるB級戦犯、及び実行者の
C級戦犯の裁判が行われていた。東海軍司令官だった岡田資中将と部下19名は
空襲の際、パラシュートで降下した搭乗員を捕虜として扱わず、正式な手続きを踏まずに
処刑したことで殺人の罪に問われていた。フェザーストン主任弁護士の弁護のもと、
岡田は、すべての責任は自分にある事を主張するが…。
 この映画を、一人でも多くの日本人に観て欲しいと思った。そして、この映画を観た
世界中の人々が、今よりほんの少しでも“敗戦国としての日本”を考える切欠(きっかけ)
になって欲しいとも。勿論、これは“日本の戦争責任”についてあれこれ、その後の
“軍事裁判の公正さ”についてどうこう、そんな事を問いたい映画じゃない。ボクが
知るに、《戦争》とは、攻撃する側とされる側、その両者を善悪で単純に分けるなど
出来ないし、まるで多面体のように、見る方向・見る角度・見る時間によって
“その姿形”を変えてしまう。つまり、それが戦争を語る上での難しさだと思うんだ。
この映画の特長にして、その凄さは、一切の戦闘シーンもない、フラッシュバック
(回想シーン)もない、そのほとんどが《法廷》という“限られた空間”でありながら、
それぞれ立場の違った人物から“この軍事裁判”を立体的に描いている点だ。確かに、
物語全体を通しての主人公は藤田まこと扮する岡田中尉であるのだが、アメリカ人
でありながら岡田の良き理解者となる弁護人、逆にことあるごとに噛み付く検察官、
最後まで中立な姿勢を貫く裁判官、更に、それを無言のうちに見守るだけの妻‥‥、
それぞれにそれぞれのドラマがあり、少し観方を変えていくと“それぞれが主人公”に
なり得ることができるのだ。例えば、主任検察官バーネットは、裁判を進めるうち、
次第に岡田の人柄に惹かれていくが、自らに課せられた使命と立場の狭間で、再び
岡田へ厳しい対応を迫っていくことになる。映画では、その背景にある複雑な事情に
至るまで深く語られていないが、そこに敵味方を超えたところにある“相手への
尊敬”を感じずにはいられない。
 また、後で今年2008年を振り返った時、ボクにとって“特別な一本”になるであろう
本作にして、とりわけ強く胸に残ったシーンが二つある。一つは、留置所の浴場にて
岡田が一人で口ずさんでいた童謡「ふるさと」を、誰に言われるわけでもなく、周囲の
部下たちも合わせて合唱する場面だ。勿論、普通に(リアリズムで)考えたら、大の
大人が、それも男ばっかの全員で子供の唄など歌うはずもない。そんなの分かってる。
笑いたい奴がいれば笑えばいい。だけど、それを堂々と、恥ずかしげもなく、“師弟の
絆を結ぶヒューマニズム”にして描いていくところに、ボクは“映画としての美しさ”を
見た気がした。そして、もう一つ、忘れられない瞬間は、ついに運命の処刑台へと
向かう岡田中尉の後方から、蒼くやわらかい月あかりが行く手を照らしていく場面――、
まるで天国へと通じるかのようなその道は、言葉に言えない“崇高さ”に包まれる。
そして、岡田中尉の、澄んだ心を感じ取り、ボクは“不思議な涙”を流す。その余韻が、
どこまでもどこまでも心地良い。



楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


“フェデリコ・フェリーニ”三本締め

2008-03-08 23:10:56 | ★独断と偏見的シネマ・セレクション3
独断と偏見的シネマ・セレクション3 《監督・俳優編》“フェデリコ・フェリーニ”

①、『フェリーニのアマルコルド』
②、『青春群像』
③、『甘い生活』

Photo











まず、最初に断っておくと、
『道』は“殿堂入り”ということで選から外しました。
“世界映画史上最高傑作”として疑わないこの名作を、
どんな形にせよ、オイラみたいな者が評価するなんて
とてもとても恐れ多くて出来ません(笑)。

さて、フェリーニすべての作品に共通することは、
それぞれに胸に残る忘れられないシーンがあり、
後で振り返った時、まるで絵のようにその映像が浮かび上がってくる。
①は、春の到来と共に、街へ舞い降りてくる白い綿毛や、
海の夜霧の彼方から幻想的に現れる豪華客船の雄大さ、
それから、雪の中で羽を広げる孔雀の美しさも――
②は、自らの青春を別れを告げるべく、早朝の駅のホームから
旅立っていく主人公の青年と、それを見送る少年との対比からなるラストシーン――
③は、ヘリに吊り上げ運ばれるキリスト像と、
早朝の浜辺に打ち揚げられた醜い巨大魚の醜悪さ――
そして、『道』では、落とせるはずのない罪の重さに気付いたザンパノが、
夜の浜辺で涙を流し、ひとり崩れ落ちていくラストシーン――
それらは単に映画の中のワンシーンというだけではなく、
《イメージ》として“観る者の心に深く焼き付ける”‥‥
「映像の魔術師」と呼ばれるフェリーニは、そんな不思議な魔力を持っている。




楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル




『パーフェクト・ストレンジャー』、観ました。

2008-03-04 21:07:41 | 映画(は行)





監督:ジェームズ・フォーリー
出演:ブルース・ウィリス、ハル・ベリー

 『パーフェクト・ストレンジャー』、観ました。
議員のスクープを握り潰されて会社を辞めた元新聞記者のロウィーナ。彼女は
ある夜、幼馴染のグレースから広告業界の大物ハリソン・ヒルに関して不倫
スキャンダルの話を聞いた。その数日後、グレースは変死体となって発見されて
しまう。死の真相がハリソンの口封じではないかと疑ったロウィーナは、スクープを
得るべく独自の調査を開始。元同僚のマイルズの力を借り、偽名でハリソンの
会社に潜り込むことに成功するが…。
 ラスト7分11秒――「衝撃の事実」に、あなたは絶対騙される、の宣伝コピー
からして、“あの、有名なスリラー映画のそれ”を思い浮かべたのは、きっと
オイラだけじゃあるまい。結局、そんな疑心暗鬼を拭えぬまま、いや、実際、
“例のスリラー映画”同様、時おり思い付いたように挿入される“暗い幼年期の
回想シーン”からして、ヒロイン自身に何らかの秘密が隠されていることは容易に
想像出来たのだが‥‥、まさかまさか、あんな結末が用意されているとはね。
まぁ、“ネタが命”のこの映画にして、今ここでそれをバラす事など許されないが、
少なくともオイラは「完璧にダマされた」っていう感じはしなかった。「うまく
ゴマかされた」って方が強いかな。まず、そう思う要因として、普段からこの手の
映画では、仕掛けられたトリックを解くべく情報を開示することを前提に、
それでいて観る側に見破られず、且つ、後で振り返った時に「なるほど」と
思わせるくらいの老獪さが必要になってくる。ところがこの映画では、如何せん
設定に無理があり、本編中に散りばめられた伏線から“鮮やかなどんでん
返し”へと導くだけの説得力と斬新さに欠ける。言うなれば、従来この手の
映画のベースになっていたオカルトチックな要素を“ネット社会における
バーチャルリアリティ”に置き換えただけで(映画の)骨組み自体は、さして
目新しいものじゃない。実のところ、オイラは途中からブルース・ウィリスの
いやらしく垂れ下がった口元だけに目が行き過ぎて、まともに謎解き気分に
なんてなれやしない(笑)。それから、未だ『キャット・ウーマン』の怪演(?)が
記憶から離れないハル・ベリーは、いつまたハジけて壊れてしまうかヒヤヒヤ
してしまう。映画の彼女を観ていると、本来のサスペンスとは違うところで
“ヘンな期待感”を持ってしまうのは、果たしてオイラだけだろうか。しかし、
仮にも(?)天下のオスカー女優である彼女が、色仕掛け三昧で中年男を誘惑し、
挙句にアイコラまがいの画像まで作られちゃって、これで本当に良いのか、
ハル・ベリー!!(笑)、もはや演技力より“そのカラダが目的”だと言わんばかりの
扱われ方は、さすがにちょっと気の毒に思えてくる。いや、ハル・ベリー本人が
それに気付いているのかいないのか…、だとしたら、それも又チョット問題だが(笑)。






楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル