肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ヴァイブレータ』、観ました。

2005-09-25 18:02:07 | 映画(あ行)

ヴァイブレータ スペシャル・エディション

 『ヴァイブレータ』、観ました。
不眠とストレスに悩む31歳の玲は、ある夜コンビニでトラックの運転手と出会い、
行きずりのセックスをする。朝になって玲は一度トラックを降りるが、すぐに
戻ってきて彼に言う、「私を旅の道連れにして」。そして、二人を乗せたトラックは
静かに動き出した‥‥。
 健全なる青少年諸君はどうか18歳を超えてから‥‥(笑)。が、すでに
立派に成長し成人映画を観れる貴兄には是非ともオススメしたい作品だ。
映画のスタイルは〈ロードムービー〉、、そのほとんどが貨物トラックの座席という
密室に座った男女の会話で構成されている。物語自体も目新しいものはなく、
途中から劇的に変化するというものでもない。しかし、このむき出しのエロスと、
一方で抑制され圧迫された空間で繰り広げられる痛々しいまでの男女の愛欲に
息が詰まり胸張り裂けそう。近年はチャラチャラとあーでもないこーでもないと
煮えきらないひ弱で温室育ちの恋愛ドラマが多い中、久しぶりに渾身のストレートを
胸元にズバリ投げ込まれたようなラブストーリーにめぐり合えた。この豪速球は
観る側もしっかり心して観ないと受け止められないよ。
 それにしても、この監督・廣木隆一のセンスには驚いた、‥‥っていうか
恐れ入りましたってカンジ。そのラジカルな音楽センスもさることながら、
ワンショットで観客の心を鷲づかみにするインパクトある映像美、ここしかないという
場面での長回しの使い方、一般に難しいとされるフラッシュバックや空撮も
的確かつ効果的に使われている。ほぉ~、日本にもこんな逸材が残ってたんだね。
オイラはチョット嬉しいゾ。それに加えてキャスト陣、主演の寺島しのぶ、
大森南明、両名の演技も素晴らしくて、今にも壊れそうな緊張感を保ちつつ、
決してリアリズムを失わない。彼ら2人の凄さは、この僅か一日の旅を通して、
それぞれこれまでの人生がおぼろげながら見えてくるところ。孤独、挫折、
現実逃避、心の渇き‥‥彼らの“声にならない叫び”が聞こえてくる。
痛い、痛い、痛すぎる純愛。。。小品ではあるが、これは賭け値なしの大傑作、、
埋もれて欲しくない名作だ。

 



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