肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『アビエイター』、観ました。

2005-09-29 18:53:29 | 映画(あ行)
アビエイター プレミアム・エディション

松竹

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 『アビエイター』、観ました。
急死した父親の事業を継ぎ、僅か18歳で大富豪になったハワード・ヒューズは
映画製作に進出。ハリウッドでの成功という夢を叶えるが、世界最速の飛行機を
作りたいというもう一つの夢にのめりこんだ時、何かが狂い始める…。
 観ながらボクは、ここに“ある歴史的傑作の影”を垣間見る。若くして
巨大な富を得た主人公、しかし、そのサクセスストーリーの一方で、徐々に
周囲からは孤立して、“孤独”の檻の中に閉じこもる。そして、そんな彼が
夢の果てに求めたのは、幼き頃の“母の温もり”だった‥‥。そう、チョット
詳しい映画ファンなら、この底辺に流れるものがオーソン・ウェルズの傑作
『市民ケーン』だということに気付くはず。ならば、マーティン・スコセッシは、
単に過去の名作を今に蘇らせただけなのか‥‥いや、ボクは全く違う観方を
しているんだ。つまり、ここに描かれる主人公の姿が、そのまま“今の
アメリカ”なのではないかってこと。今や世界随一の巨大国家でありながら、
その行き先を見失い、迷走し続けるアメリカ…、強いては、その傲慢さゆえに、
世界から孤立しつつあるアメリカ……、スコセッシはこの映画を通して、
今のアメリカの危機的状態に“警笛”を鳴らしているように思えて仕方ない。
ボクは勿論『市民ケーン』も大好きな作品だけど、この『アビエイター』も
それに負けず劣らず物凄い映画だと思うよ。
 さて、この実在の主人公ハワード・ヒューズは、良きにつけ悪しきにつけ、
どこまでも“夢”を追い続けた一人の男。ときに、それが間違った方向へ
向かいそうな時も、決して後戻りはしない。まさに、彼が生涯愛し続けた
“飛行機”のように……。そして、ボクは思うんだ、そんな目にも止まらぬ
スピードで駆け抜けた人生だからこそ、せめて心休まる場所が欲しかった‥‥
それが“母の優しさ”。彼がその後の人生で“年上の女性”を愛していくのは、
そこに“母の面影”を探していたからではないだろうか。



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1 コメント

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はじめまして。 (ショウメイ)
2005-10-03 09:48:44
なんだか哀しい映画でしたよね。

華やかな成功の裏で、孤独で苦しんでいる姿は

観ていて辛くなるほどでした。

まさしく今のアメリカの姿かも。

TBさせてくださいね。
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