肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

“エンターテイメント(日本映画編)”三本締め

2006-08-31 21:58:29 | ★独断と偏見的シネマ・セレクション3

独断と偏見的シネマ・セレクション3
(ジャンル別)“エンターテイメント《日本映画編》”

①、太陽を盗んだ男
②、12人の優しい日本人
③、ガメラ 大怪獣空中決戦
次点、下妻物語

日本が世界に誇る娯楽映画といえば、
『七人の侍』や『用心棒』あたりが一般的なんだろうが、
アクション苦手なせいなのかしら…、
オイラにはビビッとくるほどの衝撃はなかったかな。
今回、下に挙げた3本は、活劇シーンの迫力よりも、
ストーリーの楽しさ、発想の面白さに重点を置いて選んでみました。

①は、日本映画屈指の「スケール感」と「スピード感」、、
ローリング・ストーンズの初来日や、野球中継の延長など
次々と無理難題を政府に突きつける犯人の大胆不敵。
予測不能の展開に、ワクワク逸(はや)る気持ちを
必死に抑えながら観たのをおぼえてる。
③は、“子供向けの怪獣映画”と思ってみたら痛い目に遭う(笑)。
ギャオスを福岡ドームに閉じ込めてしまおうという発想自体に、
度肝を抜かされる。
その後も目まぐるしく変化するストーリー展開に興奮し、
ラストは黒澤映画『椿三十郎』を思わせる決闘シーンにニヤリ。憎いゼ。

太陽を盗んだ男 ※再プレス ◆20%OFF!

12人の優しい日本人 ◆20%OFF!

ガメラ 大怪獣空中決戦

下妻物語 スペシャル☆エディション ◆20%OFF!

 


『ラフ ROUGH』、観ました。

2006-08-28 20:48:53 | 映画(ら・わ行)

 『ラフ ROUGH』、映画館で観ました。
二ノ宮亜美と大和圭介。同じ和菓子屋どうし、商売がたきの家に生まれた2人は、
同じ高校に入学し、亜美は高飛び込み選手として、圭介は競泳選手として出会う。
「人殺し!」。亜美が圭介に向けた初めての言葉は、最悪のものだった‥‥。
 “安いドラマ”だって構わない。“クサい台詞”も気にならない。“お寒いギャグ”の
連発、望むところだ、ようこそいらっしゃ~い。だって、はなから(この映画で)
オイラのお目当ては長澤まさみちゃんだったんだもの(笑)。『タッチ』以来、
一年ぶりにスクリーンで観る長澤ちゃんは、“あの時”と変わらず眩しいほどに
輝いていて、しかも今回はキワどいハイレグ水着の長澤ちゃんだ、目のやり場に
困った困った(汗)。だけど、そいつは思いのほかに嬉しい誤算だ、良かった
良かった(笑)。一緒に観ていたワイフは、そんな長澤ちゃんを評して「あれは
アスリートの体系じゃないワ。もっと鍛えなくっちゃ、女優としては失格ね」と、
ダメ出しばかり。オイラは“オトナの対応”で黙って聞き流すが、まるで鬼の
首を取ったかのように“ワイフの執拗な攻撃”は更に続くのだ。「第一、彼女の
歩き方が全然なってない。大女優をめざすのなら、あの猫背を直さなくっちゃね」。
あ~ぁ、年甲斐もなく(もうすぐ39回目のバースデー)、長澤ちゃんに夢中の
オイラもオイラだが、そんな年下の若手女優に“ライバル心”むき出しで、少しでも
アドバンテージを取りたがるワイフもワイフで大人げ無いゼ(笑)。何だか逆に、
ワイフの方が哀(あわ)れに思えてきたよ(涙)。
 さて、この映画でどうにもスッキリしないのが、ヒロインの“恋心”について。
映画序盤で嫌い合っていた若い男女が、その瞬間に心を許し、どの瞬間から気に
なる存在になったのか??、その過程がユル過ぎること。いや、そもそもヒロインは
大和圭介を「人殺し」というほど憎いはずなのに、その思い出の品を机の奥へ
大事にしまってあるというのは不自然過ぎるのではあるまいか。仮に、彼女が
幼い頃から密かに想いを寄せていたのなら、彼に“そんな言い方”はしないはず。
再び話は戻って、ワイフの言う長澤ちゃんの体系&歩き方の“細かい指摘”も
イチイチごもっともだが、「太い幹」となる物語の部分で噛み合っていないのが、
何とも残念だ。 
 まぁ、それでも総括すれば、ワイフはコテコテ過ぎる(?)ビールのギャグに
大喜び。一方、オイラは長澤ちゃんのスレンダーな水着姿に大興奮。映画館から
帰る車の中は、いつもにも増してワイワイガヤガヤ。映画の本意とは“明らかに
かけ離れたところ”で大盛り上がりをみせるオレたち夫婦だったのデス(笑)。

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『ミュンヘン』、観ました。

2006-08-24 20:59:39 | 映画(ま行)

ミュンヘン スペシャル・エディション<2枚組> ◆20%OFF!

 『ミュンヘン』、観ました。
1972年、ミュンヘン五輪開催中、パレスチナゲリラによるイスラエル選手団襲撃
事件が起こった。これに対しイスラエル機密情報機関“モサド”は暗殺チームを
編成、報復を企てる。リーダーに任命された一人の男アヴナー。人を殺したこと
などない彼は、妻と子供を残し、ヨーロッパに渡る……。
 良くも悪くも“今の”スピルバーグらしい作品だ。光と陰を最大限に利用した
洗練された映像美。特に、編集・撮影・照明を含めたヴィジュアル部門は、他の
追随を許さない充実ぶり。さすが、ハリウッドの一流どころが結集しただけの
ことはある。加えて、このところ今ひとつ精彩を欠いていた(?)スピルバーグの
演出力も、こういうサスペンス映画でこそ、その持ち味が発揮される。何だかんだ
言っても、やはり“映像にする力”は今もトップクラスに位置する監督さんだ。
ただ、どうなんだろう…。ここでは、あまりに人が死に過ぎる、あまりに血が
流れ過ぎる。いわゆる、「暴力」を使って「暴力」を批判する彼(スピルバーグ)の
作風に、ボクは“ある種の不安”を感じてしまう。いや、曲がりなりにも(?)
「世界最高の監督」と呼ばれる才人だからこそ、もっと“他の描き方”があるんじゃ
ないのかなと…。映画の主人公は、祖国からの命令によってミュンヘン事件に
関与した11人の暗殺を命じられる。しかし、一人ずつ殺していく過程において、
主人公はその使命に疑問を持ち始め、やがて自らも(殺した相手からの)報復に
怯えるようになっていく。自分が…、仲間が…、家族が…、いつ誰に狙われる
やもしれぬと思うと“恐怖”が襲ってくる。怖い…、怖くてたまらない。そこに
至るまでの展開で、スピルバーグの演出は終始的確で、僅かの隙もない。完璧だ。
しかし、いつも(スピルバーグの映画を観て)思うのが、『シンドラーのリスト』も…、
『プライベート・ライアン』も…、“戦争の恐怖”をもって(観客を)怯えさせ、
“表面的な反戦”を描いているだけのようにみえて仕方ない。そして、この映画も
同じ…。ボクは彼に、戦争によって“流れた血の量”ではなくて、“流した涙の
数”を描いて欲しい。人々が受けた“心の傷の深さ”を描いて欲しい。今回、
彼の人間描写に問題有りなのか…、あるいは、事件全体をテロリスト側から描いて
いるからなのか…、この映画でボクは主人公を含めて登場人物の誰一人として
感情移入出来なかった。確かに、これが“完成度の高い映画”であるのは認めよう。
だが、「優れた映画」であるとは思っても「良い映画」だとは思わない。「上手い」
とは思っても「凄い」とは思わない。

 


『ガメラ2 レギオン襲来』、観ました。

2006-08-22 20:53:36 | 映画(か行)

ガメラ2 レギオン襲来

 『ガメラ2 レギオン襲来』、観ました。
シリコンを活力源に巨大草体と共生して繁殖する宇宙怪獣レギオン。ガメラの
抵抗も虚しく、レギオンの暴走は止まらず、札幌・仙台は壊滅状態に。絶体
絶命の危機がガメラに迫る‥‥。
 怪獣ファンのみならず、一般の映画ファンにも変わらず高い支持を受ける
平成『ガメラ』3部作。中でも、とりわけオイラのお気に入りなのが、宇宙怪獣
レギオンとの死闘を描いた『パート2』なのだ。でもって、ガメラVS.レギオン、
怪獣同士の対決もさることながら、この映画では敵怪獣レギオンの母体から
無数のミニレギオン(羽レギオン)が飛び出してくるのが、何ともユニーク。
まるで小さな蟻が巨大な象を倒すように、数に勝る羽レギオンがガメラを
覆い尽くす場面は、これまでの怪獣映画にはない発想だ。しかも、その親玉の
巨大レギオンが、また強い。血を流し、悲鳴のような呻き声をあげ、耐える
ガメラを観ながら、オレは思わず全身に力が入る。観終わって、こんなにも
肩がこり、感情移入できる怪獣映画も珍しい。それにしても、大きく分けて
対決シーンは、序盤、中盤、終盤と3度に渡ってあるのだけど、その度ごとに
ガメラの登場シーンのカッチョ良いこと。特に3回戦目で、ガメラが空中から
地面に降り立ち、そのまま滑るように火炎放射を連発する場面はシビれるゼ。
ラストの、あのガメラ必殺技はご愛嬌だとしても(笑)、やっぱり怪獣映画の
醍醐味は、怪獣の着ぐるみに人間は入って格闘し、美術さんがご丁寧に(?)
ミニチュア模型で街並みを再現させる。そして、今度はそれを踏みつぶして、
叩き壊す“美学”にある。他はさておき、怪獣映画に限ってはハリウッドより
日本の方が断然面白いね。
 さて、一方で、別の側面からこの怪獣映画を検証すると、そもそも監督の
金子修介という人はアイドル映画出身であるからして、“いつものように”
今回も「実力」よりも「容姿」を優先(?)、水野美紀嬢を主役のヒロイン役に
抜擢する。冬の北海道が舞台でありながら、何故にいつもミニスカートなのさ??
と言いたくなるが、それはソレとして、抱きしめたくなるほど可愛いから
許しちゃう(笑)。いや、それにも増して、武器をもって戦う者、頭を使って
戦う者、ガメラの復活を信じ続ける純粋な子供たち‥‥、それぞれの視点から、
ガメラを…、この戦いを、描いているのが印象的だ。個人的には、最後の
大一番を前に緊張する若い隊員へリラックスを促す先輩隊員とのやりとり…、
たったワンシーンの出演ながらも“人生の重さ”を感じさせる小林昭二さん
(初代ウルトラマン隊長)の台詞など、何度も胸にグッとくるものがあった。
2度目の鑑賞になるが、恥ずかしながら今回も泣きそうになっちゃたよ。

 


『ある子供』、観ました。

2006-08-19 21:45:39 | 映画(あ行)

ある子供 ◆20%OFF!

 『ある子供』、観ました。
定職に就かず、仲間と盗みを働き、その日暮らしをしている20歳のブリュノ。
18歳の恋人ソニアとの間に子供ができるが、ブリュノにはまったく実感がない。
盗んだカメラを売りさばくようにブリュノは子供を売ってしまう…。 
 あの『自転車泥棒』を彷彿させる徹底したリアリズム。劇中にBGMは一切なく、
映画は必要最小限の登場人物と、最低限の台詞だけで構成される。まるで
余分な贅肉をすべて削ぎ落としたような…、そんな映画。ドキュメンタリータッチの
冷めた視点が見透かすように“人のズルさ”を映し出し、鋭く研ぎ澄まされた
洞察力に、観ながら息が苦しくなった。それにしても、映画は“長回し”を効果的に
使う一方で、若い役者達は何故にあんなにも“自然に”演じることが出来るのか?、
紙に書いた脚本通りに何度も何度もリハーサルを重ねて反復させるのか…、
あるいは逆に、細かいことは決めないまま、その場の空気を読みながらの
即行演出なのか……、いずれにしても、今年観た中では最も「緊張感」と
「リアリズム」を感じた一本。さすが、昨年度のカンヌ映画祭を制し、キネ旬で
堂々年間4位にランクされた傑作だ。
 さて、本作主人公のブリュノは、典型的な“今時の若者タイプ”でダラダラ
遊んで暮らたいダメ男クン。年下の不良たちを子分にして、道行く人のバッグを
かっぱらう。すぐに金目(かねめ)のものをリサイクルショップに売り払って
小銭を稼ぐ、その日暮らしのケチなコソ泥稼業。そんなある日、彼に降って
湧いたように子供が生まれ、その子を養子に出せば(人身売買?)大金が転がり
込むことを知る。結局、我が子さえもいつもように売り払ってしまうのだけど、
果たして、それは“お金のためだけ”だったのか??、いや、今回ばかりは
少し違うように思うんだ。多分、彼はまだ“大人”になりたくなかったじゃ
ないのかな。もっと言えば、子供が生まれ、自身が「親」となって背負う“責任
からの逃避”と言った方が良いかもしれない。それまで、定職にも就かずに、
恋人とふざけ合うだけだった彼にとって、時間に縛られ、自由を奪われる、
そして、家庭を守らなければならない“責任”は、耐え難い“重圧”となって
圧し掛かってきたんだろう。だけど、いつまでもそんな自由な生き方を
続けられるはずがない。恋人が…、社会の掟(おきて)が…、彼を許す筈が
ない。だって、「社会」とは“それぞれの責任”の上に成り立つものだから。
映画終盤、警察から逃げ切れたはずの主人公が、捕らわれた仲間のために、
ひとり自首していく決断は、自らが犯した罪に対する“責任の取り方”だったに
違いない。その瞬間(ラストシーンで)、彼は初めてやっと、愚かで子供だった
自身のズルさと、恋人の優しさに正面から向き合うことが出来たんだ。

 


『サウンド・オブ・サンダー』、観ました。

2006-08-17 20:32:53 | 映画(さ行)

サウンド・オブ・サンダー デラックス版【GNBF-1125】=>20%OFF!サウンド・オブ・サンダー デラ...

 『サウンド・オブ・サンダー』、観ました。
2055年、タイムトラベルが可能になり、大手旅行代理店タイム・サファリ社では、
6500万年前にタイムトラベルし、恐竜狩りを楽しむという画期的なツアーが人気を
集めていた。だが、“僅か1.3gの何か”を過去から持ち帰ってしまったことで、
生態系進化に異変が起きる…。 
 アラを探せばキリがない、細かいことを言ったら朝までかかる。穴だらけ
“タイムマシン理論”に、今どき子供でも騙されない“タイムウェーブ(時間の
波)”のナンセンスな発想まで‥。いや、もはや“開き直り”とも受け取れる
“科学的根拠のない妄想”を、ここまで信じ、徹底できれば御立派なもの(笑)。
植物は巨大化し、昆虫は凶暴化し、動物は恐竜化する。でも、人間だけは…。
しかも、それが白亜紀にすむ一匹の〇〇を殺したことで生じた“進化の歪み”だと
いうのだから、全くもってアメリカ映画の発想は強引過ぎる、スゴ過ぎる(笑)。
だったら、歪みが生じたその時、その瞬間に、今の我ら(人類)は消えてなくなる
筈なのに、そこは一切お構いなしに、次へ次へと映画は進む。まるで、映画の
中で起こりくる“時間の波(タイムウェーブ)”が、そのまま観ているオイラに
押し寄せる“ご都合主義の大波”のようにも思えてくる(笑)。
 それにしても、“室内撮影”が丸分かりなほどの安いセットと、いつもにも
増して遠近感がなく、平面的でアニメチックなCGは、もうチョットで良いから
何とかならなかったのかい??(笑)、思うに、この映画で最大の失敗は、
作り手側が手持ちの(デジタル)技術力と資金力を冷静に考えないまま、難度の
高過ぎる古典SFの題材を選んでしまったこと。彼らのその行為は「あくなき
チャレンジ精神」といえば聞こえは良いが、裏を返せば、後先(あとさき)を
考えずに突っ走った後の“無謀な自殺行為”とも言える(笑)。ただ、ひとつ
断わっておきたいのは、だからと言って、オイラがこの映画を苦々しく思って
いる訳ではなく、むしろ、この上なく愛らしく、存分に楽しめた映画であるのは
間違いない。もちろん、それは“SF映画”としての面白さではなく、コアで
チープな“B級映画”のソレとしてね(笑)。

 


『ジャーヘッド』、観ました。

2006-08-11 20:39:50 | 映画(さ行)

ジャーヘッド プレミアム・エディション ◆20%OFF!

 『ジャーヘッド』、観ました。
アメリカの青年アンソニー・スオフォードは海兵隊員に憧れ入隊するも、そこで
待っていたのは虐待とも呼べる厳しい訓練。その後、彼は斥候狙撃隊に
組み込まれ、戦場へと赴くが、そこには銃を向ける敵さえいなかった‥‥。
 まさか、あのサム・メンデスが、ありきたりでお座なりな戦争映画なんて撮る
筈ないと思っちゃいたが、案の定、これまでとは全く“視点の違う反戦映画”で
安心した(笑)。ならば、詳しく、それがどういうことなのかと説明すると、
これまでの(アメリカで作られた)反戦映画のほとんどは、壮絶な銃撃戦や
残忍な虐殺シーンをこれでもかと見せつけて、多くの人を傷付けるから…、
多くの人が死んでしまうから戦争はいけないという、“表面的な反戦”でしか
なかったと思うんだ。一方、この『ジャーヘッド』の特徴は、一切の敵の兵士は
登場せず、戦闘シーンで人が死んでいく場面もほとんどない。つまり、そういう
人間同士の“殺しっこ”に戦争の意義を問うことなく、一体これは誰のための
戦争で、何のために戦うのか??、そして、戦い終わった後に何が残るのか??‥‥、
もっとエモーショナル(感情的)で哲学的な部分にまで踏み込んで描いている。
例えば、『地獄の黙示録』のコッポラは、壮絶で行き過ぎた戦闘シーンを見せる
ことで“戦争の狂気”を描こうとしたが、結果は観る側の“隠された闘争本能”を
呼び覚ましてしまった。それは本作でも皮肉っている。また、『プライベート・
ライアン』のスピルバーグは、観客に戦闘の模擬体験をさせ、“戦争の恐怖”を
植え付けようとしたが、結果として戦闘シーンの迫力ばかりに観客の目が
行き過ぎて、その物語の内容についてはほとんど注目されなかった。ボクは同じ
理由で、キューブリックの『フルメタル・ジャケット』も、マリックの『シン・レッド・
ライン』も、凄い映画とは思っていない。つまり、この『ジャーヘッド』は、過去の
戦争映画の弱点を修正し、これまでの反戦とは明らかに一線を画した(あえて
言うならアルトマンの『M★A★S★H マッシュ』に一番近いかな)新しいタイプの
戦争映画なんだ。
 そう、それは“内なる戦争”‥‥、物語の舞台となるのは、隔離された砂漠の
戦闘地帯。容赦ない太陽の光が乾いた大地に照りつけ、僅かな水分と一緒に、
彼ら兵士たちの“人格”さえも奪い去っていく。徐々に“孤独”に蝕(むしば)まれ、
“恐怖”に追い詰められていく過程が、ジリジリ焼け付くように伝わってくる。
きっと彼らのその銃口は、遥か彼方の“見えない敵”ではなく、自身の“狂気”に
向けられていたんだろう。さらに、映画終盤、燃え盛る戦火の中から現れた
“油まみれの馬”は、我々に何を伝え、何を訴えようとしていたのか。薄汚れた
エゴと権力によって“汚されていく神聖なもの”‥‥、彼らの「良心」であったり、
「正義」であったり、「友情」であったり‥‥いや、そんなことはどうでもいい。
何故なら、この戦争は“自身の内なる部分”に存在し、それぞれに“形の違うもの”
だったんだから。彼らはあの灼熱の砂漠の向こうに、“聖なる心”を置き忘れて
しまったんだ。

 


『輪廻(りんね)』、観ました。

2006-08-09 20:56:59 | 映画(ら・わ行)

輪廻 プレミアム・エディション ◆20%OFF!

 『輪廻(りんね)』、観ました。
35年前、観光地のホテルで狂気にとり憑かれた大学教授が、自分の家族、宿泊客、
従業員の合わせて11人を惨殺。この事件を映画化しようと監督・松村は若手女優・
杉浦渚をヒロインに抜擢する。だが、不気味な幻覚が渚を襲い始める‥‥。
 観てもないのに「ホラー映画」と聞くだけで眉をひそめる奴がいる、オイラの
ワイフもそのひとり(笑)。ちなみに昨夜も開口一番「怖いだけの映画なんて
悪趣味ね」と切り捨てた(笑)。勿論、オイラとしても、根っからの“ホラー
支持者”ではないのだけどね。ことこの清水崇監督に限っては、例えば、背後から
「ワッ」と大声を上げて怖がらせる(驚かす?)“ショッカー演出”はほとんどなく、
暗闇から何者かが一歩一歩、音を立てずに忍び寄ってくる、日本の“怪談”的な
恐さっていうのかな。で、今作でもそのスタイルはしっかりと守られていて、
仮に“生粋(きっすい)のホラー映画ファン”じゃなくとも結構楽しめるはず。
それにしても、性懲りもなくというべきか、相も変わらずというべきか、清水崇
監督の“アイドル好き”はスジガネ入りで(笑)、今作でも平気で“優香”を
ヒロイン役に抜擢する。こいつは単なる職権乱用?、あるいは興行面を狙ったのかは
定かじゃないが、群像ドラマ的な『呪怨』ならともかく、恐怖映画としては
スタンダードなこの作品で…、ましてや「癒し系」が代名詞となった優香に、
主役を任せるには少々荷が重いように感じた。せめて、同じアイドル系を使うに
しても、もう少し“女優さん”寄りのカワイコちゃんを使うとかしないと、
心ならずも殺されていく者の無念さ、それから霊となり、この世をさ迷う者の
悲しみと憎悪が伝わってこない。奥行き感のない“平面的な恐怖”っていうの
かしら。これだとワイフに「怖いだけの映画」って言われても反論出来ないね。
 次に、物語の展開についてはネタバレが付きまとうので、今オイラがここで
軽々に、下手なことは言えますまい、書けますまい(笑)。だが、参考までに
言わせてもらうと、オイラは映画の中盤、優香が自室のベッドにて“あるもの”を
見付けた時に、おおよその結末が読めちゃいました。映画は観る側に“先入観”を
持たせ、“ミスリード(誤誘導)”を誘ってはいるが、きっと“本当の真相”は
こういうことなんだろうとね。まぁ、オイラが気付くのが早かったか遅かったかは
別問題として、あの有名なホラー映画『?????』以来、応用に応用を繰り返し、
さすがにもうこの手のオチがきてもあまり驚かなくなったなぁ。

 


『乱歩地獄』、観ました。

2006-08-04 20:56:08 | 映画(ら・わ行)

乱歩地獄 デラックス版 ◆20%OFF!

 『乱歩地獄』、観ました。
江戸川乱歩の怪奇世界を映画化したオムニバス。荒野を歩き続けていた男の
意識が、やがて錯乱の淵へ堕ちていく「火星の運河」。殺人事件の現場に残された
和鏡の謎を追う、美青年・透と明智小五郎の物語「鏡地獄」。廃墟でひっそりと
暮らす、胴体だけの夫とその妻の奇行を、一人の男が屋根裏から監視し記録する
「芋虫」。恋焦がれる女優を殺害した運転手の異常な執着を描く「蟲」。4つの
物語は、やがてひとつの大きな流れへと向かっていく‥‥。
 いわゆる“アート系”のヴィジュアル怪奇ミステリー。まぁ、“奇才”江戸川
乱歩の原作からして、ある程度こうなるだろうと予測はできた。だけど、故意に
“不安定”を装うカメラの構図と、“鏡の反射”を多用した映像は、あまりに
“凝り過ぎ感”が行き過ぎて、置いてけぼりを食らったようで鼻につく。思うに、
この手の映画で注意しなくちゃいけないのは、観る側にやり過ぎ感を与えない、
一歩手前で踏み止(とど)まれるかどうか。残念ながら今回はそのデッドライン
(死線)を超えてしまったように感じちゃう。多分、本作の正しい観方としては、
大衆向けの正統派ミステリーとしてではなく、一癖も二癖もある“コアなカルト
ムービー”として楽しむべきじゃないのかな。
 それにしても、久方振りに垣間見る“乱歩ワールド”は、以前にも増して
“フェチでアブノーマルな誘惑”がいっぱい(笑)。SMプレイに始まって、近親相姦、
覗き趣味にストーカー、挙句には死体愛好まで‥‥、やっぱりね、チョット
今のオレには刺激が強い(笑)。更には、ネチネチした男女の偏愛、アングラ的な
エロティズムと破滅願望とがくい込むように絡みつき、オレの思考を麻痺させて、
最後に残った理性さえも奪い去る。結局のところ、江戸川乱歩の世界とは、
人間の持つ“闇の部分”にスポットを当て、その隠された本性と凶暴性、心の
渇きとタブーへの憧れから始まっているんだろう。言い換えれば、この映画では、
その“ヤバい世界”に肩までどっぷり浸かり、さぁ何でもござれ、もうどうにでも
して頂戴!!、一緒に“堕ちていく快感”を味わえるか否か。勿論、オイラとしても
その種のこと(?)に全く興味がない訳ではないのだけど、失うもののリスクが
でか過ぎて‥‥うーん、あんまり関わり合いたくない世界やなぁ(笑)。