『イーオン・フラックス』、観ました。
品種改良によって発生したウィルスにより人類の99%が死滅した2415年の世界。
僅かに生き残った人類は、汚染された外界とは壁で隔てられた都市ブレーニャで
圧制されながら暮らしていた。そんな政府に抵抗する反政府組織“モニカン”。
その組織のひとり、イーオン・フラックスはブレーニャの支配階級の暗殺を
命じられる…。
“仮想現実(バーチャル・リアリティー)”を思わせる未来社会が映画の舞台、
アクロバティックなアクションシーンはスタイリッシュに様式化され、強大な
権力を持つ管理国家に、自由を求めて小数精鋭のレジスタンスが戦いを挑んで
いく展開…、観ながらオイラはここに“あの映画の影”を感じずにはいられない。
そうさ、コイツ(この映画)はキアヌ・リーブスからシャーリーズ・セロンに
かわっただけ…、映画のアプローチの仕方から雰囲気作りまで皆同じ。早い話が
“オンナ版『マトリックス』”に違いない。まぁ、何を今更『マトリックス』なぞ
やりたくなってしまったのか、この監督とサシでじっくり語り合ってみたいの
だが(笑)、シャーリーズ・セロンもシャーリーズ・セロンで、どうして今回の
出演を決めてしまったんだろう。最近の彼女を見ていると『モンスター』といい、
『スタンドアップ』といい、自分のイメージをかけ離れたキャラクターを
やりたがり、結果として自分の持ち味(神々しいほどの美貌)を殺してしまって
いるように感じちゃう。勿論、役作りの面白さに目覚めるのも結構だが、もっと
“(ストーリーの)内容重視”で出演作品を選んでみては如何だろうか。
と、そんな感じで、映画は新しいようでいて新しくない。近未来、ウィルスに
よって大打撃を受けた人類のその後を舞台設定にしたSFは、最近の定番だし、
今回そこに隠された秘密も想定の範囲内。むしろ、今作で目に付いたのは、
和服に…、障子窓に…、蛇の目傘に…、“日本様式”を取り入れた建築物や
小物類の数々だ。ミスマッチな(和の)アンティークさが逆に西洋風のそれに
混じって新鮮に映る。それにしても、こういう“スクラップ部品の寄せ集め”
みたいな作品で、どこのどいつがどうして思い付いたアイデアなのかは存ぜぬが、
まさか、それさえ“『SAYURI』のセットの使い回し”なんてことは‥‥(笑)。