肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ミッション:8ミニッツ』、観ました。

2012-09-10 20:36:20 | 映画(ま行)

監督:ダンカン・ジョーンズ
出演:ジェイク・ジレンホール、ミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ、ジェフリー・ライト

 『ミッション:8ミニッツ』、観ました。
シカゴで乗客全てが死亡する列車爆破事件が発生。犯人捜索のため政府が
遂行する極秘ミッションに、米軍エリートのスティーブンスが選ばれる。しかし、
スティーブンスは訳も分からず上官の命令に従っていくうちに次第に作戦への
疑惑を抱きはじめる――。
 誰が観ても、フツーに面白い。フツーに観て楽しめて、万人受けする――。
しかし、考えてみれば、そのフツーが大事。それこそがこの映画の“ストロング
ポイント”だ。何度も繰り返して観直したくなるほどの奥行きも味わいも皆無だが、
ヘンにかしこまらずに観れる安心感と安定感がある。映画は、いきなり主人公が
目を覚ますと自分は別人に、しかもそこは超高速で走る列車の中――、さも
シチュエーションサスペンスらしい突然の切り口から、訳も分からず時間を
過去へとループ、ぐいぐい畳み掛けてくるスピード感が絶妙だ。やがてそれを
何度も繰り返すうち、パズルのピースをはめ込むようにボヤけていた全体像が
少しずつ見えてくるのだけど、やれ極秘国家軍事ミッションだの、やれテロ
実行犯を追えだの、やれパラレルワールドだの、話がどんどんマンガチックに
非現実路線へと舵を切る。近年似たような内容で、相手の潜在意識へ潜り込む
『インセプション』ってのがありましたが、そちらは超A級――、こちら『8ミニッツ』は
どっぷり肩までB級テイストに浸かってる。はっきり言って、設定はご覧の通り
デタラメだ――。全くもってデタラメだが、やはり嘘は話がでっかいほど面白い。
そこは恐らく作った側も、そして我々観る側も、確信犯バレバレの共犯者。
いっそ東スポや日刊ゲンダイの飛ばし記事を読むつもりで楽しんだら良ろし。
ツッコミどころは数知れず、それでも映画は進み、Train-Train、走っていく。
気がつきゃ、あれよあれよという間に、力技で押し切られ、テンションMAXのまま、
物語の終着駅へとなだれ込む。あー、面白かった――。それ以上でもそれ以下でも
ない。でも娯楽映画として、フツーによく出来ている。


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『マネーボール』、観ました。

2012-03-31 17:31:31 | 映画(ま行)

監督:ベネット・ミラー
出演:ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、ロビン・ライト、フィリップ・シーモア・ホフマン

 『マネーボール』、観ました。
メジャーリーガーだったビリー・ビーンは、引退後オークランド・アスレチックスの
ゼネラル・マネージャーとなる。しかし、財政が苦しいアスレチックスでは、
せっかく育てた有望選手を、強豪球団に引き抜かれるという事態が続いていた。
チームの立て直しを図るビリーは、統計データを使って選手の将来的価値を
予測するという「マネーボール理論」を導入。イェール大卒のピーター・ブランドと
共に、チームの改革を進めていく。
 一括りに“スポーツ映画”といっても、昨今その様相は徐々に変わりつつある
ようだ。一昔前は『ロッキー』に代表されるように、“主人公自らが競技者”となって
活躍する、いわゆる“スポ根もの”ばかりが幅を利 かせていた。ところが、近年の
『ザ・エージェント』から『ミリオンダラー・ベイビー』、そして本作への流れをみると、
勝負の表舞台にいた主人公は“裏方”へと移り、“フィールドの外”から選手や
チームをバックアップするスタイルに主流が移ってきた。つまり、スポーツ界を
舞台にした“人間ドラマ”の方に重きを置くようになってきたといえる。
この『マネーボール』をみても、これが実話であるとことを十分理解した上で、
(試合シーンでの)過剰な演出を避け、“人物の内面描写”の方に力を注いだ
感じだ。そういう意味で、見応えのあるスポーツ映画に仕上がっており、近年の
スポーツ映画を象徴する作品だろう。
 さて、物語の大筋は、世間から敗者の烙印を押されるも奮い立ち、意識革命から
カムバックを目指すという、至って何てことないスポーツのサクセスストーリーだ。
しかし、それは“スポーツ映画”としての(表向きの)側面でしかない。その内に潜む
“人間ドラマ”は緻密に計算されている。映画における主人公ビリー・ビーンの
立ち位置は二つある――、“球団のGM”としての立ち位置と、離れて暮らす
娘にとっての、“父親”としての立ち位置だ。彼は、決して完全無欠の“強者”では
ない。むしろ、若き頃には気負いが空回りして才能を発揮出来ず、GMとなった現在も
自軍の試合のラジオ中継さえ観戦出来ないことをみても、気が小さくて弱い方の
人間だろう。そんな彼が、あえて冷酷になって選手のクビを切り、敗戦の責任と
周囲の雑音に耐え、“GMとしての重圧”と戦っていくのだ。一方、娘の心配に対して、
努めて平常心で接する“父としての姿”も痛々しい。つまり、この映画のみどころは、
エキサイティングな試合シーンではなく、周囲に悟られず、GMとしての“信念”を貫く
“主人公の、内なる戦い”なのだ。断っておくが、これは“感動の押し売り”みたいに、
オイオイ泣かせる映画じゃない。その夢の先に終わりはなく、未来へと続いていく――、
主人公の、胸に秘めた“強き信念”がひしひしと伝わる作品だ。


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『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、観ました。

2012-02-27 16:20:22 | 映画(ま行)

監督:スティーブン・ダルドリー
出演:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー

 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』、映画館で観ました。
9.11同時多発テロで父を亡くした少年オスカーは、父の死を受け入れられずに
日々を過ごしていた。そんなある日、彼は父の部屋のクローゼットで、封筒の中に
1本の“鍵”を見つける。この鍵は父が残したメッセージかも知れない。オスカーは
その鍵の謎を探しに、ニューヨークの街へと飛び出した……。
 アメリカにとっての9・11や、ここ日本における3・11のような悲劇に直面すると、
その度ごとに“人間同士の絆”を思い知らされる――。
親子の絆、家族の絆、地域の絆、それから社会全体の絆――。
これは、あの(『めぐりあう時間たち』『愛を読むひと』)スティーブン・ダルドリー
監督にして、あっけないくらいにシンプルな物語だ。父を失った少年の、絶望と
再生を描いただけのもの――、その一言で言い切れてしまう。ひとつ付け加える
ならば、《同じ傷を心に持った、多くの人との出会いを介して》だろう。しかし、
そのシンプルな物語に込められた人々の想いは、例え何千何万の美辞麗句を
もってしても伝えきれない。言葉ではなく、理屈でもなく、この映画は“観る者の
心”に訴えかけてくる。考えるのではなく、“感じて”欲しい。ゆえに、今作の
スティーブン・ダルドリーは、あえて“正攻法”で挑んだだと思う。
あの日、心についた傷の深さは、地球の裏側まで掘り続けたってたどり着けない。
力になりたい。。。
何か自分がしてやれることはないか。。。
困っているなら助けたい。。。
泣いているからハグしたい。。。
何でも良い。この映画で、主人公の少年が訪ねる多くのブラックさんは、
何処ぞの誰かも知らない少年に同情を寄せ、真心をもって接していく。
あの日、皆、同じように心に傷を受け、同じように涙に暮れた。
それは“相手の、心の痛み”が分かったから――。
“相手の、傷の深さ”を知ったから――。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い――。
それは、人と人との“心の距離”であったり、“絆”であったり――。
そして、それは多分、あっけないくらいにシンプルだ。


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『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』、観ました。

2011-12-26 17:12:41 | 映画(ま行)

監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、ポーラ・パットン、サイモン・ペッグ、ジョシュ・ホロウェイ

 『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』、観ました。
IMFのイーサン率いるチームにクレムリン爆破事件関与の容疑がかけられる。政府は
嫌疑に関わることを拒否し、大統領がゴーストプロトコルを発令。チームは、IMFから
その存在を抹消され、政府の後ろ盾がない中、遂行不可能と思われるミッションを
こなすことに……。
 決して怪しい者では御座いません(笑)。
だからといって、どこぞの映画会社の者でも御座いませんが、
どうか本作だけは映画館の大スクリーンで観るのをオススメする。
とてもTVサイズのDVDじゃあ収まりきれない、高さに、広さに、奥行きに至るまで。
こんな極東のちっちゃな島国じゃあ、
100年掛かっても追いつけない“日米間に横たわる圧倒的な国力の差”、
いや、そもそも民族の違い以前に“発想のスケール感(?)”ってヤツが違いすぎる。
ストーリーは、映画の帰りに立ち寄ったサーティワンのアイスクリームが
溶けないうちに忘れてしまいそうなアッサリ感があるが、これでもかこれでもかと
繰り出される“サービス精神”にお腹一杯。お願い、もう食べられません(汗)。
どこで揃えたのか、あのドラえもんさえ驚愕しそうなヒミツ道具いろいろ…。
一方、超高層ホテルの外壁を、磁石の手袋ひとつでよじ登り、
電光石火、帰りはまっ逆さまに駆け下りる。
オイラが知る限り、こんな芸当できるヤツぁー、
後にも先にもこのイーサン・ハントと、アニメのルパン三世くらいだゼ(笑)。
そう、まさに目の前に繰り広げられるのは《アニメの世界》‥‥、
ははーん、今作監督のブラッド・バードは“アニメ界出身”だと聞いているし、
“豪腕プロデューサー”トム・クルーズの狙いはココにあったんだな。
失礼を承知で言わせてもらうと、良くぞここまで恥ずかしげもなく
大のオトナが大金はたいて、娯楽に徹し、馬鹿を演じきれるものだと感心する。
加えて、数々の雑音にも耳貸さず、“自分大好き”を貫き通したトム・クルーズの
懐の大きさ(?)にも感服いたす(笑)。
まぁ、《トムの、トムによる、トムのための映画》であるからして、
それをご理解した上でご覧になるのであれば、
チケット代分の価値は必ずあると思うよ。


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『マルホランド・ドライブ』、観ました。

2011-12-24 07:31:14 | 映画(ま行)

監督 デウィッド・リンチ
出演 ナオミ・ワッツ,ローラ・ハリング,ジャスティン・セロー,アン・ミラー
※第54回カンヌ国際映画祭監督賞

 『マルホランド・ドライブ』、観ました。
“マルホランド・ドライブ”の標識近くで、衝突事故が起きる。唯一生き残った
女は、自力で街まで辿りつき、ある留守宅に身を潜める。次の日家主の姪
ベティが、記憶を失った彼女を見つけ…。
 10年くらい前に観た時はサッパリ解らなかったが(笑)、今改めて観直して
みるとそうでもない。それは、当時よりオイラの頭が柔軟になったせいかも
しれないし、又その後、この映画の流れを汲む秀作を何本も目にしたせいも
あるかもしれない。謎めいたアイテム、怪しげな登場人物と美女の甘く危険な
香り、背後にうごめく策略、そして、衝撃の事実の向こう側で見え隠れする
死の陰‥‥、随所に張り巡らされたミステリーが観る者の好奇心をそそり、
妖艶な空気漂う異世界がその視覚を刺激する。デヴィッド・リンチのフリーク
ならずとも、ミステリーファンなら必ずや欲求を満足させてくれるだろう
一本だ。現在、(残念ながら)本作の位置付けは、“コアなファンが熱狂する
マニアックな監督が撮った異色のサスペンス(??)”ってところだが、もう少し
日の目を浴びても良い作品だと思うなぁ。やはり(公開)当時としては、
アイデアが斬新過ぎたんだろう。あまりに“早過ぎた”傑作だ。
 一言で言って、これは“魔性の映画”だ。観れば、いつ終わるともない
“悪夢の世界”に引き込まれる。この映画では、よく目を凝らしていないと
見えてこない、何が“真実”なのか…、何が”まやかし”なのか…。それを
見極めることが出来れば、おのずと深く立ち込める霧の中から“真実”が
見えてくる。よく思い出してみよう。深夜の会場でステージ上の男が言う、
「ここに楽団はいません。オーケストラもいません。全ては録音したものです。
ここに楽団はいませんが、演奏は聴こえます」。つまり、それがこの物語
全体のことを指しているしたらどうだろう…。そもそもベティなるブロンド
女性は存在せず、全ての出来事が(その正体である)“ダイアン・セルフィンの
幻想”だしたら。マルホランド・ドライブ、山の頂にある高級住宅、青いカギと箱、
ウィンキーズの店、派手な柄の灰皿、そして黒い衣を着た黒塗りの男‥‥、
ダイアン・セルフィンが、“現実の事件”の中で見たものを自分の都合良く
(ある真実を隠す為に)繋ぎ合わせて作り上げた“虚像の物語”だとしたら。
 オイラが自分なりの回答を見つけた経緯はこうだ。謎を解くヒントは3つ。
まず1つ目、青いカギで開けた青い箱は“空”だった…。思うに、青い箱は
“浦島太郎の玉手箱”と考えたらどうだろう。つまり、幻想(=姿形がない)が
現実の世界に解き放たれた瞬間だ。次に2つ目、高級住宅で開かれる
パーティへ向かうマルホランド・ドライブの途中で、ダイアンはカミーラ・
ローズ(黒髪の女)に「近道があるの。秘密の小道よ」と諭され、車を降り、
二人で夜の山道を登っていく。これは、《スター女優》を夢見たダイアンに、
《(頂上への)近道》、《秘密の小道》と順にキーワードを繋げていけば、
両者がどんな関係にあったか推測できる。最後に3つ目、黒い衣を着た
黒塗りの男の正体が、“死神”なら‥‥と、まぁ、思いついたところをざっと
書き出してみたが、オイラが気付いてないだけで、見逃している仕掛けや
複線もまだまだ隠されているだろうな。是非また観直してみたい作品だ。
しばらくして観直して、新たな発見をしてニヤニヤする――んん?でも、待てよ。
これってやっぱり“コアなファンの、マニアックな楽しみ方”だよなぁ(笑)。

《完全ネタバレ編↓↓↓ドラッグしてお読みください》
ならば、“まやかし”である余分な部分を取り除き、“真実”だけを抜き出して
繋ぎ合わせてみよう。ダイアン・セルフィンは女優になる夢を抱いてLAの
生活を始めるが、一向に芽が出ない。そんな時、映画の主演を射止めた
カミーラ・ローズ(黒髪の女)と関係を持つことで映画の端役にあり付いた。
ところが、ある晩のパーティでカミーラに新恋人が出来たことを知る。夢破れ、
愛さえ失ったダイアンはカミーラの殺人を依頼する(青いカギはその作業
完了のシグナル)。その後、気がふれた彼女はベッドで拳銃自殺した‥‥。


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『道』、観ました。

2011-12-11 10:16:38 | 映画(ま行)

監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:ジュリエッタ・マシーナ, アンソニー・クイン, リチャード・ベースハート, アルド・シルヴァーナ
※1954年ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞
※第29回(1956年)アカデミー賞外国語映画賞
※第31回(1957年)キネマ旬報外国映画ベストテン第1位

 『道』、観ました。
粗野で乱暴な大道芸人ザンパノは、頭の弱い女ジェルソミーナをはした金で
買い取り、女房代わりにして村から町をめぐり歩く。女が心を寄せた綱渡りの
男は「お前だって役に立つ」と呼び込みラッパの吹き方を教えてやる‥‥。
 十代の頃、この『道』を、“初めて”観た。正直、観終わって名画という
実感はなく、白痴のヒロインの末路に同情を寄せつつも、主人公ザンパノの
生き方に“嫌悪感”を感じたのを覚えてる。そして月日が流れ、その間、
何故かひかれるようにこの映画を幾度か観た。その回を重ねる毎に…、自分が
少しずつ歳を重ねる毎に…、ヒロインのジェルソミーナをたまらなく愛しく感じ始め、
ザンパノを“身近な存在”に感じ始めた。そう、いつしかオイラはザンパノと
同じくらいの歳になり、映画の中の彼のように、相手の顔色を伺いながら
打算をする“ズルい大人”になっていた。欲の為には平気で嘘をつき、誤魔化し
逃げるすべを身につけた。思えば、その度に自分が自分であり続ける為の
大切な何かを切り売りしてたような気がする。一方で、映画のジェルソミーナは
白痴であったゆえに(打算を考えず)“純粋”であり続けることが出来た。
この身が汚れれば汚れるほど、その“ジェルソミーナの美しさ”が見えてくる。
底知れぬ魅力が分かってくる。今にして思えば、十代の頃、この『道』に
対して感じた不快感や、主人公ザンパノに対する嫌悪感は、そういう“ズルい
大人”にはなりたくないという、青年期の拒否反応だったかもしれないな。
今回の鑑賞で、オイラにはジェルソミーナが、この地上の、荒んだ人間
社会におりてきた“ひとりのか弱き天使”のように見えた。 
 また、映画では才能ある綱渡り芸人が登場し、事あるごとにザンパノを
からかい、そして怒らせる。両者の関係は、この映画を語る上で重要な
意味を持っている。ザンパノは、表面的には怪力でえばり散らしてはいるが、
内面は気の小さい女々しい男だ。片や、綱渡り芸人はすすんで“道化”を
演じてはいるが、何か人にいえない“人生の孤独”を抱えている。つまり、
ザンパノは他人によく見られたいと“虚勢”を張り、綱渡り芸人は絶えず
自虐的に自分を“卑下”している。この際、どちらが正しいとかどちらが
好きかという議論は置いといて、そんな風に人間は、得てして自分の正体を
隠すため、それとは“逆の仮面”をつけている。そういう生き物なのだ。
 本作だけに限らず、フェリーニ作品には頻繁に“サーカス”が使われる。
一般にサーカスは、華やかで楽しいイメージだが、フェリーニの場合は少し
趣きが違ってみえる。彼の場合は、サーカスの持つ華やかさというよりも、
その後に必ずくる“夢(のような時間)の終わり”に精力を傾けて描いてくる。
ならば、この映画全体を“サーカス”と考えると、浜辺のラストシーンは
“夢の終わり”だ。黒くうねる波を前に、夜の浜に崩れ落ちるザンパノは、
まさに“今の彼の、現実”だ。眩しく輝ける愛の日々はあまりに脆く、自分の
手中にある時は“その輝き”に気づかない。失ってみて初めてその大切さを
思い知り、自分の愚かさと罪の大きさを嘆くのだ。

 


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『マイ・ブルーベリー・ナイツ』、観ました。

2008-11-27 16:07:35 | 映画(ま行)
マイ・ブルーベリー・ナイツ スペシャル・エディション [DVD]

角川エンタテインメント

このアイテムの詳細を見る
監督:ウォン・カーウァイ
出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、デイヴィッド・ストラザーン、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン


 『マイ・ブルーベリー・ナイツ』、観ました。
恋人に捨てられたエリザベスは彼のことが忘れられず、彼の行きつけのカフェに
乗り込む。そんな彼女を慰めてくれたのは、カフェのオーナー・ジェレミーと、甘酸っぱい
ブルーベリー・パイ。それからのエリザベスは、夜更けにジェレミーと売れ残りの
パイをつつくのが日課になる。しかしそんなある日、彼女は突然NYから姿を消す。
恋人への思いを断ち切れずにいたエリザベスは、あてのない旅へとひとり旅立つ…。
 やっぱりな。またもウォン・カーウァイが自己陶酔に入ってる。どっか一手間掛けたい
性分は、お料理作るにゃ結構だが、映画の画面で観るにゃクセがある。凝りまくった
映像で、今宵ナルシストな自分の世界に浸りたい方はどうぞ。普通の感覚で普通の
映画を観るように挑んだら、痛い目にあうゼ。こういうのはアタマで深くあれこれ
考えて観るより、何も考えないで“感性”で観るくらいがよろし。例えば、音楽で
いうところの“BGM”みたいに。言葉によるメッセージ等々を解読していくんじゃなくて、
場の空気や雰囲気を優先して観る映画かなと。勿論、それは良きにつけ、悪しきに
つけ、ね。ま、悪いこと言わないから、ストーリー重視の方、あるいは、それに思い
当たる節の方は早々にご退散下さいね。
 さて、映画の構成は、大きく、3つのパートから成り、ヒロインとカフェ主人が
出会うNYの‘大’ドラマに挟まれる形で、それぞれメンフィスとラスベガスが舞台の、
独立した‘小’ストーリーが数珠繋ぎで並んでいる。3つのパート全てに登場する
ヒロインが存在するが、むしろ、中間の2話では“彼女の視点”を借りて、(自分とは
違う)別世界の人物達を眺めているように感じられる。言ってみれば、彼女自身が
我先にとばかりに前へ前へ出るのではなく、偶然にその場に居合わせた“傍観者”の
印象かな。その上で、その3話に共通するテーマとしては、失って初めて気付く
“自分にとっての大切な人”ってところでしょうか。勿論、この映画の、この3部
構成を通して、ウォン・カーウァイが言わんとしていることも分からんでもないのだが、
何かこう、胸にグッと突き刺さるものがない。その原因の一つとして挙げられるのは、
1話、2話、3話と進む過程で、彼女から変化がみられない。イマイチ“成長の跡”が
感じ取れないんだよ、残念ながら。おかげでロードムービーというよりも、単なる
オムニバス映画みたい。ま、仮に、こんな調子で2時間半も見せられた日にゃー
たまったもんじゃねぇが、1時間35分の長さは助かった。このくらいが手頃でしょう。
 それにしても、ノラ・ジョーンズの福与(ふくよ)かな唇は、何ともおいしそう。カフェ
主人の立場じゃなくとも、むしゃぶりつきたくなる。タイトルの“ブルーベリーパイ”
なんかより全然イケちゃいそう。でもって、その直後の、パイ生地に流れ込む
生クリームの映像がオイラの視覚をくすぐる。“新たな恋の予感”と共に、“不思議な
エロチズム”を感じさせるね。



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『迷子の警察音楽隊』、観ました。

2008-07-31 21:11:31 | 映画(ま行)





監督:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ, カリファ・ナトゥール


 『迷子の警察音楽隊』、観ました。
1990年代のイスラエル。空港に水色の制服に身を包んだ男たちが降り立った。
彼らはアレクサンドリア警察音楽隊。文化交流のためにエジプトからやってきたが、
何かの手違いか出迎えが来ない。自力で目的地へたどり着こうとした彼らは、
間違えて一文字違いの別の小さな町に着いてしまう。途方にくれる彼らに助け舟を
出したのは、カフェの女主人ディナだった。やがて、国や宗教を超えた交流が
始まるが…。
 いきなり、映画の内容とはカンケイないところで、かねてからオイラがひっそり
胸に育(はぐく)んでいた妄想を書かせてもらうので、興味のない人・時間のない人は
飛ばして読んでもらっても構わないよ。どうぞ、どうぞ、ご遠慮なく。そうだなぁ、
そういう人はだいたい7行目くらい後から読むと丁度イイと思うゼ。うん。では、書きます。
もしも、オイラが監督になれたら、まず一番最初に“こういう映画”を撮りたいと思って
たんだ。もしくは、ジョージ・ルーカスが若い頃に監督した『アメリカン・グラフィティ』
みたいなやつ。いわゆる、ワンナイトだけに限った群像劇――、とある一夜に
起きた出来事を背景に、そこにいる人たちの、隠された“本当の姿”が見えてくる。
で、その長い夜が明けて朝になった時、どこか昨日までとは違う自分に気付けたら
なお結構、みたいなの。というワケで、長らくオイラの妄想に付き合ってもらって
ありがとさんデス。以上、終わりデス。ただし、この両作品、互いにそのバック
グランドに“音楽”があるのは同じだけど、若干、微妙なところで違いがあります。
「何も考えずに生きていたあの頃、オレ達は若く、輝いていた」、の『アメ・グラ』。
そこには若者らの、紛れもない“現在(いま)”があったのに対し、この『迷子の~』では、
もはや“栄光”とは名ばかりの忘れられた警察音楽隊が舞台。もう若くない彼らは、
どこかに不安を抱え、(只一人、一番若い部下を除いて)現在を避けて生きているように
みえる。心ここにあらず、ってカンジだ。
 と、ここまで書いちゃうと、かなり暗くて重い内容かなって思うんだけど(まぁ、その内の
“重い”って方は否定しませんが)、意外と“シュールな笑い”とかあって笑えちゃうんだ。
いや、数ヶ所では腹を抱えて大笑いしちゃったゼ、ホント。『アメ・グラ』って、確かに
明るいけど、笑えるとこは無かったよね。オッと、あれは笑えなくても全然オッケーな
映画だけど。とにかく、本作の“笑いのセンス”を、アメリカ人にも見せてあげたい。
笑いに肥えてるといわれる我ら日本人にも、全く問題ないです。全然通用しちゃいます。
 (※以下、ネタバレ)さて、ここからがレビューの本題です。つまり、これまでのは
前置きです。長過ぎました。すんません。本作の味わい深さのひとつに感じるのが、
例えば、“なんかの都合”で映画のラスト20分しか観れなった人がいたとします。
仕事で残業??、その後、上司にしつこく誘われ、飲みに付きあわされた??、更に、
やっとたどり着いた自宅の玄関前で、お喋りな隣りの奥さんにからまれた?、など、
何でも良いです、理由は適当に考えましょう。映画終盤、もう若くない主人公と
マダムとの関係に、女好きの若い部下が入ってきて、気が付きゃ。部下とマダムは
肉体関係に。それを見てしまって、ハートブレイクな主人公のシチュエーション。
そのシーンだけ観れば、その若い部下の節操の無さに呆れ、マダムの裏切りに腹を
立てるでしょうが、でも、真実(ほんとう)は違うんだよなぁ。それまでの(物語の)
展開から分かるのは、確かに部下が無類の女好きであるのは間違いないが、別の
一面では、近くに困っている人をみれば、身を犠牲にして手を差し伸べてあげる
“気遣いの男”でもあるのだよ。一方、マダムの方も、気丈そうに見える外見は、
耐え難い孤独と己の弱さを隠すための“仮面”に過ぎない。女の孤独と男の同情が
交錯し、その隙間を埋め合うように、ベッドでもつれ合う2人の姿は、思わず見ていて
息が苦しくなる。パッと見た目の外見とは違うところで、まるで積み木を一段ずつ
丁寧に積み重ねていくように描かれる“人物の心の内”――、その“行間を読むこと”が
映画の醍醐味だとしたら、この映画には確実に“それ”があると思うゼ。



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『ミッドナイトイーグル』、観ました。

2008-07-10 20:15:06 | 映画(ま行)





監督:成島出
出演:大沢たかお、竹内結子、玉木宏、吉田栄作、袴田吉彦、大森南朋、石黒賢、藤竜也

 『ミッドナイトイーグル』、観ました。
戦場カメラマンの西崎優二は、ある戦火の中の出来事でカメラを置く。心に傷を
負う夫を支える妻が病死し、自分を責める西崎は後輩の落合信一と北アルプスの
山中にいた。そこには「ミッドナイトイーグル=米軍のステルス爆撃機」が墜落
していて、機体には恐るべき秘密が隠されていた‥‥。
 スポーツ選手がグランドの上で死ねたら本望だとよく聞くけど、オイラはそんなの
真っ平ゴメンだね。何とか細々とでも良いから長生きしたい。出来れば100まで
生きて、家族から「大往生」って言われたいのさ。だから毎年欠かさず人間
ドックにも入ってるんだよ、保険も利かんし、費用も結構掛かるけどね。で、つまり、
何を言いたいのかっていうと、この成島出監督なる人物は、そんなオイラとは
全く対極にある人生哲学の持ち主。前作の『フライ,ダディ,フライ』から今作を
観る限り――、人生は戦いだ。男は自らに課せられた使命があり、その為には
危険を顧みず、前のめりになって死ね――。おっと、最後の「前のめりになって
死ね」っつうのは、ちょっと調子ぶっこいて書いてみたけど、まぁ、ニュアンスとして
そういうことだ。映画の主人公は、そのスジではちったぁ名の知れた戦場カメラ
マンだった。それがある日、目の前で子供が爆死する瞬間に直面してから、一転、
血生くさい戦場から抜け出して、静かな山に入り込み、山の景色ばかり撮るように
なったとさ。その過程で奥さんは病死してしまったが、息子は(父が撮った)山の
写真を大切にしてることからして大喜び…、いや、少なくともそれに不満はなさそう。
だったら、それで良いじゃない。オイラからすれば結構なことだと思うのだけど、
それに面白くないのは“死んだ奥さんの妹さん”。それを、あの、竹内結子が
演じてます。でもって、竹内結子ににらまれた中村獅童……、じゃなくて、彼女の、
あのヘビのような目線でにらまれたら、口答え出来る人など居ないと思いますが
(そりゃそうでしょうとも)、とにかく、他人(ひと)の家庭に土足で上がりこんで
やりたい放題だ。有無を言わせぬ傍若無人(ぼうじゃくぶじん)、父子を無理からに
引き離して、さも我が子のように育てちゃってマス。父親の立場からみれば、完全に
息子を拉致られちゃってます。ぶっちゃけ、その瞬間、オイラの興味は盗まれた
ミサイルのことなんかより、そちらの親権争いの方へ。いっそそのまま法廷映画に
しちゃった方が映画自体は断然“迫力が出て”面白くなった思うんだけどさぁ。
だって、竹内結子が本気出したらスゴいんだもん。何か想像しただけで“無言の
圧力”を感じちゃう。モチロン、それは彼女のことをケナして言ってるんじゃなくて、
女優として“最高のホメ言葉”と受け取ってもらってイイです。とにかく、映画は
タテ・ヨコ・ナナメ、どこからみてもスゴくないです。竹内結子だけがスゴかった。



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『ミスト』、観ました。

2008-05-18 20:48:08 | 映画(ま行)
Mist_1_1a
監督:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン、アンドレ・ブラウアー、トビー・ジョーンズ

 『ミスト』、映画館で観ました。
激しい嵐が街を襲った翌日、湖の向こう岸に不穏な霧が発生していた。
デイヴィッドは不安に駆られながら、息子のビリーを連れ、隣人の弁護士
ノートンと街へ買い出しに向かう。3人がスーパーマーケットに入ろうとすると、
店内は大混乱。外では軍人が歩き回り、サイレンが鳴り続ける。すると、
一人の中年男が叫びながら駈け込んで来た。「霧の中に何かがいる!」と。
店外を見ると深い霧が駐車場を覆っていた‥‥。
 その日、オレは映画館で“映画を2本”観た。最初に観たのが『最高の
人生の見つけ方』、、そのタイトルにもあるように“最高の生き方”を問う内容。
実際、観終わって“生きる希望”を胸にして、映画館を後にした。が、くしくも、
その数時間後に観た今作『ミスト』は、何とそれとは対照的な映画だこと(笑)。
それまでの前向きに気持ちが一気に萎(な)えてしまい、希望の絶頂から
絶望のどん底へと突き落とされた。たった一欠(か)けらの希望の後も残さない
バッドエンディング‥‥、ホントにこれには参ったなぁ(苦笑)。新聞の宣伝
コピーには「震撼のラスト15分」とあったけど、ナルホド、こういう事だったのね(笑)。
 まぁ、その結末云々に関しては、改めて“ネタバレ欄”を作ってレビューの
最後に書くとして、ただし、この映画が“驚愕のどんでん返し”だけを売りに
した一介のB級ホラーかと言えば、決してそうじゃない。“密室劇”としての
趣(おもむき)と、じわじわと迫り来る恐怖からパニックに陥る“人間心理”に
絞った本編にも見所がいっぱい。正直、これまでオイラは何故にこんなに
スティーブン・キングの小説だけが次々映画化されるか、そのモテモテぶりに
首を傾げることが多かったのだが、今作に関しては、読んでもないのに(?)
“原作の秀逸さ”を実感する。むしろ、劇場映画というより“密室の舞台劇”として
やっても面白そう。少なくともオイラの中では、歴代スティーブン・キング
原作もののベスト3に入る‥‥、っていうか、(『ショーシャンクの空に』『スタンド・
バイ・ミー』などを除く)純粋なホラーものの中では、案外ベストムービーかも
しんないよ。
 さて、オイラがこの映画を推すのには、一つに、主人公らが置かれた“密室の
シチュエーション”の巧みさと、二つに、怪物の恐怖から徐々に追い詰められ、
常軌を逸していく“人間心理”に重きを置いたドラマ作りだ。まず、ここでは
単に“(密室の)閉ざされた空間”というだけではなく、スーパーの店内を使って
“ガラス張りの密室”を設定した。しかも、それに“深い霧(ミスト)”をリンクさせる
ことで、――外からは丸見えで、内からは何も見えない――、主人公らにとって
圧倒的不利な状況下を作り出した。また、スーパーに集まった人達になんて、
所詮は見ず知らずの他人だから、当然ながら固い結束もある筈もなく、やがて
言い争いが起きてくる。その時、パニックに陥った彼ら群集が“最後にすがり
付くもの”…、それが狂信的な信者が叫ぶ預言だとか迷信だとか、普段なら絶対
耳を貸さないオカルティックな宗教観――、いわゆる、“心の闇に住む魔物”に
蝕される。実は、この映画で一番怖いのは、窓の外にいる怪物なんかじゃなく、
人の内なる部分に潜む“心の闇”の方なんだ。それにしても、“(視界を塞ぐ)
霧”という副産物を使って、人間の“内なる弱さ”を引き出してくるあたりは流石。
改めてスティーブン・キング、恐るべし。
 (ここからはネタバレです。未見の方はご注意下さい。)ただし、最後のどんでん
返しについてはどうだろう??、恐らく、観る人によって意見が分かれるところ。
で、オイラは“蛇足”だと思った。深い霧に包まれた外の世界が、現代の“カオス
(混沌の時代)”を象徴しているとしたら、主人公らを乗せ、霧の彼方へ旅立っていく
一台の車は“ノアの箱舟”だろう。その行く手にあるのは、視界の開けた未来なのか…、
あるいは、このままの地獄が果てしなく続くのか…、観る側に問い掛ける形の
エンディングにした方が、この映画のテーマにもビッタリ合ってたと思うのだが。



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『街のあかり』、観ました。

2008-02-24 20:38:10 | 映画(ま行)





監督:アキ・カウリスマキ
出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンヴェンヘルミ、イルッカ・コイヴラ

 『街のあかり』、観ました。
ヘルシンキの警備会社に勤めるコイスティネンは、同僚や上司に好かれず、黙々と
仕事をこなす日々。彼には家族も友人もいなかった。そんな彼に美しい女性が
声をかけてきた。ふたりはデートをし、コイスティネンは恋に落ちた。人生に光が
射したと思った彼は、起業のため銀行の融資を受けようとするが、まったく相手に
されなかった。それでも恋している彼は幸せだったのだが‥‥。
 ホントは、もうチョット後に観ようと思っていたアキ・カウリスマキの最新作。だけど、
他のどんな用事より、他のどんな映画を観るより、この作品を優先したのには
理由がある。実は、そのタイトルにもなり、この映画がインスパイアして作られたと
されるC・チャップリンの『街の灯』こそ、ボクにとって“生涯不動のベストワン
ムービー”なのだ。心優しきホームレスが、目の見えない少女に献身的な愛を
捧げる物語―――それがチャップリンの『街の灯』。しかし、観てみれば、本作
『街のあかり』には、お調子者でお人よしのホームレスも居なければ、清く美しい
天使のような盲目の少女の姿もない。ただ、そこには、無口でミジメな男の存在と、
彼を巡る“対照的な2人の女性”の影があるだけだ。では、この2作品の共通点は
一体どこに…??、その“答え”を探しながら観ているうち、ボクは思ったんだ、
カウリスマキがこの作品でいう“盲目さ”とは、表面的な盲人のそれとは異なる、
常人としての我らに問う“心の盲目さ”ではなかったのかと。普段から会社で
バカにされている主人公は、いつの日か世間をアッと言わせて一目置かれたいと
願う。いつの日か自分の会社をたてて成功し、イイ女とも付き合いたい。主人公の
男が求めたもの…、いわゆる、それは“勝者としてのステータス”。が、果たして
本当にそうなのか。結局のところ、それを手にしたところで何になる?、世間の
奴らを見返したところで何になる?、そんな事よりも、時折人生に少し立ち止まり、
普段の生活でその周りに目を凝らしてみれば、気付かないところに“小さな
幸福”が落ちている。人知れず自分の事を大切に想ってくれてる女性(ひと)がいる。
もしかしたら、本当の不幸とは、そんな“ささやかな日常の幸福”に気付かないまま、
ただ毎日をやり過ごしてしまっている事じゃないのか、ってね。
 この映画のラストシーンは、チャップリンの『街の灯』を象徴した“ある印象的な
ワンシーン”で幕を閉じる。それは『街の灯』同様、何千何万の美辞麗句を使っても
表わすことの出来ない“人間同士の繋がり”…、そして“心の温かさ”なんだ。






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『モーテル』、観ました。

2007-11-20 20:12:47 | 映画(ま行)
Vacancy
監督:ニムロッド・アーントル
出演:ケイト・ベッキンセール、ルーク・ウィルソン、フランク・ホエーリー

 『モーテル』、映画館で観ました。
夜の闇に包まれた片田舎。デビットと妻のエイミーは、車の故障により、やむなく
古めかしいモーテルで一夜を明かすことに。風変わりな支配人メイソンから手渡された、
角部屋4号室の鍵。その客室の薄汚さが、いがみ合う二人の神経をさらに逆撫でする。
そして、彼らは部屋の置かれていたビデオテープを、何気なく再生するが‥‥。
 過激なバイオレンス描写は封印し、ジワリジワリとくる恐怖――が、このサスペンス
映画の売り言葉。確かに、その宣伝文句に嘘偽りはなく、暴力も流血も抑制しては
あるのだが、だからといって“ショッカー(描写)”に頼り過ぎてしまうのは如何なものか、
その価値が半減してしまう。思うに「ジワリジワリとくる恐怖」ってのは、背後から
不意打ちを喰らわせて“驚かす”といった類(たぐい)のものではなく、周りから
少しずつ圧力を掛けていき、そこに居る人物の不安を掻き立てていく――。例えば、
この映画でも、奥の小窓の凹凸に歪んで映る犯人の不気味さとか…、そこにあるはず
のない(血の滲んだ)リンゴが置かれている恐怖とか…、そういう“ひとつひとつの
ディテールの積み重ね”によって演出していくものではないのだろうか。少なくとも
オイラは、この映画の宣伝文句にそういったものを期待して観始めたのだけどね。
 さて、映画が始まるやいなや、軽快で特徴的な(?)メロディが流れ出し、それに
合わせるようにオープニングのクレジットが独特のデザインへと変化を遂げていく――
あれ??、これと“似たような感覚”をかつて何処かでしたような‥‥、その時点では
それが何時で何だったのかは思い出せない。しかし、物語が進むにつれ、寂れた
モーテルの“舞台設定”、更にそこで働く神経質な管理人の“人物設定”‥‥、あッ!!、
この映画の下敷きになっているのはヒッチコックの『サイコ』だったのだ。それから、
深夜のドライヴから高速道路を降り、地図にない一本道に迷い込む“物語の切り口”は、
近年の『less』さえ連想させる。他にも、映画中盤、公衆電話から助けを呼ぼうとする
主人公に大型自動車がぶつかっていく場面は、スピルバーグの『激突』も。勿論、
過去の名画からヒントを得ることは決して悪いことではなくて、それ自体をとやかく
言わないけれど、それら一つ一つのシーンが単体で遮断され、全体を通して繋がりが
感じられないのが残念だ。しかも、最後は“カーアクションもどき”みたくなっちまって、
それまでの“密室劇”が何だったのかって思えてくる(笑)。ここはウソでも(?)見事に
敵を出し抜き、観る側の盲点を付くような脱出法を見いだしていくことが、“正しい
サスペンス(?)”のあり方ではなかろうか。それでもね、最後に少しだけフォローを
しておくと、正味85分の上映時間があっという間に終わってしまったことと、この手の
(B級)アプローチは嫌いではないので、今後も同じような映画があれば性懲りもなく(笑)、
映画館に足を運ぶつもり。お客さんも結構入ってたし、意外と需要はあるんじゃないか。



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『マリー・アントワネット』、観ました。

2007-08-16 20:38:01 | 映画(ま行)





監督:ソフィア・コッポラ
出演:キルスティン・ダンスト, ジェイソン・シュワルツマン

 『マリー・アントワネット』、観ました。
オーストリア・ハプスブルグ家の末娘マリー・アントワネットは14歳で、フランスの
ルイ・オーギュスト(後のルイ16世)と結婚。格式を重んじるヴェルサイユ宮殿での
生活に始めは戸惑うものの、盛大な晩餐会やファッションリーダーとして贅沢三昧の
日々を送っていた。4年後、ルイ15世は急逝し、若いふたりは王位を継承する‥‥。
 ソフィア・コッポラ監督作品3作目。一言で言えば“もうひとつの『ロスト・イン・
トランスレーション』
”だと思った。さて、その理由は追い追い書くとして、本作が
これまでにマリー・アントワネットを扱った映画とは明らかに違う点がひとつ。それは
“歴史的事実の残酷さ”や、“マリー・アントワネットの罪”に関しては一先ず(ひとまず)
脇に置いといて、物語は一度も“国民の側”の立つことなく、“宮殿の内側から見た
マリー・アントワネットとその立場”を中心に展開される。さらにその上で、ポップな
映像と軽快な音楽に乗せて描き出される彼女のイメージは、“歴史上のマリー・
アントワネット像”とは程遠く、“どこにでも居る多感な乙女”のそれのよう。“夫”は
居るのに愛されない、“娯楽”はあるのに楽しめない、どんな“宝石”で着飾ってみても
心だけは満たされない。そして、独りになった時、ふと例えようもない“やるせなさ”に
包まれる‥‥。いや、考えてみれば、ソフィア・コッポラの前作『ロスト・イン・
トランスレーション』
は、“夫の愛”に確信を持てない若妻が、異国の地“トーキョー”で
ひとり取り残されたとき、“自分自身の存在価値”を疑い出すという内容だった。
そう、この2作品で共通して浮かび上がってくるものは、少女がまだ触れたことのない
異文化へ入っていった時に見舞われる“孤独”とか“不安”みたいなもの‥‥。その心の
隙間を埋めるために、若妻のヒロインは“別の愛”に走り、片や次期王妃のヒロインは
“お洒落や贅沢の浪費”に走っただけのこと。いわば、この2作品は、タイプの違う
姉妹みたなもの。“ジミな姉”が『ロスト・イン・トランスレーション』だとしたら、
“ハデな妹”が本作『マリー・アントワネット』かもしれない。ただ、どうなんだろう。
その《姉》が“等身大のヒロイン”として観る側の共感を得たのに対して、今回の《妹》は
庶民の感覚からあまりに掛け離れ過ぎてしまって、結果として観る側がヒロインの
内面にまで入って行き辛い状況を作ってしまったのではないか。それにしても、ひとつ
ボクが解せなかったのは、映画終盤、何故マリー・アントワネットは頑なに宮殿から
去ることを拒み、夫と一緒に残ると言い出したのか…、自身への罪の意識?、それとも
夫(家族)への愛?、それまでの展開からしてあまりに唐突過ぎるように思えたのだが。



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『麦の穂をゆらす風』、観ました。

2007-06-16 20:42:45 | 映画(ま行)





監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィー, ポードリック・ディレーニー
※カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品

 『麦の穂をゆらす風』、観ました。
1920年のアイルランド。医師になる将来を捨て、兄とともにイギリス支配からの
独立を求める戦いに身を投じる青年デミアン。戦いは終わり、ついにイギリスは
独立を認める。しかし今度は、アイルランド人同志が敵味方になる内戦が始まり、
デミアンと兄、そして恋人シネードとの絆をも引き裂いていく‥‥。
 いかにもケン・ローチ監督らしい“リアルな描写”と、イングランド地方のどんより
スッキリしない風土が、“戦争の重苦しさ”を観る者の心に印象付ける。観ながら、
時間の経過と共に“その痛み”は増していき、戦争への“強い憤(いきどお)り”が
胸の底から込み上げてきた。言葉に云えぬ深い哀しみと戦争の不条理さ、そして、
人の愚かさも…、様々な想いが複雑に絡み合い、ボクはますます《戦争》という
ものが分からなくなっていく。先に言っておくと、ここにはハリウッド映画にありがちな
感動話も、作られた美談も存在しない。代わりに、アイルランドに生い茂る新緑の
緑に対比して浮かびあがる、おぞましい“戦争の正体”に涙する。間違いなく
ここ数年来に作られた反戦映画では“最高傑作のひとつ”であり、実際ボク自身も
完膚無きまでに打ちのめされた。それゆえに、心に受けたダメージは耐え難く、
もう二度と観たくない…、いや、観れないだろう作品だ。
 勿論、ボクがこれを“近代反戦映画の傑作”と称するのには理由がある。序盤で
植民地支配を巡る二国間、大英帝国とアイルランド共和国による“(単純な)善悪の
対決”としながらも、後半では一旦終結に向かいかけたその戦争が形を変え、
“次なる戦争”となって息を吹き返していく。それは大英帝国の出した不平等な
条件を、とりあえず今は妥協して受け入れ、“これ以上の戦争”を避けるべきだという
義勇軍の“慎重派”と…、いや、“本当の自由”を得るために、今一度奮起して
戦うべきだという“強硬派”との内紛において他ならない。ボクにも両者の言い分は
分かるし、そのどちらかの主張も間違ってるとは思わない。でも、何故彼らが戦い、
殺し合う??、どうして、同じ国を愛する者同士が憎しみ、傷付け合う??(涙)、
今改めて、思い知らされる…、“戦争の正体”は表面に現れたものだけとは限らない。
我らが気が付かないところで地中に根を張り、幾重にも枝分かれして、“人の心の
奥深く”まで入り込んでいく。そして、《戦争》は、麦の穂を揺らす風のように‥‥、
仲間との絆も、友との友情も、兄弟の繋がりも、その人が持つ人間らしさも、家族の
幸せや思い出さえ‥‥、すべて奪い去っていくんだ(涙)。



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『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、観ました。

2007-04-01 22:51:05 | 映画(ま行)






監督: トミー・リー・ジョーンズ
出演: トミー・リー・ジョーンズ, バリー・ペッパー

 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、観ました。
テキサスに不法滞在するメキシコ人メルキアデス・エストラーダは、親友ピートと
ある約束を交わしていた。それは「俺が死んだら故郷ヒメネスに埋めてくれ」と
いうもの。メルキアデスは、ある日突然、銃弾に倒れる。約束を守るため、彼の
遺体を掘り起こし、故郷ヒメネスを目指すが…。
 またしても“俳優出身”監督の力作誕生か。自身2度目の監督作にして、この
堂々たる風格と、人生の味わい深さ。また、高度な技術に裏付けされた多彩な
人間模様をいとも簡単に描いてみせる…、こりゃまたぶったまげたゼ、トミー・
リー・ジョーンズ。映画序盤は、時間軸をバラバラに分解した場面のピースが、
パズルのようにはめ込まれ、次第に明らかになってくる事件の全貌…、そこに
行き着くまでの展開は、上質なサスペンス映画のようにスリリングだ。一方、
中盤からは、老いた主人公カーボーイを挟んで、友の屍(しかばね)と、それを
殺した犯人の、奇妙な“ロードムービー”へと進展する。映画は、男同士の約束、
自分が犯した罪への落とし前(責任)、西部へ挽歌など、往年のサム・ペキンパー
作品を彷彿させ、中でも“死体”を引き連れ、旅を続ける件(くだり)は『ガルシアの
首』を連想せずにはいられない。長い旅の過程で、徐々に“腐っていく友”を
感じながら…、それでも友の死に向き合い、出来る限りの事をしてやろうとする
主人公の友情は、“この世で一番神聖なもの”のように感じられた。
 だとしたら、この映画を単に真っすぐな男気と、古風で硬派な生き様を描いた
“男の映画”として片付けて良いのだろうか。いや、確かに、そういう側面を
持った映画であるのは違いないが、ここではもうひとつ、例えばイーストウッドの
『ミスティック・リバー』のように…、アメリカ人から見た“イラク戦争の影”が
見え隠れする。それは他でもない、メルキアデスを撃ち殺した“国境警備隊の
若い男”の存在だ。侵入者を“暴力”で取り締まり、女や子供だからといって
容赦はしない。広い荒野の真ん中で、遠くの銃声が聞こえると、あたかも自分が
狙われているかと“錯覚”し、罪のない善良な男を射殺してしまう。その後、
自分の顔が割れ、主人公に問い詰められると「あれは事故だった。仕方なかった
んだ」と“自らの正当性”を主張する。その姿はまさに、今にして尚、“イラク
戦争の否”を認めようとしないアメリカにダブってみえる。一方、友との約束を
果たすため、その魂を故郷の地に送り届ける“主人公の良心”は、お金とか利害
関係を超えたところで、今我らが本当に成すべきことは何なのか??、そして、
主人公が成す“死した者への弔い”を通じて、大儀のために人命さえ軽んじる
“アメリカのイラク政策”を批判しているようにも受け取れる。ラストシーン、
ついに主人公は、それでも保身と弁解を重ねる若い男を一喝する。死んだ友に
対して「心の底から謝れ」と。。崩れ落ち、泣きながら、初めてやっと、殺した
相手に許しを請(こ)う若い男…、次の瞬間、彼の口から叫ばれた“その台詞”が
この映画のすべて…。そして、それが“これからのアメリカが進むべき行き先”で
あって欲しい‥‥。

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