肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』、観ました。

2011-10-27 17:12:24 | 映画(あ行)

監督:根岸吉太郎 
出演:松たか子, 浅野 忠信, 室井滋, 伊武雅刀, 広末涼子, 妻夫木聡, 堤真一
※2009年キネマ旬報ベストテン第2位

 『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』、観ました。
秀でた才能を持つ小説家の大谷と誠実で美しいその妻・佐知。大谷は
その才能とは裏腹に、お酒を飲み歩き、借金を重ね、妻以外の女性とも
深い関係になってしまう破滅的な生活を送っていた。ひょんなことから夫の
借金を返すために飲み屋・椿屋で働き始めた佐知は、あっという間にお店の
人気者になり、日に日に輝きを増していった。そんな佐知は、常連客の一人、
大谷ファンの青年・岡田や昔佐知が振り向いてもらえなかった弁護士・辻から
好意を寄せられる‥‥。
 10年前の自分なら、きっと分からなかった夫婦のカタチ。男女が出会い、
結婚し、やがて子供が生まれる。しかし、些細な事から衝突し、模索の中で
やっと一筋の光を見出し、再生する‥‥。恥かしながら、オイラも同じような
経験をしてきたからね、、不思議な気持ちで、この“夫婦の愛”を眺めていた。
 映画は、良妻賢母のヒロインと、才能はあれど自堕落で破滅願望のある
作家夫婦の愛を描いている。妻は夫に献身的に尽くし続けるが、夫はそれを
何とも思わない。優しくすればつけあがる…、同じ男としてその気持ちも
分からなくはいが、やっぱり傍からみれば、「なんでサッちゃん、そんな
ダメ亭主に拘らなくとも、他にもっと良い男いるでしょうに」ってことになる。
オイラも最初はそう思って観ていたし、実際ヒロインに想いを寄せる男性も
いた訳だ。一人目は、誠実にヒロインを想う青年機械工。少し若すぎるが、
その実直な性格からして、一生涯ヒロインを大切にしてくれそう。そして、
二人目は、かつての恋人で、今は弁護士で成功し、少なくとも金銭面では
いまより条件は良く、今後も贅沢な暮らしが保障されている。でもね、
結果として彼女はそんな二人を選ばずに、甲斐性のない夫の元に残る訳だ。
何故だろう??、うん、それがレビューの最初に書いた、“10年前の自分なら
分からなかったけど、今は分かる”って部分‥‥、まぁ、正確には“なんとなく
分かる”が正しいかな。一言で言ってしまうと、それは二人が《夫婦》だからだよ。
お金でもない、若さでもない。安定した生活と引き換えにしても、尚手放したく
なかったもの。不満を吐き出し、己の弱さを曝け出し、ありのままの姿で
向かい合える。激しく衝突しあっても、何故か最後には許し合える。例え、
体は離れていても、心はどこか繋がったまま。それは同情とか憐れみとか、
そういう安っぽい言葉じゃなく、その二人の間に他人が割って入ることの
出来ない“聖域”みたいなもの。例えば、それを“(夫婦の)絆”という言葉で
言い換えても良いと思う。映画終盤、(見返りとして)男に抱かれたヒロインが、
道端に捨てた(高級)口紅の向こう側で、ひっそり咲いているタンポポの花‥‥、
その“誠実さ”こそが、《愛》というものなんだろう。改めて、“経験者”の
立場から言わせてもらうと、オイラもその“一輪のタンポポが持つ誠実さ”って
ヤツを今日まで捨てきれずに、今もこうしてここにいる。多分、それは明日も、
明後日も、その後もずっと‥‥。やっかいなもんだ(苦笑)。元々は“赤の
他人”のはずなのに、《夫婦》って不思議だな。。。


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『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、観ました。

2011-10-10 07:09:17 | 映画(や行)

監督:山崎貴 
出演:木村拓哉、黒木メイサ、柳葉敏郎、緒形直人、西田敏行、高島礼子、山崎努

 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』、観ました。
西暦2199年、突如侵攻してきた謎の敵ガミラスによって、人類はその存亡の危機に
瀕していた。人類の大半は死滅し、生き残ったものも地下生活を送っていた。ある日、
地球へカプセルか落下してきた。それは惑星イスカンダルからの通信カプセルで、
そこに行けば、放射能浄化装置があるという。人類最後の希望を乗せて、最後の
宇宙戦艦“ヤマト”がイスカンダル目指して旅立つ……。
 遂に『宇宙戦艦ヤマト』の実写化ですか…。しかし、オイラの場合、その“遂に”の
意味は、「いよいよ待ちに待った」ではなく、「とうとうやっちまった」の方でした。
…というのは、アニメーション映画と実写映画では、映像を作る上でその立ち位置が
微妙に違います。アニメでは声優さんがいるものの、基本的に“絵”が主役です。
一方、実写では、出演する“俳優さんを前面に”押し出しながら、それに合わせて
映像を作っていくという作業になります。往年の“ヤマト”をご覧になった方なら
ご存知だと思いますが、船に乗っている人間はその大半の時間を座っています。
例えば、同じ宇宙を舞台にしたSFでも、人対人の立ち回りが用意されている
『スター・ウォーズ』とは全く違います。やはり、そう考えると“ヤマト”は実写化し辛い
アニメだと言わざるを得ません。作品中で、戦艦同士のバトルが少なく、やけに
あっさりイスカンダルに着いてしまい、むしろ、到着後のゲリラ戦にたっぷり
時間を割いてあるのは、その辺の兼ね合いもあると推測します。
 さて、アニメ版と今回の実写版を比べる上で、絶対に避けて通れない相違点が
二つ。“デスラーの存在”と“森雪のキャスティング”でしょう。まず、デスラーの
件については、往年のシリーズをリアルタイムで観ていオイラからすれば、やっぱり
チョット肩透かし。当時オイラの仲間内では、むしろ古代進よりデスラーの方が
人気が高かった部分もありました。敵でありながらもヤマト乗組員をリスペクトし、
常にフェアな戦いを挑んでいくデスラーの姿は、まさに“武士道”そのものでした。
言ってみれば、デスラーのいない『ヤマト』なんて、赤い彗星のシャアのいない
『ガンダム』みたいなものですな。
 次に、森雪役に黒木メイサを選んだ件です。これについては思いっきり賛否両論…、
ややもすれば批判的な意見の方が多いかもしれませんが、個人的には“アリ”かなと。
アニメ放送当時と今現在の時代の変化をみれば、オンナは強くなりましたッ(汗)。
オイラの経験からしても、これは間違いありません。今どき、アニメの森雪みたく
自分が一歩後ろに引いて男を立てる女性なんぞ、どこをどう見渡しても存在致しません。
映画の中のガミラスに遊星爆弾を落とされるまでもなく、すでにこの地球上から
皆絶滅しました。以上デス。

あ、ひとつ書き忘れました。
スティーヴン・タイラーのエンディング曲は楽曲的には完璧ですが、
これが日本映画であることを考えれば、聴いててどうもムズ痒い。
懐古趣味と言われるかもしれませんが
『ヤマト』のエンディングは、やはりあの曲……であって欲しかった。


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『インビクタス‐負けざる者たち‐』、観ました。

2011-10-05 17:26:35 | 映画(あ行)

監督:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン、レレティ・クマロ、マット・スターン
※※2010年キネマ旬報ベストテン第2位

 『インビクタス‐負けざる者たち‐』、観ました。
1994年、南アフリカ初の黒人大統領となったマンデラは、アパルトヘイトによる
人種差別や経済格差をなくし、国をまとめるためには、95年に自国で開催される
ラグビーワールドカップでの優勝が必要と感じ、代表チームの主将ピナールとの
接触を図る……。
 イーストウッド前作の『グラン・トリノ』があのような…、自身の“遺言的”要素が
強い作品だったから、今作でガラッと雰囲気を変えてくるだろうことは予想が
出来た。だけど、まさか“ラグビー”を題材にしたスポーツ映画でくるとはねぇ。
過去のスポーツ映画『ミリオンダラー・ベイビー』と比べてみても、熱気が狭く
暗い室内に充満したボクシングから、屋外の青空と緑の芝の上に開放された
ラグビーは、これまでのイーストウッド作品にはない(?)爽快感がある。
が、勿論、そこはイーストウッドという事で、一介の痛快スポ根活劇に終わらず、
リーダー論を絡め、人種差別から“魂の融和”へと至るテーマを織り込んである。
これが彼のベストムービーではないにしても、これほどの質の高さをほこり、
しかも、毎回ジャンル(形式)の異なる作品をコンスタントに年間一本づつ
発表し続けるイーストウッドの凄さ、改めて感心した。
 さて、勝手にここでオイラの持論を展開させてもらうのなら、イーストウッド
映画の醍醐味は“謎解き”だと思ってる。彼の作品中で、ある“違和感”を
感じたなら、何故?、どうして?、とオイラは疑って掛かるようにしているんだ。
では、この作品での“違和感”とは……。イーストウッドらしからぬ(?)○○○な
結末もさることながら、そこに至るまでの“過程のみせ方”がこれまでの作品とは
随分違う。いや、それどころか“真逆”なのだ。例えば、『ミスティック~』
『ミリオンダラー~』『硫黄島2部作』等、それぞれにテーマの違いこそあれど、
これでもかこれでもかという程の“残酷な現実”を曝け出すことで、あの時
我々に何が欠けていたのか、何が間違っていたのか、を観る者それぞれに
問い掛けていくスタイルだった。一方、この映画では、オレについて来いと
言わんばかりに、こうすべきだ、あーすべきだと、実際に主人公自らが“見本を
みせる形”で描いていく。そして、主人公の、この言葉だ、「この国には今こそ
“変化”が必要だ」と。ならば、この映画において“変化”とは何を指すのだろう……。
いわずもがな、それは黒人と白人とがいがみ合うことなく、互いを許すことで、
協力し、南アフリカを素晴らしい国にしていくことにおいて他ならない。その刹那、
ここでふと気づく……、映画と同じく黒人初の大統領、現在のアメリカに
目を移してみると、次期大統領選挙を目前に、共和党と民主党の政党間の
駆け引きによって、経済は停滞し、政治は“政治ショー”と化している。つまり、
この映画が示すリーダー像の向かう先は、現在のアメリカの政治家全員、
強いてはオバマ大統領ではなかろうか。そう、現状を打破するには“変化”が
必要だ。かつてのオバマ氏の言葉 「Yes We Can」、そして「CHANGE!」は、
今こそアメリカ合衆国に必要なのだ。この映画における“イーストウッドの変化”は、
そんな意味合いが込められていたのではなかろうか。

 


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『インセプション』、観ました。

2011-10-02 08:27:18 | 映画(あ行)

監督:クリストファー・ノーラン
出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤール

 『インセプション』、観ました。
コブは人が夢を見ている最中に、その潜在意識の奥深くにもぐり込んで
相手のアイデアを盗むことのできる優秀な人材だった。彼は、企業スパイの
世界でトップの腕前を誇っていたが、やがて国際指名手配犯となってしまう。
そんなある日、コブの元に“インセプション”と呼ばれるほぼ不可能に近い
仕事が舞い込む・・・・・・。
 私事で恐縮だが、昔からオイラは手先が器用で(他はともかく)美術の
成績だけは優秀だった。彫刻、ポスター、何でも御座れ。風景画だって
お手のもの。けどね、ひとつだけ全くノーセンスなものがあったのだ。
“空想画”だ。イマジネーションが広がっていかないというか、早い話が
アタマがかたくて、枠や形式にとらわれ過ぎちゃうんでしょうな。そんな
オイラからすれば、この映画は自分と“真逆の人間”が造ったとしか思えない。
その、自由でかつ圧倒的なスケールの世界観も・・・、その、奇想天外で
予測不能なストーリー展開も・・・、あんぐり、大きな口を開けたまま、呆気に
とられ続けた2時間半だった。いやはや、こいつは全てにおいて“規定外”だ。
 さて、監督はクリストファー・ノーラン。『インソムニア』や『ダークナイト』では、
“善と悪”をテーマに、その両者の垣根が解かれ、曖昧になり、やがて
逆転していく様子を描いた彼ですが、この『インセプション』では、現実の
世界と潜在意識が作り出した虚像とが交錯し、次第にボヤけ、思考が
混乱していく様を描いている。また、ストーリーの展開も、現在から
過去へ過去へと遡っていった『メメント』を進化した形で、本作では実在する
現実世界から潜在意識の奥へ奥へと深く潜っていく。そういった意味でも、
この『インセプション』は彼にとって一旦の区切りになる“集大成的な作品”
といえるのかもしれないね。
 この映画の面白さは、複数の異なる世界を潜在意識をいうイメージで
結び付け、それらの世界を時間の進む速さこそ違えど、カットバックしながら
同時進行してみせていく点だ。その際、それぞれの世界で活躍するメンバーが
異なるため、そこに至る物語の過程で何人キャラクターを描けるか・・・が、
この映画の生命線となってくる。恐らく、映画序盤に主人公がひとりひとり
当たって仲間に引き入れていく展開は、黒澤明『七人の侍』を下敷きに
していると思われるが、そこがしっかり作りこまれているからこそ、複雑な
構成ながらも空中分解せず、クライマックスへとなだれ込むことできるのだ。
観ていて、随所に“和のテイスト”が散りばめられているのは、そういった
日本映画に対するオマージュの意味合いも多分に含まれていると思う。
 それから、時間にして数分だが、個人的にとても印象に残ったワンシーンが
あったので挙げておく。大学生の「設計士」アリアドネが夢の世界を創造した
場面でのこと、主人公のコブと二人、その前後に置かれた“2枚の鏡”が
互いに反射をし合い、幾重にもなって“無限の世界”を作り出す。いつしか
実在の彼らさえ、その無限の世界に取り込まれ、実像と虚像の区別が
付かなくなった途端、アリアドネが自分の側の鏡を叩き壊して前方へと
進んでいく。過去の記憶(潜在意識)と現実との狭間で“自分の居所”が
分からなくなっていたコブを象徴すると同時に、その解決法を彼に示した
とても素晴らしい場面だと思った。


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