肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『父親たちの星条旗』、観ました。

2006-10-31 21:44:27 | 映画(た行)






監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ, ジェシー・ブラッドフォード

 『父親たちの星条旗』、映画館で観ました。
太平洋戦争末期、激戦の地となった硫黄島の山頂で星条旗を掲げたアメリカ兵の
写真。全米を熱狂させ勝利へと邁進させた英雄たちの勇姿。しかし、その裏側に
覆い隠された真実…、そして英雄に祭り上げられた兵士たちの苦悩…。死闘を
繰り広げた硫黄島で、彼らは一体何を見たのか…。
 イーストウッドがスピルバーグを“プロデューサー”にお迎えしたものか…、
スピルバーグがイーストウッドを“監督”にお願いしたものか…、いや、この際、
そんな事はどちらでも良い。いわゆる「水」と「油」、“ヒューマニズム”の
イーストウッドと、“娯楽志向”のスピルバーグがタッグを組んで戦争映画を
撮ることに、観る前から若干の不安はあったのだが、オイラの予感は悪い方に
当たってしまった。勿論、現在のハリウッド映画界をリードする2人の巨匠で
あるからして、悪い映画であるはずがない。映画の出来も楽々及第点はクリア
して、もしかしたらネームバリューで今年の賞レースの一角にくい込むかも
しれないけど……、ただ、それ以上を期待するのはチョットなぁ。
 映画は、硫黄島に配属された3人の兵士を軸とした戦争ドラマ。彼らの、激しい
戦闘の中にいた“過去”と、ひょんな事から英雄となり、祖国に帰還した“今”とが
オーバーラップしながら、次第に隠された“戦争の裏側”が見えてくる仕組み。
ただ、ボクとしては、このフラッシュバックを多用した特殊な構成に戸惑う
ことが多くって、テーマが胸に迫るところまでは至らない。確かに、最先端の
CG(←スピルバーグの入れ知恵か??)を駆使した映像は、臨場感も迫力も
満点だが、ボクはイーストウッドの映画にはミスマッチのように感じられた。
何だかイーストウッドの個性とスピルバーグの個性が喧嘩して、互いの持ち味を
殺しあってしまった感じがするのは、ボクの気のせいだろうか。
 一方で、イーストウッドの“戦争観”とでもいうのかな…、これまでの戦争
映画とは明らかに“角度の違う反戦”が、如何にも彼らしい。この映画の良い
ところは、アメリカ兵vs.日本兵、その“対決の構図”を出来る限り省略して、
あくまでもアメリカ側の一方から、この戦いの悲惨さと犠牲の大きさを描いて
いる点だ。“戦争の勝者”はアメリカである筈なのに、ここ(この映画)で
我ら観客が目にするものは、アメリカ兵が“見えない敵の攻撃”に負傷して、
息絶えていくシーンばかり。まるでイーストウッドは、その映像を通じて
我々にこう言っているようだ。《戦争に“勝者”はなく、“英雄”も存在しない。
あるものは“生と死”だけなのだ》と。そして、映画では“勝利の象徴”として
“(偽りの)英雄”となった主人公達が、心に深い傷を負ったまま、その後の
長い人生を苦しみながら生きていくことになる。何も戦場で死んだ者だけが
犠牲者とは限らない。もしかしたら、生きながらに「戦争」というあまりも
“重い十字架”を背負い続けた彼らこそ、この戦いの“最大の犠牲者”なのかも
しれない。そう、彼らの心の中の戦争は、永遠に終わることはないのだ。

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『シムソンズ』、観ました。

2006-10-28 20:05:21 | 映画(さ行)

シムソンズ 通常版(DVD) ◆20%OFF!

 『シムソンズ』、観ました。
北海道常呂町の高校生の和子は、カーリング男子の日本代表になった先輩に
憧れ、ひょんなことから、女子カーリングチーム“シムソンズ”を結成することに。
仲間割れをしたり、挫折しそうななりつつも、和子のポジティブな気持ちと
コーチの熱心な指導で、シムソンズは北海道大会に挑むことになる‥‥。
 観る前から、展開も、結末も、大体全部読めちゃいそうな“ガールズものの
青春スポ根”映画。早い話が、近年の『がんばっていきまっしょい』のスタイル
から“コメディー色”を強くして、舞台を四国から“北海道”へ、スポーツ種目を
ボートから“カーリング”に移したイメージで良いのかな。さて、映画は、
そんな定番中の定番を“今風のセンス(?)”で味付けして、“笑い”は明るく
軽快に…、“涙”は重くならずに爽やかに…、観る側からすれば、親しみやすい
キャラクター作りでテンポも良く、非常に観やすい作品に仕上がっている。
 ただ、観終わって、冷静にこの映画を『がんばっていきまっしょい』と比べて
みれば、やはりどうしても霞んで見えてしまう。まぁ、そもそも、この手の
映画にストーリーはあってないようなもの。(だって、この映画も、『がんばって
いきまっしょい』も、『ロボコン』も皆同じ(笑)。)要は、観る側が如何に
ヒロイン達に共感し、自身の心の中に仕舞ってある青春時代に同化できるかに
かかっている。勿論、この『シムソンズ』も一応に頑張ってはいるんだけど、
やはりどっかで物足りない。で、オイラが思うところ、今作でその障害に
なっているのは、「エンジェルズ」というエリート集団の“悪役チーム”を
作ってしまったこと(←しかも、ご丁寧に“黒い”ジャージまで着てる(笑))。
映画のテーマは“自分探しの旅”から始まって“仲間との絆の大切さ”へ…、
そして最後は“スポーツは楽しむもの”へと変わっていく。その過程において、
常に主人公チームと“対照”となるエンジェルズの存在が必要だったのかも
しれないが、これは映画の作り方として“一番雑(ざつ)で楽チンな方法”を
取ってしまったと思うんだ。そして、結果として、“勝負(善悪)の構図”が
浮かび上がり、作品を“視野の狭いもの”してしまった。思うに、ここは
『がんばっていきまっしょい』のように、ヒロインたちの胸にある不安や、
心の迷いなど…、青春という“一瞬”の中でもがきながら、必死に“自分の
居場所”を探している、そんな輝ける彼女たちの姿を追うだけで良かった
のでは??、この『シムソンズ』が、「アイドル映画」と「純粋な青春映画」の
隙間にある“ほんの僅かな薄皮”が突き破れない…、その理由のひとつに、
そういう作り手の“イノセントな部分”があったのかもしれない。

 


『プロデューサーズ』、観ました。

2006-10-24 21:06:52 | 映画(は行)

ネイサン・レイン、ユマ・サーマン共演のミュージカル・コメディー!ソニー・ピクチャーズエン...

 『プロデューサーズ』、観ました。
ブロードウェイのプロデューサー、マックスの事務所に、会計士レオが帳簿を
調べにやって来た。やがてレオがふと漏らした「どんなに高額の製作費をかけて
舞台を作っても、赤字なら帳消しにできる」というアイデアに閃いたマックスは、
最低の脚本&演出&役者をそろえ、わざと打ち切られるミュージカルを製作。
出資金を丸ごとゲットしようと…。
 コイツ(この映画)を良識あるオトナが観たら、きっと眉を顰(ひそ)める。
いや、オイラみたいな非常識な人間でも、この刺激はチョット強過ぎた(笑)。
お寒いアメリカンジョークなんて当たり前、下ネタ全開、ブラックな笑いも
ふんだんに盛り込まれて…、それにしても、果たしてこのハイテンションのまま
130分も持つんだろうかと、オレの余計な心配は嫌がおうにも増していく。
まずは、冴えない主人公たちの自虐系ギャグで順調な滑り出し。その時点で
毒はなく、まさか…、まさか…、その後の大暴走など思いもしない。しかし、
いよいよ、ゲイの演出家コンビの登場から、映画は俄(にわ)かに動き出し、
大暴走への序幕は切って落とされたのだ。その、彼らの踊る“オカマ”ダンスに
オレの理性は掻き毟(むし)られ、アタマの中じゃ「トニー(賞)、トニー、
トニー、トニー‥‥」の言葉が呪文のように繰り返される(笑)。さらに、
追い討ちをかけるが如く、観ているオイラの目に飛び込んできたものは、
歩行補助器に捕まりながらも笑顔で踊る、シルバーエイジの婆様方だ。さすがに
これは道徳的にヤバ過ぎる、やっぱりこれは社会的にマズいだろ。だけど、
こりゃたまらん、ついにオイラはこらえ切れずにプッと吹き出した(笑)。
そして、その後は坂道を転げ落ちるように“禁断の世界”へと真っ逆さま。
ハゲネタ&ズラネタで腹も捩(よじ)れんばかりに爆笑し、ヒトラーの髭(?)が
今宵はアタマから離れない(笑)。そのバカバカしさが痛快!!、その開き直った
お下品さが清々しい。それからそれから、役者陣では、思わずユマ・サーマンの
スレンダーなお色気にメロメロ。思わぬマシュー・ブロデリックのスウィートな
美声にクラクラ。勿論、“ミュージカル映画”としても最高にゴキゲンだぜ。
ここには、いかにもアメリカ的で、人々を強烈に惹きつけるものが3つある‥‥、
戦争。エロチズム。そして、ブロードウェイの華やかさ。

 


『イーオン・フラックス』、観ました。

2006-10-21 20:54:27 | 映画(あ行)

イーオン・フラックス スタンダード・エディション ◆20%OFF!

 『イーオン・フラックス』、観ました。
品種改良によって発生したウィルスにより人類の99%が死滅した2415年の世界。
僅かに生き残った人類は、汚染された外界とは壁で隔てられた都市ブレーニャで
圧制されながら暮らしていた。そんな政府に抵抗する反政府組織“モニカン”。
その組織のひとり、イーオン・フラックスはブレーニャの支配階級の暗殺を
命じられる…。 
 “仮想現実(バーチャル・リアリティー)”を思わせる未来社会が映画の舞台、
アクロバティックなアクションシーンはスタイリッシュに様式化され、強大な
権力を持つ管理国家に、自由を求めて小数精鋭のレジスタンスが戦いを挑んで
いく展開…、観ながらオイラはここに“あの映画の影”を感じずにはいられない。
そうさ、コイツ(この映画)はキアヌ・リーブスからシャーリーズ・セロンに
かわっただけ…、映画のアプローチの仕方から雰囲気作りまで皆同じ。早い話が
“オンナ版『マトリックス』”に違いない。まぁ、何を今更『マトリックス』なぞ
やりたくなってしまったのか、この監督とサシでじっくり語り合ってみたいの
だが(笑)、シャーリーズ・セロンもシャーリーズ・セロンで、どうして今回の
出演を決めてしまったんだろう。最近の彼女を見ていると『モンスター』といい、
『スタンドアップ』といい、自分のイメージをかけ離れたキャラクターを
やりたがり、結果として自分の持ち味(神々しいほどの美貌)を殺してしまって
いるように感じちゃう。勿論、役作りの面白さに目覚めるのも結構だが、もっと
“(ストーリーの)内容重視”で出演作品を選んでみては如何だろうか。
 と、そんな感じで、映画は新しいようでいて新しくない。近未来、ウィルスに
よって大打撃を受けた人類のその後を舞台設定にしたSFは、最近の定番だし、
今回そこに隠された秘密も想定の範囲内。むしろ、今作で目に付いたのは、
和服に…、障子窓に…、蛇の目傘に…、“日本様式”を取り入れた建築物や
小物類の数々だ。ミスマッチな(和の)アンティークさが逆に西洋風のそれに
混じって新鮮に映る。それにしても、こういう“スクラップ部品の寄せ集め”
みたいな作品で、どこのどいつがどうして思い付いたアイデアなのかは存ぜぬが、
まさか、それさえ“『SAYURI』のセットの使い回し”なんてことは‥‥(笑)。

 


『ブラック・ダリア』、観ました。

2006-10-15 20:49:44 | 映画(は行)






監督: ブライアン・デ・パルマ
出演: ジョシュ・ハートネット, スカーレット・ヨハンソン

 『ブラック・ダリア』、映画館で観ました。
1947年LA。身体を腰で切断された女の惨殺死体がみつかった。ハリウッド
スターを夢見ながら大都会の暗闇に葬られた彼女を、人々はブラック・ダリアと
呼んだ。やがて捜査線上に浮かび上がる一編のポルノ映画、ダリアに似た
大富豪の娘、そして彼女の一族にまつわるドス黒い秘密。事件の謎は、捜査に
あたる2人の刑事の運命をも狂わせて行く…。 
 観終わって映画館の席を立ち、出口に向かう人の流れに目をやれば、皆々さん、
今ひとつ釈然としない御様子。だって、それもその筈、映画の宣伝文句は奇妙で
猟奇的な惨殺死体であるはずなのに、物語は一向にサイコな展開に発展しよう
とはせず、なかなか次なる殺人事件も発生しない。映画は、甘く危険な香り、
妖しいオンナの影がチラチラ、その嘘と誘惑に翻弄(ほんろう)され、どんどん
“ヤバい世界”に足を踏み入れていく主人公、焼け落ちていくワイヤーの上を
歩いているようなスリルを感じちまう。そうさ、コイツは血の気も凍る“サイコ・
サスペンス”なんかとは程遠い、犯人捜しの“謎解きミステリー”とも違ってる。
「愛」と「金」と「欲望」の中で、男女それぞれの思惑が見え隠れする“闇の映画”。
典型的な“フィルム・ノワール”だよ。
 さて、映画は上にも書いたように、当初の予想とは少しイメージが違ったが、
柔軟に頭を切り替えられれば、全く楽しめない映画ではないと思う。40年代
アメリカの埃(ほこり)っぽくて汗臭い雰囲気は、セット撮影にしたことで
映像によく表現されているし、他にもクラシカルなファッションや自動車など、
本作の楽しみ方は数多い。中でも今回、オイラが最大の見所として挙げたいのが
キャスティング。スカーレット・ヨハンソンの艶っぽさ、ヒラリー・スワンクの
妖艶な香りは、画面を通じてこちら側に匂いたち、映画全体を支配している。
この映画で残念だったのは、次々と現れて消えていく登場人物が整理されて
いないため、複雑に絡まった事件の糸が、最後の最後まで解(ほど)けずに
スッキリしない。だけど、ラストだけは無理矢理に丸く収めてしまって…、
うーん、「フィルム・ノワール」であの結末は‥‥無いよなぁ。


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『ヒストリー・オブ・バイオレンス』、観ました。

2006-10-10 21:53:39 | 映画(は行)

ヒストリー・オブ・バイオレンス【DVF-122】=>20%OFF!ヒストリー・オブ・バイオレンス

 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』、観ました。
アメリカの小さな田舎町で、トム・ストールは、妻エディと2人の子供たちと
一緒に幸せで静かな生活を送っていた。ある夜、トムは自身が営む小さな食堂に
押し入った強盗を正当防衛で倒し、従業員の命を救う。その勇敢な行動を
マスコミが取り上げ、一躍ヒーローとなるのだが…。
 コイツ(この映画)を生粋のクローネンバーグファンが観たら、どう思う??、
何を隠そう、オイラももう20年来の(隠れ?)クローネンバーグのファンで
あるのだけど、少なくともコイツはオイラの知りうるクローネンバーグの
“ヤバい世界”とはちと違う、アクが抜けてカドが取れたマイルドな仕上がり。
(まぁ、別の意味で“ハード”であるのだがね)さて、これまでのクローネン
バーグの常として、幻覚やら、幻想やら、時に架空の不思議生物まで登場させて、
人間の隠された深層心理を抉(えぐ)り出す、そんなビジュアル趣向の作品が
多かった。ところが、一転、今作では“暴力の連鎖”と、その世界に一度足を
踏み入れた者が”それを断ち切ることの苦しみ”について、これまでになく
メッセージ色の濃い作品に仕上がっている。ぶっちゃけ、まさか今回、あの(?)
クローネンバーグが、夫婦愛やら、親子愛やら、強いては家族愛を前面にした
映画を撮るとは思わなかった。本年度アカデミー作品賞ノミネート‥‥勿論、
クローネンバーグファンがクローネンバーグ作品として観るのはどうかと
思うが、観ながら物語のミステリアスにグイグイ引き込まれていく秀作だ。
 ならば、今作でクローネンバーグ的な(?)“粘着したフェチズム”が如実に
表れている場面はといえば、やはり映画の前半と後半、二度に渡って用意された
SEXシーンだろう。まず、前者では、もはや中年にさしかかった妻が、チア
リーディングのコスプレで自分の亭主(主人公)を誘惑する…、いかにも
クローネンバーグらしい嗜好にニヤリ(笑)。(肉体の)老いと(精神の)若さが
交じり合った“気色悪さ"と、その裏に隠された“ピュアな愛情”に、思わず
オレの胸は動揺を抑えきれない(笑)。一方、後者では、一度は心離れながらも
互いの剥き出しの感情をぶつけ合うように絡みつく二人の激しい姿に、胸が
苦しくなった。まぁ、結局のところ、主人公が最後に取った行動(暴力沙汰)が
正しいかどうかなんて、ボクには分からない。ただ、ひとつだけ言えることは、
そこに……、例えば『キル・ビル Vol.1』ような“爽快感”はなく、映画は
“後味の悪さ”が残った。彼を迎える家族に笑顔はなく、そして彼らの心に
“大きな影”を落とした。これで彼は本当に暴力の世界から抜け出すことが
出来たのだろうか??、いや、それとも…。ボクには、彼とその家族の行く手には
再び大きな困難が待ち受けているようで仕方ない。

 


『うつせみ』、観ました。

2006-10-03 21:17:36 | 映画(あ行)

うつせみ ◆20%OFF!

 『うつせみ』、観ました。
ミステリアスな青年テソク。彼はバイクで街を駆け巡り、留守宅を探しては、
住人が戻るまでのつかの間を過ごしている。ある日、豪奢な家に忍び込んだ
テソクは、独占欲の強い夫に苛まれ、抜け殻のように生気が無い孤独な人妻
ソナと出会う…。 
 オイラみたいな“凡人”に、この作品がカンペキに理解出来たとは思わない。
だけど、オイラみたいな“凡人”でも、これがキム・ギドクという“天才”に
よって作られた、今年を代表する大傑作であるのはよく分かる。さて、映画は
“あるひとつの制約”を持たせながら、非常に幻想的かつ寓話的な仕上がり。
しかし、同時に、その“制約”によって観る側は自分なりのイマジネーションを
膨らませ、働かせながら観ないとついていけない、“難解な作品”ともいえる。
ならば、その“制約”とは……、主人公男女に“言葉”を発しさせないこと。
つまり、セリフによる説明が省略されているために、そこで生じた“(物語の)
空白”を埋めていく作業が観る側に必要となってくる。よって、今からボクが書く
解釈が、必ずしも正しいとは限らない。でも、100人居れば100通りの映画の
観方があるわけだし、観る人がそれぞれ感じ方が違っていて良いんだと思う。
うん、これはそういう“無限の広がり”を感じさせる作品だ。
 と、そんな感じで、この映画を一筋縄で解くのは難しい。理論と理屈で
観れば崩壊し、理由付けを探せば袋小路に迷い込む。どうか“感性”だけを
大切に、まっさらな気持ちで観て欲しい。今回(の鑑賞で)、オイラの障害に
なったのは、何が主人公を“ゴルフ”に走らせる??、しかも、どうして“3番
アイアン”にご執心なの??、別に“4番ウッド”でも良かろうに(笑)。それと
何故に“洗濯板”でなくちゃいけないの??、いや、それ以前に、主人公青年は
一体“何者”で、その“奇行の目的”は何なのか??、凡人のオイラに、明確なる
回答を指し示すことはできない。早い話が、検討すらつきかねてしまう(笑)。
ただ、ひとつ言えることは、主人公青年はまるで部屋のカギを開けるように、
ヒロインの閉ざされた“心の扉”を開けたのだ。その時、彼女は“救い”を
求めていて、彼にしか彼女を助けられなかったということ。彼女は彼を
必要とし、彼もまた彼女を必要だったということ。例えば、互いが互いの心の
支えとなって、ひとつのカップめんを分け合って食べた、あの夜のように。
ラストシーン、だから、彼女にだけは見えたんだ、そこに居ない(死んだ?)
はずの彼の姿を…。きっと、彼女は幸福だったに違いない。彼の“永遠の
愛”に包まれて、再び“生きる喜び”を見つけることが出来たのだから。