肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『惑星ソラリス』、観ました。

2007-03-28 20:59:06 | 映画(ら・わ行)






監督:アンドレイ・タルコフスキー
出演:ナタリア・ボンダルチュク, ドナータス・バニオニス

 『惑星ソラリス』、観ました。
21世紀、心理学者クリスは、表面をプラズマ状の海に覆われた惑星ソラリスの
軌道ステーションに派遣される。そこで働く人々が混乱した原因を探る目的だが、
彼も10年前に死んだはずの妻ハリーに出会う。理性を持つソラリスの海は、
人間の潜在意識を実体化していたのだ。クリスはハリーにのめり込み、次第に
苦悩していく‥‥。
 これが2度目の鑑賞になるが、やはり“答え”は出なかった…。いや、そもそも
“答え”など出るはずがない。なぜなら、これは100回観れば100通りの感じ方を
持つ、そんな不思議な魅力に満ちた作品だから。例えば、通常の映画では、
物語結末を“到達点”として、そこで一つの結論(テーマ)を導き出すスタイルだが、
この映画の場合は、先(物語後半)にいくにしたがって、頭の中のイメージが
膨らんで、エンディングを迎えて尚、どんどん広がっていく感じ。勿論、それは
難解だという意味ではなく、「愛」「良心」「母性」「郷愁」など、言葉では巧く
説明できない“意識”の波の上をゆらゆらと漂っている、いわゆる“安らぎ”にも
似た感覚だ。では、何故、そんな哲学的な内容を“SF映画”に…??、恐らく、
監督のアンドレイ・タルコフスキーは、「人の理性」を未知なる宇宙空間にある
“ソラリスの海”としてダブらせ、イメージしたんだろう。そこでは“人類の科学”
なんて取るに足らない僅かなものにすぎない。その海は、絶えず海面の表情を
変化させながら、まだ誰も見たことがない…、もしかしたら永遠に見ることは
できないだろう…、“心の源(みなもと)”が隠されているような気がする。
 では、次に、この正体不明の生命体(?)《ソラリスの海》について分析する。
《彼女》は、人の潜在意識の中に入り込み、その内のひとりを選んで実体化する。
《彼女》は、その形状も、その記憶さえ完璧に“コピー”するが、出来ないものが
ひとつある、それが「愛」という概念だ。体の傷の痛みは分かっても、心に付いた
傷の痛みは分からない。例えば、“死の哀しみ”を知ってこそ、初めて“生の輝き”を
知るように…、愛もまた、その“苦しさ”を知らずには語ることは出来ないのだ。
しかし、そんな《彼女》にも、ついに“その愛の真実”に気付く瞬間がおとずれる。
映画終盤、一週間に一度だけ、基地の内部に現れる“30秒の無重力状態”の
場面だ。《彼女》は、空中に浮遊しながら主人公と抱きしめ合い、彼とその愛を
感じたとき…、悟ったに違いない。仮に、自分にとってはそうであったとしても、
彼にとってこれは“現実の世界”ではない。あと30秒後に消えてなくなる
“この(無重力の)世界”のように…、この愛もいつか自分の手を離れていって
しまう。なぜなら、彼は今も“過去の時間”を生きていて、ここは本来“彼の
居るべき世界”ではないのだから‥‥。ラストシーン、主人公の脳波を当てた
《ソラリスの海》にいくつかの小さな島が生まれ、彼の家族の記憶が実体化される。
《彼女》はひとつの“別れ”を経験し、“愛の痛み”を知った。そして、同時に、
その“証し”を自らの記憶の中に刻み込んだのではなかろうか。



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『DEATH NOTE デスノート the Last name』、観ました。

2007-03-26 21:19:50 | 映画(た行)






監督:金子修介
出演:藤原竜也, 松山ケンイチ

 『DEATH NOTE デスノート the Last name』、観ました。
「キラ逮捕に協力するため」と称して、キラ対策室に入り込んだ夜神月(ライト)。
そんな月を虎視眈々と待ち受けていたL。しかし、月もLも知らないところで、
全く予想だにしない出来事が起こっていた。リュークとはまったく別の意思を
持つ死神レムによって、地上にもう1冊のデスノートが落とされる‥‥。
 まさか、こんなにもアクロバティックな展開になろうとは‥‥。普通に物事を
順序立てて考えていく人には、まず読めない(笑)。先の『前編』が、相手を牽制し、
様子を伺いながらの“ジャブ”の応酬…、だとすれば、そのエンディングからして、
当然この『後編』は、両者(Lとライト)の“接近戦での激しい打ち合い”を期待する。
だが、実際は、第2・第3のキラが現れ、いつしか戦いの構図は“チーム戦”…、
それも男女混合、人も悪魔も入り乱れての“生き残り戦”へと突入する。勿論、
観る側の予測を裏切って進む展開は、時として面白かったりするわけだが、
この映画の場合はあっちに行ったりこっちに来たりの印象で、どうも落ち着きが
ない。例えば、第2・第3のキラが現れたと思ったら、今度は第2・第3の悪魔まで。
しかも、その悪魔たちは、人を愛したり…、愛のためにその命を投げ打つことさえ
厭(いと)わない。皮肉を込めて言わせてもらうと、“自己犠牲”を持つ悪魔が
いるとは、今日のこの日まで考え付きもしなかった(笑)。別に原作がそうだから
じゃないが、ホントに“マンガ”みたいになってきたなぁ。
 一方、デスノート本体に関しても、今作では“応用的な使い方”ばかりで、
少々“説明過多”になってやしないか。ぶっちゃけ、デスノートの“新ルール”を
後付けで足していき、それに合わせてストーリーを作っていったようにさえ
思えてくる。いや、それ以前に、『前編』から引き続いてのテーマになる、“恐怖で
抑えつける平和”の先にあるものは??、“真の正義”とは??、そして、この病んだ
時代に生きる我らにとって、今信じるべきは“てめぇの中だけのモラル”ってやつ
なのか?、“でっかい社会が定めた法律”ってやつのなのか?、その答えを映画の
どこで探せば良いのか、最後までボクには分からなかった。もっとも、これを
切っ掛けにして、観た人がそれらの問題について考えるようになったとしたら、
それで映画の存在価値はあったということなんだけどさぁ。
 最後にひとつだけ。今回は金子修介監督に期待するあまり、辛口なコメント
ばかりになってしまったが、平成『ガメラ』三部作以来、ボクにとって彼は
今も“特別な監督さん”だ。勿論、今後も期待を持って彼の作品を観続けていく。
それにしても、金子修介の“アイドル志向”は相も変わらず。しかも、今作では
やりたい放題(笑)。戸田恵梨香嬢を監禁拘束したり…、片瀬那奈嬢のお美しい
御み脚(おみあし)があられもなく‥‥、おっと、これ以上は書けますまい(笑)。
ちなみに、スレンダーな片瀬嬢は、オイラも好みだったりするもんだから、思わぬ
ところで、結構ラッキーーッ、だったりもした(笑)。



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『カポーティ』、観ました。

2007-03-23 19:31:35 | 映画(か行)






監督: ベネット・ミラー
出演: フィリップ・シーモア・ホフマン, キャサリン・キーナー

 『カポーティ』、観ました。
1959年11月、カンザス州で農家の一家4人が惨殺される事件が発生した。
その手口は家長は喉をかき切られ、他の者は手足を縛られた上、顔面を銃で
撃たれるという凄惨きわまりないものだった。小説「ティファニーで朝食を」で
作家としての名声を高めた男、トルーマン・カポーティは事件にショックを受けると
同時に、これを文章にしたいという欲求に駆られる‥‥。 
 観終わって一晩経つというのに余韻が消えない。こいつはしばらくオイラの
中で尾を引きそう。最近観た映画では最も衝撃的で、同時に心をかき乱された
内容だった。いや、それはトルーマン・カポーティの著書『冷血』が、実際に
あった惨殺事件を参考としたノンフィクション小説であったとか、その凶悪事件の
残虐性について言っているのではない。《自分の中に自分の知らない“もう一人の
自分”がいる…》。人間なら誰しもが併せ持つ“善と悪との二面性”。その“凶悪な
自分”をズバリと言い当てられた、そんな気がしたからだ。勿論、その存在に
気付きながらも、認めたくない、認めようとしないのは、オイラも同じ。オレの中に
“もう一人のオレ”がいる。“そいつ”は冷酷に薄ら笑いを浮かべながら、偽善の
仮面を被ったオレの様子を遠くの方からじっと窺(うかが)う。そして、“そいつ”は
何かの切欠(きっかけ)で目を覚まし、オレの意思とは離れたところで、人(相手)を
傷付けたくて仕方ないのだ。
 さて、この映画を観た人ならば、あるひとつの事柄で共通し、必然的に浮かび
上がってくる構図がある。それは“静寂の中に潜む邪悪”だろう。名もなき静かな
村の一軒家で起こった一家惨殺事件。一方、その事件に惹かれ、のめり込んで
いくカポーティ。その彼もまた、事件の取材を続けていく過程で、犯人の一人に
“特別な感情”を抱きながらも、その反面で、男の死刑執行を今か今かと待ち望む
“邪悪な、もう一人の自分”に気付いていく。映画は、それに合わすように、全体を
“静かで洗練された映像”と、カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの
“抑制された演技”で統一される。オレは見掛けとは違う、その内に潜む恐怖に
震撼し、《何か》に怯えながら、その後の主人公の行き先をそっと見守る、、、
‥‥と、ここまで書いた時、ふと我に返って、オレは自分で自分を苦笑する。
その惨劇と、その邪悪に憑(と)り付かれ、崩壊していくカポーティを見ながら、
ゾクゾクと胸の高鳴りを抑え切れないでいたのは、他ならぬ“オレ自身”では
あるまいか。今、やっと分かった…、その時、オレが怯えていた《何か》とは、
オレの体の中で確かに脈打つ“冷たい血”だったんだ。



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『フラガール』、観ました。

2007-03-19 20:31:57 | 映画(は行)






監督:李相日
出演:松雪泰子, 豊川悦司

 『フラガール』、観ました。
昭和40年、閉鎖が迫る炭鉱の町で、北国に“楽園ハワイ”を作り上げるという
起死回生のプロジェクトが持ち上がっていた。目玉となるのはフラダンスショー。
しかし、肌を露わに腰蓑をつけるなど恥とされた時代、誰も見たことがなかった
フラダンスを炭鉱娘に教える為、東京からダンサー平山まどかがやって来る‥‥。
 確かに、優れた映画であるのは間違いないが…、勿論、悪い映画であるはず
ないが…、これが06年度の映画賞を総ナメした“年間ベストムービー”だと認める
のは、ボクにはチョット時間が掛かる。やはり、それというのも、ここでは舞台と
手段が、寂れゆく炭鉱と明るく陽気なフラダンスに変わっただけのスポ根風(?)
ダンス映画、ストーリーに新しさは感じない。例えば、ヒロインが故郷を後に
する親友を「じゃあな」の言葉で送り出すシーンや、駅のホームにて去りゆく
教師を引き止める生徒一同のシーンなど、いつかどっかのテレビドラマで観た
ような‥‥。それに、夢とか希望とか青春とか、当に無縁のものになっちまった
39歳オイラには、観ながらどうもこそばゆく感じちゃう(笑)。一方、脚本・構成・
演出まで、どれを取っても高水準はキープしているものの、いまひとつ決定打に
欠ける‥‥と、少なくともボクはそんな風に感じた。むしろ、この映画、成功の
秘密は、今最高に旬の女優“蒼井優の輝き”と、その脇を固め、周囲に
配置された“アクの強い個性派俳優”によるものだと、今更ながらオイラは
睨んでいる。まず、松雪泰子の現実離れした美しさと、その華麗なる舞に
最初の驚きを隠せず、岸部一徳のダメ男ぶりと、そのやわらかな人柄が観る者の
心を和ませる。富司純子演じる厳格な母親像は作品全体を“シメる働き”をし、
豊川悦司の存在感が物語に“良いアクセント”を与えている。おっと、それから
忘れちゃいけない、この映画の“隠し味”ともいうべきは、めんこい(?)フラ
ガールたちにはおよそミスマッチな“ドキツイ福島弁”、、観る人がこの映画と
フラガールの彼女たちに“親しみ”を覚え、知らず知らずに応援したくなって
しまうのは、きっと、そんなところに秘密が隠されているんだろうなぁ。聞けば、
この映画が本年度オスカーで“日本代表”に選ばれたそうだが、単純に英語に
訳せない部分もあっただろうし、果たして“この作品の魅力”が外国人にどこまで
伝わったのか‥‥。そう考えると、やはり、落選もやむなしかな。



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『真夜中の虹』、観ました。

2007-03-17 19:42:27 | 映画(ま行)






監督: アキ・カウリスマキ

 『真夜中の虹』、観ました。
家も無く職も無く、自殺した父のキャデラックでカスリネンは一路南へ。途中の
ドライヴインで有り金奪われて途方に暮れている時、婦人警官イルメリと出会い、
彼女とその息子リキに奇妙な愛情を抱く。そんなある日、偶然金を奪った相手を
見つけ殴りかかるが、逆に警官に取り押えられ刑務所に入れられてしまう‥‥。
 例えば、この映画を二十歳の頃(ざっと20年前?)のオイラが観たとして、
果たして作品が持つテーマの深い部分まで理解出来たかどうか…、自信はない。
上映時間は70分を僅かに超える程度、セリフは出来うる限り省略され、映像も
また必要最小限で構成される。まぁ、ストーリー自体も何てこと無いありふれた
小品なんだけど、そこには如何にもアキ・カウリスマキらしい、静かだが確かな
“人生論”が展開される。
 さて、映画主人公は、善人でもなければ、悪党というわけでもない。あえて
言うなら、生きるのが下手な“不器用人間”だ。だが、そんな彼のモットーは、
例え、運に見離され、“その日暮らし”がやっとの生活でも、自分の不運を
嘆いたりはしない。運命を呪ったりもしない。少なくとも今はまだ、生きる事を
あきらめてはいないのだ。自分の、目の前に置かれた現実を受け入れ、それに
立ち向かい、懸命に“今”を生きる。一方、それは中年ヒロインと、その息子も
同じ。これまでの人生において数々の辛酸を舐めてきた。だからこそ、主人公の
生き様に惹かれ、“未来”を託す。そして、そんな“母子の想い”が集約されるのが
映画終盤の場面だろう。旅立ちの夜、母が息子に向かい合い、意を決したように
話すのだ、「お前は強い子だ。だから、(自分の)鞄に持っていきたいものは、
皆、入れて…」と。恐らく、その時、少年は悟ったはずだ。持つべきものは、
お金なんかじゃない、玩具とかお菓子の類(たぐい)でもない。彼が入れたものは、
その小さな鞄には納まりきれない“大きな夢”と“明日への希望”、それから
“昨日までの悔しさ”も…。ラストシーン、“夜明けの港”が旅立ちの地、まるで
暗く長い夜のトンネルを抜け、朝の眩しい陽射しが射すように、彼らを“約束の
地”へと運ぶ大型船が現れる。いやしかし、誤解してはならない。それは、彼らに
とっての“ゴール”じゃない、未来へと続く“旅の始まり”なのだ。



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『ノスタルジア』、観ました。

2007-03-14 20:53:05 | 映画(な行)






監督:アンドレイ・タルコフスキー
出演:オレーグ・ヤンコフスキー, エルランド・ヨセフソン

 『ノスタルジア』、観ました。
モスクワの詩人アンドレイが、通訳を伴ってイタリアのトスカーナ地方を訪れる。
静かな村の温泉場に着いた彼は、そこで世界の終末に怯え、狂人扱いされている
ドメニコに興味を抱く。その後、ドメニコと交流を重ねたアンドレイは、彼から
世界救済のため、村の温泉場にろうそくを灯し、消さずに渡って欲しいと懇願
される‥‥。
 何とも、オイラみたいな“凡人”が言うのはおこがましいが、アンドレイ・
タルコフスキーのような“才能”は、もう二度と再び、この地上に舞い降りて
こないのでは?、何故に今更、こんな事を書くのかというと、タルコフスキーの
映画って、普段ボクらが映画館で楽しむものとは少々趣が違うように思うんだ。
その詩的な情感は観る者に“安らぎ”を与え、その哲学的な内容は観る者の
“心を深く誘(いざな)う”。そこに明確なるストーリーがあるわけではなく、
型通りに起承転結で区切られているわけでもない。むしろ、“自身の心の中”を
投影し、映像として表現したかのような印象を抱く。勿論、ボクのような凡人に、
そんな天才の胸の内など100パーセント理解出来る筈もないのだけど、ここでは、
遠い日の母の面影、遥か故郷への郷愁など、万人が共有する“ノスタルジック”に
吸い込まれていきそうになる。恐らく、タルコフスキー作品で“鏡”や“特徴的な
水の描写(澄んだ水面から中を覗き込むような)”が多いのは、そこに自分の
(歩んできた)“人生を映す”という意味合いが込められているからではなかろうか。
 だとすれば、尚一層、この映画『ノスタルジア』を知るにあたって、製作当時
タルコフスキーが“置かれていた状況”を切り離して考えることは出来ますまい。
さて、映画主人公は著名なるロシアの詩人だが、今はモスクワからイタリア・
トスカーナへ放浪の旅を続けている。実は一方、当時のタルコフスキーもまた、
祖国ソ連から“自由”を求め、西側に亡命していたのだ。だが、ここで誤解しては
ならないことがひとつ。彼は祖国ソ連に愛想を尽かし捨ててきたのではない。
いや、結果的に“捨ててしまった”のかもしれないが、今も祖国を愛し、誰よりも
祖国に自由がもたらされることを待ち望んでいるのだ。例えば、映画でこんな
シーンがある…。主人公が、いつかの夢で見たそれは、伯爵の劇場にて彼自身が
“裸の白い彫像”になるものだった。少しでも動けば、厳しい罰を受ける。そして、
ついに力尽き、崩れかけたとき、目が覚めた‥‥。明らかに、これは当時のソ連
体制の現実を物語り、日本で育ったボクらに想像もできない“恐ろしさ”だ。
ならば、その“恐怖”に立ち向かうにはどうすれば良いのか??、タルコフスキーは
映画の中でこのように言っている。「1滴プラス1滴は、2滴ではない。大きな1滴に
なるのだ」と。つまり、祈りであったり、信念であったり、自己犠牲であったり、
みんなひとりひとりが“個人の利益”のためじゃなく、“世界全体の平和”のために
力を合わせ、想いをひとつに結集すれば、何かが変わる。勿論、時間は掛かる
だろう。でも、世界を変えるにはそれしかないのだ、と。1滴1滴の水が集まり、
やがて小さな水溜りができる。そして、そこに更なる水の1滴ずつが加わったとき、
川となって流れ出し、激しく大きな滝へと変わり、硬い石をも砕くのだ。



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『ゴーストライダー』、観ました。

2007-03-12 22:43:42 | 映画(か行)
Ghostriderpos

 『ゴーストライダー』、映画館で観ました。
ジョニーには17歳で悪魔に魂を売り、病気の父を救ったという秘密があった。
30歳になった彼が最愛の女性と再会した時、再び悪魔が現れ、魔界の反逆者
ブラックハートを捕らえるよう言い渡す。彼は魔力で“ゴーストライダー”に変身し、
追跡を始める……。
 ときに人間(ひと)は“奇妙なこと”をしでかす時がある。「やめろ」と言われれば、
よけいに「自分の道はこれしかない」と確信し、その、肩に置かれた手を振り
払ってでも前へ前へと行こうとする。あぁ、人間って何て“愚かな生き物”なのね。
そして、この映画のニコラス・ケイジが、まさにソレ。確かに、以前から彼が
アメリカンコミックにひどく御熱心で、それも自身のスーパーマン役を必死に
なって売り込んでいるとは聞いていた(っていうか、飛行シーンの髪型からして
NGだろ(笑))。が、まさかまさか、それがこんな形で本当に日の目を見ることに
なろうとは…。ぶっちゃけ、何が楽しくてそこまでするかは知らないが、とにかく
形はどうあれ、その信念の固さというか、凄まじい執念は見上げたものだ(笑)。
ホント、感心する。けどね、ニコラス・ケイジさん、仮にも“オスカー俳優”の
肩書きを持つアナタ様に、この場をお借りして一つお願いしたいことがある。
もう十分にお金を稼ぎ、地位も名誉も手に入れた事でしょう。だから、あと少し、
もう少しだけで良いから“ニコラス・ケイジ”の、その名前を大切にしてほしい。
いや、それ以上にもっと…、「自分自身を大切にして欲しい」と(笑)。
 さて、映画は、もう“おバカ映画”以外の何者でもない、ニコラス・ケイジの
ワンマンショーだ(笑)。夜な夜な“ガイコツ男”に変身し、手から、足から、
頭から、炎を出して燃え上がる。更に、炎のバイクにまたがり、長いチェーンを
振り回す。おッーと、そんなカッコで一般道を走られた日にゃー、オレたち、
危なっかしくて外へも出られやしねぇ(笑)。中でも圧巻は、特に意味もないのに、
天に向かって高層ビルを駆け上る、“猪突猛進”ゴーストライダー、もはや
ヤツは誰にも止められないゼ。だがしかし、そんな浮世離れしたライダーを、
ノリノリになって演じちゃってるニコラス・ケイジ、もはやアナタも誰にも
止められないゼ(笑)。ラストシーンは、そんな、真顔のニコラス・ケイジが、
スクリーンの向こうからこちらの観客席に向かって叫んでる、「人生の選択を
間違えるな」と。よし、分かった。そのアドバイスは有り難く頂戴するが、
気のせいかしら、何だかボクには、その選択を一番間違えてしまった人って、
(この映画を出演作に選んじまった)ニコラスさん、アナタのような気がするが(笑)。



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『ゆれる』、観ました。

2007-03-09 20:10:54 | 映画(や行)






監督:西川美和
出演:オダギリジョー, 香川照之

 『ゆれる』、観ました。
東京で写真家として成功した猛は母の一周忌で久しぶりに帰郷し、実家に残り
父親と暮らしている兄の稔、幼なじみの智恵子との3人で近くの渓谷に向かう。
懐かしい場所にはしゃぐ稔。稔のいない所で、猛と一緒に東京へ行くと言い出す
智恵子。だが渓谷にかかった吊り橋から流れの激しい渓流へ、智恵子が落下して
しまう。その時そばにいたのは、稔ひとりだった‥‥。
 これまでにも何人かの女性監督はいたし、その中で「傑作」と呼ばれる映画も
いくつかあった。が、そのほとんどが“女性の気持ちを代弁するもの”であったり、
あるいは、女性特有の感性(ポップさとか、アンニュイさ)を前面に押し出した、
およそ“正統派”とは言い難いものだったと思うんだ。だけど、この西川美和って
監督さんには驚いた。ストイックにテーマを見据え、正面から描き切るスタイルは
映画の王道を往く。性格から生き方まで、全てにおいて正反対にある兄弟の絆を
軸に、息苦しいほどの緊張感が映画全体を支配して、その重厚な人間ドラマに
圧倒される。中でも、凄みすら感じる脚本は、近年の日本映画では屈指の出来ばえ
ではあるまいか。抑制され、平静を装う感情とは対照的に、良心の呵責(かしゃく)と
自責の念の狭間で“ゆれる”兄と弟…。鋭く研ぎ澄まされた台詞が、互いの嘘を
見抜き、本性を暴く。かばえばかばうほど、相手を傷付け、自身がまたそれ以上に
傷付いていく。「言葉」とはこれほどまでに痛く、これほどまでに容赦なく、人を殺す
ものだと、ボクは今日のこのときをもって初めて知った。
 さて、感心するのは、それ(高度な文学表現)だけじゃない、緻密に計算され
尽くした“物語構成”、それから”構図の素晴らしさ”も見逃せない。例えば、映画
序盤、主人公一行の乗せた車が渓谷に向かう最中…、楽しいはずの車内は、
こともあろうに“暗いトンネル”の場面で始まる。それは観る側に、彼らの近い
将来に“不吉”が待ち受けていることを予感させ、3人の関係が表向きとは違う、
複雑な関係であることを象徴する。一方、それ以外でも本作では“対比の構図”が
数多く見受けられるのが特徴的だ。トンネルを抜けた一行が渓谷に到着すると、
兄ははしゃぎ、弟とかつての恋人は神妙な面持ちで会話を始める。その、2人の
“重たい会話”に、遠くではしゃぐ兄の“明るい声”をかぶせることで、その“重さ”が
一層強調される“演出の妙”。更に、映画終盤、ファミレスに一人取り残された
主人公の横を見れば、さっきまで賑やかに騒いでいた子供が忘れた“赤い風船”が
浮かんでいる。このあたりも“彼の孤独”を強調させる“対比の構図”が効果的に
使われている。いや、そもそも、よく考えてみれば、この映画自体が、自由だが
自堕落な弟と、実直だが狭い社会に生きる兄を比べた“対比の物語”では
あるまいか。吊り橋を正面に見据え、谷を隔たり、左右に分かれた地は“兄の岸”と
“弟の岸”。その両岸に架かる、今にも切れて落ちそうな細い吊り橋は“兄弟の絆”
だろう。その橋を渡り、先へ先へと進んでしまった弟を、かつての恋人が追っていく。
それを必死に引き止めようとする“兄の叫び”が、観ているボクの胸に突き刺さる。
兄にとっても…、かつての恋人にとっても…、すでに弟は“声も届かぬほど”
遠い場所に行ってしまったのに。その中で、弟だけは知っていたのかもしれない。
もう戻れない、あの頃のようには…。それほどまでに醜く薄汚れてしまった“自分
自身の正体”に。



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『パフューム ある人殺しの物語』、観ました。

2007-03-04 19:55:41 | 映画(は行)
Pafume
監督:トム・ティクヴァ
出演者:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン

 『パフューム ある人殺しの物語』、映画館で観ました。
18世紀パリ。悪臭立ちこめる魚市場で1人の子供が産み捨てられる。名をジャン
=バティスト・グルヌイユ。彼に神が唯一与えたのは、あらゆるものを嗅ぎ分ける
驚異的な嗅覚だった。彼は天才香水調合師として世間を驚かせる芳香を次々と
生み出していく。だが、時を同じくしてパリを震撼させる連続殺人が発生する…。 
 観終わって、色んな想いがアタマの中を回っている。今一度、観直し整理して
みたい…、そんな衝動に駆られた。この映画を観たある人は「難解だ」という
だろうし、またある人は「奥が深い」というかもしれない。しかし、一様に本作の
評判が良く、「面白かった」の声が多いのは、オープンセットを含めた美術の
素晴らしさと、入れ替わり現れ消えていくユニークな登場人物たち、その丁寧な
人間描写にあるからだろう。更に、物語自体は血生臭い連続殺人を扱っている
はずなのに、ここではそういったグロテスクを一切封印し、むしろ、パフュームの
香りが立ち昇るかの如く上質な仕上がりは、改めて監督トム・ティクヴァの才能に
感心させられる。
 さて、ここで注意事項をひとつ。この映画を観るにあたって、主人公の犯した
罪の重さがどうこう、あるいは娘を殺された父の哀しみがどうこう、そういった
心情論を入れるとややこしくなる。むしろ、“行為の善悪は度外視”して考えた
方がスッキリする。(恐らく、この映画がグロに走らなかったのは、そういう配慮が
あったとボクは睨んでいる。)映画の主人公は、人並み外れた嗅覚を持ち、
この世に存在する“最高の香り”を手に入れたいと願う。が、それは花や果物から
摘出し、“人工的に配合した香水”とは違う。彼が欲したのは、人間…それも
女性の体そのものから放出する“体臭(フェロモン)”なのだ。では、何故彼にとって
最上の香りが“女性”なのか??、ボクの解釈はこうだ。主人公がこれまの人生で
関わった人物は皆、お金のために彼を養った。中には優しくしてくれた香水調合の
師匠も居たが、やはりそこにも邪(よこしま)な考えが見え隠れする。結局、彼は
“孤独”だった、ひたすら“愛”に飢えていたんだ。彼にとって“女性の香り”は、
そのまま“人の温もり”であり、“人の優しさ”だった。つまり、彼が欲したのは、
香りであって“単なる香り”じゃない。しかも、それは直接手に触れられず、目で
見ることも出来ない、人から愛し愛される“無形の愛”だったのではあるまいか。
 一方、問題となったセンセーショナルな終盤の展開について、ボクは本作が
持つ“もう一つの側面”を垣間見る…、それは“移り気な民衆”だ。ラストシーン、
処刑の執行を待ち、暴徒となった民衆が、現れた主人公の香水の香りを嗅ぐや
いなや、それまでの“怒り”を忘れ、“愛欲”こそがその場を支配する。しかし、
よく考えてみれば、それは現在の我々の社会でも頻繁に行われている日常と
何ら変わりないことだとお気づきだろうか。日々、ネットやテレビから垂れ流される
情報の中で、新しいブームが生まれたかと思えば捨てられる。凶悪な事件でさえ、
時間と共に民衆の興味は薄れ、いつの間に忘れ去られていく。例えば、その後、
人生の旅に疲れ果て、自らに残りの香水を振り掛けた主人公が、飢えた民衆に
よって食い尽くされてしまったように‥‥。最後に残るのは、そう、見る影もなく
変わり果てた服の切れ端だけなのだ。



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『ダークマン』、観ました。

2007-03-02 20:00:06 | 映画(た行)






監督:サム・ライミ
出演:リーアム・ニーソン, フランシス・マクドーマンド

 『ダークマン』、観ました。
人工皮膚の研究者ベイトンは、恋人の弁護士ジュリーが手掛けている事件に
巻き込まれ、研究室ごと吹き飛ばされてしまう。辛うじて一命を取りとめたが、
全身にひどい火傷を負ったベイトン。神経を切られたため痛みを感じることも
出来ず、怒りによって超人的な力を発揮する別人になってしまう。報復を誓った
ベイトンは自らが開発した人工皮膚をまとい復讐鬼ダークマンとして蘇る‥‥。
 その、黒いシルエットがビルの谷間に忍ぶとき…、その、ダークな影が夜の
帳(とばり)に伸びるとき…。ヤバいぜ、このカンジ、得体の知れない期待感に
ゾクゾクする。‥‥と、そんなアメリカンコミックのアンチヒーローものだと
思って観ていたら…、いや待てよ、こいつはチョット雲行きがアヤしいゾ(笑)。
回転扉をネタにした“ミニコント”が始まったかと思えば、一転“ピンクの
象さん”に異常なる執着をみせるダークマン(笑)。しかも、そのダークマンに
扮するは『シンドラーのリスト』のリーアム・ニーソン。いつもはマジメ腐った
その顔が、今回ばかりは歌えや踊れや“キレた演技”に目を疑う。100分足らずで
崩れ出す人工皮膚を装着し、いつしかリーアム・ニーソン、あんたの人格こそが
ガラガラ音をたてて崩れていく(笑)。圧巻なのはヘリコプターにぶら下がり、
高層ビルの窓へと飛び込み「お邪魔しま~~す」。でもって、すぐさま「失礼
しました~」と去ってくお茶目さん(笑)。更にそのまま、ダダダダダダッーと、
巨大トレーラーの屋根を疾風のごとく駆け抜けていくダークマンに、オレは
“新しい時代のアメリカンヒーローの出現”を見たッ(笑)。スーパーマン?、
バットマン?、スパイダーマン?…、いやいや、いずれをとっても今のオレには
物足りないゼ(笑)。匂い立つチープな香り、溢れ出すB(級)の洪水、我が道を
往くコアな出で立ち‥‥、ヤツこそ“ちょいワルなヒーロー”ダークマンだ。
なのに、ブレイクしそうでブレイクしない“ダークマン”って何故なんだ??(笑)、
さぁ、今そこでこのレビューを読みながら、のんびりパソコン椅子に座っている、
アナタにキミにオマエにキサマ!!、人生は短い、時間がないゾ、今すぐ履いている
スリッパをサンダルに履き替えて、レンタル屋さんに駆け出そうゼ!!(笑)



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