肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『善き人のためのソナタ』、観ました。

2008-01-27 06:42:07 | 映画(や行)





監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューエ、セバスチャン・コッホ

 『善き人のためのソナタ』、観ました。
東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省の局員ヴィースラーは、劇作家ドライマンと、
その恋人にして女優のクリスタが、反体制派であるという証拠を掴むよう命じられる。
上層部からも支持されているこの任務を成功させれば、出世は確実だった。国家に
忠誠を尽くすヴィースラーは、早速任務に就き、盗聴器を通して2人の監視を続ける
のだが‥‥。
 2007年度キネ旬の年間2位にランクされたとの知らせを聞き、早速レンタルして
きたわけだが、観ていて何と胸が切なくなる、何と息が苦しくなる。実際の限られた
空間に押し込められたものとは違う、“心の閉塞感”とでもいうのかな。社会主義
体制の管理下では、個々の権利よりも国家の利益の方が優先され、誰もが“見えざる
恐怖”に怯えて暮らしている。中でも、芸術家たちにとっては、“表現の自由”を
奪われることが自分の手足をもぎ取られたに等しく、いや、それ以上の、死にも勝る
苦しみとなって圧し掛かってくる。観ながらボクが怖くなったのは、奴らが直接
自らの手を下して人を抹殺するのではなく、“相手の権利”を奪い、その“精神への
圧力”を掛けることで、“破滅”へと追いやってしまうことだ。また、この映画の拘りは、
その、芸術家たちの対抗手段においても、一切の暴力は避け、僅かの流血さえ
描かれることはない。普段の抗争における銃と剣を、ここでは紙とタイプライターに
持ち替えて、彼らは文学(芸術)の中から立ち上がっていく。かつて、ドイツ支配下の
フランスで、マルセル・カルネが名作『天井桟敷の人々』を完成させたように…、
又同じく、チャップリンが幾多の妨害に合いながらも『独裁者』を発表したように…、
《芸術家としての誇り》を“武器”にして強大な権力へと立ち向かっていく“彼らの
魂”に、思わず胸が熱くなった(涙)。それは、どんなリアルな銃撃戦をみるよりも、
遥かに感動的だ。
 また、ここでは、もうひとつの、内なる戦いとして、国家保安省に属し、本来は
敵対する立場にありながら、あるきっかけから芸術家らのサポートに回っていく
“男の内面”が抑制された映像の中、スリリングに描かれていく。では、それまで
機械のように表情がなく、氷のように“冷たい彼”を、一体何がそうさせたのか…??、
それは、忘れかけていた“愛の苦しみ”か、何を持っても埋めることの出来ない
“心の空虚”か、愛しい女性(ひと)への切なる想いか‥‥、いや、こう考える
ことはできないか。マンションの壁を挟んで盗聴する“表情のない男”と、その
向こうで、互いに傷つけ合いながらも“愛の形を確かめう男女”は、そのまま現実
世界で“ベルリンの壁”に分けられた“東西ドイツの姿”ではなかったか。一方、
芸術家としての弱みに付け込まれ、密告の片棒を担がされるクリスタとて同じこと。
ドライマンは言った、「彼女は隠し場所を知っている。だが、それでも隠し通して
くれたなら、守護の天使だ」と。勿論、両者とも、我々が普段から想い描く“正義の
スーパーヒーロー”のそれはない。しかし、歴史の陰に隠された“名もなき多くの
英雄(そして犠牲者も)”がいたことを、この映画は強く語り掛けてくる。もしかしたら、
それは歴史書に記された大層な事実なんかよりも価値があり、重みのあること
かもしれない。






楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



『サイドカーに犬』、観ました。

2008-01-23 21:09:52 | 映画(さ行)





監督:根岸吉太郎
出演:竹内結子、古田新太、松本花奈、ミムラ、鈴木砂羽、トミーズ雅、温水洋一、樹木希林、椎名桔平

 『サイドカーに犬』、観ました。
不動産会社に勤める薫は、ある朝ふいに一週間の有給休暇をとった。馴染みの釣堀で
釣り糸をたらしながら、ふと、父が会社を辞め、母が家を出て行った数日後のことを
思い出した。ヨーコという女性が家に来るようになった。たばこをスパスパ吸い、
自転車を乗り回し、夕食には「エサ」と言って麦チョコを食べさせる、破天荒な人だった。
しかし、子供と対等に向き合って話をしてくれるヨーコを薫は好きになっていく…。
 一度聞いたら忘れそうにないタイトルの語呂の良さ…、その前半部分(サイドカー)から
“自由な風”をイメージしたのは、きっとオイラだけじゃあるまい。また、一方で、
前作『雪に願うこと』で、あれ程までに重厚な人間ドラマを展開した根岸吉太郎監督が、
単に“喉ごしの良さ”をだけを優先したライトな大衆映画など撮るはずないだろうとも。
しかし、観ていくにつれ、オイラの懸念はいとも容易く解消され、その後半部分にある
“犬”という言葉に、ある重要な意味が込められていることに気付かされた。観ながら、
こんなに何度もタイトル名がアタマの中をぐるぐる回った映画も珍しい。その内容も
さることながら、すべてがホントによく考えられた作品だなぁ。
 さて、物語は、内向的な少女が、自分にはない“自由な生き方”をする大人の女性と
出会い、それへの強い憧れから自分の人生を見つめ直していく。この映画の特長は、
“少女の葛藤”をあまり直接的に描かずに、時にコミカルやミステリアスな表現を
もって、常に観る側に“考える余白”を残しながらサラッとした感じで描いている点だ。
生意気な言い方だが、この映画でその行間に込められた本当の意味に気付かないと、
ひどくアッサリした映画に映ってしまうかもしれない。かつてヨーコが言った「自転車に
乗れれば、世界が変わって見える」の意味…。いつかの夜、少女とヨーコを迎えに
来た父のサイドカーで、少女だけが“右側”に乗せられたことの意味……。つまり、
要約するとこうだ――。サイドカーは(向かって)左側で運転し、それに直結した右側に
乗る者は、相手に行く先を委ねたまま座ってる。ある夏の日、少女がサイドカーに乗った
犬に“不思議な親近感”を抱いたのは、運転席に乗った飼い主の隣で、支配されて
いることに気付かずにいる犬に、滑稽な“自分自身の姿”を見たからだ。また、オイラが
この映画で最も好きなのは、映画終盤、両親の離婚が決まり、父と別れるその当日、
少女がいきなり「ワン、ワン、ワン」といって父に突進するシーンでのこと…、そこには
「一緒に住みたいのに…、離れたくないのに…」という、不器用な少女の“苦しい感情
表現”が見えて思わず胸がアツくなった(涙)。結局、少女は、ヨーコの自由な生き方に
憧れを抱きつつも、未だ自分の人生の行き先が分からないまま大人になった…。
映画冒頭、現在の彼女が「今日履いていく靴(=進むべき方向)も見つかない」と言って
会社を休んだのは、少女期から今に至る“彼女の苦しみ”だったのだ。そんなとき、
弟から電話でヨーコの名前を聞かされる……、そういえば、かつてヨーコは言った
「毎日、自転車を漕いでいれば、足は自然と硬くなる」って。そして、ふと気が付けば、
今の自分の足はあの頃のヨーコと同じように硬くなっていた。知らず知らずのうちに、
自分が自分の力でその人生をしっかり歩んでいることに気付く彼女――。ラストシーン、
ヒロインは自分の前を通り過ぎるヨーコの面影を振り払い、その“進んできた方向”を
変えようとしない。すでに彼女は悟っていたんだろう‥‥。そうだ、無理に“別の人間”に
なる必要なんてありはしない、自分は自分でしかないんだと。







楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


『オール・ザ・キングスメン』、観ました。

2008-01-19 21:15:18 | 映画(あ行)





監督:スティーヴン・ゼイリアン
出演:ショーン・ペン、ジュード・ロー、アンソニー・ホプキンス、ケイト・ウィンスレット

 『オール・ザ・キングスメン』、観ました。
1949年、ルイジアナ州メーソン市。新聞記者のジャックは、役人の汚職を告発して
職を追われた実直な男ウィリーに興味を抱く。やがて汚職が原因の欠陥工事で
大惨事が起こり、ウィリーは一躍注目の存在となる。その人気に目をつけた役人の
後ろ盾を得て、ウィリーはついに知事選への出馬を決意するのだが…。
 ちなみに、これまでオイラが好きになった銀幕のスターたちは、古くはスティーヴ・
マックィーンに始まり、(晩年の)ウィリアム・ホールデン、矢吹丈(あしたのジョー)に
サム・シェパード、その後しばらく空白があって、今はショーン・ペン‥‥(笑)。そんな
彼らに共通するのは、どこか“人生の哀愁”を感じさせ、それでいて一匹狼的な
“反体制の人”が多いみたい(笑)。勿論、本作は、そのショーン・ペンをお目当てに
観始めたわけだが、ただ、今回の彼は“こなれた感じのオーバーアクト”が鼻に付き、
いつもの“らしさ”を感じない。思うに、ショーン・ペンの良さは、孤独と怒り、あるいは、
強さと弱さの両側からアプローチできるところなのに、ここでは“傲慢(ごうまん)さ”
だけが先行した“一本調子で厚みのないキャラクター”になってしまった。むしろ、
本作では、もう一人の主人公、ジュード・ロウの方が“自堕落的な弱さ”を曝け出して、
「理想」と「現実」の狭間で苦しむ元新聞記者を好演。若き日に幼なじみの恋人を
抱けるチャンスがありながら抱こうとしなかった‥‥。相手を愛するがゆえに
大事にしたいという“躊躇(ちゅうちょ)”が、結果として、その愛を壊してしまったのは、
観ていて息が苦しくなった。男と女の違いもあるだろうが、オイラ自身は、過去の
経験から身に染みて(?)よく分かる気がした。
 さて、誤解の無いように言わせてもらうと、オイラは“今回のリメイク版”より先に
“1949製作のオリジナル版(ロバート・ロッセン監督)”を観ていない。しかし、この
リメイク版を観ただけで、オリジナルはさぞや“質の高い映画”だった事がうかがえる。
というのは、要所で語られる台詞のひとつひとつが非常に文学的で味わい深いものが
あるし、“人の心に潜む善悪”が様々な仕掛けをもって印象付けられているのには
感心する。例えば、車のハンドルに吊り掛けられた“クロスのペンダント”や、道路の
両脇に並ぶ“白い十字架の墓”‥‥、それらが“善の心”を示すものだとしたら、
一方で、主人公が知事になった途端、その背後に現れた痩せたボディーガードの
男の正体は“死神”だろう。怒り、嫉妬、妬み、欲望、陰謀、裏切り、復讐‥‥、
邪悪は“人の心の隙”を見つけてはその中に入り込んでくる。そう…その後の主人公が
“他人(ひと)の弱み”に付け込んで“権力”を得たように。思うに、人の心の善悪は、
まるでコインに刻まれた表裏のように、何かの拍子にコロッと180度裏返ってしまう。
それは、(ジャックにとっての)美しい思い出が崩れ、(判事にとっての)築き上げた
信頼が奪われ、(ウィリーにとっての)手に入れた強大な権力が失われようよする
際にも‥‥、全ての物事の崩壊は、その内側に“邪悪”が忍び込んだ時から始まるんだ。






楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



『あるスキャンダルの覚え書き』、観ました。

2008-01-15 20:52:38 | 映画(あ行)





監督:リチャード・エア
出演者:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ

 『あるスキャンダルの覚え書き』、観ました。
ロンドン郊外の中学校で歴史を教えるベテラン教師のバーバラは、孤独な人生に
苛まれていた。そんな彼女は、新任の美術教師シーバに関心を示し、彼女のことを
日記に書き留めていく。やがて希望通りシーバと親しくなることに成功したバーバラ
だったが…。
 ケイト・ブランシェット&ジュディ・デンチというシブ好みの顔合わせ…、この玄人
受けしそうな2人の共演にして、想いの外“アブノーマルな(?)内容に驚いた。
映画は、男子生徒と新任女教師による“禁断の愛”に始まり、更に、年齢差のある
女性同士が“友情を超えた深い関係”へと進展するまで、あれよあれよと事態は
泥沼化し、2人の距離が近付けば近付くほどオレはドキドキしながら観てしまう(笑)。
それにしても、若く美しい新任教師が溺れる危険な情事と、それをネタに脅しをかける
孤独なオールドミスのシチュエーションは、普段ならエロ小説にもなりかねない
ところだが(笑)、この両者に掛かれば何と“スリリングな愛憎劇”へと変貌してしまう。
勿論、過度な期待をもって観るのは危険だが、彼女らの演技合戦は一見の価値ある
映画ではあると思うよ。
 さて、本作を観ていけば、その人間関係の構図において“あるひとつの特徴”が
あることに気付くはず。例えば、新しく赴任してきた美人教師に想いを寄せるオールド
ミスの古株教師の関係しかり、妻子を捨ててまで若いシーバへの性愛に走った
夫との関係しかり、また、そのシーバも退屈な家庭の日常から刺激を求め、一線を
越えてしまった教え子との関係しかり…、そこには自らの老いに対する劣等から
“若さへの憧れ”を抱く者たちの“醜悪”が見てとれる。そういえば、かつてこれと
“よく似た構図の映画”を観たことがある、ヴィスコンティの『ベニスに死す』だ。しかし、
これを『ベニスに死す』と比べるには、あまりに“その、愛の意味”が違い過ぎる。
『ベニスに死す』では、主人公が狂おしいほどに恋焦がれ、自らの命をすり減らしても
尚、“一途な愛”を止められなかったのに対し、本作では“愛”というより“支配”に近い…、
ゆえに、その想いが裏切れらた時、“激しい憎悪”へと変わってしまう。結果として、
シーバが最後に帰れる場所は“夫(家庭)”であり、そこだけに“本当の愛”があった
ということかもしれないが…、では、それをもって何を云わんとしているのか、今ひとつ
胸にググッとくるものがない。いや、それ以前に、オイラはここに登場する大人達の
誰一人として好きになれなかった。思うに、この物語で最大の犠牲者は、母親の
無責任な気まぐれから世間の白い目に晒される“シーバの子供ら”ではなかったかな。






楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル



『消えた天使』、観ました。

2008-01-10 22:09:05 | 映画(か行)





監督:アンドリュー・ラウ
出演:リチャード・ギア、クレア・デインズ

 『消えた天使』、観ました。
長年性犯罪登録者の観察を続けてきた公共安全局のバベッジは、退任まで
残り僅かとなっていた。そんな彼の元に後任のアリスンがやってくる。バベッジは
アリスンを連れ、強姦を犯したエドモンド、夫がバラバラ殺人を犯し自らも3件の
罪に問われたビオラらの家を回り、さらに車で移動する中、2人の元に誘拐事件の
報が入る。バベッジはその犯人が登録者の中にいると確信するが…。
 それにしても、香港の巨匠アンドリュー・ラウは、その記念すべきハリウッド進出
第一弾にして、何と“デリケートな題材”を選んでしまったのか(笑)。性犯罪者の
登録制度とプライバシーの侵害について‥‥。いや、そもそも、この“デリケートな
題材”をアメリカ文化とは離れた場所にいた“アジア出身の監督”が扱うこと自体に
無理があり、(職人監督である)彼には不似合いな題材だったのではあるまいか。
勿論、この議論については、賛否両方の意見がそれぞれがもっともだと思うし、
きっと朝まで掛かったって答えなど見つからない。実際、我が家の夫婦間でも
議論は白熱し、一度は夫婦喧嘩になりかけたことさえあるもんね(笑)。この映画を
観る限り、アンドリュー・ラウ本人は“性犯罪者の登録制度”に否定的で、彼らには
「もっと別の重い罰則を」と考えていると推測できるが、では、この映画をもって
何を云わんとしているか、その本質たる部分が見えてこない。まず、他人の
プライバシーなどもろともしない主人公の人間不信と、性犯罪者への異常な
憎悪は一体どこからきているのか…。また、性犯罪者に更正の道は残されて
いるのか否か…、セキュリティネットのもたらす利点と弊害の関係について……。
結局、この映画ではそれらの事柄が“一本の線”に繋がらないまま、とりあえず(?)
メデタシメデタシの結末に巧く誤魔化されたようなカンジ。やはり、この問題を
扱う以上は覚悟を決めて、もっと真正面から向き合っていく“強い姿勢”が
必要だったと思うのだけど。
 ただ、ここで少し発想の転換をし、性犯罪者に対してどうこうは“単なる手段”に
過ぎず、ラウ監督が本当に描きたかったものは別にあったと仮定してみる。
例えば、事件にのめり込むあまり、主人公に行き過ぎた正義が悪へと変わる…、
更に、犯罪者へのリンチと暴力に走っていく様は、かの『インファナル・アフェア』
にも通じる“善悪における人間の二面性”へと繋がっていくものではあるまいか。
そして、とどの詰まりが、映画プロローグで語られる「怪物と戦う者は、その際、
自らも怪物にならぬよう気をつけろ」という諺めいたパラドックスに突き当たる。
だとすれば、むしろ、ここは《性犯罪の防止》と《(人間の持つ)善悪の二面性》を
関連付けて描くより、その後者だけに絞って描くというも一つの方法だったかも
しれないね。まぁ、今作では“映像”ひとつ取っても(スタイリッシュに)小細工が
過ぎるアンドリュー・ラウ …(笑)、アジアからワールドワイドな展開に思わず
力が入りすぎちゃったみたい。次は、もっと肩の力を抜いて、普段着の映画が
観たいもんだな(笑)。





楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


2007年を振り返って 《邦画ベスト5》

2008-01-06 17:21:10 | ★独断と偏見的シネマ・セレクション3
2007年 邦画ベスト5

07年の邦画は、大豊作の06年に比べれば若干見劣りするものの、
引き続いて“好調が持続した一年”だったと思う。
周防正行、原恵一の復活を始め、
北野武や松本人志らのコメディアン出身監督の対決(?)などは
記憶に新しいところでマスコミの注目を集めました。
またその一方で、女性監督の躍進ぶりは凄まじく、ボクが色眼鏡抜きにみても、
『ゆれる』の西川美和や、『かもめ食堂』の荻上直子らの実力はホンモノです。
ホントにぶったまげました。
ただ、その内でひとつ心残りなのは、
同じく女性監督・河瀬直美の『殯(もがり)の森』を未見だということ。
来たる1月14日にBS2で放送すると聞き、今から楽しみにしています。

①、『天然コケッコー』(DVD)
②、『ゆれる』(DVD)
③、『紙屋悦子の青春』(DVD)
④、『犯人に告ぐ』(映画館)
⑤、『キサラギ』(映画館)
次点、『河童のクゥと夏休み』(映画館)

※なお、ここでの「新作映画」とは、昨年劇場公開された作品に含めて、
“昨年レンタルリリースされた作品”も含まれています。
場合によっては「それは一昨年の映画だゾ」とお叱りを受けるかも
しれませぬが、その辺はどうかご了承くださいませ。

①は、映画に中身をキチキチに詰め込むのではなく、
“物語の余白”として観客の想像する余地を残しつつ、
その“ゆとり”をもって観る側に“安心感”を与えている。
それこそが日本映画の持つ“本来の美しさ”であるように感じられた。
次点の『河童のクゥ~』は、原恵一5年ぶりの新作劇場アニメーション。
如何にも彼らしい良心的で温かい内容は、期待通りに楽しめたが、
今度は“また5年”とはいわず、せめて“2年くらい”で
次の新作を発表して欲しい(笑)。
尚、恐らく映画各誌の2007年度・年間ベスト10でも
上位にランクされるであろう『それでもボクはやってない』は、
ボクの観たのが一昨年の年始だったせいもあって、
強烈なインパクトが残るところまでは至ってない。
勿論、作品の出来自体は申し分ないのだが。


楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


2007年を振り返って 《洋画ベスト5》

2008-01-05 19:41:13 | ★独断と偏見的シネマ・セレクション3
2007年 洋画ベスト5

実は2007年度、オイラが最も衝撃を受けた作品は
『ユナイテッド93』です。
“真実の重さ”に打ちひしがれたノンフィクション映画の傑作。
その先に最悪の結末が待っていることを知りつつ尚、
最後まで“奇跡”を祈りながら観てしまった。
ただ、今回は“旧作扱い”ということで選から外しました。

①、『麦の穂をゆらす風』(DVD)
②、『ボーン・アルティメイタム』(映画館)
③、『シッコ』(映画館)
④、『バベル』(映画館)
⑤、『マッチポイント』(DVD)
次点、『パンズ・ラビリンス』(映画館)

※なお、ここでの「新作映画」とは、昨年劇場公開された作品に含めて、
“昨年レンタルリリースされた作品”も含まれています。
場合によっては「それは一昨年の映画だゾ」とお叱りを受けるかも
しれませぬが、その辺はどうかご了承くださいませ。

正直言って、①と②の差はほとんどない。
メッセージ性を取るか、娯楽性と取るかの二者択一。
今回は、その内の“メッセージ性”を取っただけのことです。
②は、トータルでみて今年最もセンセーショナルな一本だった。
その、卓越したカメラワークの編集技術の素晴らしさ。
CG全盛の今にあって、それらの全ては逆に“革命的”にさえ映った。
最後に、次点の『パンズ~』は、本来もっと上にランクしても良いが、
いかんせん“不必要な残酷描写”がマイナス要因。





楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


『天然コケッコー』、観ました。

2008-01-04 18:29:46 | 映画(た行)





監督:山下敦弘
出演:夏帆、岡田将生、夏川結衣、佐藤浩市、柳英里沙、藤村聖子

 『天然コケッコー』、観ました。
山間の分校。小学校と中学校は同じ校舎の中にあり、全校生徒はたったの6人。
右田そよは唯一の中学二年生。初夏のある日、東京から転校生・大沢広海が
やってきた。期待に胸を膨らませるそよは仲良くなろうとするのだが、ついつい
冷たい態度をとってしまう。海水浴、神社の境内で初めてのキス…、そして春が
来て、みんな1学年進級した。楽しみにしていた修学旅行は東京。広海が育った
街を始めて見ることが出来て喜ぶそよだったが…。
 ボクが記念すべき2007年の締めくくりに選んだのがこの映画、そして、くしくも
これがボクにとって“本年度のベストムービー”となった‥‥。映画は、全編を通して
幹となる大きなストーリーがある訳ではなく、そこから枝分かれしたような“複数の
エピソードの集合体”から形成される。ある意味、それは“フェリーニ的”であり、
中でもボクは“彼の、ある映画”を思い浮かべずにはいられない。山あいにある
小さな田舎町、その一年の四季を彩(いろど)るように、少女の初恋の様子が
“何枚かのスケッチ”として郷愁感たっぷりに綴られていく…。まさに、それは
僅かな設定の違いこそあれど、『フェリーニのアマルコンド』にそっくり。――何の
前触れもなくやってきた運命の出会い…、夏祭りの屋台で買ったたこ焼きの味…、
耳をすませば聞こえてくる風の音…、線路でコケて轢(ひ)かれそうになった苦い
思い出…、山を越えた向こうに広がる海の青…、神社の隅でした初キスの約束…、
彼のコートの匂い…、そして、バレンタインに贈ったチョコの秘密……、少女にとって
その一つ一つが輝きを持ち、もう戻らない掛け替えのない時間として、“人生の
たからもの”になっていく。
 また、映画は、単にヒロインの初恋物語だけに終わらせることなく、“思春期の
少女の視点”から複雑な大人社会を見つめていく。――身投げをして命を絶った
女性の話や、かつて父と大沢のオバさんとの間に存在した遠い過去、それから、
ヒロインへ密かに想いを寄せるシゲちゃんの存在も――、ヒロインは色んな悩みを
抱えながら、少女から大人へと少しずつ成長していく。この映画の良いところは、
あえてその全部を完結させることなく、残りの空白部分を“観客が想像する
余地”として空けたままにしてある点だ。観ながらボクはその余白を埋めようと、
自らの思春期の頃に想いをはし、考えれば考えるほど切なくなる。そして、悲しくも
ないのに泣けてきた(涙)。仲間との信頼、家族の絆、村で暮らす人々との温かい
心のふれあい‥‥、都会の人ごみとは違う、そこには“人と人との繋がり”があり、
互いが互いを思いやることで“社会の営み”が守られているかのように見えてくる。
映画終盤、ヒロインの母がその夫を冗談めかして言う、「あの人の愛は、私には
重過ぎる(笑)」と。いや、果たして、それは本当に冗談だったのか。その瞬間、
ボクははたと気付いたんだ。この村で暮らす人々は、誰もが特定の個人だけを
愛しているのではなく、この村と…、そこで暮らす人々のみんなを愛しているのだと。
映画は、山あいにある小さな小さな村の物語…、だけど、そこに描かれる愛は、
その場所から溢れ出さんばかりに広く広く広がっている。





楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル


『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』、観ました。

2008-01-02 21:24:12 | 映画(あ行)
Avp2_1_1a
監督:コリン・ストラウス、グレッグ・ストラウス
出演:レイコ・エイルスワース、ジョン・オーティス、スティーヴン・パスクール、ジョニー・ルイス、デヴィッド・パートコー

 『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』、映画館で観ました。
南極での死闘の後、プレデターの遺体から飛び出たチェストバスターは宇宙船の
中で“プレデリアン”として成長し、プレデターを殲滅する。コントロール不能となった
宇宙船はコロラドの森へ墜落し、“プレデリアン”をはじめ、宇宙船に潜んでいた
無数のエイリアンたちが獲物を求め飛び出していった。今、人類が最も恐れていた
悪夢が現実となる…。
 いわゆるSF映画史にその名をとどろかせるエイリアンとプレデター、その2大悪玉
宇宙人による“夢のコラボ(?)”を実現させた前作は、そのスーパースターの知名度とは
裏腹に、何ともチープなゲテモノ対決に象徴される、まさにB級SFムービーのそれだった。
まぁ、それはそれとして(オリジナルとは全くの別物と割り切って観れば)ある意味
新鮮で、時に微笑ましくもあり、なかなか楽しめる映画ではあったのだが、今回の
続編に当たっては、どうもその延長戦上にある“マニアックなB級テイスト”とは少々
趣(おもむ)きが異なるのではないか。その作風は、B(級)からA(級)へと僅かだが
押し戻したように見える。というのは、前作みたく無理矢理“架空の古代史(宇宙から
飛来したプレデターが地球に文明をもたらし、神として君臨してたなんて…)”を
でっち上げ、全編にわたって開き直った印象は無く(笑)、少なくとも今作はそこに
“我々の知る地球(?)”が存在し、物語も常識の範囲内で推移する。一方、その
対決構図にしても、前作では人類がほとんど役目を果たさないまま、早々に退場――
早い話が“エイリアンVSプレデターwith人類”の旧図式から、今作では人類が
その(戦いの)輪に入って格闘し、とりあえず“三つ巴”の対決構図が出来上がった。
よって、観客が常に“人類の視点”でもって恐怖を感じ、そのスリルを実感できるのが
大きい。前作では、特に映画終盤、我ら観客は誰に感情移入出来ないまま、残った
両者の対決を“高みの見物”で眺めてただけだもんね。
 ただ、本作の失敗は、人間側にスポットを当てようとするあまり、キャラクターの
数に制限無く、その大風呂敷を広げ過ぎてしまったこと。結局、映画全体が散漫な
印象のまま最終局面に突入し、(ドラマに)行き詰まったらとにかく片っ端から
殺しちゃえって感じに見える。例えば、映画では、しばらくぶりに再会した兄弟と
母娘の2組をメインに展開していくのだが、設定次第でその片方だけにすることも
可能だったはず。ここはもう少し登場人物を整理して、少ない人数により多くの
時間を割いて描いた方が、観る側にとっても素直に楽しめたのではないか。それと
最後に重箱の隅を突くようで恐縮だが、知性・理性を持つプレデターが獲物を
捕まえた後にする皮剥きの行為や、女王アリと働きアリの関係にあるエイリアンが
妊婦の体内に卵を産み付ける場面など、観てて唐突な印象を受ける場面もちらほら。
まぁ、それはあっちを立てればこっちが立たず…、長きに渡ってシリーズが続くと
その過程で生まれた様々なルールが足かせになってしまうようで…。ここはレビュー
冒頭にも書いた通り、これまで単体でのシリーズとは全くの別物だと割り切って、
今はただこの“夢のコラボ”を大きな心で見守ろうじゃないか。





楽天市場ランキング・売れ筋DVD邦画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVD洋画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアジア映画トップ30

楽天市場ランキング・売れ筋DVDアニメトップ30

Amazon.co.jp 外国映画トップ100
Amazon.co.jp 日本映画トップ100
Amazon.co.jp アニメトップ100

DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD・CD・本・フィギュアホビー販売


DMM.com DVD通販CD予約販売


DMM.com CD&DVDレンタル