肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『うつせみ』、観ました。

2006-10-03 21:17:36 | 映画(あ行)

うつせみ ◆20%OFF!

 『うつせみ』、観ました。
ミステリアスな青年テソク。彼はバイクで街を駆け巡り、留守宅を探しては、
住人が戻るまでのつかの間を過ごしている。ある日、豪奢な家に忍び込んだ
テソクは、独占欲の強い夫に苛まれ、抜け殻のように生気が無い孤独な人妻
ソナと出会う…。 
 オイラみたいな“凡人”に、この作品がカンペキに理解出来たとは思わない。
だけど、オイラみたいな“凡人”でも、これがキム・ギドクという“天才”に
よって作られた、今年を代表する大傑作であるのはよく分かる。さて、映画は
“あるひとつの制約”を持たせながら、非常に幻想的かつ寓話的な仕上がり。
しかし、同時に、その“制約”によって観る側は自分なりのイマジネーションを
膨らませ、働かせながら観ないとついていけない、“難解な作品”ともいえる。
ならば、その“制約”とは……、主人公男女に“言葉”を発しさせないこと。
つまり、セリフによる説明が省略されているために、そこで生じた“(物語の)
空白”を埋めていく作業が観る側に必要となってくる。よって、今からボクが書く
解釈が、必ずしも正しいとは限らない。でも、100人居れば100通りの映画の
観方があるわけだし、観る人がそれぞれ感じ方が違っていて良いんだと思う。
うん、これはそういう“無限の広がり”を感じさせる作品だ。
 と、そんな感じで、この映画を一筋縄で解くのは難しい。理論と理屈で
観れば崩壊し、理由付けを探せば袋小路に迷い込む。どうか“感性”だけを
大切に、まっさらな気持ちで観て欲しい。今回(の鑑賞で)、オイラの障害に
なったのは、何が主人公を“ゴルフ”に走らせる??、しかも、どうして“3番
アイアン”にご執心なの??、別に“4番ウッド”でも良かろうに(笑)。それと
何故に“洗濯板”でなくちゃいけないの??、いや、それ以前に、主人公青年は
一体“何者”で、その“奇行の目的”は何なのか??、凡人のオイラに、明確なる
回答を指し示すことはできない。早い話が、検討すらつきかねてしまう(笑)。
ただ、ひとつ言えることは、主人公青年はまるで部屋のカギを開けるように、
ヒロインの閉ざされた“心の扉”を開けたのだ。その時、彼女は“救い”を
求めていて、彼にしか彼女を助けられなかったということ。彼女は彼を
必要とし、彼もまた彼女を必要だったということ。例えば、互いが互いの心の
支えとなって、ひとつのカップめんを分け合って食べた、あの夜のように。
ラストシーン、だから、彼女にだけは見えたんだ、そこに居ない(死んだ?)
はずの彼の姿を…。きっと、彼女は幸福だったに違いない。彼の“永遠の
愛”に包まれて、再び“生きる喜び”を見つけることが出来たのだから。

 



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2 コメント

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喜び (kimion20002000)
2006-11-03 02:25:25
TBありがとう。
そしてまた、ふたりでいることの歓びを見出した青年もまた、心の鍵を開ける相手を求めていたのかもしれませんね。
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適切かどうかは‥‥ (きのこスパ)
2006-11-05 09:09:52
kimion20002000さん、
コメント、サンキューです。

「難解こそが芸術だ」と云わんばかりの映画は好きじゃない。
ただ、この映画に限っては、幻想と現実が入り混じった不思議な空間の中で、
主人公男女の心にポッカリ空いた哀しみの隙間に
観ながら息が苦しくなった。
例えが、適切かどうかは分からないけど、
これは“大人のラブファンタジー”だと思います。
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