肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『春の雪』、観ました。

2005-10-31 20:49:35 | 映画(は行)

 『春の雪』、映画館で観ました。
侯爵家の子息である清顕と、伯爵家の令嬢である聡子は幼なじみの仲だったが、
聡子はいつしか清顕に想いを寄せるようになっていた。しかし、不器用な清顕は
その愛情表現に対してうまく応えることが出来なかった‥‥。
 何やらオイラの耳元で“女のすすり泣く声”が聞こえてくる。で、ふと横を
見れば、そこにワイフが居た(笑)。他でもない、館内でオイオイ泣いていたのは
ワイフだったのだ(笑)。それにしても、オイラの方は全くもって泣けず仕舞い。
思うに、その違いは主人公青年の“青臭さ”の捉え方にあるのかなと‥‥。
勿論、オイラとしても、己の未熟さゆえに愛を遠ざけてしまう主人公の気持ちは
よく分かるし、実際同じような経験もした。ただ、ボクには彼がその後に取った
行動は、自分の“愛する女性(ひと)”を苦しめるだけの“わがままな行為”に
映ってしまう。一方でワイフは、そんな“欠陥”だらけの主人公だからこそ、
“人間的な愛おしさ”を感じたと言う。いやはや、映画の観方って千差万別。
まぁ、同じ夫婦でそれだけ温度差があるのだから、観る人によって好みが分かれる
映画だとは思うけどね。
 さて、いっさい本を読まないオイラが、三島由紀夫に触れるのはモノクロ時代の
市川崑が監督した『炎上』に続いて、これが2作品目。今回、ボクがさすがだと
思ったのは、映画が始まってまもなくの場面で、主人公男女に“黒い犬の
死体”を発見させる。すると、ヒロインはその犬に“憐れみ”を抱き、花を
供えてやろうと言い出す…。つまり、その時点で映画は、二人の愛が“悲恋”で
終わることを暗示しつつ、同時に、ヒロインは例えそうだとしても、その愛が
いつかまた生まれ変わるものと信じているのだ。時間にして僅か数分だが、
改めて三島由紀夫(もしかしたら行定勲監督かも?)のセンスを感じさせる、
大切で意味のあるワンシーンだ。
 それから、最後にタイトルとなった“春の雪”について、ボクの解釈をひとつ。
例えば、公開されたばかり『四月の雪』のラストに降る雪は、(そのレビュー
にも書いたように)“新たな展開”を予感させる雪だった。しかし、今作の
場合は、それとは少し意味合いが違うように感じられる。どんなに降っても、
降り積もらずに消えていってしまう“春の雪”。それは、どんなに愛し合っても、
結ばれることのない二人の愛のよう‥‥(涙)。いや、せめて、その雪に救いを
探すとすれば、‘冬’の「現世」から‘春’の「来世」へ移り変わる瞬間の…、
シグナルだったのかもしれない。

 


『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』、観ました。

2005-10-29 20:58:04 | 映画(さ行)

サハラ 死の砂漠を脱出せよ ◆20%OFF!

 『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』、観ました。
海洋保全に務める米国特殊機関NUMAのエージェントであり、同時に世界中の
秘宝を探す冒険家ダーク・ピット。一枚の金貨が、南北戦争時に姿を消した
甲鉄艦の行方を暗示し、彼をサハラ砂漠へと向かわせる。一方、WHOのエヴァ・
ロハス博士はその地で発生している疫病の謎を追っていた‥‥。 
 まぁ、ある程度の予想はしていたが…、まぁ、それなりに覚悟もしていたが…、
それ見たことかと“大味”でパサパサしたストーリー展開(笑)。そこに
“行間を読む”だとか…、そこに“人生の機微を滲ませる”だとか…、そんな
細かい作業は一切必要ない。鰤(ぶり)をそのまま塩も振らずに丸焼きして、
「ハイ、召し上がれ!!」みたいな豪快さ(笑)。だから、途中でツジツマ
合わなくなって、首を傾げちゃう時もいっぱいいっぱいあるんだけどさぁ~。
この際、こちらもダマされたつもりで、見て見ぬフリするのも良いじゃない??(笑)
 さてさて、物語当初の目的はお宝探しのはずが、いつしか疫病の原因究明と
人助けの旅へ‥‥。主人公一行は、広いサハラの砂漠を行ったり来たり。
上にも書いたとおり、この大ざっぱな原作が何故に全世界で大ベストセラーに
なっているのか、ボクには到底信じられないのだが(笑)、映画自体は見せ場
見せ場の連続で“楽しめるアドベンチャー映画”に仕上がっていると思う。
中でも、主人公がサハラ砂漠の真ん中で見つけた不時着飛行機で○○○を
してしまう場面は、いかにも脳天気なアメリカ的発想で大笑いしてしまった。
過剰なサービス精神と、開けっぴろげな節操の無さ‥‥うん、これだから
ハリウッド映画を観るのはやめられない(笑)。
 それにしても、ヒロインのペネロペ・クルスは、トム・クルーズやニコラス・
ケイジ、マット・デイモンに続いて、またしても今作で共演したマシュー・
マコノヒーと恋仲になったそうな。正直、ボクは彼女にあまり魅力を感じない
のだが、ワイフ曰く「アメリカ人は、あのエキゾチックな“長い黒髪”に
惹かれるのよ」と。それは昨今の金髪茶髪ブームの最中、ひとり“黒髪”に
こだわり続けたワイフにとっての、高らかな“勝利宣言”でもあったのダ(笑)。

 


『ウエスタン』、観ました。

2005-10-28 20:26:17 | 映画(あ行)
ウエスタン スペシャル・コレクターズ・エディション

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

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 『ウエスタン』、観ました。
西部の鉄道敷設予定地。地主を狙う殺し屋、地主のもとへ向かう人妻、彼女を
慕うならず者、そして殺し屋をつけ狙う謎の男。男と男の命をかけた闘い、
男と女が織り成す心の機微が、やがて4人を衝撃的な運命の渦へと導いていく…。
 今日やっと…、“本当のセルジオ・レオーネ”に出会えた気分だ。勿論、
その最高作との呼び声高き『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』も
良いが、今こうして彼のルーツとも言える西部劇の代表作を目の当たりにして、
やはりボクはこの『ウエスタン(原題:ONCE UPON A TIME IN THE WEST)』に
軍配を挙げる。映画の開巻と同時に観客を物語へと引きずり込む演出の妙、、
その切れ味は途中息切れすることなく、映画終盤まで冴えわたり、ついには
ラストのワンシーンまで息つく暇を与えない。主人公は人殺しの荒くれども、、
決して高尚な映画ってわけじゃないけれど、渇いた大地に根付く「男のロマン」と
「女の逞(たくま)しさ」が、我らに剛健なるフロンティア・スピリットを
呼び覚ます‥‥。
 さて、ならばこの作品が“只の傑作”に収まらず、“珠玉の大傑作”にまで
成り得た要因は、〈一つ目〉にアッと驚くサプライズが仕掛けられたキャスティング。
美しいクラウディア・カルディナーレはやっぱりイイ。ニヒルで渋いチャールズ・
ブロンソンも変わらずイイ。だけど、あのヘンリー・フォンダの悪党役なんぞ
一体誰が想像する? しかも、女も子供も殺してしまう極悪非道、、オイラは
そのお顔を見た瞬間にビリビリと電流が走ったね。〈二つ目〉にエンニオ・
モリコーネによる音楽の威力。時に哀愁のハーモニカとして‥、時に情感豊かな
テーマ曲として‥、彼の作り出すそのメロディは、ただそれだけで観る者を
映画の世界へと誘(いざな)っていく。この映画で忘れてはならない“名脇役”だ。
そして、〈三つ目〉にして最大の要因は、魔法のように惹きつけられるカメラ
ワークの素晴らしさ。遠近法を巧みに利用しながらも、常に対象となる遠近両者を
同じフレーム内に収める構図の凄さ。そして、駅構内の場面からクレーンで
カメラを上昇させ、屋根の上から“賑やかな街の風景”が広がっていくシーンには、
思わず見惚れて息を呑んでしまうほど‥。それは緻密にしてダイナミックな映像だ。
ほぼ同時期に作られた『ワイルド・バンチ』や『明日に向かって撃て』の影に隠れて
過小評価されている作品だが、映画の出来自体はそれらに決して劣っていない。


『バーバー』、観ました。

2005-10-27 21:25:13 | 映画(は行)
バーバー ― DTSスペシャルエディション

角川エンタテインメント

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 『バーバー』、観ました。
理髪店で働くエドは無口な中年男。ある日見知らぬ男から新規事業の話を聞き、
開業資金を捻出すべく妻の浮気相手に一万ドルの脅迫状を送りつける‥‥。
 コーエン兄弟!!、コーエン兄弟!!、というけれど、個人的に彼らの映画で
面白いと感じたのは、処女作の『ブラッド・シンプル/ザ・スリラー』くらい。
残りの映画はボクにはちょっと…。でもね、この『バーバー』は良かったなぁ。
彼らの言わんとしていることもよく分かりました。観終わった後、人生について
考えてみる‥‥うん、そんな余韻に浸れる映画です。
 無口であるべき主人公が、映画ではモノローグとして喋り続けて、不思議な
笑いが全編を包み込む。流れるように進むストーリーに、“明と暗”を強調した
レトロチックな映像が効果的。今回ボクは“カラーバージョン”で観たんだけど、
これをわざわざモノクロにして劇場公開したコーエン兄弟の狙いも頷ける。
さすがコーエン兄弟、タダモノじゃありません。
 意志もなく、意味もなく、伸び続ける人の髪‥‥理髪店の主人公はそんな髪を
終わることなく刈り続ける。そして、伸び続ける髪のように、彼の人生もまた
意志もなく、意味もなく、ただ浪費するだけ‥‥。そんな時、彼が唯一狙った
一攫千金が、奈落の底へまっ逆さま。何と人生は皮肉なのか‥、そして、何と
人生は不思議なのか…。つまり、きっと人生は“パズル”のようなものなんだろう。
他愛もなく、関連もない一つ一つの出来事が後になって振り返れば、すべてが
意味のあるものに思えてくる。人は死の間近になって、ようやく“人生の全体像”が
見えるんだろうね。たかが人生、されど人生、、、やっぱり人生は不思議だ‥‥。


『私の頭の中の消しゴム』、観ました。

2005-10-25 20:42:26 | 映画(ら・わ行)





監督:イ・ジェハン
出演:チョン・ウソン, ソン・イェジン

 『私の頭の中の消しゴム』、映画館で観ました。
無愛想な現場監督チョルスと、お嬢様育ちのスジン。思わぬハプニングから
出会った2人は、運命のように愛し合い結婚。しかし、物忘れが深刻になり、
病院を訪ねたスジンは、自分が「若年性アルツハイマー」であるという事実を
知る……。 
 良くも悪くも“アベック向け”の映画であるのかな。只今、現在進行形で
付き合ってる相手がいるのなら、四の五の言わず一緒に観に行くことを
オススメする。適度に小ネタで笑わせつつ(笑)、キッチリ泣かせどころを
心得た物語構成は、さすが韓国で大ヒットを記録したというのも頷ける。
だけど、どうなんだろう…、“病気(アルツハイマー病)の現実”よりも
“愛の強さ”や“美しさ”に重点を置いた描き方は、「純愛映画だから…」と
割り切って観た方が良さそう。ボクの希望としては、病気の重さについて‥‥
あと僅かでもネチっこく描けていれば、作品に更なる“深み”が増したとは
思うんだけどね。
 さて、ボクがこの映画で面白いと感じたのは、ヒロインが“かつて愛した
不倫相手”の存在だ。勿論、彼女は今、最愛の男性(ひと)がいるのだけど、
徐々に記憶が失っていく過程で、「消し去りたい過去」と「忘れたくない
現在(いま)」とが皮肉にも入れ替わっていく‥‥。と同時に、“自分の
愛”に自信が持てなくなり、自分が自分でなくなる日が近いことを実感する…。
まさにこの不倫相手こそ、物語にアクセントを付け、重要なポジションに
位置するキャラクターだ。
 それから、ラストシーンについてのボクの見解をひとつ(※以下、ネタバレ
有りです)。二人を乗せた車がハイウェイを滑るように走っていく。一見、
幸せそうに見える彼らだが、その彼方はカーブになっていて“道の先が見えない”。
つまり、二人の愛の行き先に“困難”が待ち受けていることを暗示している
わけだ。しかし、2人に未来への悲壮感はない。きっと“永遠の愛”を
誓い合ったんだろう。その瞬間、更に車はスピードを上げ、加速していった
ように見えた‥‥。



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『ミニミニ大作戦(69年オリジナル版)』、観ました。

2005-10-24 20:47:22 | 映画(ま行)
ミニミニ大作戦 スペシャル・コレクターズ・エディション

パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

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 『ミニミニ大作戦(69年オリジナル版)』、観ました。
イタリアのトリノに乗り込んで、500万ドルの金塊強奪作戦を実行に移した
イギリスの大泥棒達。しかし、この計画を阻止すべく虎視眈々と待ち受ける
イタリアン・マフィアの一味がいた‥‥。
 近年ハリウッドで製作されたリメイク版を受けて、今再び日の目を浴びた
オリジナル版であるのだが、迷わずボクは、この旧作に軍配を挙げる。
リメイク版がスタイリッシュ映像とカーチェイスのスピード感に趣きを置いた
アクション映画なら、 このオリジナル版は“コミカル”かつ“優雅”に
イギリス映画らしさを前面に、最後はドカンと迫力満点の逃亡劇で締めくくる。
赤・白・青のブリティッシュカラーを イメージしたミニ・クーパーがイタリア・
トリノ市街の渋滞を横目に、地下鉄を…、下水道を…、ドーム屋上を…、
川辺の石畳をジャンプしながら疾走していく様は、痛快にして爽快感バツグンだ。
邦題となった“ミニミニ大作戦”のタイトルイメージは、 リメイク版よりも
まさにこのオリジナル版こそ相応しい。
 それにつけても映画の締め括りは、さぁ今にも崩れそうな崖の上、主人公の
「良いアイデアがあるんだ!」の台詞と共に尻切れトンボ的なエンディング。
アタマのお堅いお偉いさん方には、納得出来ない人も居たのかも‥‥。
きっとこのエンディングの意味するものは、“低予算”で作られた本作ゆえ、
その製作スタッフから映画会社へ向けた痛烈メッセージに違いない。つまり、
「この先のアイデアは固まってるんだ。だから続きが観たかったら(次回作の)
製作費を出してくれ!」ってこと(笑)。この辺にも英国的なユーモアが
垣間見られて楽しくなる。粋なセリフにして少々型破りなジ・エンド、、、
物語は未消化だが後味は悪くない。


『キングダム・オブ・ヘブン』、観ました。

2005-10-21 20:49:12 | 映画(か行)

キングダム・オブ・ヘブン(初回限定生産) ◆20%OFF!

 『キングダム・オブ・ヘブン』、観ました。
父親が勇敢な騎士ゴッドフリーと知った鍛冶屋のバリアンは、十字軍に
入隊、戦いに身を投じる。たくましい騎士に成長したバリアンは、やがて
エルサレム王を助け、美しい王女シビラと禁じられた恋に落ちるが……。
 監督はリドリー・スコット。恐らく、物語の時代設定からして『グラ
ディエーター』に近い“歴史活劇”だろうと想像したが、観ていく過程で
アレレ…??、これはチョッピリ雲行きが怪しいゾと思い始める(笑)。
「魂の救済」から始まって、「信仰心」や「良心」や「正義心」について‥‥、
今作では意識して人間の内にある“神聖なる部分”を描いている。勿論、
戦闘シーンもあるにはあるのだが、そこに“明白な敵”は存在せず、
血沸き立つようなスリルもない。むしろ、「神の視点」から戦争の全体像を
通して、“人の愚かさ”を映し出している。正直、娯楽嗜好の強い(?)
リドリー・スコットが、このような“宗教色の強い映画”を手がけるとは
思わなかった。良い意味で、ボクの期待を見事に裏切ってくれた作品だ。
 さて、この映画のテーマを探る前に、是非とも注目したいキーパーソンが
ひとり‥‥、その姿の醜さゆえに、鉄のマスクをはめたエルサレム王の存在だ。
恐らく彼はライ病だと思われ…、己の醜さと、自身の残り少ない寿命を
知っている…。いや、だからこそ、人が神から与えられた“短い人生”の
中で、互いに争い、殺し合うことの無意味さを悟ったともいえる。ボクが、
この映画を観て感じたことは、ときに「神」は“人間の都合”によって
創造され、利用されてきた“虚像の一面”を併せ持つってこと。「神が
認めた戦争(聖戦)」とか、「平和のための戦争」とか、そんなものは
単なる“言葉のすり替え”に過ぎず、人間が“富”や“権力”欲しさに
引き起こす…、それが「戦争」なのだってこと。もしも、この世界に“天国
(パラダイス)”があるのだとしたら、それは“神”が創るものじゃない。
人々が汗を流し、その手で作り出すものなんだ。

 


『炎のメモリアル』、観ました。

2005-10-19 20:21:09 | 映画(は行)
炎のメモリアル プレミアム・エディション

ジェネオン エンタテインメント

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 『炎のメモリアル』、観ました。
ボルティモアの穀物倉庫で大規模な火災が発生。現場へ駆けつけた消防士の
ジャック・モリソンは、爆発の危機をはらんだ建物の中に飛び込み、12階に
取り残された生存者の救出に全力を尽くすが……。
 観る前は『タワーリング・インフェルノ』や『バック・ドラフト』さながら、
主人公を含めた消防士たちが、ビルの大火災に立ち向かい、消し止めるまでを
描いた“パニック娯楽映画”だと思っていたが、意外にもハートウォーミングな
内容に驚いた。勿論、今作でもビル火災を主たる舞台とし、消防士たちを
「英雄」として描いているは違いない。ただ、ここでの彼らは世間一般にいう
“ヒーロー像”とは少々意味合いが違っていて、消防士としての“誇り”を持ち、
「その家族にとってのヒーロー」なんだろう。そして、今更ながら思うのが、
9・11の際、多くの人命を救おうとして亡くなった彼ら(消防士たち)と、
その遺族のこと…、改めて彼らに対する深い哀悼の意と、尊敬の念を抱かずには
いられない。
 さて、物語は、消防士である主人公が、火災の救出中にひとり取り残され、
迫りくる炎を見ながら、自分の“消防士としての人生”を振り返っていく
回想形式。初めての出勤…、初めての出動…、妻との出会いから結婚へ…、
そして仲間の死まで……。邦題となった“メモリアル”とは、そのフラッシュ
バックシーンの数々から名付けられたのだろう。この映画の良いところは、
アクロバティックでスリリングな救出劇は封印し、消防士同士の“仲間の絆”や、
人命を救うことへの“使命感”について、たっぶり時間を割いて描かれている点だ。
そして、更に言えば、ここではみんなが望んだハッピーエンドとは程遠く、
むしろあまりにも“現実的でシビアなエンディング”が待ち受ける。エッ…??と
驚いたのは、きっとボクだけではないはず……でも、不思議だ。例え、それが
悲劇に終わったとしても、観終わったボクの心に曇りはない。“達成感”にも
似た清々しさが残った。


『奇人たちの晩餐会』、観ました。

2005-10-18 21:23:50 | 映画(か行)
奇人たちの晩餐会

ビデオメーカー

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 『奇人たちの晩餐会』、観ました。
出版業を営むブロシャンには密かな楽しみがあった。それはバカな人間を
招待しては仲間で笑い物にするという晩餐会だ。しかし、当日ギックリ腰になり
動けなくなった ブロシャンは、バカ招待客の一人ピニョンと二人きりに
なってしまう‥‥。
 そのユニークなタイトルからして、ボクは底知れぬ“期待感”と、一抹の
“不安”をこの映画に感じ取る(笑)。観るべきか…、観ざるべきか…、
そんな時、悩むボクの肩を 押すように知人に「是非観て欲しい」とせがまれる。
あぁ、もはや進むしかない‥‥。ならば、とっとと観てしまおうと思った
わけだが(笑)、観れば思った以上に楽しめた。 いや、かなりのレベルで
楽しめた。予想も出来ないストーリー展開は、次はこう来たか、 その次は
そう出るか、と常に観客をミスリードしながら進んでいく。ほとんどを
限られた空間で展開する密室劇ながらも、ボクには最後までこの結末が
読めなかった。タイトルにある「晩餐会」はついに見せることはなく、
「奇人たち」といってもほとんど一人しか登場しない。しかし、それでも
成立してしまう本作の凄さは、そのまま舞台劇としても通用しそうな“脚本の
面白さ”なんだろう。要所要所で繰り返しミスする奇人を 普通人が叱り飛ばす。
怒る普通人と謝る奇人、、2人の“噛み合わない会話”が笑えちゃう。 ラストの
「人を笑うものは人に笑われる」という格言じみたオチも痛快だ。なーんだ、
こんなに面白いならもっと早く観とけば良かった。たかが80分、されど80分、
ここには脚本家なら誰もが憧れる巧みな“会話の魔術”がある。いっそ、これなら
脚本・ 三谷幸喜、主演・西村雅彦あたりでパクッてみたら如何だろうか(笑)。
面白い映画に なると思うんだけどなぁ。


『蝉しぐれ』、観ました。

2005-10-16 20:17:01 | 映画(さ行)


 『蝉しぐれ』、映画館で観ました。
江戸時代、下級武士の養父によって育てられた牧文四郎。彼は父を誰よりも
尊敬していたが、その父は切腹の運命に遭ってしまう。謀反人の子としての
汚名を着せられた文四郎は、母を助けながら、質素に暮らしていく。そこには
変わらず彼に接する幼なじみたちの姿もあった。数年後、文四郎は名誉回復の
機会を言い渡されるのだが‥‥。
 絵のように広がる田園風景、美しい藁(わら)ぶき屋根のシルエット‥‥、
オープニングから大スクリーンに映し出される映像美を目の当たりにして、
「今、ボクは“日本映画”を観ているんだ」という実感が沸いてくる。と同時に、
それぞれの役者から発せられる台詞の数々は(その多くが聞き取りやすく
“現代語”に訳されてはいるが…)、改めて日本語の持つ美しさと優しさを
感じずにはいられない。聞けば、原作は『たそがれ清兵衛』『隠し剣、鬼の爪』
と同じ藤沢周平だという。映画の出来はともかくとして、物語自体の好みで
いえば、ボクは断然こちらの方でありました。
 さて、恐らくこの映画で、賛否両論分かれそうなのが“キャスティング”。
今回、ボクは映画サークルの仲間たちと観たのだけど、その後のオフ会では
「ふかわりょうがチョットね‥」とか、「今田耕司がぶち壊し‥」などと
仲間たちは毒舌ぶりを展開……(笑)。ただ、ボクの解釈は、主人公を含めた
幼なじみの三人組‥‥ふざけ合ったり、語り合ったりする“友情の温かさ”を
描く上で、彼らのコミカルが必要だったのかなと…。普段、TVのバラエティーを
観ないことが幸いしてか、今回彼らの登場も、ボクはあまり違和感なかったかな。
一方、ボクがこの映画を観て良かったのは、口づけひとつないまま展開され
描かれる“純愛の情”と、膝下さえ見せないで表現される木村佳乃の
“日本的な美しさ”‥‥。正直、これまでボクは「女優」としての木村佳乃に、
あまり魅力を感じていなかったのだけど、今作では焦らしに焦らされた挙句に、
彼女らしい清楚で理知的なお姿を御披露する。演技力のマイナス面(?)を
カバーして余りあるほどの“存在感”を発揮していました。


『デンジャラス・ビューティー2』、観ました。

2005-10-14 22:42:34 | 映画(た行)
デンジャラス・ビューティー 2

ワーナー・ホーム・ビデオ

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 『デンジャラス・ビューティー2』、観ました。
「ミス・アメリカンコンテスト」への潜入捜査で爆破事件を見事解決した
グレイシーだったが、顔がわれてしまったため、潜入捜査が不可能になって
しまった。そこで“FBIの顔”としてPR活動を担当することになるが……。
 前作でのキーパーソンだったマイケル・ケインもいなければ、恋人役の
ベンジャミン・ブラットもいない。言ってみれば、文字通りの“飛車角
落ち”で、やはり全体的に“小粒な感じ”は否めない。ならば、主役の
サンドラ・ブロックにもっとメチャクチャやって欲しかったところだが(笑)、
それも叶わず前作よりは“おとなしめ”。あぁ~あ‥‥思うに、彼女に
とって、今こそ生き残りを賭けた“勝負時、、かつての自分を吹っ切るには
ココしかないッ!!、いつまでも“ゴージャス”だけを売りに通用できる
はずもないんだけどなぁ。
 さて、映画は予想通りの“アメリカンライト”な仕上がりで、観終わって
15分もすれば“ストーリー”を忘れ、一晩もすれば“映画を観たこと”すら
忘れてしまいそう(笑)。しかし、当のオイラにとっちゃー、明日は映画館まで
観に行く予定の『蝉しぐれ』、その気分転換を兼ねた“息抜き”みたいなもの。
うん、そういう意味じゃあ、こういうのもアリなのかなと…(笑)。恐らく
作る側としても、この映画で“一大センセーショナル”を起こそうなんて、
夢にも考えてないだろうし、せいぜい“小遣い稼ぎ”が関の山(笑)。それを
理解した上で観れる人にだけ、この映画はどうぞ。くれぐれも過度の期待は
しないように(笑)。


『海を飛ぶ夢』、観ました。

2005-10-13 21:00:33 | 映画(あ行)
海を飛ぶ夢

ポニーキャニオン

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 『海を飛ぶ夢』、観ました。
19歳でノルウェー船のクルーとなり、世界中の国々を旅してまわったラモン・
サンペドロ。だが25歳の夏、皮肉にも同じ海で起きた事故により四肢麻痺の
障害を負ってしまう。家族に支えられベッドで寝たきりの生活を28年間続けた末、
ラモンは尊厳死を決意するのだが‥‥。 
 近年で“尊厳死”を扱った映画といえば、イーストウッドの『ミリオン
ダラー・ベイビー』
が記憶に新しいところ。しかし、ボクが思うに
『ミリオンダラー・~』とは、同じ喜びを分かち合い、同じ苦しみを味わい
背負って生きていく……、いわば“血”さえも超える“固い魂の絆”を
描いた作品であり、決して“尊厳死”を主題にしたものではないと思ってる。
その一方で、今作『海を飛ぶ夢』は、正真正銘“尊厳死”に対して向き合った
作品であり、真正面から“尊厳死”を描いた作品であるのは間違いない。
 さて、映画を観る以前から、そのテーマの重さゆえ、レビューを書くのに
苦労するとは思っていたが、案の定、何から書き始めて良いのか分からず、
困った困った(笑)。勿論、彼ら(四肢麻痺患者たち)に口先だけで「希望を持って
生きるんだ」とか…、「死ぬのは卑怯だ」とか…、お決まりの正論を吐くのは
簡単だ。しかし、石のように重たくなった身体(からだ)をベッドに横たえて、
その一室の窓から見える景色が“世界のすべて”の彼らにとって、ボクの
言葉は何の説得力があるというのだろう……(涙)。ただ一つ言えることは、
ボクらが彼らにどんな憐れみや同情を寄せたとしても、彼らの苦しみは
彼らにしか分からないってこと。この映画の良さは、“尊厳死”を肯定する
わけでなく、かといって否定するわけでもない‥‥、患者本人、その家族、
恋人、同じ境遇の患者さん、宗教家など…、いろいろな立場の考え方を紹介し、
“問題を提示する形”で終わっている点だ。そして、その問題に答えはなく、
行き先も分からない。しかし、少なくともこの映画は、ボクたちに“考える
きっかけ”を与えてくれた。きっと監督のA・アメナーバルは言うだろう、、
「観終わった観客が、たった5分でも…、僅か10分でも…、“尊厳死”について
考える時間を持てたとしたら…、やはりこの映画に存在価値はあったんだ」と。


『きみに読む物語』、観ました。

2005-10-11 19:59:02 | 映画(か行)
きみに読む物語 スタンダード・エディション

ハピネット・ピクチャーズ

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 『きみに読む物語』、観ました。
とある療養施設にひとり暮らす初老の女性。情熱に溢れた若い時代の思い出を
失っている彼女に、一人の男が物語を読み聞かせている。語られるのは、
1940年、ある夏に出会い恋に落ちたアリーとノアの物語。しかし、身分の違いが
ふたりを引き裂き、アリーとノアは別々の人生を歩むことになるが…。
 その昔、“ジョン・カサヴェテス”という監督がいた。「インディペンデント
映画の父」と呼ばれ、後のジャームッシュらへ“インディーズ映画の道”を
切り開いた偉大な才人だ。で、今作監督の“ニック・カサヴェテス”は、
その息子さん。さぞや父親譲りの研ぎ澄まされた演出で、究極のリアリズムを
描いてくるのかと思いきや、“パパさん”よりはやわらかな映像で、少し
作風は違うのかな。ただし、オープニングの夕焼けシーンや、アヒルの池での
ボートの場面など…、ワンショットの表現力は、さすが“良質のDNA”を
立派に受け継いでいます。ボクがふと気になったのは、良き理解者であり、
何でも話し合える主人公とその父との関係‥‥、一方で、ことあるごとに
対立し、違った道を歩むこととなるヒロインとその母との関係‥‥、果たして
ニックの場合は、そのどちらだったんだろう‥‥。そんなことを考えながら
観るのも、今作楽しみ方の一つかもしれないね。
 さて、この映画の特徴は、老いた主人公が認知症の女性患者に本を読んで
聞かせる形で進行し、“本の物語”が終わった後に“主人公の今”が顔を出す…
いわゆる物語の“二重構造”になっている点だ。そして、それらは単なる
思い付きや偶然で交錯するのではなく、その両者を通して見えてくる二人の
“真実の愛”と、“永遠の誓い”……。すべてを観終わったボクに、これを
ハッピーエンドと言って良いか分からない。しかし、ただ一つだけ言えることは、
二人の愛は“鳥”になったってこと。今、翼を持ち、羽を広げて、大空高く
舞い上がる。そして帰っていったんだ、その愛が生まれた“元ある場所”へと‥。


“メリル・ストリープ”三本締め

2005-10-10 20:29:02 | ★独断と偏見的シネマ・セレクション3
独断と偏見的シネマ・セレクション3 (俳優編)“メリル・ストリープ”

1、『ソフィーの選択』
2、『マディソン郡の橋』
3、『母の眠り』




マディソン郡の橋

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母の眠り

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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オイラって映画は“監督で観るタイプ”なんで、
俳優さんには特に思い入れはないんだけど、
メリル・ストリープだけは唯一ボクが尊敬する役者さん。
彼女の役作りに対する取り組み方、考え方は
他の役者さんの比じゃないでしょう。
1の中にあるみるみる頬が紅潮して涙を流すモノローグシーンは、
歴史上のどの時代の名女優を連れてきても決して演じることは出来ないはず。
まさに彼女のみが達した到達点。奇跡的な名演技だ。
2はごく平凡な主婦に芽生えた淡い恋心を、、
抑制された演技とは裏腹に激しい心の葛藤として表現する。
派手さはないが、実はこういう“地味で平凡な役”こそ難しい。



『マシニスト』、観ました。

2005-10-08 22:31:22 | 映画(ま行)
マシニスト

アミューズソフトエンタテインメント

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 『マシニスト』、観ました。
極度の不眠症で1年も眠れず、病的に痩せ衰えた機械工のトレヴァー。自宅で
不気味な貼り紙を見つけ、新しい同僚に出会って以来、彼の周囲で奇妙な
出来事が頻発する。誰かが自分を陥れようとしていると感じたトレヴァーは、
疑心暗鬼になっていく‥‥。
 何時でも何処でもスヤスヤ“安眠”できちゃうオイラには、この眠れない
主人公の気持ちは分かるまい。瞳の輝きは消え失せて、頬はげっそり、
骨と皮だけになったお姿を見るにつけ、あ~ぁ、自分が自分で良かったと
思わずにはいられない(笑)。
 さてさて、まず、この映画で驚かされるのは、あのクリスチャン・ベールの
“激ヤセ”変貌ぶり。恐らく優に30キロは減ったと思われる体型は、もはや
「ダイエット」と呼ぶには残酷で、何か変なクスリでもやってんじゃないかと
思えるほど(笑)。しかし、どうなんだろう‥‥、これを“ひとつの映画”として
観た場合には、痛々しくて…、重々しくて‥、オイラは主人公への同情や
憐れみよりも、むしろ“気持ち悪さ”の方が強かったかな。それに、人の
迷惑かえりみない主人公の言動にも、少なからずの“嫌悪感”を感じたし‥。
赤い車に…、謎の男に…、ひき逃げ犯…。天国行きか地獄行き…、空港の喫茶店…、
真夜中午前1時30分……。途中、様々なプロットを散りばめながら、パズルの
ワンピースのごとく、はめ込んでいった後に見えてくる“驚きの新事実”、、
その謎解きが鮮やかなだけに、そこに行き着くまでの過程を、もう少しスマートに
見せて欲しかった。こう暗くて重たいと、観ていてどんどん気が滅入ってくる。
やはり、ハリウッド映画はハリウッドらしく、明るくスカッといきたいですなぁ(笑)。