肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『白痴』、観ました。

2012-01-30 22:18:27 | 映画(は行)

監督: 黒澤明
出演: 原節子、森雅之、三船敏郎、久我美子、千秋実、志村喬

 『白痴』、観ました。
沖縄から復員して来た亀田は、癲癇性痴呆性で白痴だと自ら名乗る
純朴な男だった。青函連絡船の中から亀田と一緒になった男に赤間という
者があった。赤間は、政治家東畑の囲い者、那須妙子にダイヤの指環を
贈ったことから父に勘当されるが、その父が亡くなったので家へ帰る
ところだった。亀田は札幌に着いて、狸小路の写真屋に飾られた妙子の
写真を見せられ、その美しさにうたれる――。
 かのフェデリコ・フェリーニは、この『白痴』を観て感激し、後(のち)の
『道』を作るに至ったという。いや、『道』以外にも、『青春群像』に影響を
与えたであろうカーニバルのシーンとかもあって、その功績は計り知れない。
惜しむらくは、当初4時間25分あった“完全版”は現存せず、2時間45分の
“短縮版”しか残されていないこと。今回、オイラは黒澤明BOXに付属した
“完全版の脚本”と平行しながらの鑑賞となったが、その完成度の高さを
実感し、ますますもって失われたプリントを観たくなった。もしもだが…、
仮にあったとしたら、『羅生門』や『生きる』に並ぶ“黒澤初期の傑作”として
名を連ねていたかもしれない。改めて、この作品の悲運を呪うとともに、
あまりにも惜しい作品だと思う。
 思うに、黒澤映画の特徴は、《対比(コントラスト)》に重きを置かれて
組み立てられている。『羅生門』では‘真’に対しての‘嘘’、『七人の侍』では
‘侍’に対しての‘農民’、『生きる』では‘生’に対しての‘死’、『野良犬』では
‘善’に対しての‘悪’、『天国と地獄』では‘富’に対する‘貧’――。そして、
その構造はこの『白痴』も同じだ。冬の北海道、“白の世界(=汚れていない
無菌状態)”を背景に展開される“人間の醜い諸悪”とのコントラスト――。続いて、
裏と表、善と悪、愛と憎しみなど、個々の人が持つ“二面性”よるコントラスト――。
更には、映画登場人物の構造が、‘亀田’に対して‘それ以外の人物’からなる
コントラスト――(いや、厳密にいえば、赤間の、痴呆の母親だけは亀田の
方に属するが)。つまり、ここで対比されるのは、‘聖なるもの’に対しての
‘諸悪のもと’――不安、差別、嫉妬、妬み、盗み、欺瞞(ぎまん)、へつらい、
裏切り、虚栄心、自尊心などだ。この映画の秀逸さであり、黒澤の凄みは、
それら諸悪の対象を、 ドストエフスキーの文学としてではなく、あくまで
映画のフィルターを通し、“映画の映像表現”でもって見せてくる点だ。
〈不吉〉の予兆を漂わせ、亀田の脇を走り去る黒く大きな馬車の鈴――。
〈死の恐怖〉に怯え、覗いた先にあるショーウィンドウの包丁――。パーティで
割られた高価な壷の〈虚栄心〉――。夜のカーニバルでは勇ましく見えたのに、
あくる日には貧弱な姿に変貌した雪像の〈二面性〉――。窓の外の吹雪とは
対照的に、ピアノの音が流れる“穏やかな室内”。それは、亀田と一緒に
いることによって保たれる綾子の〈心の平穏〉だ――。緻密に計算された
道具の使い方から、ナイフに当てる光の反射角度まで、その研ぎ澄まされた
映像に思わずゾクッとした。また、那須妙子、亀田、赤間、綾子に香山を
加えた五人の関係を、時や場所に応じて形を変化させ、常に三者一括りの
トライアングルで捕らえていく男女の構図も見逃せない。その強烈な
キャラクターの面々しかり、それらを効果的に見せていく大胆な構図しかり、
黒澤の演出なくしてはありえなかった作品だろう。

  
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『エイリアン/ディレクターズ・カット』、観ました。

2012-01-24 16:04:18 | 映画(あ行)

監督:リドリー・スコット
出演:シガーニー・ウィーバー、トム・スケリット、ジョン・ハート、ベロニカ・カートライト、イアン・ホルム

 『エイリアン/ディレクターズ・カット』、観ました。
地球へ帰航中の宇宙貨物船ノストロモ号。そのメイン・コンピュータ“マザー”が、
発信者不明の通信を傍受し、突如コースを変更する。知的生命体に関することは
最優先で調査せよという、雇い主である会社からの至上命令に6人の乗組員たちは
否応なく従う。未知の惑星に着陸し、調査を開始したケインは異星人の化石を
発見するが、謎の生物に襲われる。同じ頃、船で待機するリプリーは通信内容が
S.O.Sではなく警告らしいことを突き止めるのだが…。
 ホントーにしばらくぶりにこの『エイリアン』を鑑賞し、“ディレクターズ・カット”
なるものが存在することを知ったワケだが、オイラは“オリジナル”の方を
支持します。さて、今回追加されたのは、映画クライマックスで宇宙船爆破の
カウントダウン最中、エイリアンによって捕らわれの身(繭?)となったクルーらを、
リプリーが見つけ出すシーンだ。確かに興味がそそられ、お蔵にするには
惜しい気がするが、確かそこでは一分一秒を争う切迫した場面だった筈、
それによって映画を通しての緊張感やスピード感が失速してしまった感は
否めない。 そもそも、オリジナルの完成度が高く、現在(いま)をもって手直しする
箇所がないことは、リドリー・スコット本人がDVD冒頭にて語っています。
思うに、 本バージョンは“完全版”、あるいは“最終形”とは受け取らずに、
マニア向けの “コレクターズ・エディション”くらいに考えた方が良さそうだ。
 ここらでオイラのマメ知識(?)をご披露すると、何とエイリアン本体は男性の
生殖器をモチーフにデザインされたそうで、それが“欲望”とか“本能”のままに
ヒロイン(女性)を追っ掛けまわすという、とんでもない映画だそうな(笑)。
ともすると、その、強姦を連想させる両者、すなわちエイリアンとヒロインだけに
目がいってしまいそうだが、この映画の秀逸さは別のところにあるとオイラは
睨んでいる。それは、宇宙船という“空間”の使い方だ。復習してみよう――、
宿主の腹を食い破って小型エイリアンが宇宙船内部へ解き放たれた。当初、
クルーらはそいつを捕まえうとするが、“巨大な宇宙船の広さ”が災いして
見つけられない。やっとこさ、“狭い通風孔”に追い込んだのも束の間、状況が
激変する。エイリアンを追い詰めたつもりが、実は自分達の方が追い詰められた――、
そこで現実を思い知る事になる。その刹那、“攻守”が入れ替わる。今度は
エイリアンが(人間を)狩る番だ。すると、絶望的に広く感じられた船内が一転、
猛獣と一緒に“狭いオリ”へ閉じ込められたような“閉塞感”に覆われる。オイラは、
サスペンス映画が好きでよく観ているが、これほど“空間”が効果的に使われ、
更に“攻守の切り替え”が鮮やかに決まった例は、この作品を除いてほとんど
思い浮かばない。『エイリアン』が“SFのバイブル”的存在になったのは、
H・R・ギーガーによるグロテスクでありながら神秘的な(SFの)世界観と、
リドリー・スコットによる“サスペンスの緊迫感”が非常に高いレヴェルで融合し、
結集された賜物だろう。「あの頃の映画にしては面白かった」では済まされない
SFだ。それは時が経っても色あせない。

 

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『白いリボン』、観ました。

2012-01-17 19:55:04 | 映画(さ行)

監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:クリスチャン・フリーデル、レオニー・ベネシュ、ウルリッヒ・トゥクール、 ブルクハルト・クラウスナー
※第62回カンヌ国際映画祭パルム・ドール
※第67回ゴールデングローブ賞外国語映画賞
※2010年キネマ旬報ベストテン第4位

 『白いリボン』、観ました。
1913年夏、北ドイツのある村。張られた針金が原因でドクターが落馬したのが
発端だった。翌日にはその針金が消え、小作人の妻が男爵家の納屋で起きた
事故で命を落とす。秋、収穫祭の日、母の死に納得できない息子が、男爵の畑の
キャベツを切り刻む。その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になった。一方、
牧師は反抗的な自分の子供たちに“純心”の象徴である白いリボンを腕に巻かせる。
犯人がわからないまま、不信感が村に広がっていく――。
 長らく今日のこの日まで、ミヒャエル・ハネケ監督に対する苦手意識(?)もあって、
この映画の鑑賞を見合わせていた。更に、モノクロ映画であり、2時間をゆうに
超える上映時間(144分)も躊躇(ちゅうちょ)させた要因だ。しかし、いざ覚悟を
決めて観てみれば、時間の長さも、重苦しいモノクロ映像も全く苦になることなく、
一気に映画を観終わった。いや、その語り口の巧さと濃密な内容もさることながら、
映像の素晴らしさと技術の高さにも魅了されることしきり。中でも、ダンスシーンの
流れるようなカメラワークは、魔法のよう。また、モノクロにしたことで強調された
陰影部分が“心の闇”となって浮かび上がり、“人間の本性”をあぶり出すことに
成功している。恐るべし、ミヒャエル・ハネケ。他の作品はともかく、この映画だけは
素直に認めざるを得ない。評判に違(たが)わぬ傑作だ。
 子を持つ一人の親として、身につまされる想いがした――。同時に、いま現在、
社会的立場にある者として、深く考えさせられた――。映画は、ミステリー形式で
犯人捜しの要素を含んではいるが、主題はそこではない。一見、平穏そうに
みえる村も、その裏側に回れば人々の心に“不満”が根付き、“嫉妬”や“妬み”が
渦巻いている。《富》とは遠い無縁の場所にあるその村では、聖職者、地主、
医師ら、一部の権力者が強い(絶対的な)発言力を持ち、実行支配しているのだ。
もっと言えば、彼らは“敬意”や“尊敬”を受けてその地位を得たのではなく、村民に
“圧力”をかけて統治しているだけに過ぎない。そして、そこの子供らもまた
彼らの顔色をうかがいながら、不満を胸に隠して暮らしている。“自由”は抹殺され、
その瞳に輝きはない。映画に、それを象徴するシーンがある。神父に強く叱られた
その娘が、大事に飼っていた(神父の)鳥を殺す場面だ。思うに、神父にとっての
娘は、“鳥かごの中の鳥”と同じだ。鳥かごという圧力を掛けて、手元に置いている
ペットと何ら変わりはない。翼はあっても、飛べる空がない。自由がないのだ。
娘がその鳥を殺したのは、「自分は父のペットにはなりたくない」という“心の叫び”
だったんだろう(涙)。このレビューも終わりに近づいたが、ここではあえて犯人の
名は出さないでおく。それについて述べたところで、無意味だからだ。ひとつ
言えることは、《白いリボン》は“純心”の象徴なんかじゃない。“子供の、自由な心を
縛る重い鎖”だ。そして、がんじからめにされた心は、行き場を失う‥‥。これは、
遠い時代の遠い国で起きた小さな村の物語だが、現在の我々にも至極身近で、
不変のテーマを扱った大きな問題だと思う。

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『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』、観ました。

2012-01-11 20:47:53 | 映画(あ行)

監督:パスカル・トマ
出演:カトリーヌ・フロ、アンドレ・デュソリエ、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、ヴァレリー・カプリスキー

 『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』、観ました。
フランスの田舎で悠々自適の生活を送る好奇心旺盛な女性プリュダンスと
その夫ベリゼール。ある日、プリュダンスは叔母のいる高級老人ホームで
不思議な老婦人ローズの存在が気に掛かる。数週間後、その叔母が他界、
遺品を整理していた彼女は事件の予感を嗅ぎ取り、姿を消したローズが
何かを知っていると直感、彼女の行方を追って旅に出るのだった――。
 わざわざ劇場にまで足を運んでとなると考えるが、自宅で“2時間枠の
TVドラマ”感覚で観る分には、優雅なひとときと贅沢な気分に浸ることが
出来る。凶悪な殺人事件には無縁と思われるのどかな田園風景――、
身の危険が迫っているにも関わらず、危機感が欠如した好奇心旺盛の
探偵気取りマダム――、いい歳をしながら、いちゃいちゃとベッドにて
愛の言葉を囁き合う主人公夫婦のオシドリぶり――。ミステリーでありながら、
この、気の抜けたサイダーみたいに“だら~ん”とした雰囲気が…… いや、 
失礼(汗)、、ワインのように(?)まったりとした口当たりが、さもフレンチ風の
趣きでクセになる。おまけに、“人権の国(フランス)”とうたっておきながら、
アララ、障害者までユーモアのネタに使ってしまう“曖昧さ”も、そのお国柄
かしらね(苦笑)。うん、やっぱり“フランス映画”はこうでなくっちゃ。
あ、誤解がないよう断っておくと、何もオイラはこの映画をけなしている
つもりは毛頭なく、ほのぼのしてて上品なミステリーだってこと。どうか
ご理解のほどを。本格派のそれとは遠いところで、こういうサラッと観れる
ミステリーもあって良いと思うし、一見、不釣合いそうにみえるミステリーと
フランス映画を掛け合わしてみたら、思いの他、良いケミストリー(反応)を
生んだ好例だろう。この際、事件の謎解きやら犯人探しやらは置いといて、
“(ミステリーの)雰囲気”を楽しむつもりの軽い気持ちでご覧になったら
どうだろう。


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『サクリファイス』、観ました。

2012-01-08 13:41:13 | 映画(さ行)

監督:アンドレイ・タルコフスキー
出演:エルランド・ヨセフソン、スーザン・フリートウッド

 『サクリファイス』、観ました。
誕生日を迎えたアレクサンデルは、言葉が話せない息子と枯れた松の木を
植える。そこに突然、核戦争が勃発した。無神論者だったアレクサンデルは
「愛する人々が救われるのなら、自分はすべてを捨てる」とその生涯で初めて
神に祈る。そして、使用人のマリアを抱いた後、家に火を放って我が身を
神に捧げるサクリファィス(犠牲、献身)を実行する──。
 初めて『サクリファイス』を観たのは、20代の頃だった。その時の印象を
振り返ると、映像は観ていて吸い込まれそうに美しい‥‥が、ストーリーは
何度繰り返し観直してもよく分からない。難解こそが高尚だとは言わないまでも、
当時の自分には“敷居が高い”の一言で片付けてしまったような気がする。
あれから20年あまりが過ぎ、改めて今こうして観直してみると、ストーリーの
細部まで理解できたかどうかは別にして、監督のA・タルコフスキーがこの
『サクリファイス』をもって伝えたかったものは分かりました。なんせ昨年、
あれほどの震災を経験した我々だもの…(涙)、それはもう、痛いほどにね。
 果たしてここでみたものは、目の前の“現実”なのか…、それとも、頭の
中だけの“幻想”なのか…。果たして、主人公の老人は、自ら進んで犠牲
(サクリファイス)となった“救世主”なのか…、あるいは、単に戯言を並べた
“狂人”なのか……。いや、その事ばかりに目を捕らわれ回答を見つけ出そうと
すると混乱する。思うに、それはどちらでも構わない。言い換えれば、どちらの
ルートを通っても“映画の着陸地点”は同じなのだ。いずれにせよ(仮に老人が
みたもの、したこと全てが“幻想”だったとしても)、ここにひとつ“揺るがない
事実”が残った。それは、ここでみたものは今後“現実に起こりうる可能性が
ある”ってこと。我々はまさに《目の前の恐怖に直面している》、少なくとも、
それだけは“真実”だ。ややもすると、オイラの考えは悲観的過ぎて嘲笑される
かもしれない。これは映画の中のお話で、とにかく世界は救われたのだ。それで
良いじゃないか、と。ならば、逆に問いたい。それが現実に起きたと仮定して、
今の我々に何が出来るだろうか。映画の中の老人の代わりとして、誰が生贄と
なって犠牲を払えば良いのか――、それで本当に世界は救われるのか――。
 この遺作に込められたタルコフスキーの想いは、痛切だ。豊かさや平和とは、
“たった一人の犠牲”の上に立っているものではなく、その時代に生きた全ての
人々が“同等の責任”を負い、皆が“少しずつ痛み”を分け合うことで成り立つ
ものなのだ。また、人間のみの価値観や、その時代のみが許されるエゴで
自然界をいじってはいけない。人類の進歩は、物質的進歩と精神的進歩の
両輪で動かしてこそのもので、その両者のバランスが崩れると歪みが生まれ、
やがて崩壊してしまう。そして、もし、この世界を再生できるものがあるとしたら、
それは科学の進歩ではない。“心の成長”において他ならない。しかし、心は
ある日突然に美しい花が咲き、豊かな実が成るものはない。毎日毎日来る日も
欠かさず水をやり、少しずつ…、ほんの少しずつ成長していくものなのだ。
例えば、そう、映画冒頭で老人と子供が植えた老木のように……。何でも良い、
我々ひとりひとりが皆、身の回りで出来る“ほんの些細なこと”から始めてみる。
《世界を変える》とは、その時やっと“その第一歩目”が踏み出せるのではなかろうか。

 

 
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『ゴーストライター』、観ました。

2012-01-02 13:58:15 | 映画(か行)

監督:ロマン・ポランスキー
出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、オリビア・ウィリアムズ
※第60回ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀監督賞)

 『ゴーストライター』、観ました。
元英国首相アダム・ラングの自伝執筆を依頼されたゴーストライターが、ラングの
滞在する孤島を訪問。取材をしながら原稿を書き進めていくが、次第にラングの
過去に違和感を抱き始める。さらには前任者の不可解な死のナゾに行き当たり、
独自に調査を進めていくが、やがて国家を揺るがす恐ろしい秘密に触れてしまう‥‥。
 (昨年)2011年最高のサスペンス映画にして、近年稀にみるポリティカル・
サスペンスの傑作だ。まず、先に断っておくと、ここにはアッと驚くどんでん返しも
なければ、それを見破る鮮やかな謎解きも存在しない。更に、犠牲者の死体を
見るのは冒頭の遠巻きからのワンショットのみ、猟奇的な殺人もなく、一滴の
血も流れない。ともすると人によって“地味で物足らない映画”に映ってしまい
そうだが、いやいや、そんなことはない。この上なくスマートで気品漂い、
ミステリーの面白さが凝縮された一本だ。最初はほんの些細な“好奇心”から
始まった。やがてそれが“疑惑”へと変わり、ついに“確信”へと…。細かな
プロットをひとつひとつ丁寧に積み重ねて作り上げていくプロセスは、まさに
“サスペンス映画の醍醐味”であり、円熟期に入ったロマン・ポランスキー
ならではの職人芸だ。また、抑制されつつも格調高い映像の中、閉ざされた
寒村の重苦しい天候に投影された人間模様と、微妙な駆け引きもこの映画の
見所の一つだろう。更に、初めてその地を訪れた主人公が味わう特有の感覚――
みる物、出会う人すべてが奇異に映り、周囲の中で自分だけが“浮いた存在”に
思われる――いわゆる、映画全体が“異邦人の視点”で描かれているのも
見逃せない。それにしても、主人公が事件の核心に迫れば迫るほど、ひたひたと
背後に忍び寄る黒い影が薄気味悪く、観る者の不安感を増長させる。と、そうかと
思えば、英国風の小洒落たセリフにニヤリとする。その、重厚なサスペンスに
時折みせる“ユーモアのさじ加減”は、往年のヒッチコックの映画を観てるよう。
そして、最後はフィルム・ノワール的な結末でこれまたニヤリ。普段は映画館で
エンドロールが流れると席を立つオイラだが、今作ばかりはどこか名残惜しく、
もう少しこのミステリアスで心地よい空気に浸っていたい、とそんな気持ちに
させられた作品だった。


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