肯定的映画評論室・新館

一刀両断!コラムで映画を三枚おろし。

『桐島、部活やめるってよ』、観ました。

2013-03-07 16:04:59 | 映画(か行)

監督:吉田大八
出演:神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、東出昌大

 『桐島、部活やめるってよ』、観ました。
ありふれた時間が流れる金曜日の放課後。誰もが認めるバレーボール部の
スター、桐島が退部のニュースが駆けめぐったことから、校内の人間関係が
静かに変化していく――。
 とある平凡な学園内を舞台にした学生らの群像ドラマ。ことの起こりは
中心的な存在であったバレー部のキャプテン桐島が退部するらしい、って
噂だけ。それ以後も事件らしい事件は起こらず、一切の過激描写もなければ、
サプライズな演出も見当たらない。おまけに肝心要の主人公、桐島クンは
一向に登場する気配もない。それでも観ながら、物語の中枢にグイグイ
引き込まれ、一級のエンターテイメントとして成立させてしまうのは、そこに
迷える“若者たちの今”が切り取られ、“等身大の姿”として皆がリアルに
描かれているからだろう。
 さて、何といってもこの物語の動力は、ユニークで個性豊かな登場人物ら――、
ホラー映画オタクで“ロメロ”信者の映画部部長、いつもどこかハッキリしない
帰宅部のイケメン君、そんな彼に報われない恋心を抱く吹奏楽部の優等生
部長、夏の大会が終わっても一向に辞める気配のない三年生の野球部部長、
亡き姉の後を追うように練習に打ち込むバドミントンの女子部員、退部した
桐島の穴を埋めるべくシゴキに耐えるリベロのバレー部員、そして、大いなる
勘違いをし続ける軽薄なオンナ――。一見、ランダムにみえる人物構成だが、
実はよく考えられていて、大きく二種類に振り分けられる。まず片方は、自分の
損得を優先して立ち回る、いわゆる“スマートで要領の良い生き方”をする
連中だが、もう片方はというと――、不器っちょな生き方しか出来ない凡人達だ。
叶うはずもない恋と知りながらあきらめ切れない。アカデミー賞もドラフトも
自分とは無縁のもので、決して埋めることの出来ない実力差を自覚しながら、
何故か辞めずに続けている。尊敬するジョージ・A・ロメロ――、大好きだった姉――、
憧れだったバレー部のキャプテン桐島――、決して届くはずのない“その人の
背中”に近づこうと努力する。はっきりとは言えないけれど、彼らにとってそれが
《生きる》ってことかもしれないな。いや、別の言葉で、それが《青春》というもの
かもしれない。何故かオイラはそんな彼らの姿が堪らなく愛しく感じられた。
 映画終盤、カメラを覗く映画部部長に「やっぱ、カッコ良いね」と言われた
イケメン君が、「俺なんか、そんなんじゃないよ」と泣き崩れてしまう。その涙の
解釈は様々だが、容姿のカッコ良さなんかじゃなく、内面的な部分について――、
思うに、彼はその時やっと気付き、同時に恥じたのだろう。目標が見当たらず、
“ゾンビ"のようにさ迷い歩く――、自分の“カッコ悪い生き方”を。


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