この半年間に読んだ本の中で特に印象に残っているもの達。
順不同。
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岡本太郎 『今日の芸術』
私が最近よく見ているブログで取り上げられていたので、読んでみることにした本。
BOOK-OFFで見つけることが出来ました。
この本が出版されたのは1954年なので、ちょうど60年前のことになります。
ですが、最近書かれた本のように感じる不思議。
鋭く本質を突いているから。
普遍的(不変的)な内容だから。
強い意志があるから。切実な問題だから。
・・・確かにそういうのもあるけれど、岡本太郎が60年前に危惧していた事柄が、そのまま解決されずに現代に残っているからだ、とも思える。
いずれにしても、天才ってのは60年くらいの年月を軽く飛び越えられるものなんだな、と実感しました。
文章も易しく、丁寧です。
これを読んで芸術に対する考え方が変わりました。
芸術に興味がなかったとしても、読んでみるべき。
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森博嗣 『「やりがいのある仕事」という幻想』
私の好きな小説家(?)・森博嗣が書いた新書。
もしこの本が私の大学時代に存在していたなら(そして大学時代の私が読んでいたなら)、大学時代の私は多少救われていただろう、と思える。
就職活動の時期ってのはどうしても視野が狭くなりがちで、厳しい現実にどう自分を当てはめるか・・・なんて考えだしたら逃げ出したくなるのも当然だよね。でも、考え方は人それぞれだし、生き方も人それぞれ。今の現実を疑ってかかるのも必要なのかも・・・?的な内容です。たぶん(笑)
昔Mr.Childrenが言ってたけど『♪人生はアドベンチャー たとえ踏み外しても 結局楽しんだ人が勝者です』ってね。
・・・って、歌詞を確かめるためにネットで検索してみたら、『勝者』じゃなくて『笑者』なのね。
笑い者ってか。酷いなぁ(笑)
なにはともあれ、ヒトは常識だとか世間だとか・・・そういうものに絡め取られて感覚がおかしくなってるよ?というのに気が付くきっかけになるかもしれない本のような気がします。えらく断定を避けた表現になってしまうけれども。
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安部公房 『砂の女』
有名な作家の有名な作品だけれども。
今更ながら・・・というか文学作品を読むのに『今更』も何もないだろうな、うん、読んでみました。あまりに面白かったので、読み終えて何日か後にまた読み返しました。やっぱり面白い。
人は嫌がりつつもどんな環境にも適応してしまうものなのか、適応させられてしまうのか。アリジゴクに蝕まれるのは恐ろしい。
ある場所では普通のことが、他の場所では通じない。
自分が基盤にしているものが揺らぐと自分自身の存在さえ揺らぐ。
・・・本編の内容とは少し離れるけれど、ふと今そんなことを思った。
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水木しげる 『総員玉砕せよ!』
ゲゲゲの鬼太郎の作者・水木しげる氏の戦争体験を基にした漫画。
氏が体験した戦線の様子を、美化も卑下もなく淡々と描いた漫画。
この漫画を読んだきっかけは、梯久美子『昭和二十年夏、僕は兵士だった』という本で水木氏の談話を読んだからです。あ、この本も面白いので、読んでみても良いと思います。
一般的に戦争ものはやたらとメッセージ性が強い。
しかも変に美化されていたり、貶められていたり。ドラマ性に富み過ぎてたり。
見せられない部分は映さないし。
とにかく捻じ曲がったものが多い気がする。
それらに比べこの作品は、戦場の日常が偽りなく描かれていると思います。
それだけにエグい部分もかなりありますが。
戦争を経験したことがない以上、経験した人の話を訊くより仕方がないのです。
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筒井康隆 『時をかける少女』
これまた今更・・・な感は否めないけれども、気にしない。初めて読んだ。
少年少女向けのSF作品なんですね。
30才のおっさん的にはちょっと物足りない感じはしましたが、話の分かりやすさと純粋さが時代を経ても多くの人の胸を打つ・・・のでしょう。なんだか他人事のような感想で申し訳ないけれども。
森博嗣の小説で『ケン・十河』なんて人物がいたけど、この名前の由来はきっと・・・。
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半藤一利 『幕末史』
厚めな文庫本だけれど、読みやすい。
思想や思惑の入り乱れた幕末の流れを分かりやすく面白くまとめた本。
薩摩や長州に肩入れした本が多い中(今の教科書だってそんな感じ)、この本は反・薩摩、反・長州の立場で書かれています。
人それぞれに思惑があって、それをまとめるのはなかなか困難だ。
それをできる人はすごい。
しかし命の危険もある。
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この半年間、多くの本を読むことができた。
ありがたい話だ。